台所にいると、papasanが盛んに私を呼ぶ。ネコがトカゲを捕ってきたのかな、それとも蛇かな。「どうしたの?」と叫ぶと、「とにかく、ちょっと来て」という。玄関に行くと、ドアの向こうにシンコがいる。「シンコ、生きていたんだ」と言いながら、シンコのそばを見ると、なんと4羽のヒヨコがシンコに教えられて、餌箱から餌をついばんでいる。わ~、これは驚き!!
ネコがいないうちに、とかごを持ってきてヒヨコだけを入れた。母ちゃんから離されたヒヨコはひときわ大きな声でなく。待ってなさいよ、すぐ母ちゃんを入れてあげるから。小型のケージを持ってきて、洗って、水を拭いて新聞紙を敷いた。まず、シンコを入れ、かごからヒヨコを取り出して入れて、餌と水をやった。ヒヨコたちは不安だったらしく、母ちゃんのお腹にもぐっている。
二回目の洗濯が終わったので、出しに行くと、どこからかヒヨコの鳴き声が聞こえる。どこだろう、声を頼りに探すと洗濯機の横のすだれが立てかけてある奥に、卵がたくさんあり、ヒヨコが一羽、ないているのを見つけた。ヒヨコをつかみ母ちゃんの中に入れた。今度は私が「papasan、papasan、ちょっと来てよ」と叫んだ。papasanが拾い集めると卵は12個あった。それ以外に、孵りそこなったのか、殻が割れた卵も一つあった。温かいからと母ちゃんに抱かせたが、母ちゃんは踏ん切りをつけて立ったらしく、もう温めようとはしなかった。おいてきぼりをくったヒヨコは足が曲がらず、立てないでいる。餌のそばに置いてやっても餌を食べようともしない。いずれ死ぬ運命だ。
全部あわせると18個の卵を温めていたのだろう、孵化率は悪いが、それにしても下がコンクリートなのに、よくぞ孵ったものだ。孵りそこないの卵は全部カラスにやってしまった。カラスは器用にくわえて持って行った。
そもそも掃除を始めたきっかけはこのシンコだった。鶏の姿が見えなくなったときは普通、二つの理由が考えられる。一つは外敵にやられたか、病気か、事故か、いずれにしても死んでしまったとき、もうひとつは抱卵。まず抱卵を疑った。そこで家中探して、片付けを始めたのだった。抱卵始めたら、取り上げるつもりだった。もう鶏は増やしたくない。家の中にはいなかった。シンコは鶏の中では一番若い。鶏系である。どちらかと言うと、我が家の鶏は抱卵したことがない。いや、抱卵しかけても、孵したことはない。だからシンコが抱卵しているとは考えにくかったのである。抱卵しているとしても、餌を食べには出てくるはずである。それなのに全然姿を見ない。となると不慮の死、夏草の下で遺体になっているのだろう、と思っていた。
ヒヨコの面倒を見ているシンコ、もう増やしたくはなかったが、孵った以上、捨てるわけにはいかない。しかたがない、飼ってやろう。ゴータマの代わりが、なんとこんなに多くなってしまったとは。
カラスの様子を見ていたら竹やぶにいるリスを見つけた。タイワンリスのようだ。伊豆半島にはたくさんいる。ここらへんにもやってきたのだろうか。