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【一口紹介】
◆内容紹介◆
松下幸之助に「美しい経済人」と呼ばれた経営者・大原總一郎――。
日本初の合成繊維の事業化をめざし、国交回復前の中国へのプラント輸出に挑戦。
激動の昭和をひたむきに生き、数々の分野でシェアNo.1を誇る企業=現在のクラレを作り上げた男の生涯を描いたノンフィクションノベル。
『世界的メーカーに、日本のメーカーが勝てるか否かの戦いです。負けるわけにはいかない』
私は、現在の日本の経営者の多くが目先の企業利益追求に汲々とする余り、かえってグローバル化の時代に取り残されているのではないかと懸念している。
そんな彼らに「大原總一郎を見よ! 」と言いたい。
一企業の利益ではなく、社会全体の利益を追求するのが経営者の使命なのだと大原總一郎は教えてくれる。――「あとがき」より
◆内容(「BOOK」データベースより)◆
日本初の合成繊維の事業化をめざし、国交回復前の中国へのプラント輸出に挑戦。
激動の昭和をひたむきに生きた男の姿に思わず胸が熱くなる、ノンフィクションノベル。
◆著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)◆
江上/剛
1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
77年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』で作家デビュー。
03年に同行を退職し、執筆生活に入る。
【読んだ理由】
新聞の書評を見て、倉敷市民としては必読の書と思ったから。
【印象に残った一行】
「何もかもなくなってしまうのだから、お前には苦労をかけてしまうが、もし残せるものがあるとすれば、それは大原家の精神だ。お父さんの会社の社章は、『二三印』というんだ。これは私のおじいさんの孝四郎という人が、森田雪斎という偉い方先生の『奢れば衰え、満は損を招き、謙は益を受く』という言葉に感動してつくられたものなんだよ。つまり、何時も二番か三番かのような謙虚な気持ちでいなければならない。自惚れや傲慢を慎み、何時も努力をしなければならないという意味なんだ。戦争が終わり、新しい時代が来たんだ。謙一郎も二三印を胸に刻んで、強く生きていくんだ」
私は大原總一郎の生涯を語るのに三つのキーワードがあると思う。
一つ目は、イノベーション。大原總一郎自身が「イノベーションなき経済成長は真の経済成長にあらず」と言っているように日本初の合成繊維ビニロンの開発に命をかけたこと。
二つ目は、ちゅうごく。まだ国交のなかった中国に対するビニロンプラント輸出を実現したこと。それは戦争の時代を生き抜いた贖罪意識に由来する行動だった。
三つめは、沖縄。沖縄こそ日本文化の源流と考え、戦争によって失われたその文化の復興に努めた。
【コメント】
久しぶりに読後深い満足感みたいなものが得られた。皆さんにお奨めしたい。