第 4979回の「太陽の光と熱利用」で取り上げた太陽光と熱を利用するIBMのシステムが2017年に発 売される見通しだそうです。
いよいよ実用化に目途がついたと言うことでしょうか。この光と熱の両方を利用する方法は効率も素晴らしいような ので、世界のエネルギーの勢力図が変わるのじゃないかと期待しています。
スマート ジャパンより 2014年09月29日
太陽光を2000倍に集光して電力と熱の両方を供給できるシステムが2017年に全世界で発売される見通しだ。IBMの研究部門とスイスの太陽光発電システム会社が共同で開発 した高集光型の太陽光発電・熱システムである。晴天の日には12kWhの 電力と20kWh相当の熱を供給することができる。 [石田雅也,スマートジャパン]
スイスに本社を置くAirlight EnergyがIBM Researchと共同で、高集光型の太陽 光発電・熱システム(HCPVT:http://www.research.ibm.com/)の 製品化を進めている。HCPVTは高さが10メートルのヒマワリに似た形状で、40平方メートルの面積があるパラボラ型の集光面で構成する(図1)。集光面は太陽光に合わせて最適な角度に動くトラッキング機 能を備えている。
集光面には楕円曲面状のミラーが36枚並び、それぞれのミラーが太陽光を集めて受光器に反射させ る役割を果たす。受光器の中に太陽電池チップが集積していて、1セ ンチメートルあたり最大57Wの発電能力がある。さらに 太陽電池チップは薄い層の上に実装してあり、層の内部を水が循環して太陽熱を冷却する仕組みだ。冷却後の温水は85~90度 になる。
この一連の流れで太陽光エネルギー を2000倍に集約して、1日あたり最大で12kWhの 電力と20kWh相当の熱を作り出すことができる。日本 の一般的な家庭が1日に使う電力量は10kWh程度であることから、それに十分な発電能力がある。
Airlight EnergyはHCPVTを販売するための専門会社「Dsolar」を設立済みで、2017年までに日本を含む世界各国で発売する計画だ。現在市場 に出回っている同等のシステムと比べて2分の1から3分 の1の価格に抑えることを目指す。導入する場所は家庭の ほかに、病院やホテル、ショッピングセンターなどを想定している。
第 4979回の記事と余り内容が変わらないようなので、本当に開発が進んでいるのかと思い、サーチし てみました。IBMのニュースリリースがありました。発表日が先月の25日になってますから、前回の発表からは 1年以上経っているのでやはり進展があったということでしょう。
kAirlight EnergyとIBM、ソーラー電気とソーラー熱を遠隔地に
2014年9月25日
Airlight EnergyとIBM、ソーラー電気とソーラー熱を遠隔地に水冷式太陽電池チップを使用して太陽光を2,000倍集光するシステム [スイス・ビアスカ 2014年9月24日(現地時間)発]
スイスに本拠を置くソーラーパワー・テクノロジーのサプライヤーであるAirlight Energyは、IBM Researchと協力して、経済的なソーラー・テクノロジーを2017年までに市場にもたらします。このシステムは、太陽放射を2,000倍集光し、そ の80パーセントを有用なエネルギーに変換し、晴天であれば12キロワットの電力と20キロワットの熱を生み出すこ とができます。これは複数の平均的な家 庭*が必要とする電力に相当します。
現在、開発に携わる科学者は適切な保守を行うことでHCPVT構造の動作寿命は最長60年と見積もります。保護 フォイルとプラスチック製の楕円鏡は、 環境に合わせ10~15年で交換する必要があります。また、太陽電池セルは25年ごとの交換が必要となります。この システムには、その寿命に亘って設計上 と製造上の進歩を組み込むことができるため、システムの効率をさらに向上させることが可能となります。…中略
HCPVTシステムは種々の設備を追加することにより排出される温水から飲料水を造ったり空調行ったりすること ができます。たとえば、海水を 多孔性の膜蒸留システムに導き入れて、そこで蒸留および淡水化できます。このシステムにより、受光面積1平方メート ルあたり一日30~40リットルの飲料 水を生み出すことができます。同時に、1日に25パーセントを超える発電量、つまり2キロワットアワーの発電も可能 です。生み出される飲料水量は、人が平 均的に1日に必要とする水の量**の半分を若干下回る量ですが、複数設置することにより、1つの町に十分な量の水を 供給できます。…以下略
何と、飲料水まで出来るとなると日本の得意分野の海水淡水化装置の強敵になるかもしれません。いずれにしても、 これが本物で、コストの問題も克服しているとなるとエネルギー革命と言っても良いのじゃないでしょうか。
現物が出てきてどんな結果が出るか、これは見ものです。