人間は頭に浮かんだ物を作るように出来ている。とたしか養老孟司氏が言っていたと思うが、頭に浮かんだ物はしょうがない、私は何も悪くない、と何度も引用するうち、ほんとにそう言っていたか曖昧である。 昨日触れたある禅師のエピソードは、中国より招かれ帰化した禅師で、そのエピソードは図象化されていないと思われる。来日年からすると、元寇襲来以前の話である。例によって、今地球上で、こんな絵を頭に描いている人間は私一人だろう、と思う時、一般人が家族に囲まれ暖かい心持ちに浸っている。おそらく同等の幸福感に包まれる。逆に私が〝私由来”の家族に囲まれたなら、一般人が地球上に一人ぼっちのような孤独感に苛まれ苦しむことだろう。だがしかし、家族上の幸福を維持する大変さを思うと、傍に粘土とカメラを用意し、一人妄想していれば良いのだから実に安上がりな幸せである。 坂崎重盛さんより新刊『荷風の庭 庭の荷風』(芸術新聞社)を御恵投いただく。最近、制作のためとはいえ、読書傾向が極端に偏っているので有難い。