安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ヘレン・メリル WITH STRINGS

2008-03-13 22:17:01 | ヴォーカル(E~K)

ようやく長野でも陽気が春めいてきました。きのうからコートはそのままながら、いままで巻いていたマフラーをとって首周りをすっきりとさせて出勤しています。しかし、2次会までお付き合いをした宴会が終わったあと自宅に向けて歩き始めましたが、途中で寒さを感じてタクシーに乗りました。春(Spring)に関連したスタンダードの中から、「Spring will be a little late this year」を聴いてみます。

HELEN MERRILL (ヘレン・メリル)
WITH STRINGS (EmArcy 1955年録音)

 With_strings

この唄は、フランク・レッサーの作詞・作曲により映画の主題歌として1944年に書かれたものです。歌詞の大意ですが、「私を置き去りにしてあなたはいってしまい、まだ冬が続いているようだ。まるで今年は春の始まりが少し遅いようだ。」と4月になっても恋人が去って行ったので春が来ないと嘆いている内容です。

恋ありきの唄なので、そんな気分にひたれる、ヘレン・メリルが歌っているアルバムを取り出しました。ピート・ルゴロの編曲により、収録曲すべてにストリングスがつき、ハンク・ジョーンズ(p)、バリー・ガルブレイス(g)、ミルト・ヒントン(b)、ソル・ガビン(ds)が伴奏メンバーに加わり、ピアノ、ギターのソロも入ります。

これは恋の歌を集めたもので、いずれも遅いテンポです。いわばバラード集ですね。ヘレンのハスキーな歌声はセンチメンタルさがよく出ていて歌詞の内容が伝わってくるようです。ハスキーと書きましたが、少しクール気味に音が伸びています。「Spring will be a little late this year」は、ヴァースから丁寧に歌い、優しい表情が出ていて、ことのほか印象に残ります。

「Lilac Wine」、「End of a Love Affair」、「The Masquerade is Over」にも聴き入りました。その他に「Anything Goes」、「Beautiful Love」、「Comes Love」、「When I Falling Love」、「Wait Till You See Him」などが収録されていて全12曲です

「ウィズ・クリフォード・ブラウン」がエマーシー・レーベルでは最も有名ですが、この作品も「ニューヨークのためいき」といわれるヘレンの魅力をたっぷりと味わえるものです。


ベント・アクセン AXEN

2008-03-10 21:56:49 | ピアノ

きのう9日の日曜日は、長野と安曇野を往復しました。車の中では、たまった未聴CDを聴いていました。そのうちよかったのが、スウェーデンのベント・アクセン(P)の作品です。ところで、スキー・モーグル競技の上村愛子選手は、ワールドカップのオーレ(スウェーデン)大会で優勝し、種目別優勝を決めました。スウェーデンは、冬季競技が盛んですが、ジャズも盛んな国だという印象があります。

BENT AXEN (ベント・アクセン)
AXEN (SteepleChase 1959~61年録音)

Axen

元々はSwedenのDebutレーベルで録音されたものの復刻です。スウェーデンのジャズの黎明期をとらえ、また、二ールス・ぺデルセン(ベース)のデビュー・セッションも含まれています。そしてなによりも意気込みが伝わってくるような若者達のプレイが耳をそばだてます。

収録されたのは3回のセッションで、ジャズ・クインテット 60による4曲(59年録音)、シクステットによる8曲(60年録音)、ピアノ・トリオによる7曲(61年録音)です。最大の聴きものはアクセン(p)、二ルス・ぺデルセン(b)、フィン・フレデリクセン(ds)のトリオによる演奏です。また、それ以外のセッションにはアラン・ボッチンスキー(tp)、べント・イェーデック(ts)が参加しています。

ジャズ・クインテット 60には「Message from Oscar」(Blues in The Closetと同曲です。)、「What's New」、シクステットには「Things Ain't What They Used to Be」、「Let's Keep The Message」、そしてトリオでやった「Green Dolphin Street」、「Heart and Soul」、「The Man I Love」などが収録されて、全19曲です。

アクセンは芸風が広くて、特に作曲ではハード・バップ仕様のものがあったり、ビル・エヴァンスに近いものがあったりします。ピアノは、バド・パウエルから多くを学んでいると思いますが、ところどころにケニー・ドリューを想起させるフレーズ、リズム、右手の指使いが見られます。

このCDは優れたハード・バップ作品で、かなりお買い得でした。ホームページに、散策「福寿草」とジャズ喫茶「BUD」を掲載しました。時間があれば覗いてみてください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう


ジョニー・グリフィン A BLOWING SESSION 

2008-03-08 19:33:59 | テナー・サックス

長野市のエムウェーブ(屋内スケート場、長野オリンピックの競技会場でした)で、スピードスケート世界距離別選手権が行われています。21カ国から160選手が参加しています。市内のホテルの付近では、選手や役員と思しき姿が目立ち、まったくわからない言葉(オランダ語?)が飛び交っていました。日本勢では男子500メートルで加藤選手が銅メダルを獲得しました。スケートは二人で滑走してタイムを競います。バトルですね、今夜のジャズもバトルらしいものを聴いてみます。

JOHNNY GRIFFIN (ジョニー・グリフィン)
A BLOWING SESSION (BLUE NOTE 1957年録音)

 A_blowing_session

グリフィン、ハンク・モブレイ、ジョン・コルトレーンの3人のテナー・サックス奏者の演奏を楽しめるアルバムです。ブルー・ノート・レーベルには珍しくバトルもので、テーマをグリフィン単独か、ホーン全員で吹いて、そのあとソロの受け渡しになります。興奮しっぱなしは体によくないとわかっていながら、このアルバムを聴き始めるとどうにもなりません

3人のテナー奏者の他に、リー・モーガン(tp)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・ブレイキー(ds)というもので、豪華な顔ぶれです。リー・モーガンに加えて、リズムまでそろっています。ブレイキーもソロの交換など結構派手にやっています。

「The Way You Look Tonight」では、グリフィンがものすごくエキサイティングですから、他のメンバーもそれにつられて派手で熱い演奏をしています。「All the Things You Are」を聴くと1957年の時点ですが、コルトレーンのややメタリックな音、そして細分化されたフレーズは新しさが感じられます。モブレイは、グリフィンと対照的にスピードはあるものの、落ち着いたプレイで、これはこれでいいものです。

他の2曲は、グリフィンのオリジナル「Ball Bearing」と「Smoke Stack」です。グリフィンの迫力があるプレイを久しぶりに堪能しました。


アニタ・オデイ at MISTER KELLY'S

2008-03-05 21:56:17 | ヴォーカル(A~D)

村尾陸男著「ティー・フォー・トゥー物語」(中央アート出版刊)を読みました。永らく積読状態にあったのですが、読み始めると面白くて最後まで読みとおしました。「Tea for Two」という唄の成り立ち、演奏の変遷、そして作者のヴィンセント・ユーマンスやアメリカ・ポピュラーの歴史にも触れています。その中で挙げらていたアニタ・オデイの「Tea for Two」を聴いてみます。

ANITA O'DAY (アニタ・オデイ)
at MITER KELLY'S (Verve 1958年録音)

 At_mister_kellys

アニタ・オデイは、ヴォーカルといってもジャズをその前につけて、ジャズ・ヴォーカルという言葉がふさわしい歌手です。歌全体の構成やアドリブに創意工夫がみられるからです。そのことは、「ティー・フォー・トゥー物語」でも出てきます。もっとも、そのようなことを離れて、このアルバムはライブ・ハウスでお客さんを前にして楽しさと親密さが感じられるものです。

録音は、シカゴのライブハウス「Mister. Kelly's」におけるものです。サラ・ヴォーンやオードリー・モリスがここでライブ盤を作っている当時の有名クラブです。メンバーは、オデイ(vo)のほか、ジョー・マスターズ(p)、ラリー・ウッズ(b)、ジョン・プール(ds)です。プールのドラムスの小技が冴えています。

「Tea for Two」(二人でお茶を)は、もとは「ノー・ノー・ナネット」というミュージカル中の曲です。アニタは急速調であっというまに歌い終わります。スキャットを交えたたいへんスリリングなものです。その他にこのアルバムに収録されている曲は、「But Not for Me」、「Have You Met Miss Jones?」、「Star Eyes」、「The Song is You」などで、全12曲です。

スイングしながら奔放に歌いまくりますが、バラードでは歌詞をより大事にしてじっくりと歌います。「It Never Entered My Mind」と「Loneliness is a Well」がバラードの代表です。「The Song is Ended」は、はじめスローででて、アップテンポ、ミディアムとテンポを変化させています。アニタ・オデイならではです。

ホームページに「ティー・フォー・トゥー物語」の紹介と読後感を記しました。時間があればご覧くださいモダンジャズやヴォーカルを聴こう


デューク・ジョーダン FLIGHT TO JORDAN

2008-03-02 14:22:01 | ピアノ

スキー・ゲレンデを借りて行った仕事も終わったので、スキー板を物置に片付けました。スキーのアルペン選手だった友人は、スキーが上手になる秘訣は、体重移動したらスキーが自然と方向を変えてくれるのを「我慢」して待つことだと強調していました。これが難しいのです。彼もジャズが好きで、二人して松本市内にあったジャズ喫茶「Duke」へ出かけたことがあります。その時の一枚です。

DUKE JORDAN (デューク・ジョーダン)
FLIGHT TO JORDAN (BLUE NOTE  1960年録音)

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「コンポーザー・ピアニスト」のデューク・ジョーダンの代表作の一つです。演奏されているのは、すべてジョーダン作になる曲で、6曲とも印象に残るものです。最も有名なのは、「Si-Joya」(No Problem)ですが、「Flight to Jordan」、「Starbright」もよく知られています。

上記3曲の他に、「Squawkin'」、「Deacon Joe」、「Split Quick」が収録されています。メンバーは、ディジー・リース(tp)、スタンリー・タレンタイン(ts)、ジョーダン(p)、レジー・ワークマン(b)、アート・テイラー(ds)といういくらか渋めなメンバーです。今からみると、この顔ぶれはハード・バップを演奏するのに最適ですね。

全体を通して、ジョーダンのプレイにメリハリがありスイング感に富んでいることが特筆されます。それに加えて、D・リースとS・タレンタインがややかすれ気味の音をさせながら吹いており、ジョーダンが書いたメロディにふさわしいムードを設定しながらアドリブをとっています。

これはジャズ喫茶名盤の一つでもあり、あこがれました。ようやく国内盤LPが入手できた時には内容に対する満足感も手伝い何回も聴きました。「Si-Joya」(No Problem)は、アート・ブレイキーの演奏したサウンド・トラック(危険な関係のブルース)盤と比べると地味ですが、そこがまた却ってジョーダンらしいです。