孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インドネシア  キリスト教会放火、イスラム「異端」への暴力 高まる“不寛容”

2011-02-11 19:24:11 | 世相

(ジャワ島西部バンテン州パンデグランで2月6日におきた、少数派イスラム系教団「アフマディア」信者への暴行場面 “flickr”より By elin2010002 http://www.flickr.com/photos/58259004@N04/5431789962/

高まる「異端」への宗教的不寛容
イスラム世界と欧米社会の対立、欧州における移民問題など、現代社会のキーワードのひとつが、異なる他者への“不寛容”であると思われます。
世界最大のイスラム国家でもあるインドネシアにおける、宗教的不寛容の動きは、10年9月20日ブログ「インドネシア 強まるイスラム強硬派の活動 イスラム的規制強化の流れ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100920)でも取り上げましたが、その傾向は継続しているようです。
インドネシア国内における少数派キリスト教徒、イスラム教「異端」のアフマディア派に対する暴力行為が報じられています。

****インドネシア:宗教少数派の迫害急増 対応迫られる政権*****
世界最多の約2億人のイスラム教徒を抱えるインドネシアで、イスラム教の「異端」教団やキリスト教徒に対する暴力事件が相次いでいる。中東などに比べ宗教的に「寛容」とされる同国では近年、強硬派による少数派迫害が急増しており、ユドヨノ政権は対応を迫られている。

ジャワ島西部バンテン州パンデグランで6日、異端とされる少数派イスラム系教団「アフマディア」信者の民家を住民ら数百人が襲撃。信者3人が死亡し5人が重傷を負った。
襲撃の様子を撮影した映像では、「背信者!」と叫ぶ住民らが民家に投石し、放火。棒などで信者を虐殺する様子が映っている。

アフマディアは19世紀末に英領インドで生まれ、1920年代にインドネシアに伝わった。国内の信者は約50万人。最後の預言者はムハンマドではなく同派の教祖であるとする教義から「異端」として迫害されてきた。イスラム強硬派の圧力に屈した政府は08年、布教を禁止した。
地元メディアによると、今回の事件では、地元住民が民家での活動中止を要求したがアフマディア側が拒否。激怒した住民が暴徒化し襲撃したらしい。

また、8日には中部ジャワ州トゥマングンの地方裁判所で、イスラム教を中傷する冊子を配布したキリスト教徒男性に対する判決公判が開かれた。イスラム強硬派メンバーら1500人以上が禁錮5年の有罪判決に「軽すぎる」と抗議。近隣のキリスト教会2軒に放火。別の教会とキリスト教学校各1軒が投石などで壊された。

人口の8割以上がイスラム教徒のインドネシアだが、政教分離を国是としている。
しかし、同国のNGO(非政府組織)の調査では、アフマディア対象の事件は09年の32件から昨年は50件に増加。キリスト教徒対象は09年の17件から昨年75件と激増した。地元大学の調査では、「近隣でのモスク(イスラム礼拝所)以外の宗教施設建設」に対し、イスラム教徒の57.8%が「反対」と回答。過去最高となり、「宗教的寛容度」の悪化が明らかになっている。

不寛容の原因として専門家は、パレスチナやアフガニスタンなどで「同胞」を抑圧する米国などキリスト教国への反発が、イスラム過激思想を容認する風潮を生んでいる点や、強硬派に弱腰のユドヨノ政権の姿勢が暴力を助長しているとみる。
ユドヨノ大統領は両事件の全容解明を指示。今後は厳正に対処する姿勢を強調した。【2月10日 毎日】
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後段のキリスト教会放火事件については、“判決が軽すぎると抗議する群衆約1500人が裁判所前に集まり、警官隊と衝突した。群衆は警官隊に投石を行い、警官隊は催涙弾や威嚇射撃で応じた。群衆は裁判所前で「殺せ!殺せ!」と叫び、「燃やせ!燃やせ!」と叫び、教会に火を放った。”【2月8日 AFP】とのことです。

前段の少数派イスラム系教団「アフマディア」については、“群衆による集団リンチはビデオに収録されており、群衆は、なたや棒、石を手に「アラーは偉大なり」と叫びながらアフマディア派信徒に襲いかかり、警官の目の前で、石や棒で暴行して殺害した後も暴行を繰り返した。” 【2月8日 AFP】とのことです。
国際人権団体は、群衆による殺害を警察が阻止できなかった原因の即時調査を求めています。

玉虫色の判断が暴力の根拠に
インドネシアの憲法は信教の自由を保障していますが、イスラム保守派の圧力を受けてインドネシア政府は2008年に「存続は認めるが、活動は禁止」という玉虫色の判断を下しています。

“(08年)6月9日に出された宗教相、検事総長、内相の合同決定書は、アフマディア教団の教義が「イスラム教を冒とくしている」と認定し、活動停止を求めた。これによると「インドネシアで信仰されている特定の宗教に解釈を施したり、解釈を行うよう呼びかけたり、教義の基本から逸脱する行為を禁じる」として、アフマディア教団を異端と位置づけた(じゃかるた新聞6月10日)。しかし同時に、信仰の自由を保障する憲法を尊重する観点から「教団の存続は認める」とした。要するに、存続は認めるが「イスラム教を冒とくする」活動はまかりならぬ、という一見矛盾した裁定であった。”【08年6月17日 JANJAN】(http://www.news.janjan.jp/world/0806/0806160746/1.php )

こうした玉虫色の判断は、多宗教・多民族からなるインドネシアの統一を維持していくうえでの知恵との考えもありますが、結果的に、多数派による少数派への暴力に法的根拠が与えられてしまった面も否めません。
インドネシアのアリ宗教相は、アフマディア派の信徒らがイスラム教を捨てれば安全になれると語っているそうです。

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