孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「中国茉莉花(ジャスミン)革命」・・・・?

2011-02-20 20:11:34 | 国際情勢

(2月20日 「中国茉莉花(ジャスミン)革命」を支援する若者たち ただし、北京でも上海でもなく、台湾・台北です。 “flickr”より By KarlMarx http://www.flickr.com/photos/karlmarx_75/5461199666/

【「自分は見るだけではなく、参加する」】
チュニジアで始まった中東の民主化を求める長期・独裁政権に対する市民の抗議行動はエジプトでムバラク政権崩壊させましたが、バーレーン・リビアでは政府側の厳しい弾圧を呼ぶ“第2幕”が進行しています。
そうした“中東民主化ドミノ”の影響が、事実上の共産党一党独裁体制である、あの中国でも“一部で”見られるようです。

****上海で大学生ら4人を当局連行 デモ呼びかけを封じ込め*****
上海市の中心部の繁華街で20日午後2時(日本時間同3時)すぎ、民主化を求めるデモの呼びかけに応じて集まっていた男子大学生ら少なくとも4人が警察に連行された。中国では、中東で政治改革を求める民衆のデモが相次いでいるのを受け、ネットなどを通じて20日午後2時から全国各地で、「中国茉莉花(ジャスミン)革命」と名付けた一斉デモが呼びかけられていた。
北京でも、デモが呼びかけられた中心部の繁華街に厳重な警備が敷かれ、少なくとも男性2人が連行された。遼寧省瀋陽や四川省成都、広東省広州などの主要都市も同様で、この5都市ではデモは発生しなかった。

上海で連行された大学生は少なくとも3人。そのうちの1人は連行前、記者に「活動に参加するために来た。このまま何もしなければ、この国は永遠に変わらない。第一歩を踏み出すために、自分はここに来た。なにか活動があれば、自分は見るだけではなく、参加する」と話していた。「両親には絶対に行くなと言われたけど、それでも行くと言った」とも語った。
その後、大学生は警戒にあたっていた警察官に「何をしている」と聞かれ、肩をつかまれた。まわりの大学生らが「やめろ」などと言って割って入り、現場は混乱に陥った。大学生ら3人は数十人の警察官たちに囲まれ、髪を捕まれたり、両脇を抱えられたりしながら、近くの警察署に連行された。その際、大学生の1人は何かを叫びながら、ピースサインをして見せた。

3人の連行後、警察署前では法治の不備などを訴える年配の男女数十人が集まり、抗議活動を始めた。男性の一人が報道陣に対し、「この国には人権も法治も自由に話す権利もない。警察は好き放題、市民を逮捕する。これが中国の実態だ」と大声で叫んだ。市民はネットの呼びかけを見て集まったという。その後、年配の男性が警察署に連行された。【2月20日 朝日】
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インターネットを通じた政治改革などを求める「中国茉莉花(ジャスミン)革命」の呼び掛けに対し、当局側は北京、上海を含む主要13都市で厳戒態勢を敷きました。
“香港メディアなどによると、中国各地で19日以降、活動家や弁護士、不満分子ら100人以上が外出しないよう当局者に要求され、中には警察に連行されたり、家宅捜索でパソコンを押収されたりした人もいたという”【2月20日 時事】

ただ、“集合時間の20日午後2時(日本時間同3時)、集合場所の一つに指定された北京の繁華街、王府井には私服を含め多くの警察官が出動。テレビカメラを持った報道陣が駆け付けたこともあって、通りには買い物客を含め、1000人を超える人だかりができた”【同上】ということで、一般市民にとっては“別世界の出来事”のようにも思われます。
なお、「ジャスミン」という単語で検索すると、検索サイト百度(バイドゥ)では、「その検索は法律と規制によって禁止されている」と表示されるそうです。【2月20日 AFPより】

中国当局は、ネットを通じた民主化運動の波及に神経をとがらせており、胡錦濤総書記が管理強化を指示しています。

【「ネット世論を指導するメカニズムを整えよ」】
****胡総書記「ネット管理強めよ」中東デモに危機感****
新華社通信によると、中国の胡錦濤・共産党総書記は19日、北京の中央党校で開かれた会議で社会の管理に関する重要演説を行い、「情報、ネットの管理を強化し、仮想社会に対する管理の水準を高め、ネット世論を指導するメカニズムを整えよ」と指示した。
胡政権は中東で拡大する反政府デモにネットが大きな役割を果たしていることに危機感を強めている。演説はネット管理をさらに強化し、一党独裁体制を揺るがす言論を徹底的に封じ込める構えを明確にした。
胡氏はこのほか、「党の指導と政府の社会管理の機能」や「流動人口の管理」なども強化するように指示した。【2月19日 読売】
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そうした一連の“管理強化”の一環か、“中国の一党独裁終結などを求める「ジャスミン革命」集会の呼び掛けを19日に詳しく報道した米国の中国反体制派系ニュースサイト・博訊新聞網がハッカー攻撃を受け、閉鎖に追い込まれた。インターネット上では「中国当局が攻撃を仕掛けた」との見方も出ている。”【2月20日 時事】といった動きもあります。

中国では楽観主義がわんわん唸っている
ただ、前述のように、「中国茉莉花(ジャスミン)革命」の動きが広く一般市民に広がっているという様子は見られません。
その背景としては、政治的自由が制限されているのは中東も中国も同じですが、生活に苦しむ中東住民に比べ、中国住民は経済的繁栄と“大国”としての自尊心を手にいれて、一定に現状に満足している・・・ということがあるのではないでしょうか。

****なぜ中国人はエジプトに感動しないのか*****
「一部の欧米評論家たちは、経済成長だけ何とかすれば、国民はほかの要求をすべて我慢するだなんていう、おめでたい説明に納得してしまっている」。中国経験の長いジャーナリスト、ハワード・フレンチは米誌『アトランティック』にこう書いている。エジプトを見れば、そんな思い込みは嘘だとよく分かると。「社会というものは底辺の労働者から恵まれた専門職階級に至るまで全体として、一定の価値を求めるものだ。経済成長、透明性、明確な責任の所在、そして誰が統治するかを決める権利などのことだ」。

エジプトが中国政府にとって都合の悪い点を浮き彫りにしているのは、否定のしようがない。だからこそ、エジプト蜂起の初期段階で、中国は検閲をフル稼働させて事実を取り繕おうとした。公式発表はもっぱら、混乱して危険なカイロから中国市民がいかに脱出しているかにばかり注目し、そもそもいったいなぜこれほどの大規模な騒ぎが起きたのかを分析しようとはしなかった。

とは言え、エジプトをきっかけに自国内でも騒ぎが起きるのを中国政府が恐れている——などと結論するのは間違いだ。ここ数日間の革命報道は、一部の欧米メディアが伝えたほどには制限されていなかった。国営英語紙「チャイナ・デイリー」は中国語メディアの論調を代弁するものとは言いきれないかもしれないが、エジプト人が「歓喜」する様子を一面で伝えていた。『Sina』など主要サイトでは、(中国でも問題となっている)食品価格の高騰が、タハリールでも天安門でも民衆蜂起の先駆けになったとたっぷり議論されていた。(中略)

エジプトとの共通点はもちろん、中国にもある。しかしそれほど明確ではない。天安門広場からタハリール広場を眺めてみて、共通点より違いの方が大きいと気づかされた。

フレンチ氏が指摘するように、一国の国民を空港や道路や2ケタ成長だけで買収することはできない。けれどもそういうものはあった方がいいのだ。ひどい不平等や連日の不公平にもかかわらず、中国では楽観主義がわんわん唸っている。中国は進歩している、生活は前より良くなっていると、ほとんどの人は言う。私が先日、貧しい河南省であった70歳の農民もそうだ。この男性は自分の農地を新しい工業団地の用地に提供したところだった。
「エジプトで起きていることを見て、私たちは『ひどい騒ぎだ』と思った」。
欧米教育を受けた上海メディアグループのテレビ司会、パン・シャオリはこう言う。中国人にとってもっぱらの関心事は、社会安定と雇用機会と生活の改善なのだと言うのだ。

同じくらい強い要素として、中国の国際的影響力が強まっていることに対する、国民の誇りもある。政権による30年間の失策続きで経済は停滞し、国全体が行き場を失っている感覚に覆われていたエジプトとは、この点が対照的だ。

今年のノーベル平和賞を獄中から受賞した劉暁波氏の友人で人権活動家の滕彪(テン・ビャオ)氏は、エジプトの教訓が検閲と恐怖によって鈍化してしまっている側面もあるが、無関心と豊かさを増す生活も影響していると話す。「普通の人たちは実のところ、ほかの国で起きていることに関心がない。洗脳されてしまって、政治の話題に関心がない人も多い」。

滕氏が言うように、中国では毎年のように8万人~9万人規模の「大規模デモ」が開かれている。つまり国民は完全に現状に満足していて従順というわけではないのだ。しかし抗議デモに参加する人たちは民主主義そのものを求めるというよりは、土地の所有権や役人の汚職、不当裁判、給料や環境と言った具体的な課題の方を重視する。そういう諸問題について抗議した方が抗議し易い(こともある)というのもあるが、それよりも、市民にとってはそういう具体的問題の方が緊急課題だからだ。(後略)【フィナンシャル・タイムズ  2月16日初出 翻訳gooニュース】
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なお、G20では、サウジアラビアや中国の反対により、民主化運動を歓迎するとの表現は共同声明に盛り込まれなかったそうです。
*****G20がエジプトなど支援表明、「民主化歓迎」に中国など反対****
パリで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は19日、エジプトとチュニジアの経済改革を支援すると表明したが、サウジアラビアや中国の反対により、民主化運動を歓迎するとの表現は共同声明に盛り込まれなかった。
共同声明は「われわれは、エジプトとチュニジアの国民の利益と経済の安定化につながるような改革に向け、両国を支援する」としている。
議長国フランスは、両国の変革を歓迎し、民主主義への秩序だった移行に向けて暫定政権を支援するためのリソースを提供するよう呼びかけたが、G20筋によると、共同声明の文言は著しく後退。「民衆蜂起」や「民主主義」という文言は削られ、支援の方針を示すにとどまった。【2月20日 ロイター】
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