会社を早期退職して、行政書士事務所を開設したという内容の葉書が友人から届きました。僕らもそういう年齢になったのだという感慨を持つと同時に、退職後に事務所を構えて仕事を始めるという心意気とバイタリティには感服しました。その友人もジャズファンで、二人で有楽町のジャズスポット「スイング」などに出かけたことが思い出されます。彼もハード・バップ・ファンなので、定盤を聴いてみます。
HANK MOBLEY (ハンク・モブレー)
HANK MOBLEY (BLUE NOTE 1957年録音)
ハンク・モブレー(ts)は、ハードバップファンに人気のあるテナー・サックス奏者の一人で、「Soul Station」や「Dippin'」が代表作に挙げられます。このアルバムは、メンバーがやや地味なためか、あまり話題にならない気がしますが、ことにLPでいうとA面に楽しみどころが多いので、手元に置き続けている一枚です。
モブレーの演奏は、ゴリゴリ一辺倒ではなく、ゆったりと音楽が味わえるところが気に入っていますが、アルバム中にスタンダード曲や自作品でも哀愁味のあるメロディの曲を収録しているのもまた嬉しいところです。ここでは、ロジャーズ=ハートの「Falling in Love With Love」(恋に恋して)をやっています。
メンバーは、モブレー(ts)、カーティス・ポーター(as, ts)、ビル・ハードマン(tp)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)。曲は、ポーター作「Mighty Moe & Joe」に「News」、スタンダードの「Falling in Love With Love」(恋に恋して)、ミルト・ジャクソン作「Bags' Groove」、そしてモブレーの「Double Exposure」の5曲。
ポーター(as、ts)は、「Mighty Moe & Joe」をはじめ、力強いプレイをしており、リーダー作を残していないのが惜しく感じられます。「Falling in Love With Love」は、ハードマン(tp)がテーマを柔かく吹き、モブレー(ts)のソロは、曲のムードをよく捉えています。モブレーの間の取り方には、レスター・ヤングの影響が感じられます。「Bags' Groove」では、ソニー・クラーク(p)が、テーマに絡む伴奏を、彼独自の重いタッチでつけていて、出だしから素晴らしい。久しぶりに聴いてみて、本盤への愛着を深めました。