【一口紹介】
◆内容紹介◆
どうしてこんなに働かされ続けるのか? なぜ給料が上がらないのか? 自分は何になりたいのか?――人生どん底の著者を田舎に導いたのは、天然菌とマルクスだった。
講談社+ミシマ社三島邦弘コラボレーションによる、とても不思議なビジネス書ここに刊行。
「この世に存在するものはすべて腐り土に帰る。なのにお金だけは腐らないのはなぜ?」--150年前、カール・マルクスが「資本論」であきらかにした資本主義の病理は、その後なんら改善されないどころかいまや終わりの始まりが。リーマン・ショック以降、世界経済の不全は、ヨーロッパや日本ほか新興国など地球上を覆い尽くした。
「この世界のあらたな仕組み」を、岡山駅から2時間以上、蒜山高原の麓の古い街道筋の美しい集落の勝山で、築百年超の古民家に棲む天然酵母と自然栽培の小麦でパンを作るパン職人・渡邉格が実践している。
パンを武器に日本の辺境から静かな革命「腐る経済」が始まっている。
【著者・渡邉格(わたなべ いたる)から読者のみなさんに】
まっとうに働いて、はやく一人前になりたい――。回り道して30歳ではじめて社会に出た僕が抱いたのは、ほんのささやかな願いでした。
ところが、僕が飛び込んだパンの世界には、多くの矛盾がありました。過酷な長時間労働、添加物を使っているのに「無添加な」パン……。
効率や利潤をひたすら追求する資本主義経済のなかで、パン屋で働くパン職人は、経済の矛盾を一身に背負わされていたのです。
僕は妻とふたり、「そうではない」パン屋を営むために、田舎で店を開きました。
それから5年半、見えてきたひとつのかたちが、「腐る経済」です。この世でお金だけが「腐らない」。そのお金が、社会と人の暮らしを振り回しています。
「職」(労働力)も「食」(商品)も安さばかりが追求され、その結果、2つの「しょく(職・食)」はどんどんおかしくなっています。
そんな社会を、僕らは子どもに残したくはない。僕らは、子どもに残したい社会をつくるために、田舎でパンをつくり、そこから見えてきたことをこの本に記しました。
いまの働き方に疑問や矛盾を感じている人に、そして、パンを食べるすべての人に、手にとってもらいたい一冊です。
◆内容(「BOOK」データベースより)◆
祖父と父の教え、田舎の自然の恵み、築百年超の古民家に棲みつく天然菌、丹精込めて作られた素材…すべてが一つになった、奇跡のパンの物語。
お金中心の「腐らない」経済から、発酵を繰り返す「腐る」経済へ。「不思議なパン屋」が起こす、静かな革命。
◆著者について◆
1971年生まれ。東京都東大和市出身。23歳のとき、学者の父とともにハンガリーに一年間滞在。農業に興味を持つようになり、千葉大学・園芸学部園芸経済学科に入学。
在学中、千葉県三芳村の有機農家で「援農」を体験。「有機農業と地域通貨」をテーマに卒論を書く。
卒業後有機野菜の卸売販売会社に就職、そこで妻・麻里子と出会う。
31歳のとき、突如パン屋になることを決意。2008年独立して、千葉県いすみ市で「パン屋タルマーリー」を開業。
2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故ののち岡山県真庭市に移住を決意。2012年2月、同市勝山で「パン屋タルマーリー」を再オープ
【読んだ理由】
新聞の書評を読んで、私の地元岡山におられるパン屋さんが書いた本に興味をひかれた。。
【印象に残った一行】
土壌が痩せると、作物が自分の力で育つことができなくなり、肥料が欠かせなくななる。それと同じで、地域が痩せると、地域の経済を自分たちの力で育てることができなくなり。「外」から何かを足し続けなければならなくなる。「食」の世界と同じ悪循環が生まれてきているのだ。「外」からは何も足さない、借りてこない。「内」なる力をいかに輝かせるか---。
だから僕らは、地域通貨のようなパンをつくることを目指す。
つくって売れば売るほど、地域の経済が活性化し、地域で暮らす人が豊かになり、地域の自然と環境が生態系の豊かさと多様性を取り戻していくパン---。
僕らは、地域通貨の発想を、パン屋なりにアレンジして発展させ、「利潤」ではなく、「循環」と「醗酵」に焦点を当てた、「腐る経済」に挑んでいる。
自分たちが疑わしい、おかしいと思うもの、品質や安全性に確証を持てない素材は一切使わない(買わない)。自分たちが信じられる素材や菌や製法だけを使い、自分たちが信じられるパンをつくる。そして、自分たちが信じているものには「、きちんと正当な対価を支払う。
「利潤」を出さないということは、誰からも搾取をしない。誰も傷つけないおいうこと。従業員からも、生産者からも、自然からも買い手からも搾取をしない。そのために、必要なお金を必要なところに必要なだけ使う。そして、「商品」を「正しく高く」売る。この搾取なき経営のかたちこそが、おカネが増殖しない、「腐る経済」をつくっていくのだ。
【コメント】
著者独自の視点からの論理展開は新鮮で、為になる。パンも是非食してみたい。