秋に某文学館が作家の展覧会をひらくにあたり、作家像を作ることになった。完成後は収蔵される予定である。明治生まれの人物だが、生家の住所から調べると、我が家から目と鼻の先。区画整理のため、多少のずれがあるかもしれないが、産科クリニックのあたりのようである。先日その話をK本ですると、横にそこで出産した人がいた。 作家の画像データを送ってもらったが、作るのは晩年でなく、苦みばしった中年期に決めた。晩年にかけていた眼鏡が面倒臭いから、というわけではないが。いやなくはない。 眼鏡の度が強く、実際より目が拡大されている。それを正確に描こうとすれば、レンズに工夫するしかない。しかし私は良くここまで作った。なんて感心されるのはまっぴらである。“素顔”でいきたい。 昔、大阪に活き人形展を観にいったことがある。かつての職人の超絶な技巧に感動したが、中には“木を見て森を見ず”的な職人もいて、リアルな死体になっていた。こういうのが一番避けたいところである。肝心なところさえクリアしていれば、それ以上の技術は邪魔だと考えている。 煮込みのK本に入店する時、なんとなくのニュアンスだが、登場しました。という感じに入ってくる常連がいる。そして常連席を見ているようでピントをはずしている。私などはそっと入って常連の顔しか見ない。あれはなんだろう、と以前から思っていたが、登場したのを皆に一挙に知らしめたほうが、照れもあって後が楽だ、ということなのかもしれない。などと、酒場で感じたこんな爪の先のことを、私は後々必ず制作に利用することであろう。
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