春来川の河原〔荒湯近辺〕には湯村温泉を訪れた著名人、文化人の手形が飾られている。
その中で目を惹くのが、やはり吉永小百合の手形。役柄は余命いくばくも無い原爆症の
芸姑を演じているが本人はいたって健康だったそうで手形もフックラ可愛いものである。
直筆の「夢一途」は吉永小百合そのものだ。
ドラマ夢千代日記は温泉街、温泉芸姑の話なのに入浴シーンが少ないというか殆どない。
主人公吉永小百合の入浴シーンも終になかった。代わりに次の様な切ないシーンがある。
~続夢千代日記脚本(シナリオ)~野天風呂より~
(湯につかっている小夢。そばに俊子(14歳)もつかっている)
小夢:『どう温まった』
俊子:うなづく
(湯気がもうもうとあがっている。その湯気の中に俊子が立つ)
小夢:『?!』
俊子:『わたしのからだきれい?』
小夢:『え、うん、きれいだ』
俊子:湯に裸身を沈める。
小夢:『なんでそんなこと聞くの?』
俊子:『きたないのかと思って……』
小夢:『・・・・・・』
俊子:『男の人は、からだをあげないと、ほんとに愛してくれないんでしょ』
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戦後、少しづつ自由を手にし始めた乙女達、しかし富める者と貧しい者とまだ格差があ
った。そんな中、男と女の情愛は確実に進化し始める。時代は緩やかに豊かさを獲得し
つつある中、湯の街は歓楽の象徴であった。この物語が描かれた時は今から25年前、脚
本家早坂暁は社会的にも、精神的にも、肉体的にもか弱い女を演出したのだろうか?現
在は堂々と「品格」を語る程女性の地位は向上した。
参照#夢千代像(兵庫県湯村温泉)
吉永小百合:筆者は幼少期、吉永小百合を生家の前で目撃している。父は当時16歳の
ビックスターを岩木神社境内を案内したとの事。日活映画『草を刈る乙女』で、
青森県岩木山山麓にロケに来たのである。そんな彼女も今では清純派女優とは言
えない。北の零年、母べえでは女、母、そして人間を演じきる大女優と成長した。
参照#「草を刈る娘」の作家石坂洋次郎文学碑ー青い山脈