安倍晋三の対韓国輸出管理強化と北朝鮮ミサイル発射に関わる韓国発信の日本の情報把握との間に見る信義上の矛盾

2019-07-29 11:12:39 | 政治
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 日本の首相安倍晋三センセイが加計学園獣医学部認可に首相としての権限を私的に行使し、私的に行政上の便宜を図る形で政治的に関与し、私的便宜を与えたとされている疑惑を国会答弁や記者会見から政治関与クロと見る理由を挙げていく。自信を持って一読をお勧め致します。読めば直ちに政治関与クロだなと納得できます。よろしくお願いします。

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 北朝鮮が2019年7月25日、午前6時少し前に20分程時間をずらして2発の飛翔体を発射したと、2019年7月25日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。記事は韓国軍合同参謀本部発表の情報を元にしている。飛行距離は約430キロ。

 〈発射された飛しょう体がミサイルかどうかは今のところ明らかになっていませんが、米韓両軍は飛しょう体の種類や発射の目的について詳しい分析を急ぐとともに、追加の発射に備えて警戒監視を続けています。〉と伝えている。要するに発射飛翔体に関わるデーター分析と可能性としてある次の発射に備えて警戒態勢を米韓両軍で行っているということであろう。ここに自衛隊の存在は記されていない。

 だが、少なくともアメリカ政府からは連絡が入っていた。なぜなら、日本側は北朝鮮がミサイルを発射した際、その熱源を捉えて発射や方向、速度等を捕捉する米軍の早期警戒衛星情報(SEW)と共に米イージス艦が探知する航跡情報に依存していることは周知の事実となっているからだ。

 依存していることは防衛相岩屋毅の午前8時半頃対記者団発言からも窺うことができる。

 岩屋毅「北朝鮮が、何らかの飛しょう体を発射したと承知している。防衛省の関係幹部会議で情報を集約し、分析中だが、この段階で、わが国の領域や排他的経済水域への飛来はないと確認している。北朝鮮の軍事動向について、引き続き、アメリカや韓国などと緊密に連携しながら、情報の収集や分析に努め、警戒監視に万全を期していく。

 数や種類、距離は分析中で、この段階で、確たることは申し上げられない。どういう形の発射であっても、もし、弾道ミサイルであれば、国連決議に違反しているわけで先般からの、飛しょう体の発射事案は、非常に遺憾だ」

 もし自衛隊が韓国軍、あるいは米軍のいずれか一方と、あるいは双方とそれぞれに連携した飛翔体発射の情報把握であるなら、「北朝鮮が、何らかの飛しょう体を発射したと承知している」との言葉遣いは不可能となる。この「承知している」には間接的な伝聞の意味が込められている。自衛隊単独の、あるいは自衛隊が他国軍と共に参加した情報把握の場合は、国の安全保障に関わる国民の安心を得るためにその情報把握を前面に出すことになって、国民は防衛省発表という形で北朝鮮の飛翔体発射を知ることになるはずである。あるいは国民の安心を得る試金石となるゆえにそのような情報把握であることを否応もなしに前面に出すことになる。

 2017年1月26日の衆院予算委員会で防衛相を務めたあとの小野寺五典が敵基地攻撃能力の必要性を訴える中で北朝鮮ミサイル発射の情報を米軍に頼っている発言を行っている。

 小野寺五典委員北朝鮮がもし弾道ミサイルを発射した場合、当然、発射する場所というのは、北朝鮮の領土内にあるミサイル基地とか、あるいはミサイルの発射装置から発射されます。発射された後、当然、日本に飛んでくることをアメリカの早期警戒衛星で察知した場合、日本に通報があります。そして、それに対して、例えば日本のレーダーでこれを捕捉して、そして速やかに日本海にある日本のイージス艦からミサイルを発射して、弾道ミサイルでまず一義的に迎撃をする。万が一これが防げなかったら、今度は日本の国内にあります航空自衛隊が運用しますペトリオット部隊でもう一度迎撃をする。こういう二段構えで私どもは防いでおります」

 日本に飛来するしないに関わらず、アメリカの早期警戒衛星はコース、その他を察知して、日本に通報することになるはずだ。いずれにしても、アメリカの早期警戒衛星やその他からの情報を間に置いた日本側の情報把握という形式を背景にして北朝鮮飛翔体発射に関わる日本側の発言や発表であることを読み取らなければならない。上記記事は政府と安倍晋三の対応を伝えている。

 政府「わが国の領域や排他的経済水域への弾道ミサイルの飛来は確認されておらず、現時点で、わが国の安全保障に直ちに影響を与えるような事態は確認されていない」

 安倍晋三(静養先の山梨県で午前10時過ぎに)「わが国の安全保障に影響を与える事態でないことは確認している。いずれにしろ、アメリカと緊密に連携していく」

 日本独自の情報に基づいているのではなく、誰かからの間接情報を背景として自らの発言を成り立たせていると見なければならない。

 早期警戒衛星は現在、米国とロシアとフランスが運用しているとネット上で紹介されている。韓国軍合同参謀本部は地の利を利用して、高性能のレーダーのみで北朝鮮のミサイル発射、発射方角、発射角度、到達高度、到達距離等々の情報を得ているのだろう。だが、このようなレーダーを以ってしても、初期段階で全てを把握はできていない。韓国側は当初は2発共に飛行距離は約430キロと発表していたが、2発目は約690キロ到達と訂正している。

 「NHK NEWS WEB」記事の場合は「1発目がおよそ430キロ、2発目が690キロ余り」を韓国軍が「アメリカ軍と共同で分析した結果として、飛行距離は2発ともおよそ600キロだったと修正した」としている。

 約690キロは日本に届く飛行距離だそうだから、「排他的経済水域への弾道ミサイルの飛来は確認されていない」とか、「わが国の安全保障に影響を与える事態でないことは確認している」と事実の表面のみを受け止めてばかりはいられない。韓国政府は新型の短距離弾道ミサイルだと分析しているというから、ミサイルの潜在的性能の脅威は増していることになる。

 2発目の到達距離訂正について防衛相の岩屋毅の反応。「産経ニュース」(2019.7.26 11:09)

 岩屋毅(2発目の飛翔体の飛距離が日本にも届く約690キロだったとの韓国側の見方について)「そもそも北朝鮮は日本全体を射程に含むミサイルを実戦配備してきた。現在もその状況は変わっていない。ミサイル防衛態勢を整え、抑止を効かせることが大事だ」

 自衛隊側が直接的に把握した発射のデータを分析して、訂正した距離ではないから、分析と訂正について直接的には答えることができない。そこで一般的状況を説明することに代えた。このことはそのまま情報の他者依存の状況を示すことになる。

 実際の発射に即して得たデータの分析が韓国軍と米軍によって行われて、そこに自衛隊が首を突っ込むことができなくて、情報だけを受け取る。アメリカ側と緊密な関係を維持しさえすれば、分析した情報は的確に受け取ることができるが、その分析には実際は韓国側も関わっている以上、韓国側の分析の恩恵を受けていることにもなる。そしてその恩恵が日本の安全保障に全然役に立っていないとすることも、今後の安全保障の役には立たないとすることもできないし、今後とも役立つ情報となり得る可能性は否定できない。

 つまり日本の安全保障維持の必要不可欠な一事項となっているにも関わらず、安全保障に関わるそのような日韓関係を他処に日本の韓国に対する輸出規制は国際的に認められている安全保障上の必要な見直しだと、別の理由による安全保障維持の措置に出た。

 このことが北朝鮮ミサイル発射の際の韓国側の日本向けの情報発信に悪影響が出ないとしても、日本側の韓国側に対する態度としては信義上の矛盾が生じることになる。矛盾を生じさせないためには話し合って、改めて貰うところは改めて貰うという態度に出るべきところをいきなり輸出管理の厳格化に出た。さらに日本の安全保障を理由に韓国向け輸出規制の強化を巡って輸出貿易管理上の優遇措置が適用される「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を8月2日に閣議決定する方針だと言うから、もしこの方針が決定されたなら、安倍晋三は韓国に対する信義上の矛盾を更に大きくするだけではなく、北朝鮮のミサイル発射に関わる韓国側情報の日本向けの発信に不確実性をもたらさない保証はない。

 勿論、日本は北朝鮮のミサイル発射に関しての情報獲得は米軍単独依存でもやっていける。だが、その情報の把握と分析に韓国も関わっている以上、信義上の矛盾はゼロにはならない。安倍晋三にとって、そんなことはカエルの面に小便程度にも感じないだろうが、何らかのしっぺ返しを喰らわない保証はない。

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徴用工問題:非は安倍政権にあり、韓国にはない 西松建設最高裁判決は適用不可能 無礼は河野太郎

2019-07-22 12:39:51 | 政治
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 日本の首相安倍晋三センセイが加計学園獣医学部認可に首相としての権限を私的に行使し、私的に行政上の便宜を図る形で政治的に関与し、私的便宜を与えたとされている疑惑を国会答弁や記者会見から政治関与クロと見る理由を挙げていく。自信を持って一読をお勧め致します。読めば直ちに政治関与クロだなと納得できます。よろしくお願いします。

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 様々なネット記事を道案内させて貰って、記事を進めていく。

 2018年10月30日、太平洋戦争中に「徴用工として日本で強制的に働かされた」と主張する韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた裁判で、韓国大法院(最高裁判所)は「個人請求権は消滅していない」として、賠償を命じる判決を言い渡した。対して安倍政権は1965年の日韓請求権協定により元徴用工の個人請求権は「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取り、この立場から安倍晋三は「国際法に照らしてあり得ない判断だ。毅然と対応する」と述べ(息巻き?)、河野太郎は「日韓請求権協定に明らかに反し、日本企業に対し不当な不利益を負わせるものであるばかりか、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって、極めて遺憾であり、断じて受け入れることはできない」と批判した(息巻いた?)。そして韓国政府に対して問題の解決を求めた。

 対して文在寅(ムンジェイン)韓国大統領は「個人請求権は消滅していないという観点から解決していくべきだ」という点と、「三権分立の中で行政府が司法府の判断に関与できず、尊重しなければならない」という点で政府としては動かない姿勢を示した。

 文大統領が「個人請求権は消滅していない」と発言していることは1991年8月27日の参議院予算委員会での当時外務省条約局長で、政府委員(現在の政府参考人)として出席した柳井俊二の答弁を根拠にしているのだろう。

 柳井俊二「日韓請求権協定におきましては両国間の請求権の問題は最終且つ完全に解決したわけでございます。その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国は国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。

 従いまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではありません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます」(文飾当方)

 「外交保護権」とは、外国によって自国民の身体・財産が侵害された場合、その侵害を自国に対する侵害として、国家自らが、いわば自国民に代わって相手国の国際法上の責任を追及することだという。その「外交保護権」を相互に放棄した。

 このことを裏返すと、国家の関わりのないところで個人が個人として自らの侵害に対して訴える分に関しては、いわば国家による外交保護権の行使という形式を採用しない訴えであるなら、そのような訴えを日韓請求権協定は可能としているという意味を取る。このことが柳井俊二の「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではありません」という答弁となって現れた。

 だが、安倍晋三にしても、河野太郎にしても、官房長官の菅義偉にしても、この国会答弁などなんのその、1965年の日韓請求権協定を根拠に元徴用工の個人請求権は「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取り続けて、韓国政府に対して1965年日韓請求権協定第3条の紛争解決の規定に基づいた対応を求めたが、応じなかったために「国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然ととした対応を講ずる」との強い姿勢を示したが、韓国側の静観の構えは変わらなかった。

 日本政府は2019年7月1日になって徴用工問題をめぐる対抗措置であることを否定しつつ、韓国向けの半導体素材の輸出管理強化措置、いわば輸出規制の強化を発表。対して韓国側は「経済的な報復措置だ」と反発、WTO提訴も辞さない姿勢を示した。

 安倍晋三が2019年7月7日のフジテレビ番組で、韓国向け半導体材料の輸出管理強化措置の理由について「不適切な事案があった」と発言、この「不適切な事案」とは韓国が日本からの輸入品を北朝鮮に横流ししているというものだが、これは事実として日本政府が明言していることではく、横流ししているという見方があるという程度の事実であって、官僚の誰かからのリークがマスコミに流れて、そういった見方が浮上した見方なのか、官邸側が輸出規制の理由をデッチ上げるために官僚の誰かを使ってマスコミにリークさせて浮上した見方なのか、いずれかが考えられる。

 勿論、韓国側は北朝鮮への横流しを否定、輸出管理を厳格に履行していると主張している。

 また、韓国向け半導体材料の輸出管理強化措置が徴用工問題に於ける韓国側対応の日本側が望む内容となっていないことに対する対抗措置との見方があることに関しても日本側は否定している。

 「世耕弘成記者会見」(経産省/2019年7月16日)

 記者「韓国の文大統領は、昨日、改めて今回の措置について、重大な挑戦であるとか、国際機関の場で検証すべきということを改めて言っていますけれども、これに関してはいかがでしょうか」

 世耕弘成「日本としては当初から、今回の見直しは、安全保障を目的に輸出管理を適切に実施する観点から、運用を見直すものであるということを明確に申し上げています。対抗措置ではないということも、最初から一貫して説明をしてきているわけでありまして、昨日の文大統領の御発言にあるような指摘は、まず全く当たらないということを申し上げておきたいというふうに思います」

 だが、世耕弘成はこの「対抗措置ではない」治する発言とは異なる発言を自身のツイッターで述べている。

 「世耕弘成ツイッター」(2019年7月3日)

韓国への輸出管理上の措置について、なぜこの時期に?等の疑問がまだ寄せられているし、マスコミもまだ完全に理解できていないようなので、今回の措置に至る経緯を改めて説明します。

経緯①
従来から韓国側の輸出管理(キャッチオール規制)に不十分な点があり、不適切事案も複数発生していたが、日韓の意見交換を通して韓国が制度の改善に取り組み制度を適切に運用していくとの信頼があったが、近年は日本からの申し入れにもかかわらず、十分な意見交換の機会がなくなっていた。

経緯②
また近時、今回輸出許可を求めることにした製品分野で韓国に関連する輸出管理を巡り不適切な事案が発生している。

経緯③
さらに今年に入ってこれまで両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されず、関係省庁で相談した結果、信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない。

経緯④
輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されているものであり、経緯①〜③を勘案した結果、韓国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていると判断し、厳格な制度の運用を行い、万全を期すこととた。(文飾当方)

 かくこのように徴用工問題で日韓の「信頼関係が著しく損なわれた」ことを輸出規制の動機の一つに加えている。

 このツイター発言で特に問題な点は輸出規制のメインの理由として「従来から韓国側の輸出管理(キャッチオール規制)に不十分な点があり、不適切事案も複数発生していた」ことと、その是正に関わる「十分な意見交換の機会がなくなっていた」ことを挙げているが、だとしたら、「韓国側の輸出管理の不十分な点」と「不適切な事案」を具体的かつ明確に明示しなければならないにも関わらず、明示しないままに徴用工問題で韓国側から満足な解決策を示されないことを輸出規制の理由の一つに上げていることである。

 メインの理由を具体的に明示できずに対抗措置ではないとしている、当然、理由の一つに挙げる必要のない徴用工問題を輸出規制の理由の一つとして明示できる。この明示できるか否かによって、どちらがメインの理由か、自ずと姿を現すことになる。

 1991年8月27日の参議院予算委員会で日韓請求権協定によって個人の請求権は消滅していないとしていながら、それを無視していることも不明朗(隠し事や誤魔化しがあり、はっきりとしないこと・goo辞書)なら、輸出規制は徴用工問題に対する対抗措置ではないとしていながら、輸出規制の一つの理由としていることも不明朗そのものである。

 色々とネット上の情報を探っていくと、この不明朗はこじつけに行き当たる。2018年11月14日の衆議院外務委員会で共産党の穀田恵二が質問に立ち、「元徴用工の請求権については政府は日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決している、判決は国際法違反だとの姿勢」だがと切り出して、上記1991年8月27日の参議院予算委員会の質疑に於ける外務省条約局長柳井俊二の答弁を取り上げて、個人の請求権は消滅していないとしていると追及している。

 対する河野太郎の答弁。

 河野太郎「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございませんが、個人の請求権を含め、日韓間の財産請求権の問題は日韓請求権協定により完全かつ最終的に解決済みでございます。

 具体的には、日韓両国は、同協定第2条1で、請求権の問題は完全かつ最終的に解決されたものであることを明示的に確認し、第2条3で、一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対する全ての請求権に対していかなる主張もすることができないとしていることから、このような個人の請求権は法的に救済されません。

 日韓請求権協定において、請求権の問題は完全かつ最終的に解決され、個人の請求権は法的に救済されないというのが日本政府の立場でございます」

 要するに「個人の請求権が消滅していないが、日韓請求権協定第2条3によって全ての請求権に対していかなる主張もすることができないとされているから、このような個人の請求権は法的に救済されない」との意味を取らせている。だが、言っていることがよく分からない。この答を政府参考人として出席した外務省国際法局長三上正裕が理解させてくれる。

 三上正裕「先程申し上げたように、(日韓)請求権協定の中には財産、権利及び利益並びに請求権ということで入ってきているわけでございます。柳井局長が実体的権利と申し上げたのは、その四つのうちの財産、権利及び利益、確定的に実体的に存在しているものということだと理解しております。それを日本国内法の措置法で消滅させたということを言っていると思うんですが、請求権、慰謝料の請求権はその消滅させた実体的権利の中に入っていない、ただ、請求権は請求権協定の中には入っているので、この請求権協定で全てが解決されているということでございます」

 実体的権利に関して、「Yahoo!知恵袋」で次のように解説されている。

 〈実体的権利とは、具体的権利と同義と考えてよいと思います。すなわち、法律上ないし確立した判例上認められた権利で、かつその権利に基づいて裁判所に出訴し、救済を受けることができるものです。〉
 
 要するに確定的に実体的に存在している財産、権利及び利益に関しては日本国内法の措置法で消滅させてはいるが、「請求権、慰謝料の請求権はその消滅させた実体的権利の中に入っていない」、いわば「実体的権利」から除外されているゆえに日本国内法の措置法で消滅されてはいない、請求権は日韓請求権協定内の扱いとなっているから、その協定が個人の請求権は全て解決済みとしているとおりになるということになる。

 さらに三上正裕は次のように答弁している。

 三上正裕「最初に申し上げたように、権利自体は消滅していない。しかし、裁判に行ったときには、それは救済されない、実現しませんよということを両国が約したということだと思います」

 個人の請求権が“実体的権利外”、いわば “法律上ないし確立した判例上認められた権利外”のものであるなら、当然、裁判で救済されないことになる。

 但し1991年8月27日の参議院予算委員会での柳井俊二の答弁と矛盾することになる。
 
 柳井俊二「いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではありません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます」

 柳井俊二が「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させてはいない」、ただ、「外交保護権の行使として取り上げることはできない」、いわば外交保護権行使外であるなら、取り上げることができるといった趣旨の答弁をしているのに対して三上正裕は実体的に存在している「財産、権利及び利益を日本国内法の措置法で消滅させた」が、「実体的権利の中に入っていない」「請求権、慰謝料の請求権」は消滅させていないと答弁している。要するに柳井俊二が言っている「個人の請求権そのもの」を「実体的権利外の請求権、慰謝料の請求権」にすり替えている。

 三上正裕が言っているように「権利自体は消滅していない」、いわば「個人の請求権は消滅していない」が、このことに反して裁判での救済は実現しないとしている根拠が、上記2018年11月14日の衆議院外務委員会で共産党の穀田恵二も取り上げているが、第2次大戦中に強制連行され、広島県内の水力発電所の建設現場で過酷な労働をさせられたとして中国人の元労働者ら5人が西松建設を相手に約2700万円の損害賠償を求めた訴訟に対する最高裁判決であることを置いているということを2019年4月29日付「ハーバーピジネスオンライン」が伝えている。その「最高裁判決」をダウンロードしてみた。

 1972年の日中共同声明で中国側が戦争賠償に対する請求権を放棄したことを前提に、〈日中戦争の遂行中に生じた中華人民共和国の国民の日本国又はその国民若しくは法人に対する請求権は、日中共同声明5項によって、裁判上訴求する権能を失ったというべきであり、そのような請求権に基づく裁判上の請求に対し、同項に基づく請求権放棄の抗弁が主張されたときは、当該請求は棄却を免れないこととなる。〉として日中共同声明5項に基づく請求権放棄の対象と看做して、控訴をいずれも棄却している。

 但し中国側が日中共同声明で戦争賠償の請求権を放棄したことを控訴の棄却理由としている最高裁判決を日韓請求権協定に当てはめて、「裁判に行ったときには、それは救済されない、実現しませんよということを両国が約した」(三上正裕)とするのこじつけそのものであろう。大体が韓国側は「個人請求権は消滅していない」という態度を一貫して取り続けている。日本側だけの言い分を主張して、それを押し通そうとしている点についても、こじつけ以外の何ものでもない。

 河野太郎は日本政府が日韓請求権協定に基づいて第三国を交えた仲裁委員会の開催を韓国政府に求めていたが、韓国政府側が7月18日の最終期限までに応じなかったために翌7月19日午前、駐日韓国大使を外務省に呼び、強く抗議している。「NHK NEWS WEB」(2019年7月19日 12時27分)記事から河野太郎と駐日韓国大使の発言を拾って、纏めてみる。

 河野太郎「今回の対応は非常に残念だ。国際法に違反している状況を放置しているのは極めて問題で、韓国政府が今行っていることは第2次世界大戦後の国際秩序を根底から覆しているに等しいものだ」

 駐日韓国大使(輸出規制を念頭に)「日本側の一方的な措置で両国民と企業が困難な状況に陥り、被害が発生している。韓日関係の根幹を損なわせ、両国の基本的な関係に損傷を与える状況は、一刻も早く解消されるべきだ」

 河野太郎(駐日大使が「徴用」の問題の解決に向け、先月、韓国政府が提案した案を説明しようとすると、発言を遮り)「その提案は以前、国際法違反の状況を是正するものではないと伝えている。それを知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」

 「知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」としても、政府参考人が一度は「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではありません」云々と、消滅否定の答弁したことを、と言うことは徴用工問題で非があるのは安倍政権であり、韓国にはないことになるが、「(個人的請求権の)権利自体は消滅していない。しかし、裁判に行ったときには、それは救済されない、実現しませんよということを両国が約したということだと思います」と、結果的に消滅させているこじつけの無礼から比べたら、駐日韓国大使の無礼はたいしたことはない。にも関わらず、無礼としたことは、河野太郎の方が無礼な態度を取ったことになる。

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安倍晋三の政府としての主体性放棄のハンセン病家族訴訟控訴断念は明らかに参院選目当て 家族補償は別立てで行うべきだった

2019-07-15 09:56:21 | 政治
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 全国に住むハンセン病の元患者が国の誤った隔離政策によって患者の家族として差別される立場に置かれ、家族関係が壊れるなど深刻な被害を受けたとして国に賠償を求めたハンセン病家族国家賠償請求訴訟に対する熊本地方裁判所の西暦2019年6月28日の判決は原告側の訴えをほぼ認めて、国に対して総額3億7000万円余りを支払うよう命じた。

 判決は過去の隔離政策の過ちを指摘、「結婚や就職の機会が失われるなどの差別被害は、個人の尊厳に関わる『人生被害』であり、生涯にわたって継続する。家族が受けてきた不利益は重大で、憲法で保障された権利を侵害された」(「NHK NEWS WEB」)といった内容だということだが、要するに国の責任を厳しく問い質したということなのだろう。記事は、家族が受けた損害についても国の責任を認める判断は初めてだと解説している。

 対して安倍晋三は2019年7月9日午前、判決を受け入れ、控訴断念を表明した。6月28日から10日経過している。10日間、控訴するか、控訴断念とするか、協議を必要としたことになる。

 政府は3日後の2019年7月12日に熊本地裁判決に対する法律上の問題点を指摘する閣議決定の声明を出している。

 「政府声明」(首相官邸サイト/2019年7月12日)

  政府は、令和元年6月28日の熊本地方裁判所におけるハンセン病家族国家賠償請求訴訟判決(以下「本判決」という。)に対しては、控訴しないという異例の判断をしましたが、この際、本判決には、次のような国家賠償法、民法の解釈の根幹に関わる法律上の問題点があることを当事者である政府の立場として明らかにするものです。

1 厚生大臣(厚生労働大臣)、法務大臣及び文部大臣(文部科学大臣)の責任について

(1) 熊本地方裁判所平成13年5月11日判決は、厚生大臣の偏見差別を除去する措置を講じる等の義務違反の違法は、平成8年のらい予防法廃止時をもって終了すると判示しており、本判決の各大臣に偏見差別を除去する措置を講じる義務があるとした時期は、これと齟齬しているため、受け入れることができません。

(2) 偏見差別除去のためにいかなる方策を採るかについては、患者・元患者やその家族の実情に応じて柔軟に対応すべきものであることから、行政庁に政策的裁量が認められていますが、それを極端に狭く捉えており、適切な行政の執行に支障を来すことになります。また、人権啓発及び教育については、公益上の見地に立って行われるものであり、個々人との関係で国家賠償法の法的義務を負うものではありません。

2 国会議員の責任について

 国会議員の立法不作為が国家賠償法上違法となるのは、法律の規定又は立法不作為が、憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制限するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などに限られます(最高裁判所平成27年12月16日大法廷判決等)。本判決は、前記判例に該当するとまではいえないにもかかわらず、らい予防法の隔離規定を廃止しなかった国会議員の立法不作為を違法としております。このような判断は、前記判例に反し、司法が法令の違憲審査権を超えて国会議員の活動を過度に制約することとなり、国家賠償法の解釈として認めることができません。

3 消滅時効について

 民法第724条前段は、損害賠償請求権の消滅時効の起算点を、被害者が損害及び加害者を知った時としていますが、本判決では、特定の判決があった後に弁護士から指摘を受けて初めて、消滅時効の進行が開始するとしております。かかる解釈は、民法の消滅時効制度の趣旨及び判例(最高裁判所昭和57年10月15日第二小法廷判決等)に反するものであり、国民の権利・義務関係への影響が余りに大きく、法律論としてはこれをゆるがせにすることができません。

 かくこのように熊本地裁判決に対して政府として法律論上認め難いとする問題点を列挙している。特に如何なる訴訟であっても、「時効」は判決の要点となる。2004年に25年に延長された殺人罪の公訴時効は2010年に廃止されたが、2010年以降の刑事裁判で時効を25年と計算して、殺人罪成立の要件とすることはあり得ないことをあり得るとするような無視できないはずの事柄と同様、政府が考える消滅時効の起算点と熊本地裁が考えたそれとの違いは無視できない大きな問題点となる。

 だが、政府は控訴を断念した。いわば熊本地裁判決を受け入れた。

 「政府声明」発出と同じ7月12日に安倍晋三は判決に関する首相としての談話を出している。

 「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟の判決受入れに当たっての安倍晋三談話」(首相官邸サイト/2019年7月12日)

 閣議決定

 本年6月28日の熊本地方裁判所におけるハンセン病家族国家賠償請求訴訟判決について、私は、ハンセン病対策の歴史と筆舌に尽くしがたい経験をされた患者・元患者の家族の皆様の御労苦に思いを致し、極めて異例の判断ではありますが、敢えて控訴を行わない旨の決定をいたしました。

 この問題について、私は、内閣総理大臣として、どのように責任を果たしていくべきか、どのような対応をとっていくべきか、真剣に検討を進めてまいりました。ハンセン病対策については、かつて採られた施設入所政策の下で、患者・元患者の皆様のみならず、家族の方々に対しても、社会において極めて厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実であります。この事実を深刻に受け止め、患者・元患者とその家族の方々が強いられてきた苦痛と苦難に対し、政府として改めて深く反省し、心からお詫び申し上げます。私も、家族の皆様と直接お会いしてこの気持ちをお伝えしたいと考えています。

 今回の判決では、いくつかの重大な法律上の問題点がありますが、これまで幾多の苦痛と苦難を経験された家族の方々の御労苦をこれ以上長引かせるわけにはいきません。できる限り早期に解決を図るため、政府としては、本判決の法律上の問題点について政府の立場を明らかにする政府声明を発表し、本判決についての控訴は行わないこととしました。その上で、確定判決に基づく賠償を速やかに履行するとともに、訴訟への参加・不参加を問わず、家族を対象とした新たな補償の措置を講ずることとし、このための検討を早急に開始します。さらに、関係省庁が連携・協力し、患者・元患者やその家族がおかれていた境遇を踏まえた人権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化に取り組みます。

 家族の皆様の声に耳を傾けながら、寄り添った支援を進め、この問題の解決に全力で取り組んでまいります。そして、家族の方々が地域で安心して暮らすことができる社会を実現してまいります。

 要するに判決には「いくつかの重大な法律上の問題点」が存在するものの、「ハンセン病対策の歴史と筆舌に尽くしがたい経験をされた患者・元患者の家族の皆様の御労苦」への心情と「確定判決に基づく賠償」の履行を優先させるために控訴断念を決定したと述べている。

 この心情と「賠償」優先の措置に対して参院選さ中であることから、野党から「選挙目当て」ではないかと批判が上がった。勿論、政府側は否定する。「時事ドットコム」

 自民党幹事長代行萩生田光一(記者団から参院選が首相の判断に影響したのかと問われて)「選挙に合わせて裁判の結果が出たわけではない。そこは直接の影響はない」

 アホだね、こいつ。忖度が流行っているのは政治の世界だけであるはずだから、判決は選挙に合わせはしないだろう。記者団が問い質したのは控訴断念は参院選を照準とした決定なのか、どうかなのだから、それに対するイエスかノーを言わなければならないのに方向違いなことを口にして、参院選の影響を否定している。

 公明党代表山口那津男「(控訴断念を)高く評価したい。選挙と故意に結び付けることはすべきではない」 

 山口那津男の見解が正しいかどうかが問題となる。

 政府は「政府声明」で判決に対して重大な法律上の問題点を指摘した。国会議員の責任に関しては判決は「司法が法令の違憲審査権を超えて国会議員の活動を過度に制約することとなり、国家賠償法の解釈として認めることはできない」と断じ、消滅時効に関する判決に対しては「国民の権利・義務関係への影響が余りに大きく、法律論としてはこれをゆるがせにすることができない」と激しく拒絶反応を示している。

 このように判決の問題点を承服し難い重大なことだと指摘していながら、控訴断念の理由として元患者家族の労苦と損害賠償の優先をいくら掲げようとも、地裁判決を受け入れたということは法律論上認め難いと政府が考えている重大な問題点を放置し、看過することを意味するだけではなく、放置と看過は政府としての主体性放棄を自ら率先して行うことをも意味することになる。

 勿論、この放置と看過を回避し、政府としての主体性を維持する唯一の方法はあくまでも裁判で戦う控訴以外にないはずである。そして例え控訴したとしても、元患者家族の労苦に報いる損害賠償は控訴とは別に議員立法による法律制定でも、あるいは内閣立法による法律制定でも可能なのだから、別立てで行うことにして、そのような法律の制定時か施行時に国家代表としての安倍晋三の謝罪を添えることによって家族の労苦を曲がりなりにも慰謝する方法とし得るはずである。

 だが、そういう方法は採用しなかったし、大体が家族訴訟は2016年2月15日に九州・関西在住の59名が国に対して損害賠償と全国紙への謝罪広告を求めて熊本地裁に起こしたものだという。それから3年と5カ月、「ハンセン病対策の歴史と筆舌に尽くしがたい経験をされた患者・元患者の家族の皆様の御労苦」を言い、それが心の底からの心情であるなら、裁判所の判決や控訴有無の判断を経ずとも実現させることができた家族側の要求であるはずである。

 そのような要求に応えないままに国は裁判で争う姿勢を示して、3年と5ヶ月を経た。いや、1931年(昭和6年)に「癩予防法」を成立させ、強制隔離を手段としたハンセン病絶滅政策を行い、1950年代には感染力が弱い上に有効な治療薬が開発されて完治する病気とされ、在宅治療が主流となりつつあった世界標準に反して1996年4月1日施行の「らい予防法廃止に関する法律」の成立まで65年も、在宅治療が世界標準となってからは40年近くも強制隔離を続けてきて、家族にまで背負わせることになった偏見と差別の精神的苦痛を今日にまで無視しておきながら、政府としての主体性を放棄してまで法律論上認め難いと政府が考えている重大な問題点を放置し、看過する理由に「元患者家族の労苦」に報いることと「補償」の優先を掲げる。

 この矛盾は安倍晋三の「ハンセン病対策の歴史と筆舌に尽くしがたい経験をされた患者・元患者の家族の皆様の御労苦」云々が心の底からの心情ではないことを如実に物語っている。

 心の底からの心情であるなら、地裁判決を待たずに、判決は判決として政府として救済に動くことができたはずであるし、心の底からの心情ではないことは判決を受けたあとの2019年7月9日の安倍晋三の記者会見で謝罪の一言を入っていなかったことに反映されている。

 「安倍晋三記者会見」(首相官邸サイト/2019年7月9日)

 安倍晋三「今回の判決内容については、一部には受け入れ難い点があることも事実であります。しかし、筆舌に尽くし難い経験をされた御家族の皆様の御苦労を、これ以上長引かせるわけにはいきません。その思いのもと、異例のことではありますが、控訴しないことといたしました。この方針に沿って検討を進めるよう関係大臣に先ほど指示いたしました」

 「筆舌に尽くし難い経験をされた御家族の皆様の御苦労」を言うなら、それが政府の政策が原因している以上、国家を代表し、継承している地位にある者として謝罪を最初に持ってこなければならなかったはずだが、持ってこなかった。

 謝罪がなかったことにも現れている、「患者・元患者の家族の皆様の御労苦」云々が心の底からの心情ではない以上、法律論上認め難いと政府が考えている重大な問題点の放置と看過を侵してまでした政府としての主体性を放棄する理由は控訴断念で内閣支持率を上げて、参院選で利する考えの選挙目当て以外に残されていない。

 言葉の巧みさで人気を取ろうとすることに長けている安倍晋三である。選挙目当てであっても、驚くに当たらない。

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第2次安倍政権での政治の安定が生んだ格差 参院選論戦の野党代表の無能&大阪城エレベーター発言に見る無知・卑怯

2019-07-08 11:27:04 | 政治


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 日本の首相安倍晋三センセイが加計学園獣医学部認可に首相としての権限を私的に行使し、私的に行政上の便宜を図る形で政治的に関与し、私的便宜を与えたとされている疑惑を国会答弁や記者会見から政治関与クロと見る理由を挙げていく。自信を持って一読をお勧め致します。読めば直ちに政治関与クロだなと納得できます。よろしくお願いします。

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 現在ブログは1週間に1度、月曜日に投稿と決めていることから、書きたいことがいくつか溜まってきたため、今回は二つのテーマを一度に取り上げることにした。最初のテーマは参院選に関わる安倍晋三と各野党代表の論戦。

 NHK日曜討論「参院選特集7党に問う」(2019年7月7日)(冒頭発言のみ)

 NHK小郷知子キャスター「選挙戦で各党は何を重点に訴えていくのか、30秒ずつでお願いしたいと思います。」

 安倍晋三「この選挙で問われているのは政治の安定か、あるいは混迷か、であります。参議院選挙は政権選択の選挙ではありませんが、政治を安定させるか、あるいは不安定化させるか、を決める選挙でもあります。

 10年前、自民党は選挙に惨敗し、政治は不安定になり、その後、経済は低迷し、総理大臣はゴロゴロ変わった。あの時代に逆戻りする訳にはいかない。強く訴えていきたいと思います」

 枝野幸男「この選挙で暮らしの安心を取り戻す第一歩を踏み出したいと思っています。残念ながら、この6年で非正規雇用は300万人増えて、働く方の5人に2人に達しています。年収200万円以下のワーキングプアと呼ばれるような皆さんも、1100万人に達しています。

 こうした中で消費を冷えこませる、消費増税はできない。年金だけで暮らせていけない、そうした老後に対してしっかりと手当をしていく、生活を応援するための選挙にしていかなければならない。そこに向けて頑張って参ります」

 玉木雄一郎「国民民主党として初めて迎える国政選挙ですから、我々にとってはデビュー戦です。我々の考え方、提案する改革する中道政党だということをしっかり訴えたいと思います。

 その上で政権の安定ではなくて、国民の生活の安定をしっかり確保することが大事で、そのための政策として家計第1の経済政策、これを打ち出しております。アベノミクスの最大の弱点は消費が伸びないこと。その好循環の起点を企業ではなくて、家計、消費を軸とした好循環をまわしていく。この政策をしっかりと訴えていきたいと思っております」

 山口那津男「先ず政治の安定がなければ、国益も、また国民の生活も守れません。それと並んで重要なことは、国民の声を聞くということであります。国民から見て、声が届いていないということでは、政治に信頼は得られません。

 公明党は小さな声を聞く力、を訴えたいと思います。公明党は国会議員、また都道府県の議員、市町村の議員、いつも連携をして、政策を実現する。この小さな声を受け止めて、政策実現ができる力がある。これを訴えたいと思います」

 志位和夫「『暮らし向きに希望を』と訴えて選挙を戦います。消費税10%をストップさせ、そして富裕層と大企業に応分の負担を求めてまいります。それから7兆円もの年金削減をやめさせて、低年金の底上げを図っています。最低賃金1500円。あと8時間働けば、普通に暮らせる社会を創ります。それから高過ぎる国民健康料を下げまして、暮らしを支える社会保障にしていきます。

 学費については直ちに半分、ゼロを目指します。そしてジェンダー平等社会を目指す選挙にしてきたいと思います」

 松井一郎「我々は地方の政治家が、集団で集まり、国政政党を作りました。そして、大阪に於いては増税することなく、教育無償化は8年前から実行してきております。今、この消費税増税が10月に迫ってますが、増税しなくても教育無償化は実現できる。実行してきたからこそ言えると思います。先ずは永田町で先ず国会議員が身を切る改革を実現をすることが増税の前にやるべきことは、これを徹底的に訴えていきたいと思っています」

 吉川元「争点、二つあると思います。一つは企業がどれだけ儲かっても、国民の皆さんは生活が良くなったと実感できない。あるいは生活が苦しいと感じる今の経済財政政策、これを根本的に変えていかなければならないというふうに考えております。

 年金の問題、そして消費税の問題、しっかりと伝えていきたいと思いますし、また併せて憲法を、我々は老舗の護憲政党として憲法をしっかり守って行くことを訴えていきたいと思います。憲法を生かす。そして支え合う社会の実現に向けて、選挙戦を戦い抜きます」

 安倍晋三は「政治の安定」を常々訴えてきた。通常国会閉会を受けた2019年6月26日の「記者会見」(首相官邸サイト)では次のように述べている。

 安倍晋三「決められない政治、不安定な政治の下で、総理大臣は、毎年のようにころころと代わりました。そのきっかけをつくったのは、私の責任であります。12年前、夏の参院選で、自民党は歴史的な惨敗を喫した。国会ではねじれが生じ、混乱が続く中、あの民主党政権が誕生しました。悔やんでも、悔やみ切れない。12年前の深い反省が、今の私の政権運営の基盤になっています。新しい令和の時代を迎え、あの混迷の政治には二度と逆戻りをさせてはならない。来るべき参議院選挙、最大の争点は、安定した政治の下で新しい時代への改革を前に進めるのか、それとも、再びあの混迷の時代へと逆戻りするのかであります

 2019年7月3日の日本記者クラブでの「参院選7党党首討論会」でも、同じようなことを発言している。

 安倍晋三「(「政治の安定」と書いたボードをテーブルに立てて)我が党の主張は『政治の安定』を訴えていきたい」

 「政治の安定」こそ、自らの政治遂行の必須の土台だと主張している。だが、安倍晋三は2012年12月の政権奪還以来、6年半もの間、今日まで一貫して「安倍一強」と言われる強固な「政治の安定」をつくり出し、その「政治の安定」に守られて、内政・外交に亘って強力な政治を推し進めてきた。そして内政面に於ける最大の成果は「格差拡大」である。

 日銀の異次元の金融緩和によって株高・円安の経済環境をつくり出して、過去最大のGDP560兆円、企業純利益60兆円といった国家の果実・企業の果実を生み出した一方で
景気回復や所得向上の実感がない国民が7、80%も占めているという格差である。残りの2、30%は、その多くは大企業や株利益に依存している国民であろう。

 いわば「安倍政権6年半の政治の安定」は国家や企業、特に大企業に役立ったが、一般国民には役立たなかった。一般国民に果実をもたらしたかどうかの点で言うと、不作そのもので、回されるべき果実は見る程のことはなかった。

 いくら有効求人倍率が上がろうと、高卒・大卒の就職内定率が上がろうと、雇用が増えようと、終局のところ、自分たちの利益は国家や企業の餌食となり、吸い取られて、得るべき果実を極小化されていく。だからこその、アベノミクス景気の実感のなさでなくてはならない。

 「政治の安定」が特に大企業・富裕層以外に役立たなかったにも関わらず、参院選で「政治の安定」を訴え、「あの混迷の政治には二度と逆戻りをさせてはならない」と言い募る。この無知・鈍感さは如何ともし難い。

 山口那津男にしても、「先ず政治の安定がなければ、国益も、また国民の生活も守れません」と言っているが、安倍政権の政治の安定は一般国民の生活を守ってこなかった。

 「政治の安定」がより平等な国民の幸福に役立たなければ、このことをいくら訴えても意味はないことになる。安倍晋三は意味もないことを訴えていることになる。

 「日曜討論」で立憲民主党枝野幸男が「この選挙で暮らしの安心を取り戻す第一歩を踏み出したいと思っています」と訴えていることも、国民民主党の玉木雄一郎が「政権の安定ではなくて、国民の生活の安定をしっかり確保することが大事」、あるいは「家計第1の経済政策」と訴えていることも、共産党の志位和夫が「『暮らし向きに希望を』と訴えて選挙を戦います」と強調していることも、社民党の吉川元が、「企業がどれだけ儲かっても、国民の皆さんは生活が良くなったと実感できない。あるいは生活が苦しいと感じる今の経済財政政策、これを根本的に変えていかなければならないというふうに考えております」と訴えていることも、この6年半の安倍政権がアベノミクスの成果としている一般国民の生活の現状を指摘しているそれぞれの言葉であり、そうである以上、「安倍政権6年半の政治の安定」が一般国民の生活にもたらし、自らが成果としていることに対する言い替え・同義語であろう。

 なぜ言い替え・同義語を用いずに「安倍政権6年半の政治の安定は一般国民の生活、幸福に役立たなかった」と直接的に批判し、「だから、暮らしの安心を取り戻すとか、国民の生活の安定をしっかり確保することとか、暮らし向きに希望をとか訴えなければならない」と言わなかったのだろう。ただ自分たちの政治スローガンを訴えるよりも、安倍晋三掲げる政治スローガンを否定した上でそうした方が、自分たちの政治スローガンはより生きてくるはずだ。

 そうしないから、安倍晋三に一般国民には役に立ってもいない「安倍政権6年半の政治の安定」を棚に上げさせて、「政治の安定か、混迷か」、あるいは「あの混迷の政治には二度と逆戻りをさせてはならない」などといつまでも好き放題に口にさせることになる。要するに野党代表たちが無能だから、その結果として好き放題に言わせていることになる。その好き放題が公示早々の各マスコミの世論調査で、与党過半数・改憲勢力維持といった安倍晋三有利の選挙情勢を招いているはずだ。

 一般国民の幸福に役立たない「政治の安定」とは格差への貢献を内実としていることからの一般国民の生活の現状に過ぎないことを安倍晋三の眼前に突きつけてこそ、選挙を白熱させることができる。それができていないから、NHKが2019年6月28日から3日間行った世論調査で、参院選挙に「必ず行く」が49%、「行くつもりでいる」が30%という結果が出てくる。

 野党に投票しようという熱気が全体的な投票行動となっていたなら、「必ず行く」は80%前後となっていなければならない。実際の投票率が下がるとしても、民主党が政権交代を果たした2009年の総選挙では小選挙区、比例区共に投票率は69.3%と、70%近くあった。その熱気がないからこそ、既に書いたように公示早々の各マスコミの世論調査で、与党過半数・改憲勢力維持といった結果が示されることになる。

 安倍晋三は番組の最後に「我々は大変に厳しい、きのう選挙情勢分析したんですが、非常に厳しいんです。大変厳しい中で全力を尽くしていきたいたいと思います」と発言している。与党優勢の早々の世論調査に安心して、与党支持の有権者が人任せにして棄権する可能性の芽を前以って摘む必要性からの発言だろう。なかなか抜目がないが、この抜け目のなさの10分の1でも、野党代表たちは安倍晋三の爪の垢を煎じて飲み、学んだ方がいい。

 次のテーマは大阪城エレベータ発言。「G20大阪サミット 夕食会挨拶」(首相官邸サイト/2019年6月28日)

 安倍晋三「皆様、改めてようこそ大阪にいらっしゃいました。ここ大阪は、4世紀頃に仁徳(にんとく)天皇により都に定められ、その後商業の町として発展してきました。大阪のシンボルである大阪城は、最初に16世紀に築城されました。石垣全体や、車列が通った大手門は、17世紀始めのものです。150年前の明治維新の混乱で、大阪城の大半は焼失しましたが、天守閣は今から約90年前に16世紀のものが忠実に復元されました。しかし、一つだけ大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまで付けてしまいました」

 大阪城に関する発言はこれのみとなっている。最初に築城されたの16世紀。石垣全体や車列が通った大手門は17世紀の築造当事の姿を残している。150年前の明治維新の混乱で大阪城の大半は焼失。天守閣は約90年前の1928年(昭和3年)に16世紀の姿が忠実に復元された。エレベーターまで付けたのは大きなミスだった。いわば16世紀のままの姿で復元すべきだった。

 つまり、築城当事の姿に近づけて「復元」という形を取る以上、近代の産物であるエレベーターなる動力は必要なかった、が誰だどう見ようと、あるいはどう読もうと、結論となる。

 この発言が野党が障害者や高齢者への配慮を欠く発言だと批判、ネット上でも同じ趣旨の批判が渦巻いた。

 安倍晋三はこの発言について釈明している。但し自身の口からではなく、自民党幹事長代行萩生田光一の口を通してである。萩生田光一は2019年7月2日、自民党本部で安倍晋三と会談、その際、釈明を伝え聞いたのだろう。「NHK NEWS WEB」(2019年7月2日 13時34分)記事からオーム役の萩生田光一の発言を見てみる。

 萩生田光一「日本は文化財などの復元にも大きな力を持っており、限りなく同じものをつくったが、当時はエレベーターはなかったということを言いたかった。決して、エレベーターが必要ないとか、バリアフリーの社会に異論を唱えるとか、そうした発言ではない。

 取りようによっては、障害者やお年寄りに不自由があってもしかたがないと聞こえるような発言をしたことは遺憾だ」

 確かに「バリアフリーの社会に異論を唱えるとか」の発言では決してない。但し「限りなく同じものをつくったが、当時はエレベーターはなかった」との意味を持たせた発言でも決してない。そのような発言なら、「エレベーターまで付けたのは大きなミスだった」と、失敗そのものを指摘する「ミス」という言葉は使わない。「エレベーターが必要ないとかの発言ではないが、エレベーターまで付けたのは大きなミスだった」とした場合、果たして前後の脈絡は繋がるだろうか。「大きなミス」とする以上、「必要ない」の意味を取る。

 要するに萩生田光一の口を通して言わせた安倍晋三の釈明は自身の発言を誤魔化すマヤカシ以外の何ものでもない。

 また、安倍晋三は「取りようによっては、障害者やお年寄りに不自由があってもしかたがないと聞こえるような発言をしたことは遺憾だ」と萩生田光一の口を使って言わせているが、あるいは萩生田光一は恐山のイタコのように安倍晋三の口寄せを行っているが、「取りようによって」という言葉の意味は「解釈次第」の意味であって、その解釈の責任は解釈の主体に帰せられる。

 つまり安倍晋三自身は「障害者やお年寄りに不自由があってもしかたがないと聞こえるような発言をしたわけではないが、そのように聞いた者がいたとしたら、遺憾だ」と、そのように解釈した側に責任を置いて、自身に責任は置いていない釈明を行っている。だから、「遺憾だ」と言うことができる。

 だが、実際には「聞こえるような発言」では決してなく、そのままに聞こえる発言なのだから、マヤカシそのものを働く誤魔化しに過ぎない。

 伝統とは昔のままではなく、人間の生活の変化に応じて生じた伝統と生活の間の不都合を修正して、生活の都合に合わせていく側面を持っている。いわば生活の都合の変化に伝統を合わせざるを得ない場合がある。そのことまで考えることができずに、伝統一辺倒に拘る無知な視野狭窄が言わせた大坂城エレベーター発言でなくて、何であろう。

 無知なだけではない。表に出て自身の口で釈明するのではなく、忠実な飼い犬のポチである萩生田光一を使って釈明したことは卑怯そのものの振る舞いで、自身の真意を隠して、別の真意に作り変える卑怯を併せると、二重、三重の意味で卑怯な人間に仕上がっているとしか言いようがない。

 このような信用が置けない安倍晋三なる政治家が首相を務める与党を参院選で投票の対象にする。

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相互に気づかずに自民二之湯武史はアベノミクスは格差ミクスだと議論を仕掛け、安倍晋三もそれを承認の2019/6/10参院決算委

2019-07-01 08:52:33 | 政治

 西暦2019年6月10日、参議院議員自民党岸田派の二之湯武史(にのゆ たけし)が決算委員会で質問に立った。京都大学経済学部卒で、42歳、滋賀県選挙区選出の岸田派だそうだ。なかなか歯切れのいい質問をする。

 質問の最初に大津市の幼稚園児の事故を取り上げ、大津市長が自民党本部を訪問、子供の安全対策について強い要望をされたとか、子ども安全対策に関する現時点での政府の検討状況等を聞いてから、アベノミクスの現状と将来的なあるべき姿をアベノミクス生みの親である安倍晋三に求めていく。先ずその冒頭部分の遣り取りを取り上げてみる。

 二之湯武史「新しい令和の時代が開けてひと月余りが経ちました。この時代はですね、私は大転換の時代だと確信をしております。例えば明治維新で近代国家が平成まで一貫して増え続けた人口が減少していく時代に入っております。また、AIといった技術革新、また地球規模の気候変動、こうしたものが我々の人間のあり方そのものを変えてしまうような、そんな時代に入ってきたとに思います。

 要するにこれまでの成長一辺倒の社会ではですね、成長とまた心の豊かさといったものが調和していく成熟社会に私は入っていくべきであり、またそのために大きく発想転換しなければならない。まさに令和、ビューティフルハーモニーでありまして、そうした非常に象徴的なこの元号の名前も含めてですね、総理はですね、この令和という時代は先ずどのように、大きく、すみません、通告はしてないんですけども、この大きな捉え方、どのようにお感じていらっしゃるのか、お聞かせ頂きますか」

 安倍晋三「当然の質問ではありますが、令和の時代っていうのは、人それぞれの良さを花開かせることができるという時代にしていきたいという思いを込めているところでございますが、そこで今、委員がご指摘なされたように生産年齢人口、既にこの6年間で5、6万人、減少しております。しかしそれでもなお、私たちは成長できるという思いの中で経済政策を進めてきましたが、10%以上、実質GDPは成長しました。これがなぜ可能になったかということはですね、新たに多くの女性の方々が働き始めて頂いた。そして高齢者の方々もですね、仕事を続けようという選択肢を取れる状況が作り出すことができたことによってですね、経済成長するとはできたのではないか、こう思っているわけであります。

 希望すれば、それぞれの皆さんがですね、様々な目標に向かって進んでいくことできる社会を作ることによってまさに我々は経済を成長させることができた。と同時に人口減少していますが、今委員がご指摘になったように第4次産業革命が起こる、AI、IoT、ロボット、こうしたものはむしろ雇用にはマイナスではないかという指摘があるわけでありますが、日本の場合は生産年齢人口が減少していきますから、その中で思い切って導入が可能となっていくわけであります。

 まさにSociety5. 0を実践していくことによって経済を成長させ、そしてそれぞれがその目標に向かって女性、高齢者、勿論、だけではなくて、障害がある方やまたは難病を抱える方々も、それぞれ自分の人生の目標に向かってですね、進んでいく。そういう社会を創り出すことによって日本は豊かに成長していく、そして世界のまさに目標とでも言うべき、誇るべき日本を創り上げていくことができるんではないか、令和の時代はそういう時代にしてきたいと、このように考えております」

 さすが安倍晋三、アベノミクス自慢となると歯切れのいい弁舌の披露となる。「人それぞれの良さを花開かせることができるという時代にしていきたい」という言葉にしても、「希望すれば、それぞれの皆さんがですね、様々な目標に向かって進んでいくことできる社会」という言葉にしても、「女性、高齢者、勿論、だけではなくて、障害がある方やまたは難病を抱える方々も、それぞれ自分の人生の目標に向かってですね、進んでいく。そういう社会を創り出す」という言葉にしても、平等社会=反格差社会への意思志向を自らの政治のバックボーンとしていることを現していることになる。

 と言うことは、アベノミクスは平等社会=反格差社会へと向かって走る強力なエンジンだと宣言したことになる。つまり安倍晋三自身は、そう信じている。

 二之湯武史の続けて行った質問が素晴らしい。

 二之湯武史「まさにこの6年半でアベノミクスによって大きな成果は上がっております。私が言うまでもなく、過去最大のGDP、560兆円、そして企業の純利益も60兆円を超えてます。これはバブル期を大きく上回る、2倍以上上回るような水準。また今年度の税収見込みはですね、バブル期を大きく上回る62.5兆円と。そして労働支援の方はほぼ完全雇用が達せられたという話もありますし、例えば政権前には830万人に過ぎなかった外国人観光客、これが3100万人を超えた。またインフラ輸出、農産物輸出、こうしたこれまで余り手をつけられなかった政策も、非常にいい結果を出している。

 これは素晴らしいことだと思います。今アベノミクス、また安倍政権が一番超えなければならない課題、これ私率直に申し上げて、やはり多くの国民の皆さんの実感だというふに思っています。今、磯崎委員の方からもお話がございましたが、例えばこの5月のJNNの世論調査もですね、安倍内閣の支持率は57%で非常に高いんですが、一方でこの景気回復や所得向上の実感がないとおっしゃる方が実に87%もおられると。

 我々も毎週末、地元に帰りまして、各界各層、色んな皆さんと意見交換をし、交流をしております。そんな中でもですね、やはりそうした実感はないんだけども、地元に回ってこなければダメじゃないか、こういうお話をずっと頂いているわけです。例えば農業者の皆さん、小規模事業者の皆さん、保育園や介護施設の皆さん、年金生活者の皆さん、本当にそうした方々からそうした期待を頂く。その期待に応えなきゃいけないというふうに私も思っておりますが、総理にお伺いしたのは多くの方々が実感が持てないということについての課題意識についてどのようにお考えでしょうか」

 「過去最大のGDP、560兆円、そして企業の純利益も60兆円を超えてます」、その一方で、JNNの世論調査で、「景気回復や所得向上の実感がないとおっしゃる方が実に87%」。その実感のなさは地元でも聞く。

 つまり実感のなさは日本中に蔓延している。二之湯武史は自身では気づかずに安倍晋三がアベノミクスをエンジンとして平等社会=反格差社会へと意志思考しているにも関わらず、アベノミクスは格差社会=不平等社会を成果としていると批判した。言ってみれば、アベノミクス否定となっている。

 だが、二之湯武史本人は批判したとも、否定したとも、気づいていない。 

 この批判・否定に対する安倍晋三の答弁は矛盾に満ちているが、本人もそのことに気づいていない。

 安倍晋三「あの、先程磯崎委員の質問にお答えをさせて頂いたときにですね、我々の使命としては働きたい人は働く状況をつくっていくという意味に於いては今年の春高校、大学を卒業した皆さんの就職率は過去最高水準を維持することができました。そして完全雇用を事実上、達成されているわけでございますから、それは達成できている。そしてまた賃上げに於いてもですね、今世紀に入って最も高い水準の賃上げも続いているわけでございますし、地方に於いてでですね、やはりまだ実感がないという方もたくさんいらっしゃる。今、委員が仰ったように全ての世論調査でそうなっているのは事実てございます」

 全ての世論調査でアベノミクス景気の実感なしが上回るのが「事実」であるなら、地方だけではないことになって、「地方に於いてでですね、やはりまだ実感がないという方もたくさんいらっしゃる」との物言いで不平等=格差のアベノミクス成果は地方に限ってのことだとするのは矛盾そのもので、薄汚い誤魔化しに過ぎないことになる。
 
 当然、アベノミクス景気に実感なしが上回る以上、「就職率は過去最高水準」にしても、「完全雇用の事実上の達成」にしても、国民に等しく景気の実感を与えて、平等社会=反格差社会構築のそれぞれのエンジンとはなっていないことを示すことになる。逆に不平等社会=格差社会に向けた流れをつくり出している様相を答弁は描き出していることになる。

 続く発言は正当化できるはずもないアベノミクス正当化という逆説を踏むだけの弁明に過ぎない。

 安倍晋三「ただ、一方ですね、、地方に於いて例えば過去の景気回復期、小泉政権のときスタートした、第1次安倍政権、福田政権まで続いた先般の6年間の戦後最長の回復期に於いては日本銀行の地域別状況判断に於いてはですね、この回復期を通じてずうっと北海道と四国は、地区は実はマイナスで、プラス、マイナス、マイナスの方が多いというマイナスで推移していたんですが、今回はですね、全ての地域に於いて、まあ、プラスで推移しています。

 前回、プラス、全ての地域、あの、プラスで続く、5年間、6年中、5年間、この5年間だけ、プラスで推移したのは、前回は、えー、これは東海地区とですね、関東地区だけだったんですが、今回9地区全部でプラスで推移しているということは、先程委員が上げられたように観光と農業がですね、大きく寄与している地域に寄与していることによってそうなっていると。
 
 また、殆どの県でですね、法人関係税収は4割、5割、この6年間の税収は増えているんですが、そういう状況が、ただ実感としてはそういう実感であるというのは事実、えー、おー、えー、であろうと、感じていらっしゃる方が多いと、いう方がいらっしゃることは承知をしておりますが、国民一人ひとりの方々に景気回復の波が広がっていくようにですね、我々も、そういうことを感じておられない方々に光を当てていくこともですね、私たちの使命であろうと、こう思っております。

 最大の課題である少子高齢化を克服し、全世代型社会保障制度への転換を図ると共に、また東京一極集中を是正し、地方への新たな人の流れをつくり出すと共に、また、就職氷河期世代の方々への支援などにも取り組み、誰でも、いくつになっても活躍することができる一億総活躍社会の実現を図っていきたいと、こう考えております」

 日本銀行の地域別状況判断が「今回は全ての地域プラスで推移」していながら、景気の実感が感じられないということはプラスは大企業や高額所得層への恩恵・利益により偏っている格差の提示以外の何ものでもない。そして素晴らしいばかりのどのような経済指標を持ち出そうとも、それが国民の景気実感に役に立っていなければ、格差=不平等の印としかならない。

 安倍晋三はアベノミクスを駆使して格差社会=不平等社会をつくり出しておきながら、「誰でも、いくつになっても活躍することができる一億総活躍社会の実現を図っていきたい」と平等社会=反格差社会を謳う、胡散臭いまでのペテンを見事発揮している。

 二之湯武史は自身では気づかないままにアベノミクスは格差社会=不平等社会を成果としていると批判し、アベノミクスを否定した手前、アベノミクスを反格差社会=平等社会に向けるべく、いくつかの提案をする。

 二之湯武史「そこで私はいくつか提言といいますか、いくつかお示ししていきたいと思っております。再分配という機能がございます。これは政府の再分配、社会保障でありますとか、また、税を色んな形で、事業で所得移転をしていく。これによって国民の不平等化をなくしていく。

 こういう機能は実は私は民間企業にもあるんだと思っております。政府に於いてですね、この10月の消費税率10%に引き上げ、財源を幼児教育、また高等教育の支援へと向ける。つまり高齢者中心の社会保障を全世代型の社会保障に改革をしていく。

 また経済状況によらずに高等教育を受けられる。そうした低所得者への支援を充実させていく。まさにこれは再分配機能だと思います。一方でですね、民間における再分配ってのが私はもう少し改善の余地があるのではないかと常々思っておりす。

 昨年、日本企業は、先程申し上げました、純利益60兆円。営業利益83兆円。そして内部留保で446兆円と。いずれも過去最高を記録しているわけです。企業の再分配と言えば、先ずは従業員への給料のアップ。そして取引先、下請けの単価の向上、また株主の配当、地域への様々な数の寄付。こうしたものがあると思いますが、この企業の配分政策ですね、やや偏りがあるんじゃないかなあと。

 つまり2017年の労働分配率は、これだけ企業が最高益を上げているにも関わらず、43年ぶりの低水準でありました。そもそも労働分配率は景気がいいときは低く、悪いときには高く出る傾向がありますけれども、やり手持ち資金の豊富さから考えればですね、これはやはり賃上げに回す余力は十分にあるというふうに様々な評論家は仰っていますし、総理も政府として経済界に賃上げ要請をされておられます。

 やはり賃上げをするということが企業にとっては社員が消費者ですから、消費者が潤えば、自分たちが商売をしているマーケットも良くなりますし、当然、人的な投資をしなければですね、企業がイノベーションや生産性を上げる源というのは人材ですから、そうしたことにをもっとお金を回していくという、やはり、私は、企業経営の形にしていかなきゃいけないと思います。

 株主配当が実は物凄く増えてるんですけど、この5年間で実に倍。18年度には15兆円が使われています。これ株主配当と自社株買いの合計であります。そしてですね、時代全体の空気をですね、そうしたものを後押しをするわけです。例えば減益でも、つまり企業は利益減ってても、増配をするということについてこの経済誌ではそういう企業が出てきているということは評価できるとかですね、企業が稼いだ利益を株主に還元するのは社会的な要請との考え方が浸透してきたとかですね、内部留保というよりも、配当とか自社株買いで還元した方が株主に評価されるとの考えが広まりつつあるとかですね、まだ日本の企業の配当性向は30%前半で、アメリカ50%に比べると見劣りがする。

 こうした全体的な、社会全体的なそうした雰囲気が当然、企業の株主配当、株主還元を後押しする要素になってる一方でなかなか労働分配率は上がっていかない。こうした民間企業のですね、配当政策について、分配政策について何かお考えがあれば、是非お聞かせいただきたいなと思います」

 「純利益60兆円。営業利益83兆円。内部留保で446兆円。過去最高を記録」していながら、「2017年の労働分配率は43年ぶりの低水準」にしても、「株主配当が実は物凄く増えてるんですけど、この5年間で実に倍。18年度には15兆円」という状況に対する「なかなか労働分配率は上がっていかない」もう一方の状況にしても、アベノミクスが格差社会=不平等社会を成果としていることの物語以外の何ものでもない。

 かくこのようにアベノミクスが格差社会=不平等社会構築のエンジン以外の何ものでもないから、政府の再分配機能だけではなく、企業の配分政策を強化して「国民の不平等化をなくしていく」という提言を行った。

 「国民の不平等化をなくしていく」という言葉自体、既にアベノミクスが格差社会=不平等社会を結果としていることの物語りとなっている。
 
 安倍晋三「確かに労働分配率が低いではないか、43年ぶりじゃないかということでございますが、しかし今委員がご指摘になったように、じゃあ、43年前はですね、景気が悪かったじゃないかと言うと、そうではなくて、高度経済成長、この終りの方でございまして、まさに非常にいいときでありますから、結局ですね、え、この伸びに、企業業績の伸びにですね、賃金がついていかなかったということだろうと思います。

 今回も景気回復期が続いている中で企業の収益に対して賃金が十分についていっていないわけでございますが、経済の好循環を回していくという意味に於いてはまさに委員が仰る通りであります。

 この、先ず企業の利益を確保する。ここまで来たわけですよね。そして企業がしっかりと給料を上げ、さらには人件費も上げていく。えー、税収も増えていきますから、増えた税収で社会保障制度を拡充していく。安心感を持ち、そして一歩前に踏み出していくことができればですね、経済は成長し、設備投資によって生産性も上がっていく。

 そういう中でさらに税収も上がっていく。これは全くの経済の好循環が回っていく。消費もよくなっていくということでございますが、まあ、持続的な成長軌道をつくり上げていくことが安倍内閣の経済政策でありまして、これまでの取り組みの結果、好循環は確かに今まで申し上げましたように賃金は確実に上がっておりますから、回り始めてはいるんですが、委員が仰ったようにまだまだ不十分ではないかというご指摘もあるのは承知をしております」

 43年前は「企業業績の伸びにですね、賃金がついていかなかった」ことから、労働分配率は低い数字となった。「今回も景気回復期が続いている中で企業の収益に対して賃金が十分についていっていないわけ」だから、労働分配率が43年ぶりの低水準を招いた。

 何のことはない、アベノミクスは格差社会=不平等社会であることの自らの口からの告白そのものとなっている。このことを気づかずに言うことのできる鈍感力はさすがである。

 「経済の好循環が回っていく」と言おうと、「賃金は確実に上がっております」と言おうと、景気の実感状況に大きく乖離しているなら、意味を失い、弁解のレベルにとどまる。

 二之湯武史は最後までアベノミクスは格差社会=不平等社会であることを主張し続ける。企業は利益の配分を株主に偏らせるのではなく、「公益」を目的として従業員や地域社会への貢献をより優先させていくべきといった趣旨の発言でアベノミクスの格差社会=不平等社会の是正に言及したり、「新自由主義という考え方」が「国内に於ける格差の拡大」に繋がって、「弱肉強食、強い者勝ち組が強くなってしまっている」、いわばアベノミクスは格差社会=不平等社会の状況を作り出している結果、「政府の政策によって非常に大きな結果を出せているにも関わらずですね、そして多くの国民に均霑(きんてん)をされていかない」と、いわば平等に恩恵や利益を受けるところにまでいっていないと、二重、三重にも現在の日本がアベノミクスは格差社会=不平等社会となっていることを訴えている。

 対して安倍晋三はアベノミクスが格差社会=不平等社会をつくり出しているそもそもの原因であることを気づかないままに告白したことを棚に上げて、その責任を自らの政策にではなく、経済のグローバル化に転嫁する。

 安倍晋三「この十年間でですね、経済のグローバル化、特に顕著に進んだと思っています。

 (略)

 それはグローバル化によってですね、一部の企業や特定の人物に富が集中するのではないか。このグローバル化は私たちは置いていかれて、全く自分たちにはですね、未来がない、明かるい未来に繋がらないのではないのかと思っている人たちが増えていくのではないか、そういう人たちにしっかりと光を当てていく、その上に於いては各国それぞれが再分配の努力をしていくということにですね、そういう方々がですね、自分たちにもチャンスがあるんだということを理解されなければ、この政策は、いわばグローバル化を進めていく中に於いて各国がですね、富を得ていくということに繋がっていかないのではないかということを話しをさせて頂いたところでございます。

 日本に於いてはですね、各国程ではですね、そうした分断、あるいは富の一極集中によりですね、いわばポピュリズムの発生や保護主義の台頭ということは起こっていないわけでございます。(ここから原稿読み)その点我が国は懸命に生きる人同士が苦楽を共にする仲間だからこそ、何かでは達し合う、一致点を見い出す。古来、そのような協議の精神、まさに瑞穂の国の資本主義を、これは進めてきたことが大切は点だったのかなあと」

 「経済のグローバル化」が世界各国程には日本に於いて上層・下層の「分断」や「富の一極集中」をもたらしていない、いわば軽傷の状況にあるがと、先ず格差社会=不平等社会形成のそもそもの責任を「経済のグローバル化」に転嫁してから、日本が軽傷の現状でいられるのは「古来」からの「瑞穂の国の資本主義」を進めてきたからだと、現在のアベノミクスは格差社会=不平等社会を平気で無視する面の皮の厚いペテンをやってのけている。

 アベノミクスが「瑞穂の国の資本主義」に則っていようがいまいが、格差社会=不平等社会を答としていることに変わりはないし、二之湯武史は自らは気づかないままにアベノミクスは格差ミクスだと議論を仕掛け、対して安倍晋三にしても、責任転嫁や弁解を混じえているものの、自身は気づかないままに格差ミクスであることを承認する答弁となっている事実は変えようがない。

 安倍晋三が各種経済指標を取り上げてアベノミクスの成果を誇っているのに対して景気の実感を持てない国民が多数派を形成しているということはこういうことであろう。

 最後にアベノミクスは不平等社会=格差社会の遣り取りとなっている箇所の全文を記載しておきたいと思う。

 2019年6月10日参議院決算委員会

 二之湯武史「新しい令和の時代が開けてひと月余りが経ちました。この時代はですね、私は大転換の時代だと確信をしております。例えば明治維新で近代国家が平成まで一貫して増え続けた人口が減少していく時代に入っております。また、AIといった技術革新、また地球規模の気候変動、こうしたものが我々の人間のあり方そのものを変えてしまうような、そんな時代に入ってきたと思います。

 要するにこれまでの成長一辺倒の社会ではですね、成長とまた心の豊かさといったものが調和していく成熟社会に私は入っていくべきであり、またそのために大きく発想転換しなければならない。まさに令和、ビューティフルでありまして、そうした非常に象徴的なこの元号の名前も含めてですね、総理はですね、この令和という時代は先ずどのように、大きく、すみません、通告はしてないんですけども、この大きな捉え方、どのようにお感じていらっしゃるのか、お聞かせ頂きますか」

 安倍晋三「当然の質問ではありますが、令和の時代っていうのは、人それぞれの良さを花開かせることができるという時代にしていきたいという思いを込めているところでございますが、そこで今、委員がご指摘なされたように生産年齢人口既にこの6年間で5、6万人、減少しております。しかしそれでもなお、私たちは成長できるという思いの中で経済政策を進めてきましたが、10%以上、実質GDPは成長しました。これがなぜ可能になったかということはですね、新たに多くの女性の方々が働き始めて頂いた。そして高齢者の方々もですね、仕事を続けようという選択肢を取れる状況が作り出すことができたことによってですね、経済成長するとはできたのではないか、こう思っているわけであります。

 希望すれば、それぞれの皆さんがですね、様々な目標に向かって進んでいくことできる社会を作ることによってまさに我々は経済を成長させることができた。と同時に人口減少していますが、今委員がご指摘になったよに第4次産業革命が起こる、AI、IoT、ロボット、こうしたものはむしろ雇用にはマイナスではないかという指摘があるわけでありますが、日本の場合は生産年齢人口が減少していきますから、その中で思い切って導入が可能となっていくわけであります。

 まさにSociety5. 0を実践していくことによって経済を成長させ、そしてそれぞれがその目標に向かって女性、高齢者、勿論、だけではなくて、障害がある方やまたは難病を抱える方々も、それぞれ自分の人生の目標に向かってですね、進んでいく。そういう社会を創り出すことによって日本は豊かに成長していく、そして世界のまさに目標とでも言うべき、誇るべき日本を創り上げていくことができるんではないか、令和の時代はそういう時代にしてきたいと、このように考えております」

 二之湯武史「その素晴らしい時代を創っていく一翼を担っていきたいなと思っております。そんな中ですね、確実に分かっていることは、今、総理仰ったように、急激な高齢化社会に於いてもですね、様々なシステムを持続可能にしていくためにやはり持続的に安定的な経済成長を続けていかなければいけないということだと思います。今生産年齢人口が減っても、成長ができたというお話がございました。

 まさにこの6年半でアベノミクスによって大きな成果は上がっております。私が言うまでもなく、過去最大のGDP、560兆円、そして企業の純利益も60兆円を超えてます。これはバブル期を大きく上回る、2倍以上上回るような水準。また今年度の税収見込みはですね、バブル期を大きく上回る62.5兆円と。そして労働支援の方はほぼ完全雇用が達せられたという話もありますし、例えば政権前には830万人に過ぎなかった外国人観光客、これが3100万人を超えた。またインフラ輸出、農産物輸出、こうしたこれまで余り手をつけられなかった政策も、非常にいい結果を出している。

 これは素晴らしいことだと思います。今アベノミクス、また安倍政権が一番超えなければならない課題、これ私率直に申し上げて、やはり多くの国民の皆さんの実感だというふに思っています。今磯崎委員の方からもお話がございましたが、例えばこの5月のJNNの世論調査もですね、安倍内閣の支持率は57%で非常に高いんですが、一方でこの景気回復や所得向上の実感がないとおっしゃる方が実に87%もおられると。

 我々も毎週末、地元に帰りまして、各界各層、色んな皆さんと意見交換をし、交流をしております。そんな中でもですね、やはりそうした実感はないんだけども、地元に回ってこなければダメじゃないか、こういうお話をずっと頂いているわけです。例えば農業者の皆さん、小規模事業者の皆さん、保育園や介護施設の皆さん、年金生活者の皆さん、本当にそうした方々からそうした期待を頂く。その期待に応えなきゃいけないというふうに私も思っておりますが、総理にお伺いしたのは多くの方々が実感が持てないということについての課題意識についてどのようにお考えでしょうか」

 安倍晋三「あの、先程磯崎委員の質問にお答えをさせて頂いたときにですね、我々の使命としては働きたい人は働く状況をつくっていくという意味に於いては今年の春高校、大学を卒業した皆さんの就職率は過去最高水準を維持することができました。そして完全雇用を事実上、達成されているわけでございますから、それは達成できている。そしてまた賃上げに於いてもですね、今世紀に入って最も高い水準の賃上げも続いているわけでございますし、地方に於いてでですね、やはりまで実感がないという方もたくさんいらっしゃる。

 今、委員が仰ったように全ての世論調査でそうなっているのは事実てございます。ただ、一方ですね、、地方に於いて例えば過去の景気回復期、小泉政権のときスタートした、第1次安倍政権、福田政権まで続いた先般の6年間の戦後最長の回復期に於いては日本銀行の地域別状況判断に於いてはですね、この回復期を通じてずうっと北海道と四国は、地区は実はマイナスで、プラス、マイナス、マイナスの方が多いというマイナスで推移していたんですが、今回はですね、全ての地域に於いて、まあ、プラスで推移しています。

 前回、プラス、全ての地域、あの、プラスで続く、5年間、6年中、5年間、この5年間だけ、プラスで推移したのは、前回は、えー、これは東海地区とですね、関東地区だけだったんですが、今回9地区全部でプラスで推移しているということは、先程委員が上げられたように観光と農業がですね、大きく寄与している地域に寄与していることによってそうなっていると。
 
 また、殆どの県でですね、法人関係税収は4割、5割、この6年間の税収は増えているんですが、そういう状況が、ただ実感としてはそういう実感であるというのは事実、えー、おー、えー、であろうと、感じていらっしゃる方が多いと、いう方がいらっしゃることは承知をしておりますが、国民一人ひとりの方々に景気回復の波が広がっていくようにですね、我々も、そういうことを感じておられない方々に光を当てていくこともですね、私たちの使命であろうと、こう思っております。

 最大の課題である少子高齢化を克服し、全世代型社会保障制度への転換を図ると共に、また東京一極集中を是正し、地方への新たな人の流れをつくり出すと共に、また、就職氷河期世代の方々への支援などにも取り組み、誰でも、いくつになっても活躍することができる一億総活躍社会の実現を図っていきたいと、こう考えております」

 二之湯武史「そこで私はいくつか提言といいますか、いくつかお示ししていきたいと思っております。再分配という機能がございます。これは政府の再分配、社会保障でありますとか、また、税を色んな形で、事業で所得移転をしていく。これによって国民の不平等化をなくしていく。

 こういう機能は実は私は民間企業にもあるんだと思っております。政府に於いてですね、この10月の消費税率10%に引き上げ財源を幼児教育、また高等教育の支援へと向ける。つまり高齢者中心の社会保障を全世代型の社会保障に改革をしていく。

 また経済状況によらずに高等教育を受けられる。そうした低所得者への支援を充実させていく。まさにこれは再分配機能だと思います。一方でですね、民間における再分配ってのが私はもう少し改善の余地があるのではないかと常々思っております。

 昨年、日本企業は、先程申し上げました、純利益60兆円。営業利益83兆円。そして内部留保で446兆円と。いずれも過去最高を記録しているわけです。企業の再分配と言えば、先ずは従業員への給料のアップ。そして取引先、下請けの単価の向上、また株主の配当、地域への様々な数の寄付。こうしたものがあると思いますが、この企業の配分政策ですね、やや偏りがあるんじゃないかなあと。

 つまり2017年の労働分配率は、これだけ企業が最高益を上げているにも関わらず、43年ぶりの低水準でありました。そもそも労働分配率は景気がいいときは低く、悪いときには高く出る傾向がありますけれども、やり手持ち資金の豊富さから考えればですね、これはやはり賃上げに回す余力は十分にあるというふうに様々な評論家は仰っていますし、総理も政府として経済界に賃上げ要請をされておられます。

 やはり賃上げをするということが企業にとっては社員が消費者ですから、消費者が潤えば、自分たちが商売をしているマーケットも良くなりますし、当然、人的な投資をしなければですね、企業がイノベーションや生産性を上げる源というのは人材ですから、そうしたことにをもっとお金を回していくという、やはり、私は、企業経営の形にしていかなきゃいけないと思います。

 株主配当が実は物凄く増えてるんですけど、この5年間で実に倍。18年度には15兆円が使われています。これ株主配当と自社株買いの合計であります。そしてですね、時代全体の空気をですね、そうしたものを後押しをするわけです。例えば減益でも、つまり企業は利益減ってても、増配をするということについてこの経済誌ではそういう企業が出てきているということは評価できるとかですね、企業が稼いだ利益を株主に還元するのは社会的な要請との考え方が浸透してきたとかですね、内部留保というよりも、配当とか自社株買いで還元した方が株主に評価されるとの考えが広まりつつあるとかですね、まだ日本の企業の配当性向(純利益に対する割合)は30%前半だ、アメリカ50%に比べると見劣りがする。

 こうした全体的な、社会全体的なそうした雰囲気が当然、企業の株主配当、株主還元を後押しする要素になってる一方でなかなか労働分配率は上がっていかない。こうした民間企業のですね、配当政策について、分配政策について何かお考えがあれば、是非お聞かせいただきたいなと思います」

 安倍晋三「確かに労働分配率が低いではないか、43年ぶりじゃないかということでございますが、しかし今委員がご指摘になったように、じゃあ、43年前はですね、景気、悪かったじゃないかと言うと、そうではなくて、高度経済成長、この終りの方でございまして、まさに非常にいいときでありますから、結局ですね、え、この伸びに、企業業績の伸びにですね、賃金がついていかなかったということだろうと思います。

 今回も景気回復期が続いている中で企業の収益に対して賃金が十分についていっていないわけでございますが、経済の好循環を回していくという意味に於いてはまさに委員が仰る通りであります。

 この、先ず企業の利益を確保する。ここまで来たわけですよね。そして企業がしっかりと給料を上げ、さらには人件費も上げていく。えー、税収も増えていきますから、増えた税収で社会保障制度を拡充していく。安心感を持ち、そして一歩前に踏み出していくことができればですね、経済は成長し、設備投資によって生産性も上がっていく。

 そういう中でさらに税収も上がっていく。これは全くの経済の好循環が回っていく。消費もよくなっていくということでございますが、まあ、持続的な成長軌道をつくり上げていくことが安倍内閣の経済政策でありまして、これまでの取り組みの結果、好循環は確かに今まで申し上げましたように賃金は確実に上がっておりますから、回り始めてはいるんですが、委員が仰ったようにまだまだ不十分ではないかというご指摘もあるのは承知をしております。

 委員ご指摘の(ここから早口に原稿読み)、いわば公益資本主義の達成水準のところでありますが、持続可能な開発目標、sdgsやesg投資への世界的な関心の高まりに象徴されるように地域社会や環境といった公益にしっかりと投資することが中長期的には利益を生み出す企業の持続的な成長に繋がっていくわけあります。安倍内閣としては現在、このような中長期的な企業価値の向上を目指す観点からコーポレートガバナンス改革に取り組んでいます。

 株主のみならず、顧客、従業員、地域社会との様々なステークホルダーの立場を踏まえた経営が行われる姿勢を重視した改革を今後とも努めていきたい、考えています」

 二之湯武史「ところでですね、ちょっとこのパネルをご覧頂きたいんですけれども、今の総理が仰ったコーポレートガバナンスコード(上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の指針)、そしてスチュワードシップ・コード(コーポレートガバナンスの向上を目的とした機関投資家の行動規範)、資料2ですね。こうしたものを通じて、実はこの二つのコードにはですね、企業の持続的な成長を促す観点から、公益のためにですね、企業の持続的成長、中長期的な価値向上に資するためとかですね、会社が株主顧客、従業員、地域社会の立場を踏まえ、透明・公正、迅速かつ誤らない意思決定を行うための基本原則とかですね、こうしたことが確かに入ってるんです。しかしこの運用がですね、私はやや問題なのかなと、つまりこの解釈がどちらかと言うと、その株主をしっかりとサポートする、株主への配分を進めるような形に実際は運用されてるんじゃないだろうかと。

 特にこの5年間の過去を見ますと、そうした傾向があることは否めないと思っております。で、政策というよりも上のラインで、今世界をある種、世界の指導者の考え方を規定している考え方も、つまり新自由主義的な考え方というのは、今、各国の指導者層にしっかりと浸透してですね、経済政策と言えば、もう、そういう政策に私はなってしまってるんじゃないかというふうに思うんです。

 で、例えば今世界的に、昨日もG20、麻生大臣、河野大臣、世耕大臣、それぞれの会合に参加をされておられましたが、世界的に、例えば中南米でありますとか、もしくはヨーロッパでありますとか、そうしたところでポピュリズムと言いますか、そうした傾向を持つ政党が非常に勢力を伸ばしている。

 そしてそれはまあ識者によりますと、やはりかつて中間層であった方々が今のその新自由主義的な政策、20年、30年の経過によってその中間層であるという自覚がどんどんなくなってですね、今の政府や、また今の大企業というものに対する、いわゆる既存エリートに対するですね、不信感というものが高まり、その不信感を上手く突いた、大衆をうまく、何と言いますかね、扇動できる政治家がそうした支持を獲得していると、大きな世界的な構造があるのではないか、まあ、こういうことを私は非常に危惧をしておりまして、今の米中の摩擦にしてもですね、今、大きな話をしてるように聞こえかもしれませんが、アメリカと中国が貿易摩擦になれば、日本の実体経済に物凄く大きな影響があるわけであります。

 要するに世界的な流れと言うのは、我々生活者一人ひとりの生活者の生活や視点に物凄く私は関わっている人に重要な問題だというふうに思っておりますし、本来であればですね、そうしたポピュリズム的な政策、例えば中南米のお国などでは、一人、10万円、バーンと配るとかですね、すべての医療費をタダにするとか、こうしたことは非常に耳触りがいいわけですけど、良識ある国民が多ければ、そのための財源はどうなっているのかとか、それが本当に何年も続くのかという良識ある判断によってですね、そうした政治家なかなか選ばれないということがあるわけですけども、今必ずしもそうじゃなくなっている。

 ま、こういう世界的なポピュリズムと言いますか。そうした政権が国内の保護主義に向かい、ある種、経済圏がブロック化していくような、そういう大きな傾向に私はあるのではないかという危惧も持っています。

 ちょうどこのG20という世界の大国が集まる、世界の共通の課題を議論する、非常にいい機会がある中で私が問題意識として申し上げた世界的な保護主義と言いますか、もしくは国内に於ける格差の拡大と言いますか、それが元を辿ればですね、新自由主義という考え方、それに弱肉強食、強い者勝ち組が強くなってしまっている。そういう側面があるのではないかと私は問題意識を持っておりまして、そういう考え方が例えば企業の利益の分配政策でありますとかですね、そういうところにやはり目に見えない影響を与えていて、そして折角このアベノミクスによってですね、政府の政策によって非常に大きな結果を出せているにも関わらずですね、そして多くの国民に均霑(きんてん・平等に恩恵や利益を受けること)をされていかない。

 こういう構造的な問題についてどのような問題意識をお持ちかということをお聞きしたいと思います」

 安倍晋三「この十年間でですね、経済のグローバル化、特に顕著に進んだと思っています。日本に於いても、例えばTPPイレブンやEUのEPAを締結し、今実際に行われています。ちょうど伊勢志摩サミットG7、日本議長、私、議長だったんですが、そのときも各国の首脳に確かに申し上げたんですが、急速なグローバル化に対して各国激しい反対運動が起こっているという話をしました。なぜかと言えばですね、それはグローバル化によってですね、一部の企業や特定の人物に富が集中するのではないか。このグローバル化は私たちは置いていかれて、全く自分たちにはですね、未来がない、明かるい未来に繋がらないのではないのかと思っている人たちが増えていくのではないか、そういう人たちにしっかりと光を当てていく、その上に於いては各国それぞれが再分配の努力をしていくということにですね、そういう方々がですね、自分たちにもチャンスがあるんだということを理解されなければ、この政策は、いわばグローバル化を進めていく中に於いて各国がですね、富を得ていくということに繋がっていかないのではないかということを話しをさせて頂いたところでございます。

 日本に於いてはですね、各国程ではですね、そうした分断、あるいは富の一極集中によりですね、いわばポピュリズムの発生や保護主義の台頭ということは起こっていないわけでございます。(ここから原稿読み)その点我が国は懸命に生きる人同士が苦楽を共にする仲間だからこそ、何かでは達し合う、一致点を見い出す。古来、そのような協議の精神、まさに瑞穂の国の資本主義を、これは進めてきたことが大切は点だったのかなあと。

 こうした日本が大切にしてきた価値がですね、今必要とされており、重要な役割を果たすことができるのではないか。まさにビューティフルハーモニーではないかと考えているわけでありますが、我が国が初めて議長国として臨む今月中のG20大阪サミットでは様々な論点について各国の対立を強調するのではなくて、各国が団結できる共通点を見い出していきたいと、こう考えております」

 二之湯武史「有難うございます。この資料1にですね、まさにビューティフルハーモニーの企業評価の在り方というものを提案させて頂いております。これまではともすればですね、この括弧してある『利益』というところが企業の評価の中核、まさに今そうだと思います。

 しかし、今、総理仰ったようにやはり一部の人に富が集中してはならない。また、民間企業という、その企業というフィルターを通してですね、様々な形でその利益を配分していくことによって社会が持続可能なものになる。また一人ひとりが豊かで幸せになっていく。こういう企業評価の在り方を通じて、例えば、そうしたようなG20の場を通じてですね、是非とも私はG20の最ベテランの総理でありますから、各国の首脳の信頼も大きいと思いますが、発言力も大きいと思います。今世界が共通に抱えてる問題について是非ともリーダーシップを取って頂きたいと思いますし、麻生大臣、今回連帯課税のお話をしようと思っておったんですが、時間が少し足りません。あのアマゾンやグーグルといった大きな巨大企業がですね、その事業にふさわしいだけの税額を払っていない。

 今あるEU委員会の調査では全産業が23%に比べてですね、巨大IT企業は9.5%しか払っていないんじゃないかと、こういう世界全体が共通の課題とするものについても、我が国がリーダーシップを取って、そして在り方を世界各国に示していく。もし麻生大臣、よろしければ、一言だけお願いできるでしょうか、すみません」

 麻生太郎「あの、頂いた質問と違って、纏めてきましたんで、確かに在るべき、支払うべき税金を払っていない企業がある。まあ普通なら脱税ですとかですが、それが合法的にそういったことがやれるという今の国際社会の中の在り方、加えてデジタライゼーションという名前の、いわゆる金融技術の進歩によって容易にしかも極めて巧妙にこれがやれる状況というのを放置しているというのは、少なくとも先進国、いわゆる財務大臣・大蔵大臣の責任ではないかと、6年前のG7の財務大臣、中央銀行総裁で、私の方から提案して、それからあれこれ6年かかったんだと思いますが、3年目で賛成する国は60カ国集めて、今回130までいったんだと思いますが、それによって払う税金によって潤う国、潤わない国があった、差額が全体出ますが、どうやって纏めるか、最大の問題です」

 二之湯武史「すみません、終わります。ありがとうございました」

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安倍晋三の対枝野幸男党首討論:不都合を隠すウソ八百 自民党は民主党政権提案の最低賃金1000円に長いこと反対していた

2019-06-24 12:26:07 | 政治

 西暦2019年6月19日の党首討論で立憲民主党の枝野幸男は財務大臣麻生太郎諮問の金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」が、〈高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとな〉り、〈収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる。〉云々を一つの結論としている指摘をマスコミと同様に年金や老後に対する不安を与えるもの、年金への信頼を揺るがせる問題点として捉えて、安倍晋三を追及、対して安倍晋三は誤解を与えたが、年金の持続可能性はマクロ経済スライドを含めて様々に手を打っていて、安心・安全でることと齟齬はないといった文脈で反論している。(文飾は当方)

 遣り取りの全文は昨日西暦2019年6月22日の当「ブログ」を参考にされたい。

 安倍政権の様々な手のうちの最重要な柱として、勿論、アベノミクス経済政策の成果を高々と掲げている。いわば景気がよくなってこその社会保障制度の持続可能性であり、年金の安定的給付の基盤であり、給付と負担のバランスの保証であり、全てはアベノミクス景気の賜物だというわけである。

 だが、公的年金に対する不安は小さくない。「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」 (内閣府大臣官房政府広報室/2019年1月30日)から見てみる。

「少子化、高齢化が進んでいく中で、将来の公的年金制度全体の姿はどのようなものになるのか」47.1%
「自分は年金をいつから受け取れるのか」39.2%
「自分の保険料負担はどうなっていくのか」26.2%
「年金制度全体の給付と負担の関係はどのようになっているのか」24.4% (回答2531人に於ける複数回答)

 公的年金への不安から、カネが貯蓄に回ることになって、個人消費の低迷を招いていると言われている。安倍晋三の安心・安全説にも関わらないこの不安について何も語らない。枝野幸男も党首討論で、「今回の報告書(金融庁報告書)が出た後も、安心ばかりは強調されて、その多くの有権者の皆さんが抱えている不安に向き合っていないということに対して多くの皆さんが怒っておられるのじゃないかと思います」と言っている。

 安倍晋三の"公的年金安心・安全"説に関わる発言をピックアップしてみる。

 安倍晋三「これも委員のご承知の通り、まさに給付と負担のバランスでありますが、給付をするためには負担をして頂かなければならない。と同時に年金というのは、これは年金の保険料とそして同時に税金を投入する。さらには年金の積立金とそしてその運用益でございます。そこで今委員が仰ったように若い人たちの給料が増えることというのは支え手のみなさんの保険料も増えていきますから、年金財政にはプラスになっていくことは当然のことであろうと思います。

 そういった意味に於きましてはこの6年間で380万人の方々がさらに働き始めた。正社員に於いてもこの6年間で150万人増えました。我々が政権交代前は50万人正社員が減っていたんですが、150万人増えたことによってですね、例えばマクロ経済スライドの数字はですね、0.9から0.2に大きく、これはある意味ではこれを改善と捉えているわけでありますが、数値としては改善した。これ平均寿命が延びているにも関わらず、これは働いている方々の保険料が増えたことによって回転をしているということでありますから、まさに委員がおっしゃったように経済が成長していくことによってですね、新たな働き手が増えていく。まさにが働きたい人が仕事ができるという環境を作ることが極めて重要であります。

 こうして経済が成長していくことによってですね、先程申し上げましたように(第2次安倍政権の6年間で)44兆円のですね、44兆円、運用益が出ているわけでありまして、民主党政権時代の約10倍、運用益が出ている。つまりしっかりと経済を成長させ、働き手を増やし、雇用を増やし、そのことによってですね、当然保険料収入も増えていく。マクロ経済スライドのマイナス分も減っていくわけでございますが、これからもしっかりと増やしていきたい。

 そして最低賃金につきましても、我々政権を奪還してから、この6年間で125円増えています。民主党政権時代の皆さんも頑張ったと思いますよ。みんなさんのときには36円増えている。みなさん3年間で、我々6年間で。しかし私たちは倍なんですが、3.5倍、最低賃金は増えているということであります。

 経済を成長させ、収入を増やし、そして当然、税収も、今、税収も活用して、社会保障の基盤を安定していく。成長と分配の好循環をしっかりと作っていくということであります。そして最初に申し上げましたように皆さんの収入が増えていくということについては、これは社会保障の基盤を大切にしていくことに於いて大変大切であり、しっかり私たちはそのことを行っていくことを申し上げておきたいと思います」

 この安倍晋三の答弁の前に枝野幸男は現在の社会保障制度から、医療、介護、保育、障害などの社会保障サービスを受ける際に利用者が負担する自己負担を世帯で合算し、その合計額が一定額を超える場合に超過分を国が負担する「総合合算制度」に転換すべきであること、抜本的な所得底上げ等を提案しているが、安倍晋三は聞き耳を持たず、我が道をいく姿勢を貫いた。

 安倍晋三は「(年金積立金に関して第2次安倍政権の6年間で)44兆円のですね、44兆円、運用益が出ている」と言っている。年金の運用は国内外の債券や株式投資によって行われる。運用利益を最大化方向に持っていくためには好景気による株式の活況が最大の味方となる。当然、第2次安倍政権の6年間で44兆円の年金運用益はアベノミクスの成果そのものを示していることになる。

 「この6年間で380万人の方々がさらに働き始めた。正社員がこの6年間で150万人増えた。我々が政権交代前は50万人正社員が減っていたが、150万人増えた」ことも、アベノミクスの成果の背景の一つと言うことになる。

 「成長と分配の好循環をしっかりと作っていく」と言っていることの「成長と分配の好循環」とはアベノミクス経済の個々の成果を受けて回転することになった経済全体の優れた自発的発展性を譬えていることは断るまでもない。いわば「成長と分配」が順調にスタートしている。そして「成長と分配」の顕著な成果は先ず賃金に現れなければならない。そして事実現れている。現れていなければ、「成長と分配の好循環」などと口が裂けて言えない。

 安倍晋三は「5年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われました」と誇り、「企業の皆さんの賃上げ率は20年間で最高となりました」と誇り、主たる指標となる賃金アップをモノサシに「成長と分配」の好調さを証明している。

 2018年7月20日の記者会見では、「経団連の幹部企業への調査では、4分の3以上の企業で年収ベースで3%以上の賃上げが実現しました」と「成長と分配」の順調に機能していることを誇らかに謳い上げている。だが、経団連は日本の大手企業を中心に構成されている団体である。2018年年11月30日中小企業庁発表の(2016年6月時点) によると、中小企業・小規模事業者数は357.8万者(99.7%)であり、うち小規模事業者が304.8万者(84.9%)を占めていて、大企業は1万1157者(0.3%)のみである。

 そして従業員数は中小企業は大企業の約2倍以上占めている。

 「2019年4月の昇給率はどうなる?中小企業の平均、大企業の平均は?」(転職活動の歩きかた)から、大企業と中小企業の賃金格差を見てみる。

 2018年の大企業の平均昇給額  2.54%
 2018年の中小企業の平均昇給額 1.99%。

 そして2019年のそれぞれの賃上げ率を予想している。

 大企業の賃上げは2.2%前後
 中小企業は1.9%前後

 対して2019年大企業春闘平均妥結額2.46%、中小企業は連合発表の第1回集計結果は前年同期と変わらない2.16%の賃上げ率となっている。たいして差はないように見えるが、「企業規模間の賃金格差、古くて新しい課題」(リクルートワークス研究所/2018年01月19日)には大企業と中小企業の賃金格差を次のように記述している。
 
〈日本における企業規模による賃金格差は、従業員数1000人以上の企業(以下、「大企業」と呼称)を100とした場合、100~999人の企業(以下、「中企業」と呼称)では81.5、99人以下の企業(以下、「小企業」と呼称)で72.6となっている(厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」)。相当程度の賃金格差が存在することがわかる。〉

 しかも一世帯辺りの平均所得が1989年(平成元年)566.7万円だったのに対して2016年(平成28年)は560.2万円と6万5千円も減少している中での僅かな賃上げであり、賃上げ格差である。大多数を占める中小企業社員がただでさえ確固としたルールが確定していない公的年金に不安を抱くのは無理もない。

 要するに安倍晋三が誇っている賃上げは大企業に偏った「成長と分配の好循環」アベノミクス成果であって、賃金格差という不都合や一世帯辺りの平均所得が減少していると言った不都合を隠すウソ八百に過ぎない。ウソは一つや二つではないから、ウソ八百ということになる。

 大体が賃上げ自体が安倍晋三が経団連の尻を叩いて成就させた官製相場であることは周知の事実となっている。いわばアベノミクスの経済政策を実行していく過程で企業側に自律的に賃上げを促し、「成長と分配の好循環」に火をつけることになった成果ではない。

 要するに「5年連続で今世紀最高水準の賃上げ」にしても、「賃上げ率は20年間で最高」にしても、そこに賃金格差や平均所得の減少という不都合を隠していて、隠していることに気づいているからこその最低賃金のなお一層の底上げを自らの政策にしたはずだ。

 改めて枝野幸男に対する党首討論での安倍晋三の最低賃金についての発言を取り上げてみる。

 「最低賃金につきましても、我々政権を奪還してから、この6年間で125円増えています。民主党政権時代の皆さんも頑張ったと思いますよ。みんなさんのときには36円増えている。みなさん3年間で、我々6年間で。しかし私たちは倍なんですが、3.5倍、最低賃金は増えているということであります」

 「3.5倍、最低賃金」が増えても、格差解消とまでとてもとてもいっていない。だから、「2019参院選自民党政策バンク」に次のように盛り込むことになった。

 〈特に、最低賃金については、地域経済や中小企業・小規模事業者の実情、地域間格差に配慮しつつ、引き続き年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げることで、全国加重平均が1,000円になることを目指します。〉

 賃上げを経済界にお願いする他律性頼りではなく、最低賃金の引き上げこそ、「成長と分配の好循環」を自ら動かすアベノミクスに於ける自律的発動の一つとなるはずである。

 だが、自民党は民主党政権の間、最低賃金の引き上げに反対してきた。2010年10月13日衆議院予算委員会。首相は民主党菅直人。質問者は自民党西村康稔(やすとし)

 「パネルにありますけれども、資料にもお配りしていますが、企業が雇用拡大をするためにいろいろやろうとする中で、五重苦、まさに雇用空洞化政策を打たれている。その一つが先ほど来議論している円高、デフレであり、二つ目がCO2の25%削減。三つ目が高水準の法人税率、これもこれから議論します。それから、労働者派遣の禁止、最低賃金の値上げ。

 こうした中で、どうやって企業が日本に立地をして、雇用をふやすことができるのか。ぜひ総理には、供給サイドは応援しない、こういうメッセージを常に出されていますけれども、供給サイドにぜひ目を向けていただきたいと思います」

 2010年11月8日衆議院予算委員会。首相は同じく菅直人。質問者は自民党石破茂。

 「失業を増大させる、経済の足を引っ張る、そのような政策はすぐにやめるべきだと私たちは思っています。例えば製造業への派遣の禁止、これでどれだけ現場の製造業が悩んでいるか、苦しんでいるか。そういうことであれば、そういう人たちはもう採用できませんよ。正規の雇用なんていったらば、それはそんな賃金は払えません。外国に出るしかない。

 これが企業の足を引っ張ると言わないでどうする。最低賃金千円が払えるような会社がどこにありますか。CO2二五%削減、これが企業にどんな負担になっているか。そして高い法人税。それは、入りと出を同一にするんだ、租特を外すとか、ほかの税制を引き上げるとか、すそ野を広げるとか、こんなことをやっていて、何で法人の負担が減りますか。このようなことはおかしい。そして円高が続いている。このようなことは続けるべきではない、私はこのように考えております」
 
  2010年11月9日衆議院予算委員会。首相は同じく菅直人。質問者は自民党斎藤健。
 
 「今回の空洞化の危機は、前回2回の比ではありません。本当に素材産業までがこの国内から海外へ出ようとしているんです。そしてそれを後押しするような、ここに書いてありますような、製造業への派遣禁止、最低賃金千円、CO2は15年で30%削減をしろ、法人税は40%で、5%下げるけれども、そんなものは財源を出せ、そして一ドル80円の円高、これで国内で事業をする企業があるのかということを私は申し上げているんです。

 本当に厳しい危機です。例えば、日産のマーチは今度タイで生産をして、国内向けは全部タイから日本に輸出をするという決断をいたしました。タイは八年間法人税がただであります。そして、日本から輸入する部品も関税はただであります。今や世界は、優秀企業、優良企業を獲得する厳しい競争の時代に入っているんです。そういう認識が今の政府にあるのか。あったらなぜ、製造業への派遣とか最低賃金1000円とか、これだけの政策を並べちゃうんですかということを言っているんです。

 一つ一つはそれなりの理由があったとしても、これだけ重なったら、企業は全部外へ出ていってしまいますよ。直ちにこれらの施策、特に最初の三つを停止すべきだと私は思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います」

 かくまでも民主党政権の最低賃金の1000円への引き上げに反対していた。

 安倍晋三は民主党時代の景気悪化期には最低賃金の引きげは無理であり、景気が回復してこその安倍政権下の最低賃金引き上げだと言うだろうし、2016年6月2日閣議決定の「一億総活躍プラン」で、〈最低賃金については、年率3%程度を目途として、名目GDP 成長率にも配慮しつつ引き上げていく。〉。そして〈全国加重平均が1000円となることを目指す。このような最低賃金の引上げに向けて、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図る。〉としたのだろうが、製造業への派遣対象業務拡大等が企業の人件費抑制策に利用されて、賃金格差を生み、企業のみが一人勝ちする利益拡大の元凶となったことは隠している。

 そして安倍政権下の法人税減税が企業の利益拡大に拍車をかけて、財務省2018年9月3日発表の2017年度の大企業の内部留保は2016年度+22.4兆円、第2次安倍晋三政権発足時の2012年度から1.28倍増の425.8兆円にまで膨れ上がった。

 現在に至るまで格差拡大が続いている不都合な事実は隠し、中低所得層を置いてきぼりにしてきた。

 小泉政権が製造業への派遣対象業務拡大を打ち出し、企業が派遣人材を人件費抑制の道具とする前にせめて最低賃金を1000円に上げていたなら、現在の賃金格差を少しは緩和できていた可能性は否定できない。民主党政権時代の最低賃金1000円が安倍政権下でさらに引き上げられていったなら、企業の内部留保も少しは制御できていたかもしれない。要するに安倍政権下での格差拡大に歯止めがある程度はかかっていたかもしれない。

 だが、自民党は最低賃金1000円への引き上げに強硬に反対した。安倍晋三は民主党政権下の景気悪化時代を指して、「民主党政権は悪夢だった」と非難しているが、2009年9月にスタートして、2012年12月26日まで続いた民主党政権下での大企業の内部留保額から、その利益拡大を見てみる。

 2010年 266兆円
 2011年 268兆円
 2012年 272兆円

 円高で企業経営を圧迫していると言われても、内部留保を着実に増やしていた。対して2012年の最低賃金最高額の東京は850円、最低が沖縄や長崎、鳥取、佐賀などの653円で、1000円に遥かに到達していなかった。

 2007年9月26日から2008年9月24日まで首相を在任した福田康夫は2007年12月に「改正最低賃金法」を成立させ、2008年7月1日に施行させ、2008年3月の春闘時に自身も大企業側に賃上げを要請している。2008年当事の最低賃金は最高が東京都と神奈川の766円、最低が沖縄や宮崎の627円となっている。

 福田康夫が経済界に賃上げを要請したときに、当ブログ《方向オンチな福田首相の賃上げ要請 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》(2008.3.9)に最低賃金を1000円に上げるには大企業の下請け単価を引き上げなければ、中小企業の経営を圧迫することになって、中小企業自体が最低賃金の1000円化に反対すると書いた。

 〈最低賃金一律千円によって経済波及効果が生じるまでの中小企業の経営悪化問題は、これまで石油ショックやバブル崩壊、その他の要因で景気が減速したとき、大企業は下請け叩きで急場を凌いできたのである。大企業の利益を社員の賃上げに回すのではなく、下請け中小企業の下請け単価上げに回して、側面から最低賃金上げによる中小企業の負担を軽減し、その経済効果が下請けではない中小企業に波及するのを待つことで解決するのではないか。

 この方法だと大企業と中小企業との賃金格差の縮小、また都市と地方関係なく一律最低賃金千円によって、都市と地方の経済格差の縮小に貢献しないだろうか。


 民主党の主張どおりに最低賃金を一律千円に上げていたなら、身分不安定な非正規社員に先ず恩恵が及び、現在の物価高騰にもそれ相応に耐え得る元気を与えて、彼らの悲惨な生活を少なからず救ったのではないだろうか。当然福田内閣の支持率にも影響していく。

 格差社会だとかしましく言われている。福田首相の正規社員により確かな恩恵をもたらす賃上げ要請は例え下層の非正規社員に僅かながらでもおこぼれが行き渡るとしても、賃金格差・生活格差を逆に大きくする恐れのある方向オンチな政策に思えて仕方がない。〉 

 既に触れているが、安倍晋三は2016年6月2日の閣議決定の「一億総活躍プラン」で、最低賃金の年率3%程度を目途とした全国加重平均1000円の目標を掲げ、2019年参院選マニフェストで最低賃金の全国加重平均1000円を掲げたものの、日本商工会議所など中小企業3団体は2019年5月28日に3%を上回る目標の新たな設定と全国一律の目標に反対する緊急提言を発表している。要するに最低賃金の引き上げは中小企業の経営を圧迫すると依然として見ているからだろう。

 安倍晋三は2016年1月22日の施政方針演説で、「原材料コストの価格への転嫁など、下請企業の取引条件の改善に官民で取り組みながら、最低賃金についても、千円を目指し、年率三%を目途に引き上げます」と公約した。

 要するに原材料コストが上がった場合、大企業はそのコスト上昇分を大企業向け単価に上乗せすることを許さず、中小企業に負担させていた。安倍晋三はこの負担解消を官民で取り組むと宣言した。だが、日本商工会議所など中小企業3団体が安倍政権の最低賃金政策に反対したのは中小企業が大企業に対しての価格転嫁が困難か、不可能な状況に立たされていることに変わりはないことを示している。

 逆であるなら、下手な最低賃金上げが中小企業の経営を圧迫すると見ることはなく、逆に中小企業従業員の賃金が上がると喜ぶはずである。要するに安倍晋三は中小企業から大企業に向けた原材料コストの価格への転嫁がスムーズに行うことができる大企業と中小企業間の意思疎通を確約していながら、機能させずにいた。このことは大企業の側に立っていたことを意味する。

 大企業の側とは中低所得層の側ではなく、高所得層の側に立っていることを示す。それゆえの上の賃金に比較して下の賃金の伸びが抑えられている収入の格差拡大であり、その格差拡大が招いている公的年金に対する中低所得層の不安ということでなければならない。

 安倍晋三は賃金格差の拡大や一世帯辺りの平均所得が減少していると言った不都合だけではなく、最低賃金を1000円にまで上げることが中小企業の経営圧迫に繋がらないように原材料コストの価格への転嫁がスムーズに行うことができるシステムを構築する約束をしながら、それができていない不都合を隠したまま最低賃金上げを言い、上に偏っている不都合を隠して「成長と分配の好循環」を言い立てたり、公的年金の安全・安心を公言、アベノミクスの成果として、「5年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われました」などとウソ八百を平然と突いている。

 安倍晋三が大企業や高額所得層の側に立つ国家主義者である以上、下の側のことを真剣に考えているようにはどこから見ても見えないことで、最低賃金上げは選挙のためにアピールしなければならない付け焼き刃なのだろう。
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2019年6月19日党首討論 安倍晋三対立憲民主党枝野幸男全文

2019-06-22 10:47:08 | 政治


 2019年6月24日に《安倍晋三の対枝野幸男党首討論:不都合を隠すウソ八百 自民党は民主党政権提案の最低賃金1000円に長いこと反対していた》と題してブログを書く予定で文字起こしした安倍晋三対立憲民主党枝野幸男の質疑応答の全文を、折角だから、前以って載せてみることにした。参考になるかどうかは不明・・・・・・。

 2019年6月19日党首討論 安倍晋三対立憲民主党枝野幸男

 枝野幸男「先ず冒頭、私からも昨夜の地震によって被害に遭われた皆さんにお見舞いを申し上げます。先程政府としての迅速な対応が必要なら、今日のPD(党首討論)の延期も含めて柔軟に対応を致しますということを申し上げさせて頂きましたが、問題ないというお答えを頂きました。まあしかし、引き続き余震等の心配がございますので、是非政府に於かれましては万全の対応をお願いを申し上げたいと思います。

 さて金融審議会のワーキンググループによるいわゆる2000万円報告書を契機として年金に対する関心等、老後に対する不安の声が高まっております。総理はこの今回の事態の中で多くの国民の皆さんが年金の何について関心を持ち、老後の何について不安を持っていると認識されているでしょう」

 安倍晋三「先ず改めて昨日の地震により被害を受けられた皆さんに対して心からお見舞い申し上げたいと思います。政府としては発災直後から人命第一に被害状況の把握、人命救助など、災害を受けた方への全力を傾けてきたところでございます。

 現在も雨が、現地、降っておりますので、多くの方々が不安のときを過ごされていると思います。先程関係閣僚会議を開催したところでありますが、政府と致しましては土砂崩れやあるいは余震といった二次災害に対して警戒をしている方(方面?)に対して万全を期すとともに道路等のライフラインの早期の復旧に全力を上げて参ります。現在も雨が降っておりますので、現地の皆様に於かれましては、実際の避難状況に十分に注意をして頂きたいと思います。

 そして年金についてでございますが、年金については皆様方、国民の皆様方、まして年金によって自分たちの老後の生活を賄うことができるのかどうか、そしてもう一点は果たして年金は持続可能なのかどうかということについて不安を持っておられるものと、このように考えております」

 枝野幸男「あの、今の不安が前提なんだろうと思いますが、今回のいわゆる2000万円報告書を契機として多くの皆さんの声が上がっているというその本質は安心ばかりを強調して、そして実態と向き合わない、この姿勢にあるのではないかと私は考えております。

 今回の2000万円という金額についても、確かに平均値であったり、一つの資産であったりします。しかしながら、多くの有権者の皆さんがそれぞれの生活をを考えたとき、自分が今貰っている年金、あるいは将来貰えると見込まれている年金だけでは、なかなか老後の暮らしが成り立っていかない。にも関わらず、今回の報告書が出た後も、安心ばかりは強調されて、その多くの有権者の皆さんが抱えている不安に向き合っていないということに対して多くの皆さんが怒っておられるのじゃないかと思います。

 そしてこれは年金問題ということで国民有権者の皆さんの生活と直接結びつくという今回の事案で多くの関心の輪が広がりましたが、これまで、森友・加計学園問題を始めとして公文書の隠蔽・改竄などが繰り返され、それに対する責任の所在等についても曖昧のままきています。見たくない事実はなかったことにして誤魔化す姿勢、これが自分の暮らす、直接関わる問題で見せられたこと、それが短時間で多くの皆さんの関心を招いている、そのベースにあるのではないかと私は考えます。

 先ずは今回の2000万円報告書、存在しないとか受け取らないとかという、そういう弥縫策ではなくて、きちんと、一つの試算ではこういうこともある、そうした場合に自分の力だけではなかなか2000万円のような規模では貯蓄はできないと不安を持ってらっしゃる皆さん達の正面から向き合うこと、それが今求められている政府の姿勢ではないかと思います。

 また今回の件で改めて突きつけられた公文書の管理や情報公開、議会に於ける徹底した説明責任を果たす、こうしたことをなさっていくことが今求められていることではないのかと思うんですが、総理の認識は如何がでしょうか」

 安倍晋三「先般の金融庁のワーキンググループの報告の問題点は何か、ということでありまして、枝野委員も既に指摘されたように平均値で見るのがいいのか、ということでございました。ここに大きな問題があったわけであります。

 この報告書によるとですね、月々年金生活者の方々が5万円不足する。いわば5万円赤字であって、そしてそれは95まで生きれば、2000万円になるということから、大きな誤解で生じたわけでございますが、これには前提条件があり、前提条件としては、2500万円、平均で預金がある。その預金の中から5万円ずつを活用して生活をしていくということでありますが、平均値でございますので、2500万円、預金があるということで、そんなにないよと違和感を感じた方もたくさんおられるのではないかということでありました。

 大切なことは何かと言えば、年金生活者の生活実態は多様でありまして、その多様な実態に対してしっかりと対応していくものとなっているのかどうかということであります。ですから、大切なことは、例えば年金が少ない方につきましては最大年6万円の給付を行っていく。あるいは無年金者の方々、(?)、この無年金となる原因である給付の払込の期間を25年間から10年間に短縮することによって無年金者の数を減らしていく。あるいは高齢者の皆様とっては介護保険料は大きな負担でありますから、介護保険料の負担を軽減をしていくということをしっかりと私たちは対応をしていく。

 そして様々な状況に向き合っていないのではないかということでありますが、様々な、様々な持続可能性に対する不安は何かと言えば、例えば平均寿命が伸びていきますますから、受給期間が長くなるということが一点。そして例えば生産年齢人口が減少していきますから、支え手が減少していくのではないかということことであります。

 そうしたものに向き合って、行なった改正が平成16年の改正であったわけでありました。マクロ経済スライドを導入をして、平均寿命の延伸とあるいは被保険者の増減に対応するようになった、これによって将来の年金受給者の給付と負担のバランスを取ると同時に現在年金を貰っている方の水準、年金の水準と、将来、年金を貰う方の水準を、これは均衡を取っていくということをお願いをしているわけであります。

 そしてデフレが続いていけば、残念でありますが、申し訳ないけれども、受給者の皆様にこのデフレスライドをお願いをする。あるいはマクロ経済スライドによって賃金の伸びには残念ながら追いつかないんですが、そのことによって持続可能性をお願いをしているということであります。まさに私たちは現実と向き合いながら、ご説明をしながら、制度の改正を行っているところでございます」

 枝野幸男「縷々お話を頂きましたが、私の問いかけには正面から答えて頂いたと思っておりません。あのー、今回の報告書そのものは一つの仮定であり、モデルを前提として2000万円というのはあるモデルに当てはまる人にとっては老後必要な金額ということかもしれませんが、今回を契機にして従来から、それは例えばこの2000万円のケースで想定されてる20万円弱の年金、国民年金の方はとてもこんな金額の年金、受け取っていませんし、受け取ることもありません。そうした皆さんたちは従来からこの年金だけでは老後食べていけないということを意識をして、あるいはこの年金だけ食べていけないという中で暮らしておられる。

 そして厚生年金などで一定の年金額を受け取っている皆さんにとってもですね、既に高齢者になっている皆さんは今更、今例えば数100万の貯蓄しかないけど、今さら増やせと言われても困るけれども、さあ、どうしようかという不安の中に過ごしておられる。

 そこにこうした報告書が出てきたことに対して、じゃあ、その貯蓄がない人たちはどうしたらいいんだろうかということに対しての答の前にその報告書自体がなかったことにしてしまうという姿勢は、これは、やっぱり高齢者が抱えていらっしゃる不安に対して正面から受け止めているということにはならないというふうに思っております。

 年金制度については確かにこれを改革しようと思えば、長期的な期間が必要になると思います。現に年金を受け取っていらっしゃる方の年金を大幅に上げるということは現実になかなか難しいことがあるということをよく分かっています。ただやれることがあるのにやれていないというふうに思っております。

 それは勿論年金生活者の中にはまさに多種多様でありますから、それこそを国民年金で食べていくことも今できていないというような方にとっては年6万円とはいえども、私はそのこと自体は評価をしたいと思いますが、そうした方々を含めて、一定程度の年金を受け取っていらっしゃる方々を含めて多くの皆さんが抱えている課題は健康な間は何とかなるかもしれない。ただ最大の不安は病気になったときの医療費やあるいはそのことによって介護が必要になったときの介護、さらに年齢を重ねたことによって病気でなくても、やはり介護の必要度は高まっていきます。

 今健康だから、この年金で何とか遣り繰りしているけれども、病気になったり、介護が必要になったときというものの不安が大変大きい。これに私は向かい合う姿勢が今求められているというふうに思っております。低年金であっても、資産がなくても、万が一のときに一定の医療や介護が受けられる安心、こういうことこそが多くの高齢者の皆さん、あるいはまもなく高齢者になる皆さんが求めていることだと考えている。

 私どもはそのための総合合算制度を早期に導入するべきであるということを主張をしている。制度ごとに例えば医療費の自己負担、あるいは介護費用の自己負担などを計算するのではなくて、家庭単位で医療、介護、保育、障害者福祉に関するトータルの金額について自己負担に上限をかける。当然のことながら、年金を始めとして所得に応じて上限を掛ける。

 こうした制度をしっかりと導入することによって年金が低い方でも、その範囲で一定の医療や介護が受けられるという安心、これをつくれば、勿論、年金の額が増えていくことが一番いいことかもしれませんが、それは困難であるということは私はよく承知をしております。

 そうした中で高齢者の皆さんの安心を高めることに繋がるんだと、私たちは国民の皆さんに提案をさせて頂きたいというふうに思っています。

 その前提として、そもそも質量ともに医療や介護のサービスが不足をしている、この大きな要因は低賃金による人手不足の慢性化であります。介護、医療従事者の賃金を抜本的に底上げをしていくということ。こうした形で病気になったり、介護が必要になったときでも一定の医療や介護が受けられるようなサービスの質量の安定と、それからそのときにかかる自己負担の所得に応じた低廉化というものを進めていくべきだと思っています。

 因みに医療介護のサービスを提供している賃金の底上げにかかる費用は直接的には一時的に現役世代の皆さんの所得の底上げということに回っていきます。高齢者の皆さんにとってだけではなくて、現役世代の賃金の底上げ・雇用の拡大ということに繋がっていくというふうに考えております。私共は今こそ総合合算制度とそして医療・介護の質量共に賃金の底上げによる充実というものを進めていくべきだと思っていますが、総理の見解を」

 安倍晋三「先ず、高齢期に応じて生活を支えるものは、勿論年金、大きな柱でございます。基礎年金と厚生年金、あるいは企業年金等がありますが、これについては既に私も、これまで既に答弁させて頂いております通りでございまして、勿論、国民年金だけではなかなか、これは生活費を賄うことができないということについては、これまでもお話をさせて頂いたところでございます。
 
 でも、これも委員のご承知の通り、まさに給付と負担のバランスでありますが、給付をするためには負担をして頂かなければならない。と同時に年金というのは、これは年金の保険料とそして同時に税金を投入する。さらには年金の積立金とそしてその運用益でございます。そこで今委員が仰ったように若い人たちの給料が増えることというのは支え手のみなさんの保険料も増えていきますから、年金財政にはプラスになっていくことは当然のことであろうと思います。

 そういった意味に於きましてはこの6年間で380万人の方々がさらに働き始めた。正社員に於いてもこの6年間で150万人増えました。我々が政権交代前は50万人正社員が減っていたんですが、150万人増えたことによってですね、例えばマクロ経済スライドの数字はですね、0.9から0.2に大きく、これはある意味ではこれを改善と捉えているわけでありますが、数値としては改善した。これ平均寿命が延びているにも関わらず、これは働いている方々の保険料が増えたことによって回転をしているということでありますから、まさに委員がおっしゃったように経済が成長していくことによってですね、新たな働き手が増えていく。まさにが働きたい人が仕事ができるという環境を作ることが極めて重要であります。

 こうして経済が成長していくことによってですね、先程申し上げましたように44兆円のですね、44兆円、運用益が出ているわけでありまして、民主党政権時代の約10倍、運用益が出ている。つまりしっかりと経済を成長させ、働き手を増やし、雇用を増やし、そのことによってですね、当然保険料収入も増えていく。マクロ経済スライドのマイナス分も減っていくわけでございますが、これからもしっかりと増やしていきたい。

 そして最低賃金につきましても、我々政権を奪還してから、この6年間で125円増えています。民主党政権時代の皆さんも頑張ったと思いますよ。みんなさんのときには36円増えている。みなさん3年間で、我々6年間で。しかし私たちは倍なんですが、3.5倍、最低賃金は増えているということであります。

 経済を成長させ、収入を増やし、そして当然、税収も、今、税収も活用して、社会保障の基盤を安定していく。成長と分配の好循環をしっかりと作っていくということであります。そして最初に申し上げましたように皆さんの収入が増えていくということについては、これは社会保障の基盤を大切にしていくことに於いて大変大切であり、しっかり私たちはそのことを行っていくことを申し上げておきたいと思います」

 枝野幸男「私も民主党政権の一翼を担わして頂きました。至らない点がたくさんあったことは、改めてこの場でお詫び申し上げておきたいと思いますが、経済の数値の最終成績はどこなのかと言ったら、私はやはり実質経済成長率、2010年から12年の実質経済成長率は1.8%。2013年から2018年の実質経済成長率は1.1%であります。これが客観的な経済のトータルの総合成績であるということは、私は自信を持って申し上げておきたいと思っております。

 そして先程の安倍総理のお話は私の問いかけには答えて頂けませんでした。年金の範囲の中で一定の医療や介護を受けられる総合合算制度というものについては全く答えをスルーされました。これについてはいっとき導入の方向で話が進んでいたものが、軽減税率導入の財源にするためにこれは実施をされないという流れになってきたということも付与しておきたいというふうに思っておりますし、それから全体としても雇用の話を一生懸命しておられましたが、私が提起をしたのは特に安心できる医療と介護、安心できる老後のためには介護従事者の殆ど、そしてかなりの比率の医療従事者、こうした皆さんが非常に重労働であり、なおかつ低賃金であるために慢性的な人手不足に陥っている。そもそも老後の安心のためのサービスも、質も量も不足している。

 そこをまず充実させていくためにそこに対してかなり抜本的な所得底上げ、そこに財政を投入していくということを申し上げましたが、一般論に転換をされてしまいました。これではなかなか現実には介護従事者の皆さんの所得の上がり方は微々たるものであって、本当の意味で今急激に増えている高齢者の数に対応して、今不足分を埋めてまでしっかりと安心できる介護をつくるという、こういう状況は想定できません。

 抜本的に分配のやり方を変えてですね、介護従事者、そして医療従事者、低賃金でありながら人手不足の分野は、これは老後の話だけでありません。保育士さんなどにも当てはまる問題であります。

 こうしたことをしっかりとすべきこと。これを私どもは今の社会政策に対する、そして経済政策に対する明確な対案として訴えていきたいと思っていますので、是非、安心できる医療や介護をどうするのかという具体的な案を示して頂きたいと思います」

 安倍晋三「一点だけ申し上げますと、実質成長の自慢をなされましたが、名実逆転をしている実質成長の伸びはデフレ自慢にしかならないということを申し上げておきたいと、こう思うわけであります。安倍政権に於いてはしっかりと経済を成長させていくわけでございますが、これからも成長と分配の好循環を回していきたいと、このように考えております」

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安倍晋三提唱の地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交を自らコケにするイラン訪問

2019-06-17 11:44:40 | 政治
 
 イランの核合意からトランプの核合意離脱を経て、対イラン制裁措置導入をネットで調べて簡単に纏めてみた。

 2002年、イランでウラン濃縮施設発見。
 2015年7月14日、国連安全保障理事会常任理事国米英仏中露+独6か国協議の「P5プラス1」とイランとの間で核協議の最終合意。
 2016年1月16日、国際原子力機関(IAEA)によるイランの核濃縮に必要な遠心分離器などの大幅削減の確認。
 2016年1月16日、P5プラス1、核合意履行を宣言。米欧諸国、対イラン経済制裁解除手続きに入る。
 2018年5月8日 トランプ、イラン核合意からの離脱
 2018年11月までにイラン産原油禁輸など合意に基づいて解除されていた制裁をすべて再発動。
 2019年4月8日、イラン最高指導者直属の軍事組織イラン革命防衛隊を「テロ組織」に指定する方針を示す。2019年4月15日に発効。
 2019年4月8日、イラン、米国を「テロ支援国家」と認定、中東地域などを統括する米中央軍をテロ組織に指定。
 2019年4月22日、日本を含む8カ国・地域(日本、中国、インド、イタリア、ギリシャ、韓国、台湾、トルコ)をイラン産原油禁輸措置の適用除外とする特例措置を2019年5月1日を以って撤廃の方針を示す。
 2019年5月2日、適用除外特例措置を撤廃。
 2019年5月8日、トランプ、イランの鉄鋼、アルミニウム、銅の各部門を対象とする新たな制裁措置を導入する大統領令に署名。
 
 トランプにイラン核合意離脱の理由は次の記事が紹介している。

 「NHK時論公論」(2018年5月9日)

 核合意は――

▼イランによる核開発に対する制限に10年から15年の期限が設けられていること。期限を過ぎれば、イランが核兵器の開発を進め、中東に軍拡競争の危機が迫ってくるのは“火を見るより明らかだ”であること。
▼弾道ミサイルの開発を制限していないこと。現にイランは合意の直後からイスラエルも射程に収める中距離弾道ミサイルの発射実験を行い、関係国に脅威を及ぼしていること。
▼イランが周辺国でアメリカが「テロ組織」と看做す勢力を軍事的・経済的に支援している現状を野放しにしていること。

 こうした“不完全な合意”を放置すれば、いずれ中東に核戦争が勃発しかねないとトランプ大統領は主張。合意から離脱したのはイランに対してより厳しい“新たな合意”を目指すため。

 対してイランはアメリカに対して核合意復帰と制裁撤回、制裁による損害の補償を要求しているという。

 こうした状況の中で我が安倍晋三は2019年12、13、14日とイランを訪問。2019年6月11日付「asahi.com」には政権幹部の話として2019年4月26日のワシントンでの日米首脳会談の席でトランプから、「イランに行って私のメッセージを伝えられるのはあなたしかいない」と依頼されたからと訪問理由を伝えている。

 で、のこのこと出かけることになった。

 トランプが言っている「私のメッセージ」とはイランに対してより厳しい“新たな合意”を目指すテーブルにつくよう促す内容のものということになる。イランの主要貿易品目である石油の禁輸措置とイラン産鉄鋼、アルミニウム、銅に対して制裁措置を発動し、イランを経済的苦境に追い込みながら、新たな合意交渉のテーブルに就けと促し、就かせるための交渉役を日本の安倍晋三に託した。

 一般的には何月何日までに交渉のテーブルに就かなければ、制裁を発動することになると促すのがものだが、その逆を行っている。

 また、トランプが新しい交渉を望んでいる以上、安倍晋三に託さずとも、イランに対して直接的に働きかけていることになる。2019年6月2日、アメリカの国務長官ポンペイオが「イランとは前提条件を設けることなく話し合いをする用意はある」と発言したと「NHK NEWS WEB」記事が伝え、〈トランプ政権はイランに話し合いのテーブルにつくよう繰り返し迫っています。〉と解説している。

 つまりアメリカの要求に対してイランが新しい交渉のテーブルに就くことを承知しない中で安倍晋三はのこのこと出掛けたことになる。余っ程の自信がなければ、出かける気は起きない。

 安倍晋三はイランへの出立に先立って羽田空港で、「記者会見」(首相官邸サイト/2019年6月12日))を開いている。
  
 安倍晋三「中東地域では、緊張の高まりが懸念されています。国際社会の注目が集まる中において、この地域の平和と安定に向けて、日本としてできる限りの役割を果たしていきたいと考えています。日本とイランの伝統的な友好関係の上に、ローハニ大統領、そして最高指導者のハメネイ師と緊張緩和に向けて、率直な意見交換を行いたいと考えています」

 要するにトランプが招いて米・イラン間に生じた険悪な緊張状態の緩和の役を担った。その方法はイランを新たな合意交渉のテーブルに就かせることにあるということになる。なかなかの大役である。但し、それ程の大役を担う器量があるどうかが問題となる。

 では、マスコミ報道から日本時間の2019年6月12日夜から13日未明にかけて行われたイランのロウハニ大統領と安倍晋三の首脳会談を見てみる。「NHK NEWS WEB 」(2019年6月13日 4時53分)

 安倍晋三「ロウハニ大統領とは、いかにして現下の緊張を緩和し、偶発的な紛争を避けることができるか、率直かつ有意義な意見交換を行った。中東の平和と安定は、この地域のみならず、世界全体の繁栄にとって不可欠だ。誰も戦争など望んでおらず、日本としてできるかぎりの役割を果たしていきたい。

 (イランが建設的な役割を果たすことが不可欠だという認識を示してから)イランがIAEA(国際原子力機関)との協力を継続していることを高く評価し、核合意を引き続き順守することを強く期待している。

 ここまでの道のりは長かったが、ここからは広くて見晴らしのよい道のりになるはずだ。そのためには、お互いが努力しなければならないが、今日は、その第1歩となると確信している」

 断るまでもなく 米・イラン間の緊張状態はトランプの一方的な対イラン関係の変更によって生じた。当然、「現下の緊張を緩和」することも、「偶発的な紛争を避ける」ことも、「中東の平和と安定」を図ることも、アメリカとイランの関係の有り様が決定権を握る。日本とイランの関係の有り様ではない。従来の核合意に対するトランプの不満に基づいて要求している新たな合意交渉のテーブルにイランを導くことを安倍晋三の究極の目的としなければならないはずだ。

 但しイランはアメリカに対して核合意復帰と制裁撤回、制裁による損害の補償を要求している。となると、安倍晋三がイランに対してのみ、「核合意を引き続き順守することを強く期待」しても、アメリカの核合意離脱を問題にしていないことになって、イランのみへの一方的な要求となる。

 一方的な要求となることを回避するためにはイランの対米要求を聞いて、その要求をアメリカに伝え、例えトランプがその要求を拒絶し、自身の要求に徹底的に拘ったとしても、双方の要求を突き合わせて、折り合いをつけるべくアメリカとイランの間を取り持つ外交を展開し、それを成功させてこそ、中東の平和と安定に資することが可能となる。

 折り合いをつけるべくアメリカとイランの間を取り持つ外交とは両当事国の間を頻繁に行き来して合意を形成する外交交渉、往復外交を意味するシャトル外交を措いてほかにあるまい。

 このシャトル外交は自らが提唱した地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交に合致することにもなる。「地球儀を俯瞰する」とは地球全体を見てという意味を取るはずで、地球全体のバランスは一国の国益のみを優先させて実現はできず、折り合いをつけるという段階が必要となり、地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交はシャトル外交を必要不可欠な手段としなければならない。

 アメリカとイランの相対立した利害・国益に折り合いをつけ、バランスを取るためのシャトル外交――地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交を展開しないままに、「現下の緊張を緩和」だ、「偶発的な紛争を避ける」だ、「中東の平和と安定」だ、「誰も戦争など望んでいない」だ等々言ったとしても、単なるポーズだけとなる。言葉だけで有能な政治家を演出することが得意なポーズ番長だけのことはある。

 それがポーズだけなら、「日本としてできるかぎりの役割を果たしていきたい」にしても、ポーズだけの空疎な約束となる。

 大体がアメリカとイランとの間の国益・利害の鋭い対立の解消がさも簡単であるかのように「ここまでの道のりは長かったが、ここからは広くて見晴らしのよい道のりになるはずだ」と請け合っておきながら、「そのためには、お互いが努力しなければならない」と条件を付すことで簡単な道のりではないことを種明かしし、種明かししておきながら、「広くて見晴らしのよい道のり」に向けた「今日は、その第1歩となると確信している」と、自身のイラン訪問の有効性を印象づける巧妙なレトリックを展開している。

 要するに安倍晋三はイラン訪問の成果を見ないうちから、自身の外交能力の優秀性を自慢した。ところが安倍晋三がイランを訪問中の2019年6月12日、アメリカ財務省はイラン最高指導者直属の軍事組織「革命防衛隊」の傘下にあり、外国で特殊任務を担う「コッズ部隊」と繋がりのある隣国イラクの団体1つと2人の個人を新たに制裁の対象に加えたと発表し、アメリカも自分たちが要求する話し合いに安倍晋三を通してイランが応じるかどうかを確かめないうちに新たな制裁を課すことになった。「広くて見晴らしのよい道のりになる」
どころではなく、そのような道のりをアメリカ側は期待していないことを露呈した。

 安倍晋三はロウハニ大統領との首脳会談翌日の2019年6月13日、「ハメネイ最高指導者との会談」(外務省/2019年6月13日)を行っている。
 
 〈安倍総理から,ハメネイ最高指導者に対し,軍事衝突は誰も望んでおらず,現在の緊張の高まりを懸念していることを伝え,また,安倍総理から,日本は核合意を一貫して支持しており,イランがIAEAとの協力を継続していることを評価し,イランが引き続き核合意の履行継続を期待している旨述べ,イランは地域の大国であり,中東の安定化に向け建設的な役割を果たすよう要請しました。ハメネイ最高指導者からは,平和への信念を伺うことができ,また,核兵器は保有も製造も使用もしない,その意図はない,すべきではない旨の発言がありました。〉(一部抜粋)

 「日本は核合意を一貫して支持している」、「イランがIAEAとの協力を継続していることを評価している」、「イランが引き続き核合意の履行継続を期待している」、「中東の安定化に向け建設的な役割を果たすよう要請する」等々、ロウハニ大統領との首脳会談のときと同じように日本とイランとの関係の有り様の文脈での発言のみとなっている。トランプに「イランに行って私のメッセージを伝えられるのはあなたしかいない」と依頼された、その「メッセージ」の中身も、その中身に対するイランの反応も、イラン訪問の究極の目的であるはずなのに何も見えてこない。

 安倍晋三は何のためにイランを訪問したのだろうか。トランプに依頼された「メッセージ」の中身のあらかたを伝えている、中東ジャーナリストの川上泰徳氏の記事がある。

 「安倍首相のイラン訪問 緊張緩和の仲介とは程遠い中身と日本側の甘い評価」(yahoo!ニュース/2019/6/14 15:26)

 ハメネイ師の公式ウエッブサイトから発信された情報のみを紹介する。

 安倍晋三「私はあなたに米国大統領のメッセージを渡します」

 ハメネイ師「私は日本が誠実で善意に基づいていることに疑いはありません。しかしながら、あなたが米国大統領について言ったことについては、私はトランプを私がメッセージを交換するに値する人間と考えていません。私からはいかなる返事もありませんし、将来においても返答するつもりはありません」

 安倍晋三「米国はイランが核兵器を製造することを阻止するつもりであると語った」(

 ハメネイ師「私たちは核兵器に反対しています。私のファトワ(宗教見解)は、核兵器の製造を禁じています。しかし、私たちが核兵器を製造しようと考えれば、米国は何もできませんし、米国が認めないことが(製造することの)障害にはならないことは、あなたも知るべきです」

 安倍晋三「トランプ大統領はイランの体制転覆を考えているわけではありません」

 ハメネイ師「我々と米国との問題は米国がイランの体制転覆を意図しているかどうかではありません。なぜなら、もし、米国がそれ(イランの体制転覆)をしようとしても、彼らには達成することはできないからです。米国の歴代の大統領たちは40年間にわたってイスラム共和国を破壊しようとしてきましたが、失敗しました。トランプがイランの体制転覆を目指していないと言っているのは、嘘です。もし、彼がそうできるなら、するでしょう。しかし、彼にはそれができないのです」

 安倍晋三「米国は核問題でイランと協議することを求めている」(解説体を会話体に直す)

 ハメネイ師「イランは米国や欧州諸国との六か国協議を5年から6年行って、合意に達しました。しかし、米国は合意を無視し、破棄しました。どのような常識感覚があれば、米国が合意したことを投げ捨てておきながら、再度、交渉をするというのでしょうか? 私たちの問題は、米国と交渉することでは決して解決しません。どんな国も圧力の下での交渉は受け入れらないでしょう」

 安倍晋三「(トランプ大統領の言葉として)米国との交渉はイランの発展につながる」

 ハメネイ師「米国と交渉しなくても、制裁を受けていても、私たちは発展してきます」(以上)

 イラン最高指導であるハメネイ師の発言から見えてくる姿勢はトランプを相手にせずである。

 だからと言って、羽田空港でイラン出立に向けて、「この地域の平和と安定に向けて、日本としてできる限りの役割を果たしていきたいと考えています」と抱負を述べた以上、ハメネイ師のトランプを相手にせずの強固な拒絶反応に音を上げていいはずはなく、日本の役割を果たすと言った以上、果たすべくアメリカとイランの間を往復して折り合いをつけるシャトル外交となる地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交を展開しなければならないはずだ。

 ところが、イラン訪問報告の西暦2019年6月14日の「トランプとの電話会談」では、報告に対して謝意の表明があり、「今後とも、トランプ大統領と、米国と緊密に連携していく考えである」こと、「互いの複雑な国民感情など、緊張緩和に向けた道のりには、大変な困難が伴うわけでありますが、地域の平和と安定、そして世界の繁栄のために、今後とも国際社会と緊密に連携を重ねながら努力を重ねていきたいと考えであること」と、連携の意思を示すのみで、イランの反応を叩き台にトランプと交渉するといった意思表示は何一つ示していない。

 アメリカとイランの国益調整・利害調整、その関係修復に向けてこそ、地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交が機能することになるのだが、その意思も動きもどこを探しても、影一つ見つけることができない。となると、イラン訪問はこれまで大層な口を利いてきた地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交を自らコケにする(見せ掛けだけで中身のないことを示す)象徴的事例となる。

 ここで発揮できない地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交なんぞ、どれ程の価値があると言うのだろうか。機能させるべきときに機能させることのできない外交など、見せ掛けだけで、中身などあろうはずはない。

 公式ウエッブサイトでのハメネイ師の辛辣なトランプ相手にせずの態度一つを見るだけで、安倍晋三のイラン訪問は失敗も失敗、大失敗だと見るほかないが、ところが、安倍晋三はハメネイ師との会談後、記者団に対して「平和への信念を伺うことができ、地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進だ」と述べ、地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交を敢行するわけでもない一回こっきりの訪問で自身のイラン訪問を高く高く、天よりも高く評価している。この図々しさは単なるポーズを超えている。

 上記川上泰徳氏の記事にしても、〈ハメネイ師から公式に発表された安倍首相の内容を見る限り、安倍首相が提示したトランプ大統領のメッセージは、ことごとく拒否されている。米国との仲介者を演じる安倍首相にとっては取りつく島もなく、イラン訪問は完全に失敗したと評価するしかないだろう。〉、〈世界が注目した安倍首相とハメネイ師との会談であるが、「地域の平和と安定の確保に向けた大きな前進であると評価しています」と肯定的な評価だけで、相手の厳しい反応を一切伝えない首相官邸の発表は、日本国民をミスリードするものであろう。〉と、安倍晋三の自画自賛の風船を針の一突きで簡単に破裂させている。

 これで安倍晋三の地球儀を俯瞰する積極的平和主義外交が見せかけだけで、中身が全然のないことを自ら曝け出したイラン訪問だったことを多くの国民が認知したはずだ。

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登戸通り魔事件は野田小4虐待死が児相の対応不足が一因と同じく、川崎市の対応不足が一因 包丁購入者に氏名・住所等記入の義務付けを

2019-06-03 11:50:09 | 政治


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 2019年7月28日任期満了実施参院選で

安倍自民党を大敗に追いつめれば

政権運営が行き詰まり 

2019年10月1日の消費税10%への増税を

断念させる可能性が生じる



 
 2019年1月24日、千葉県野田市立小4年生10歳の少女が自宅浴室で父親の度重なる虐待の末に殺害された事件は少女が学校の「いじめに関するアンケート」に父親から暴力を受けていると訴えたことから、児相が少女を一時保護の措置に出た。父親は一時保護直後から学校を訪れ、「人の子を誘拐するのか」「暴力はふるっていない」「訴訟を起こす」と抗議した威嚇的な態度。対して学校がアンケートの回答内容を伝えて暴力の事実を裏付けると、「アンケートの実物を見せろ」などと迫った同じく威嚇的な態度。約2ヶ月経た親族宅への一時保護解除後、父親が小学校を訪れ、「娘に暴力は振るっていない」とか「人の子どもを一時保護といって勝手に連れて行くのはおかしい」などとなおも執拗に抗議した偏執的な態度。

 あるいは一時保護から約半月後に少女と市教委と学校の三者の学校での話し合いの場で、やはり威圧的な言葉で「いじめに関するアンケート」の公開をしつこく迫った態度。学校が少女本人の同意がないと渡せないと断ると、両親が3日後に同意書を持って市教委を訪問、父親が同じような威圧的な言葉でアンケートのコピーを手渡すよう要求し、市教委を同意させてしまった態度等々から父親の威嚇的で自己絶対的な人物像、そのような性格からくる極度の支配性向を読み取ることができずに2017年12月27日の親族宅預かりの一時保護解除から約2ヶ月余で自宅に戻すことを許可、父親と一緒に生活させた児相の決定と、家庭復帰後、小学校で児相職員が少女本人と一度面会したものの、学校に虐待の兆候がないか、その様子を観察するよう学校に求めただけで、家庭訪問をして両親と面談し、何か問題はないか、その観察はしないままに放置した、これらの児相の対応が最終的な虐待死の一因になったはずである。

 2019年5月28日朝、川崎市の登戸駅付近の路上で小学校のスクールバスを待っていた児童や保護者らを男が包丁で相次いで刺し、小学校児童1名と付近にたまたま居合わせた男性1名を死亡させ、犯行直後に自殺した51歳の男による登戸通り魔事件。翌日の「NHKニュース7」が犯人の叔父や叔母から、犯行を犯す前の犯人本人についての相談を受けていた川崎市精神保健福祉センターの記者会見を流した。録画していなかったから、「NHKニュースウオッチ9」でも、同じ内容を流すだろうと思って、録画しておいた。

 川崎市精神保健福祉センター記者会見(「NHKニュースウオッチ9」/2019年5月29日)

 女性市担当者「長期間、就労していないとか、引きこもり傾向にあって、まあ、おうちの中に閉じこもっているような・・・・

 親族の方から、その、麻生区に住まわれている叔父、叔母(80代だという)、御本人の3人家族、そこの家庭についてのご相談が入っている。『介護サービスを導入したいんだけども、同居している御本人について、その、介護サービスを導入することで、どのような反応があるのかということが心配される』」

 NHK男性解説「その叔父や叔母がおととし11月から今年1月にかけて面談や電話で14回、川崎市精神保健福祉センターに相談が寄せられていた。その中で親族が説明した岩崎容疑者の様子は――」

 女性市担当者「本人が長期間就労していないですとか、それから、ま、引きこもり傾向にあって、まあ、おうちの中に閉じこもっているような生活環境で、この間、ずうっと、あの、来られた。

 そこに外部の人(介護ヘルパー)が入るっていうことが、あの、大丈夫だろうかっていう心配ですね。そもそもご家族の中でなかなかコミュニケーションが取れない」

 NHK男性解説「そこで川崎市は手紙で遣り取りする方法を提案。実際に叔父や叔母が岩崎容疑者の部屋の前に起きましたが――」

 女性市担当者「『自分のことはちゃんとやっている。食事、洗濯を自分でやってるのに引きこもりとは何だ』。御本人の方から(叔母に)声掛けがあったと」

 NHK男性解説「引きこもりとされることに抗議の意志を示した岩崎容疑者。一方で――」

 男性市担当者「食事を、まあ、冷蔵庫に入れて食べなさいって置いておいたり、お小遣いを、そういうこともあるというふうに聞いております。(引きこもりが)長い期間だろうなあということは想像しますが、お話からしてですね、昨日や今日に始まったことではない。多分、10年単位でしょうね、長期って」

 NHK男性解説「その後、親族から『本人なりの考えがるので、暫く様子を見たい』という連絡があったのが最後。一連の相談では叔父や叔母が容疑者を余り刺激したくないという意向を示し、川崎市も容疑者本人と接触することはなかったということです」

 確かに犯人は悪者ではあるが、川崎市精神保健福祉センター職員は引きこもりが犯行の素因であるかのような言葉を弄している。女性職員の「長期間、就労していないとか、引きこもり傾向にあって、まあ、おうちの中に閉じこもっているような・・・・」といった発言にしても、「そもそもご家族の中でなかなかコミュニケーションが取れない」にしても、男性職員の引きこもりは「昨日や今日に始まったことではない。多分、10年単位でしょうね、長期って」の発言にしても、引きこもりそのものを問題視していて、犯行の直接の原因であるかのような発言の体裁を取ることになっている。

 だが、引きこもりが10年単位であったとしても、20年以上であったとしても、その間、何ら問題行動も、凶悪な事件も起こさずに推移した。当然、引きこもりそのものが犯行の素因そのものではなく、その引きこもりに何らかのキッカケが働いたことが犯行の動機と見なければならない。そのキッカケが自分が作り出したのか、第三者が与えたものなのかを解明しなければならない。

 引きこもりに何らかのキッカケが働いた犯行であることを証明してくれる記事がある。「J-CASTテレビウォッチ」(2019/5/30 11:46)

 川崎〈市健康福祉局の坂元昇さんによると、伯父夫婦は岩崎の状態について、「暴力をふるったり暴れたりすることはないが、コミュニケーションがまったくない」と話したという。岩崎は伯父夫婦と顔を合わせないように、台所を使う時間やお風呂に入る時間を分けるルールを作っていた。〉

 要するに引きこもりという状況に自身を調和させていただけではなく、自身の引きこもりと伯父伯母との関係を一応は調和させていた。その調和を破る何らかの力が働いた。

 坂元昇なる人物が所属する川崎市健康福祉局と先に上げた川崎市精神保健福祉センターとは名称そのものが違うから、部署も違うはずだ。坂元昇なる人物が記者会見の男性職員と同じ人物なら、引きこもりが犯行の素因であるかのような言葉は口にはしないだろう。

 川崎市精神保健福祉センターへの相談から犯行までの経緯を他の記事を参考にして時系列で挙げてみる。

 2017年11月~2019年1月 川崎市精神保健福祉センターは叔父や叔母とその親族から面談と電話による相談を14回受けた。
 2018年6月~ 川崎市は家族の状況を確認した上で訪問の介護サービスを開始。
 2019年1月 叔父と叔母は川崎市精神保健福祉センターから手紙の遣り取りでのコミュニケーションを勧められて、岩崎の部屋の前に手紙を置く。 
        数日後、岩崎はドア越しに叔母に対して「自分のことはちゃんとやっている。食事、洗濯を自分でやってるのに引きこもりとは何だ」と、多
        分、きつい言葉で反発した。
 2019年2月 4本所持していた包丁のうち犯行に使った2本の刃渡り30センチの柳刃包丁2本は東京都町田市内の大型量販店で購入していた可能性が捜査
       によって明らかにされる。
 2019年5月28日 通り魔殺人を凶行。

 こう見てくると、自身と、さらに伯父伯母と調和させていた引きこもりの、その調和を破ったのは川崎市精神保健福祉センターから手紙の遣り取りでのコミュニケーションを勧められて、岩崎の部屋の前に置いた手紙に対する岩崎本人の反発以外に考えられないことになる。

 勿論、市は良かれと思って勧めたことなのだろう。だが、「自分のことはちゃんとやっている。食事、洗濯を自分でやってるのに引きこもりとは何だ」という岩崎本人からの反発の情報を把握していながら、叔父や叔母の容疑者を余り刺激したくないという意向を優先させて、容疑者本人と何ら接触しなかった。

 市は「暴力をふるったり暴れたりすることはない」という岩崎本人の引きこもり時の大人しい態度に安心していたのかもしれない。だが、川崎市精神保健福祉センターは職務の一つとして、「社会的ひきこもりに関する相談」を受け付けている。

 そこには次のように記載されている。

 〈川崎市精神保健福祉センターでは、「社会的ひきこもり(あきらかな精神障害によるものではない、ひきこもり)」でお悩みの、市内在住18歳以上のご本人やそのご家族の方からの相談を受け付けております。

 ご本人様へ-

 ひきこもる状態自体は、決して悪いことではないと思います。

 -でも、もしもその状況を「何とかしたいな」と思いましたら、ひとの力を借りることを試してみるのも、ひとつの方法かもしれません。

  どんなことができるかを一緒に考えていきたいと思っております。

  まずはご連絡ください。

 電話:044-200-3246

 平日 午前8時30分~午後12時00分、午後1時00分~午後5時00分(年末年始を除く)

 ご相談は無料です。

 ご相談内容等の秘密は厳守いたします。〉――

 引きこもり相談を職務としていながら、叔父や叔母の容疑者を余り刺激したくないという意向にただ、ただ従って、いわば「ハイ、そうですか」でいとも簡単に引き下がっただけではなく、80代に達している叔父や叔母が50代になっても引きこもりを続けている従兄弟とのこの先の生活を市として何らかの心配をして、容疑者本人と接触を試みるのではなく、頭から放置した。

 川崎市精神保健福祉センターが本人と一度も接触を試みなかった理由を2019年5月29日付「NHK NEWS WEB」が紹介している。

 川崎市精神保健福祉センター「人に会いたくないという人に無理に介入することはいいことではない。親族側が言いたがらないことを言わせることも信頼関係の構築につながらない」

 他人と会いたくない、あるいは家族とも会いたくないことを以って引きこもりと言う。「無理に介入することはいいことではない」なら、無理な介入とならない何らかの方法を考えて、何らかの接触を試みなければ、引きこもりの相談を受け付けたことにならないばかりか、引きこもりを放置したことになる。

 「親族側が言いたがらないことを言わせる」ことが「信頼関係の構築につながらない」なら、「言いたがらないことを言わせ」ずに信頼関係の構築に繋がる何らかの方法を考えて、何らかの接触を試みるのが役所の仕事でもあるはずである。

 だが、そういった積極的な責任行為を心がけずに腫れ物に触るような態度に終始している。要するに職務怠慢、あるいは責任不履行の言い訳に過ぎない。

 川崎市精神保健福祉センターの女性市担当者は「介護サービスを導入したいんだけども、同居している御本人について、その、介護サービスを導入することで、どのような反応があるのかということが心配される」という相談を伯父と叔母から受けたと明らかにしたが、2018年6月から川崎市は叔父と叔母に対する訪問介護サービスを開始していて、約1年も経過しているのだから、この件については岩崎容疑者との間で解决している問題であり(一つ家の中で別々の生活を送っていたのだから、我関知せずの態度で最初から何も問題にしなかったのかも知れない)、引きこもりから離して取り扱うべき事柄でありながら、叔父や叔母の介護サービス導入と引きこもりを関連付けて、容疑者の人となり、いわばその犯罪性を取り上げている物言いとなっている。

 このような物言いとしなければならないのも、容疑者の引きこもり問題に積極的に関与しなかったことの裏返し、言い訳なのだろう。

 また、本人を刺激しない方法として川崎市精神保健福祉センターの助言で手紙を岩崎の部屋の前に置いたものの、「自分のことはちゃんとやっている。食事、洗濯を自分でやってるのに引きこもりとは何だ」と却って刺激してしまった。それが2019年1月。1カ月後なのか、日付は分からないが、2019年2月に犯行のために4本用意した包丁のうち犯行に使った2本の刃渡り30センチの柳刃包丁2本は東京都町田市内の大型量販店で購入していた確かな可能性が浮上した。
 
 そして3カ月後の2019年5月28日朝、凶行に及び、自殺した。

 この経緯から、2019年1月から用意周到に準備に入り、一気呵成に凶行に進んだ様子が見えてくる。一気呵成は犯行時の態度からも見て取れる。犯行時間数十秒という短い時間に19人を次々と刺していった。川崎市精神保健福祉センターの対応を検証する必要が出てくる。

 政府はこの事件を受けて、通学路の安全確保のため登下校時に子どもが集まる場所などを改めて点検すること、警察官による重点的な警戒・パトロールを行うこと、警察や学校が把握した不審者の情報を共有する仕組みを強化し、迅速に対応することなどについて、早急に対策を講じるよう指示したという。

 だが、登下校時に子どもが朝夕集まる時間帯の全ての場所に警戒・パトロールの警察官を常時張り付かせることを、それが可能なこととして対策に入れているのだろうし、警察や学校が全ての不審者情報を共有する仕組みの強化を挙げているが、完璧に把握できないのは今回の犯行が証明している。把握していない不審者が警戒の一瞬の隙きを突いて凶行に及ぶという危険性も捨てきれない。

 但し万全ではないにしても、手は打たなければならない。一方、通り魔殺人事件に限らず、殺人事件や傷害事件で凶器として簡単に利用される事例が多い包丁に関しては手を打とうとしている様子は窺うことができない。2001年6月8日に大阪府池田市の大阪教育大学附属池田小学校で発生した附属池田小無差別殺傷事件でも、犯人は出刃包丁を凶器にし、小学生8人を無残にも死亡させている。

 勿論、包丁は一般家庭で使用することから銃刀法で扱うことはできないが、せめて購入の際、住所・氏名・職業を記入させるだけではなく、金物店の店主・店員に記入の際の購入者の表情を読み取らせることを義務付ける条例ぐらいは設けるべきだろうか。

 表情を簡単に読み取ることができる場合もあるし、簡単には読み取れない場合もある。読み取るための講習を定期的に心理カウンセラー等から受ける義務付けも加えなければならない。購入者が精神異常者なら、それなりの表情をしているだろうし、一般市民でありながら、殺人目的の凶器として包丁を購入するなら、それなりの緊張の表情を顔に浮かべているはずで、普段の何でもない表情では店に立つことはできない。

 店側が客の表情を読み取る講習を受けていて、目的外の購入者の表情が読み取られる危険性の情報が広まるだけで、抑止効果は出てくる。店は異常な表情を察知したら、警察に連絡、警察は安全だと確認するまで、その人物を監視する。

 勿論、包丁を手に入れる際に普段の表情を保つことができなければ怪しまれることになるからと用心して、凶器を包丁から鉄板を削ったりした手作りの包丁に変えたら、お手上げとなるが、一つ一つ目を潰していかなければならない。万全ではないにしても、人命は地球よりも重い、あるいは子どもは国の宝だと言う以上、包丁が何らかの凶器に簡単に利用されな いよう、手を打つべきだろう。

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安倍晋三の安保法制と改憲意思に忠実であるなら、自公は丸山穂高の「戦争発言」譴責理由に憲法の平和主義を掲げる資格なし

2019-05-27 11:14:27 | 政治


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 2019年7月28日任期満了実施参院選で

安倍自民党を大敗に追いつめれば

政権運営が行き詰まり 

2019年10月1日の消費税10%への増税を

断念させる可能性が生じる



 この記事とは無関係だが、米大統領トランプが西暦2019年5月25日午後5時過ぎ、大統領専用機で羽田空港に到着、国賓として来日した。大統領専用機の着陸時には国内線第2ターミナルに500人超が人垣を作り、頭上に掲げたスマートフォンなどで撮影したという。例えその500人が500人とも大統領専用機を撮そうとした航空ファンであったとしても、機体の主がトランプである以上、トランプを歓迎したことになる。歓迎は政策の支持に繋がる。

 トランプの政策を歓迎せずに大統領専用機を撮影できるとしたら、信念がないことになるし、トランプの政策など考えたこともないままに撮影だけに拘ったとしたら、日米間の政治の密接な関わり合いに無関心と言うことになって、例え憲法で選挙の1票を保障されていても、その1票の信用性・価値を損なうことになる。
 
 大統領専用車が目的地に向けて走行する先々の沿道に集まって見送った日本人、大相撲観戦時、特別席に着席したトランプを立ち上がってスマホで撮影した大勢の観客にしても、殆がトランプの地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱、イラン核合意からの離脱、イスラエルのエルサレム首都認定、対移民非寛容政策等々の政策と、気に入らない女性を「太った豚」、「不快な生き物」などと呼称する女性蔑視の人間性等々を、それが知らないことであっても、歓迎したことになり、支持したことになる。

 国家等の何らかの組織に縛られていて、トランプの政策を支持していなくても、組織の歓迎に従わなければならない制約下での同調行為ではなく、トランプを上記各場所で歓迎した日本国民の多くは組織に縛られていたわけではなく、主体的行為として自律的に歓迎していることになる以上、その歓迎にはトランプの政策に対する支持が含まれることになる。当然、どのような形での歓迎であろうと、トランプの政策を支持したことになるのだと自覚していなければならない。但し自覚できる人間が何人いるかである。オレは、あるいは私はトランプを見たと自慢し、そのことを勲章として終える人間が多いに違いない。

 2019年5月11日の夜、日本維新の会の衆議院議員丸山穂高が北方四島の「ビザなし交流」の訪問団に参加し、国後島の宿泊施設で酒を飲み、酔った状態で訪問団団長に「戦争で島を取り返すことには賛成ですか、反対ですか」などと質問、いわば"北方四島は戦争で取り返すべき"とする自らの主張・考えをぶっつけた。自らの主張・考えでなかったなら、このような言葉は口を突いて出てくることはない。

 この発言に対して野党からは議員辞職を求める声が上がり、与党からは不適切発言だ、政府の立ち場とは異るとの批判は起きたが、出処進退は議員自らが決めるべきだとして議員辞職には反対の姿勢を示した。

 要するに不適切発言で議員辞職が基準になった場合、失言・不適切発言に事欠かない与党としては議員辞職続出ということになって、自らの首を絞める逆作用が働くことになるからだろう。

 足元の日本維新の会は代表の松井一郎が丸山穂高を除名処分にしただけではなく、5月15日、東京都内の日本記者クラブで会見、「国会で辞職勧告になるだろうし、勿論、我々も賛成だ。本人が事の重大さに早く気付き、これからの人生のためにも早急に潔く身を処すべきだ」(時事ドットコム)と自分から議員辞職することを求めたという。

 但し松井一郎は2日前の5月13日には、「前後の脈絡を精査しないといけないが、戦争で取り返すような考えは党として一切ない。武力での解決は僕にはない。言論の自由だが、武力で領土を取り返す考え方は一切持っていない」と、「戦争発言」そのものに関しては言論の自由認定したといったツイッターが紹介されることになった。

 憲法で基本的人権の一つとして言論の自由が保障されていても、無制限の保障ではなく、言論の質に従う条件付き保障に過ぎない。例えば、〈人種、出身国、民族、宗教、性的指向、性別、容姿、健康(障害)といった、自分から主体的に変えることが困難な事柄に基づいて属する個人または集団に対して攻撃、脅迫、侮辱するヘイトスピーチ(=憎悪表現)〉(Wikipedia)は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」に於ける罰則の対象とされ、言論の自由の範疇には入らない。

 松井一郎は「言論の自由」とした自らの発言の失態に気づいて、失態を帳消しするために除名処分にとどまらない議員辞職を求めることになった可能性は疑い得ない。

 丸山穂高は野党が辞職勧告決議案の衆院提出を検討するに及んで、5月15日夕に自らのツイッターに、西暦2019年5月15日付「毎日新聞」によると、「憲政史上例を見ない、言論府が自らの首を絞める辞職勧告決議案かと。提出され審議されるなら、こちらも相応の反論や弁明を行います。野党側の感情論で議案が出され、普段は冷静な与党まで含めて審議へ進むなら、まさにこのままではこの国の言論の自由が危ぶまれる話でもある」などと投稿したという。

 丸山穂高は東京大学経済学部卒業、経済産業省入省の逸材(?)だそうだが、松井一郎と同様、言論の質を問題外として「言論の自由」に触れている。"北方四島は戦争で取り返すべき"とする自らの主張・考えを披露する以上、どのような戦術・戦略を以ってして北方四島は奪還可能か、人的・物的代償(いわば犠牲)の程度、国際政治への影響(このことは国際的な日本の立ち場に関係してくることになる)等々を具体的に立案・想定して広く公表、賛否を求めなければならない問題であって、例え反対や批判が大勢を占めたとしても、そうすることによって初めて言論の質をそれなりに獲得し得るが、そういったことを一切せずに極く人数の限られた場でイエスかノーの結論のみを性急に求めて、いわば言論の質もヘッタクレもなく、それを以って「言論の自由」だと言う。逸材に反した程度の低さは如何ともし難い。

 立憲民主党など野党6党派は5月17日に丸山穂高衆院議員に対する辞職勧告決議案を衆院に共同提出。自公の両党は5月21日午前、「譴責決議案」を衆院に共同提出。丸山穂高は5月24日に衆院議院運営委員会理事会に事情聴取の出席を求められたが、病気のため2カ月間の休養が必要だとする医師の診断書を提出・欠席で対抗。双方の"戦争"はなかなか見応えのある攻防を見せている。

 ここで注意しなければならないのは自公の譴責決議案が丸山穂高の「戦争発言」を憲法の平和主義の観点から問題視していることである。

 「議員丸山穂高君譴責決議(案)」(毎日新聞2019年5月21日 12時01分)

 去る五月十一日の国後島訪問中の議員丸山穂高君の平和主義に反する発言は、我が国の国益を大きく損ない、本院の権威と品位を失墜させるもので、到底看過できないものである。

 よって本院は、ここに丸山君を譴責し、猛省を促すものである。

 右決議する。

<理由>

 衆議院議員丸山穂高君は、四島在住ロシア人と日本国民との相互理解の増進を図り、もって領土問題の解決を含む平和条約締結問題の解決に寄与することを目的とする「令和元年度第一回北方四島交流訪問事業」、いわゆるビザなし交流事業に参加し、国後島を訪問した際、五月十一日夜に、ホームビジット先のロシア人島民宅及び宿舎である「友好の家」において飲酒した結果泥酔し、宿舎内で大声を出し他団員と口論をする等の迷惑行為を行い、同行記者団と懇談中の元島民の訪問団長に対し、「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」「戦争しないとどうしようもなくないですか」などの信じ難い暴言を吐いたと報道され、本人も事実関係を認めている。かかる常軌を逸した言動は、元島民の方々のお気持ちを傷つけただけでなく、特に、憲法の平和主義をおよそ理解していない戦争発言は、国民の悲願である北方領土返還に向けた交渉に多大な影響を及ぼし、我が国の国益を大きく損なうものと言わざるを得ない。

 本件事業は、内閣府交付金に基づく補助金を受けた北方四島交流北海道推進委員会の費用負担により実施されているものであり、本院から公式に派遣したものではないにせよ、丸山君は、沖縄及び北方問題特別委員会の委員であるが故に、優先的に参加することができたものであり、他の団員からは、本院を代表して参加したものと受け止められており、また、その後の報道により、我が国憲法の基本的原則である平和主義の認識を欠く議員の存在を国内外に知らしめ、衝撃を与えた事実は否めず、本院の権威と品位を著しく貶(おとし)める結果となったと断じざるを得ない。

 丸山君の発言は、極めて不穏当なものであり、擁護する余地は全くないものであるが、他方で、議員の身分に関わることは慎重に取り扱う必要があり、憲法上、本院が議員の身分を失わせることができるのは、懲罰による除名及び資格争訟裁判の場合に限られ、いずれも出席議員の三分の二以上の賛成を必要としているのに対し、議員辞職勧告決議は出席議員の過半数の賛成により議決されるもので、理論上は多数会派の意思で議決できるものであり、その観点からも慎重に取り扱われてきた経緯があり、これまで、明白かつ重大な違法行為に当たる場合にのみ議員辞職勧告決議を行ってきており、問題発言を理由に議員辞職勧告決議を行ったことはない。また、除名を含む懲罰は、憲法上、院内の秩序をみだした場合に限られており、本院からの公式派遣でもない本件は直ちには懲罰事案には該当しない。そうであるからと言って、議員の発言が自由に保障されている訳ではなく、仮に、院内での発言であれば、院外で責任を問われないという免責特権が与えられている代わりに、不穏当発言の場合は議院において懲罰を課すことはあり得るものであり、実際に、不穏当発言で懲罰を課せられた事例もある。もとより、丸山君の発言は、明らかに一線を越えたものであり、懲罰の対象とならないからと言って、決して許されるものではない。

 議員の出処進退は自ら決すべきことが基本であり、議員辞職するか否かは、最終的には自ら判断することではあるが、丸山君には、有権者の負託を受け、全国民の代表として議員となっている重みを十分に自覚し、常に、言動をよくわきまえ、適切な判断を下すよう、猛省を促したい。

 以上が、本決議案を提出する理由である。 (文飾は当方)

 日本国憲法に於ける平和主義は「戦争の放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」の3大要件によって成り立っている。要するに丸山穂高に対する譴責決議を衆議院に提出した自公与党は日本国憲法の平和主義を理解し、受け入れていることになる。理解だけで、受け入れていなければ、平和主義を楯にした丸山穂高の「戦争発言」譴責は不可能となる。

 安倍晋三は日本国憲法第2章「戦争の放棄」第1項の「戦争の放棄」と第2項の「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を残したまま、第3項を設けて、そこに自衛隊の根拠規定を明記する改憲意思をかねがね示している。例え第1項と第2項を残そうとも、自衛隊の活動を専守防衛のみならず、憲法解釈で容認した集団的自衛権の行使に基づいて海外にまで広げる「新安全保障法制」を2015年9月19日に成立させている。

 当然、9条1項と2項に平和主義の3大要件たる「戦争の放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」を残したとしても、一方で集団的自衛権の行使を容認した自衛隊の存在を9条3項に明記することは1・2項と3項との間に矛盾をつくり出すことになるが、この矛盾を無理やり抑えつけて、矛盾そのものを遠ざけ、限りなく影の薄いものとするためには9条3項を前面に出して、9条に於ける主たる項目とする必要性が生じる。安倍晋三はそのうち、そのような意思を働かすことになるだろう。でなければ、9条1項・2項に邪魔されて、自衛隊は集団的自衛権の行使に基づいた海外活動など不可能となり、折角成立させた安保法制は有名無実化することになる。

 一方、自公与党が丸山穂高の「戦争発言」の譴責理由に憲法の平和主義を掲げることも、安倍晋三の意思通りに憲法が改正されるかどうかは不明で、現時点で改正前であっても、安倍晋三の改正意思そのものと新安保法制が既に可能としている集団的自衛権行使をウソににする矛盾を描くことになる。

 要するに自公は与党として与党親分である安倍晋三の新安保法制の精神と改憲意思に忠実でなければならないのであって、その線に添う義務を有する以上、丸山穂高の「戦争発言」の譴責理由に日本憲法の平和主義を掲げる資格はないということである。

 「我々与党は自衛隊の必要最小限度の武力行使を以ってする止むを得ない場合の戦争は賛成しているが、北方四島に限って戦争で取り返すという考えは過激過ぎて、容認できない。よって本院は、ここに丸山君を譴責し、猛省を促すものである」ぐらいにとどめておくべきだったろう。

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