「かぽ」とはハシブトガラスにつけた愛称である。
今年のはじめ頃、ハシブトガラスが椎の木の天辺近くに巣を作り始めた。椎の木は15m以上はある。おわん型の巣が見える。カラスが住みつくのはいやではないが、子育ての時は神経質になって、攻撃すると聞いている。だれかよその子でも襲われたら困る、どうしよう。そこで野鳥の会の人に相談した。カラスは頭がいいから、カラスに対して好意的であるかないか判断できる。だからそのまま巣作りさせたらどうか、という返事がきた。そこで巣作りは、放っておいた。
![kapo kapo](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/4e/a8/b74ab7a94a625849462acd2b5b9d20fa_s.jpg)
白蓮の枝に止まるかぽかぽ。
どっちがオス?メス?
ある日、洗濯をしていると、「かぽかぽ」という聞き慣れない声を聞いた。振り返るとカラスが柿の木に止まって、私に向かってなにか言っている。どうも野鳥の餌台においてある細かく切ったシフォンケーキがほしいらしいが、私がいるので取りに来れないようだ。そこでカラスの頭のいいことを利用して、先手を打って、懐柔作戦にでることにした。なんのことはない、カラスに餌をやって手なずけようというのである。巣のある木のそばに陶芸の窯がある。そこの屋根に「かぽ、かぽ」と声を出しながら、カラスが見ている前で、パンやケーキをのせてやった。カラスは私のすることをじっと見ている。かぽは2羽いるのだが、見分けがつかない。たぶん雄雌の番なのだろう。たいてい一羽ずつやってくる。だからどちらも「かぽ」ですませてしまう。パンやケーキをのせて、私が玄関先まで引き上げると、枝を移り、屋根の近くの木に止まる。辺りをうかがって、屋根の上にとまり、やっとケーキを持ち出した。カラスが用心深いのは知っている。はじめはケーキを大きく数個にちぎって、持っていけるようにした。ところがカラスはもてるだけ、重ねて持っていく。ほんとに頭がいい。細かく切っても、集められるだけ集めて持っていく。持って行き先を見ていると、どうやら椎の木の巣を使うのはあきらめたらしい。ねぐらは他にあるようだ。やれやれ、ほっと。
こんな風にして、毎日が過ぎた。ウサギのピーターとフロプシーもシフォンケーキが好きである。アヒルのがあちゃんも好きである。だから毎日のようにシフォンを焼く。それにカラスが加わった。消費量が俄然多くなった。おかげで焼く回数も多くなった。
朝、ケーキを持って「ピーター」と呼ぶと、その声を聞きつけてかぽはやってくる。ウサギの後は「かぽ、かぽ」と呼びながらかぽにケーキをやる。はじめは用心深かったのが、いまでは投げるそばから屋根に来て、食べている。
最近では毎朝、窓ちかくでかぁかぁ鳴いて私を起こす。そういえばずっと前、中西悟堂さんがカラスを飼っていて、毎朝起しに来た話を読んだことがあった。寝巻きのまま、「かぽかぽ」といいながら、ケーキやパンをなげてやる。パンも大きなままやると、枝に持っていって足でおさえ、ちぎって食べている。おもしろいので、クリームチーズを大きなかたまりのままやってみた。持っていけないので、嘴でつついて持っていく。でもすぐなくなってしまった。油揚も3つに切ってのせたが、全部かさねて持っていった。アジをおろしたアラものせてみた。大丈夫、持っていった。肉もご飯もたべる。なるほどカラスは雑食だ。それなのに、サクランボが熟してもとって食べない。熟れて下に落ちても拾わない。ミカンを持っていくのを以前見たことはあるのだが、果実は好きではないのかな。スズメのために屋根に米をまいてやったら、あのふとい嘴でカラスが米を一粒ずつ拾っている。なんとまぁ。
鳥の目が良いことは知っているが、カラスも実に目がいい。地面の上にあるアジの頭も見つける。小さいし、土と同化しているにもかかわらずだ。ごくごく小さなケーキのくずも見逃さない。それも木の上からである。
今は木々の緑が優しく美しい。カラスはたいてい白もくれんの枝に止まっている。黒は緑とはよく似合う。むしろ保護色ではないかと思うくらい、よく溶け込んでいる。大きな真ん丸い目、大きな嘴、細い足。「かぽ、おいで」というと、ついてくる。「かぽ」は自分のことであり、「おいで」は呼んでいることだと理解しているようである。屋根にモノを投げると、トタン屋根だから、音がする。その音も合図になっているようだ。ばたんと音立てて屋根に飛び降りる。
人間にはかわいいそぶりを見せているが、猫には違う一面を見せる。我が家には3匹の仔猫とかあちゃんがいる。かあちゃんのプラコッテはネコ物語②にあるように、拾われ猫である。だから物怖じしないのか、それとも仔猫がいるからか、また単にあそびたいだけなのか、そこらへんはネコに聞いて見なければわからないが、ともかく屋根の上で餌を集めているカラスが気になって仕方がない。カラスが地面に下りたり、アヒルのがあちゃんの水浴び場に水を飲みに来たときなど、ちょっかいをだす。カラスはネコに向かって「かあ、かあ」と威嚇するように声を出している。そのうち、カラスにやられるぞ、と思いながら見ている。
あるとき、プラコッテが木登りをしていた。このネコは木登りはくだりが弱い。しかし仔猫が登ってしまったので、やむなくついていって下りようとしたときだ。カラスが飛んできて、プラコッテの近くの枝に止まった。プラコッテはそのカラスに果敢にも飛び掛っていったのである。カラスはひょいとかわして他の枝に飛び移った。すると、もう一羽のカラスが反対側にやってきて止まった。猫をはさんで左右に陣取った。そしてネコの背後から、さも脅かすように背中すれすれに飛んで、私にはけ飛ばしたように見えた。あっ、やられたと瞬間思った。私が飛び出したので、カラスは飛んで行ってしまった。
それからである。赤トラネコの大きなバーリがのしのしと歩いて、餌の屋根の下を通り過ぎようとしたとき、背後からすれすれに黒い影が飛んだ。すばやく防御の体制をとるバーリ。しかしそれ以上は何事もなく、バーリはまた平然と歩いていった。同様、大ネコの黒白のジョイスも通り過ぎようとしたとき、背後からすれすれに飛ばれた。さすが大ネコたちは体制をつくるのはす早い。いまのところは、これ以外には何事もないが。他のネコも犬もカラスに関心は示さないが、性懲りもなく、プラコッテはカラスにちょっかいを出している。カラスは色も大きさも違っても、ネコはプラコッテの仲間だと認識しているようだ。大ネコには迷惑な話である。大猫たちが食べ残したアジをカラスは貰っていることを知らない。知っていたら、一飯の飯の恩義を感じなければならないのだが。
今年のはじめ頃、ハシブトガラスが椎の木の天辺近くに巣を作り始めた。椎の木は15m以上はある。おわん型の巣が見える。カラスが住みつくのはいやではないが、子育ての時は神経質になって、攻撃すると聞いている。だれかよその子でも襲われたら困る、どうしよう。そこで野鳥の会の人に相談した。カラスは頭がいいから、カラスに対して好意的であるかないか判断できる。だからそのまま巣作りさせたらどうか、という返事がきた。そこで巣作りは、放っておいた。
![kapo kapo](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/4e/a8/b74ab7a94a625849462acd2b5b9d20fa_s.jpg)
白蓮の枝に止まるかぽかぽ。
どっちがオス?メス?
ある日、洗濯をしていると、「かぽかぽ」という聞き慣れない声を聞いた。振り返るとカラスが柿の木に止まって、私に向かってなにか言っている。どうも野鳥の餌台においてある細かく切ったシフォンケーキがほしいらしいが、私がいるので取りに来れないようだ。そこでカラスの頭のいいことを利用して、先手を打って、懐柔作戦にでることにした。なんのことはない、カラスに餌をやって手なずけようというのである。巣のある木のそばに陶芸の窯がある。そこの屋根に「かぽ、かぽ」と声を出しながら、カラスが見ている前で、パンやケーキをのせてやった。カラスは私のすることをじっと見ている。かぽは2羽いるのだが、見分けがつかない。たぶん雄雌の番なのだろう。たいてい一羽ずつやってくる。だからどちらも「かぽ」ですませてしまう。パンやケーキをのせて、私が玄関先まで引き上げると、枝を移り、屋根の近くの木に止まる。辺りをうかがって、屋根の上にとまり、やっとケーキを持ち出した。カラスが用心深いのは知っている。はじめはケーキを大きく数個にちぎって、持っていけるようにした。ところがカラスはもてるだけ、重ねて持っていく。ほんとに頭がいい。細かく切っても、集められるだけ集めて持っていく。持って行き先を見ていると、どうやら椎の木の巣を使うのはあきらめたらしい。ねぐらは他にあるようだ。やれやれ、ほっと。
こんな風にして、毎日が過ぎた。ウサギのピーターとフロプシーもシフォンケーキが好きである。アヒルのがあちゃんも好きである。だから毎日のようにシフォンを焼く。それにカラスが加わった。消費量が俄然多くなった。おかげで焼く回数も多くなった。
朝、ケーキを持って「ピーター」と呼ぶと、その声を聞きつけてかぽはやってくる。ウサギの後は「かぽ、かぽ」と呼びながらかぽにケーキをやる。はじめは用心深かったのが、いまでは投げるそばから屋根に来て、食べている。
最近では毎朝、窓ちかくでかぁかぁ鳴いて私を起こす。そういえばずっと前、中西悟堂さんがカラスを飼っていて、毎朝起しに来た話を読んだことがあった。寝巻きのまま、「かぽかぽ」といいながら、ケーキやパンをなげてやる。パンも大きなままやると、枝に持っていって足でおさえ、ちぎって食べている。おもしろいので、クリームチーズを大きなかたまりのままやってみた。持っていけないので、嘴でつついて持っていく。でもすぐなくなってしまった。油揚も3つに切ってのせたが、全部かさねて持っていった。アジをおろしたアラものせてみた。大丈夫、持っていった。肉もご飯もたべる。なるほどカラスは雑食だ。それなのに、サクランボが熟してもとって食べない。熟れて下に落ちても拾わない。ミカンを持っていくのを以前見たことはあるのだが、果実は好きではないのかな。スズメのために屋根に米をまいてやったら、あのふとい嘴でカラスが米を一粒ずつ拾っている。なんとまぁ。
鳥の目が良いことは知っているが、カラスも実に目がいい。地面の上にあるアジの頭も見つける。小さいし、土と同化しているにもかかわらずだ。ごくごく小さなケーキのくずも見逃さない。それも木の上からである。
今は木々の緑が優しく美しい。カラスはたいてい白もくれんの枝に止まっている。黒は緑とはよく似合う。むしろ保護色ではないかと思うくらい、よく溶け込んでいる。大きな真ん丸い目、大きな嘴、細い足。「かぽ、おいで」というと、ついてくる。「かぽ」は自分のことであり、「おいで」は呼んでいることだと理解しているようである。屋根にモノを投げると、トタン屋根だから、音がする。その音も合図になっているようだ。ばたんと音立てて屋根に飛び降りる。
人間にはかわいいそぶりを見せているが、猫には違う一面を見せる。我が家には3匹の仔猫とかあちゃんがいる。かあちゃんのプラコッテはネコ物語②にあるように、拾われ猫である。だから物怖じしないのか、それとも仔猫がいるからか、また単にあそびたいだけなのか、そこらへんはネコに聞いて見なければわからないが、ともかく屋根の上で餌を集めているカラスが気になって仕方がない。カラスが地面に下りたり、アヒルのがあちゃんの水浴び場に水を飲みに来たときなど、ちょっかいをだす。カラスはネコに向かって「かあ、かあ」と威嚇するように声を出している。そのうち、カラスにやられるぞ、と思いながら見ている。
あるとき、プラコッテが木登りをしていた。このネコは木登りはくだりが弱い。しかし仔猫が登ってしまったので、やむなくついていって下りようとしたときだ。カラスが飛んできて、プラコッテの近くの枝に止まった。プラコッテはそのカラスに果敢にも飛び掛っていったのである。カラスはひょいとかわして他の枝に飛び移った。すると、もう一羽のカラスが反対側にやってきて止まった。猫をはさんで左右に陣取った。そしてネコの背後から、さも脅かすように背中すれすれに飛んで、私にはけ飛ばしたように見えた。あっ、やられたと瞬間思った。私が飛び出したので、カラスは飛んで行ってしまった。
それからである。赤トラネコの大きなバーリがのしのしと歩いて、餌の屋根の下を通り過ぎようとしたとき、背後からすれすれに黒い影が飛んだ。すばやく防御の体制をとるバーリ。しかしそれ以上は何事もなく、バーリはまた平然と歩いていった。同様、大ネコの黒白のジョイスも通り過ぎようとしたとき、背後からすれすれに飛ばれた。さすが大ネコたちは体制をつくるのはす早い。いまのところは、これ以外には何事もないが。他のネコも犬もカラスに関心は示さないが、性懲りもなく、プラコッテはカラスにちょっかいを出している。カラスは色も大きさも違っても、ネコはプラコッテの仲間だと認識しているようだ。大ネコには迷惑な話である。大猫たちが食べ残したアジをカラスは貰っていることを知らない。知っていたら、一飯の飯の恩義を感じなければならないのだが。