数学の本かと思ったら、数学に限らず 人間の事、思考の事、社会の事、子供の事、禅の思想のことなどが書いてあった。
全篇に流れているのは思考の根っ子に「いまここに在る」という思いだ。
勿論数学の本質に関する記述もあって、その中に「行為に先立って意味があるのではない。記号運用のルールにしたがった計算の反復の果てに
意味はあとからついてくる」という箇所に、自分が微分積分でつまずいた理由が分かったような気がした。
引用された書の著者には 岡潔、澤木興道、内山興正、和辻哲郎、プラトン、芭蕉、白川静、荘子、ノヴァル・ノア・ハラリその他多くがあって
小学校4年生までアメリカで英語で育って 日本へ帰国して後の森田さんのその後の思考や探求心が影響を受けた浩瀚を思う。
全158ページの読み易いエッセイ体の本だったが結構濃い本だった。
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文中の言葉のいくつか
❝❞目の前の何気ない事実を、あることもないこともできた偶然として発見するとき、人は驚きととともに「ありがたい」と感じる。
いま(present)が、あるがままで「贈り物(present)」だと実感するのは。このような瞬間である❝❞
❝❞「ことば」とは本来、「こと」の「端」だという。ことばは、事実に比べていつも不完全である。肉声で寄ろうが、文字によろうが、ことばは、
事実に遅れる宿命にある。 だが、ことばにはまた、「こと」を引き起こす力がある。ことばはこのとき、未来への「端ーいとくち」となる。
人は、初めからあった世界の端くれとして生まれ、未だかってない世界の端ーきざしを示して、滅びていくことが出来る。
おくれ、おくられる人間のことばは、この矛盾をそのまま内包している。❝❞