安倍晋三の首脳会談「日米が100%共にあるを確認」は米軍事行動の際は日本追随を意味、説明不足は無責任

2017-11-10 11:05:29 | 政治

 2017年11月6日、安倍晋三とトランプが日米首脳会談を行い、その後共同記者会見に臨んだ。安倍晋三の「冒頭発言」は首相官邸サイトから、トランプの冒頭発言と質疑は「産経ニュース」から。文飾は当方。   

 安倍晋三「この2日間にわたり、ドナルドと国際社会の直面する様々な課題について、非常に深い議論を行うことができました。その中でも圧倒的な重要性を占めたのは北朝鮮の問題です。十分な時間を掛けて北朝鮮の最新の情勢を分析し、今後とるべき方策について、完全に見解の一致を見ました。

 日本は、全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持しています。2日間にわたる話合いを通じ、改めて、日米が100%共にあることを力強く確認しました。

 過去20年以上にわたり、国際社会は北朝鮮との対話を試みてきました。94年の枠組み合意のときも、2005年の六者による合意のときも、北朝鮮は核を放棄することにコミットしました。しかし、その約束はほごにされ、結果的に我々の対話の努力は、北朝鮮に核・ミサイル開発を進めるための時間稼ぎに使われました。

 北朝鮮とは、対話のための対話では全く意味がありません。今は対話のときではなく、対話ではなく北朝鮮に最大限の圧力をかけるときです。北朝鮮の政策を変えさせるため日米が主導し、国際社会と緊密に連携して、あらゆる手段を通じて北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていくことで完全に一致しました」

 「日米が主導し、国際社会と緊密に連携して、あらゆる手段を通じて北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていくことで完全に一致しました」と言っていることは北朝鮮に対して現在採用している対策であって、この対策がイコール全ての解決策となる保証は現在のところない。

 保証されていたなら、トランプは軍事行動をも含めて「全ての選択肢がテーブルの上にある」などと言う必要はないし、安倍晋三自身、トランプの立場への支持表明を行う必要もない。

 いずれにしても安倍晋三が「日本は、全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持しています」と言い、「日米が100%共にあることを力強く確認しました」と言っていることは、アメリカが北朝鮮に対して軍事行動を取った場合、日本も追随して軍事行動を共にすることの宣言となる。

 そうなることは安倍晋三が100%の対米従属主義者であることからも理解できるはずである。

 記者との質疑で次のような問いかけがあった。

 記者「安倍首相とトランプ大統領は北朝鮮の核開発放棄に向けて最大限まで圧力を高めることで一致したが、今回の首脳会談の意義をどうお考えか。また、北朝鮮との偶発的な軍事衝突を避けるためにどのような対応が必要と考えるか

 安倍晋三「日米同盟は地域の平和と繁栄の礎です。日米が強固に連携してこそ地域の平和は揺るぎないものとなる。その観点から今回、トランプ大統領の訪日を機に日米の強固な絆を確認できたことは地域の平和と繁栄において極めて有意義だったと思います。

 北朝鮮情勢については、トランプ大統領と日米が百パーセント共にあることを確認しました。日米で連携し、中国、ロシアを含む関係国に働きかけて、国際社会全体で北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていかなければならないと考えています。

 誰も紛争などを望んではいない。私もトランプ大統領もそうです。しかし、北朝鮮は国際秩序に挑戦し、挑発を繰り返している。この北朝鮮に対し、国際社会が連携しながら、その政策を変えさせるために圧力をかけていく。北朝鮮側から『政策を変えるから話し合いたい』という状況を作っていくことが極めて重要だと考えています。そうした考え方についてはトランプ大統領と完全に一致をしたところであり、多くの国々とも一致できているのではないかと思っています。

 また、法の支配に基づく自由で開かれた海洋は国際社会の安定と繁栄の礎です。今回、トランプ大統領のアジア歴訪の冒頭、自由で開かれたインド太平洋を目指し、日米が共に努力していくことを確認できたことは地域の平和にとって大きな意義があります。

 APEC首脳会議、そしてEAS(東アジアサミット)においても、日米のこうした考えのもと、議論を主導をしていく考えです。自由で開かれたインド太平洋戦略に賛同してもらえるのいずれの国とも協同していくことができると考えています。引き続き日米で連携して、地域の平和と安定に貢献していきたいと思います」

 安倍晋三はここでも「北朝鮮情勢については、トランプ大統領と日米が百パーセント共にあることを確認しました」と言っている。

 当然、アメリカが軍事攻撃を取った場合は日本も軍事行動を共にする示唆であるから、「北朝鮮との偶発的な軍事衝突を避ける」取り得る方策を国民に説明する責任を有している。

 だが、「日米が強固に連携してこそ地域の平和は揺るぎない」とか、「日米の強固な絆を確認できたことは地域の平和と繁栄において極めて有意義」だとか、「誰も紛争などを望んではいない」、あるいは「政策を変えさせるために圧力をかけていく」と、「偶発的な軍事衝突」回避の何ら保証にもならないことを並べ立てるだけで、満足な説明責任を果たしていないのは無責任極まりない。

 「誰も紛争などを望んではいない」が事実であったとしても、西側の圧力に対しての北朝鮮の暴発、あるいは予期しない「偶発的な軍事衝突」はあり得る危険性として考えに入れない安全保障上の国家危機管理は一国のリーダーとしてこの上ない無責任である。

 ところが、安倍晋三は日本が軍事的行動に出る場合のあることを発言している。

 記者「大統領は日本が北朝鮮のミサイルを撃ち落とさなかったことは残念だと発言したこともある。この問題は話されたのか。日本の防衛のためにどういった役割を果たすべきだと考えるか

 トランプ「首相はさまざまな防衛装備を米国から購入することになるでしょう。そうすれば上空でミサイルを撃ち落とすことができるようになると思います。先日、サウジアラビアでも同じようなことが起こりました。誰にもダメージを与えることなく、迅速にミサイルを撃ち落とすことができます。ですから、日本が大量の防衛装備を買うことが好ましいと思っています。そうすべきです。

 米国は世界最高の軍事装備を持っています。F35戦闘機は世界最高の戦闘機です。完全にステルス機能を持っています。また、さまざまなミサイルを米国は製造しています。多くの雇用が生まれますし、日本がもっと安全になります。他の国も多くの軍事装備を米国から買っています」

 安倍晋三「日本は防衛装備品の多くを米国から購入しています。北朝鮮情勢が厳しくなる中、アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しくなる中、我々は日本の防衛力を質的に、量的に拡充していかなければならないと考えています。大統領が言及されたように、F35A戦闘機もそうですし、SM3ブロック2A(弾道ミサイル防衛用迎撃ミサイル)も米国からさらに導入することになっています。イージス艦の量、質を拡充していく上で、米国からさらに購入していくことになると思っています。

 我々は北朝鮮がミサイルを発射した直後から完全にその動きを把握をしている。このミサイル防衛システム自体が、日米で協力して対処するシステムと言っても良いのだろうと思う。我々は迎撃の必要があるものについては迎撃していくということです。いずれにせよ、迎撃を行なう際、日米は緊密に連携をしているということです」

 「迎撃」した場合の危険性として考えられる北朝鮮の反応については何も触れていない。それとも、「迎撃」しても、北朝鮮は何も反応しないということを前提とした危機管理で発言してるのだろうか。

 例えどちらであっても、「迎撃」だけを言って、北朝鮮の反応について何も触れないのは説明責任を欠いていることになって、トップリーダーとして無責任の誹りを免れることはできない。

 安倍晋三が2017年9月25日の解散記者会見で北朝鮮に対しては「対話のための対話は意味がない」と言い、「対話の努力は時間稼ぎに利用された」と批判していたが、共同記者会見でも同趣旨のことを発言して対話による解決を一切排除しているのに対してトランプは米韓軍事演習や日本海への空母派遣等で北朝鮮に対して軍事的圧力をかけたり、首脳会談後の共同記者会見で発言しているように北朝鮮に対する「戦略的な忍耐の時代はもう終わった」と強硬姿勢を見せる一方で国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が北朝鮮との対話に向けた外交努力に当たっていることを2017年11月7日付「ロイター」記事が伝えている。   

 その外交努力は非核化協議には一切応じようとしない北朝鮮の姿勢に阻まれて困難を極めているようだが、トランプの「全ての選択肢」の中には外交的解決(=対話による解決)も含めていることになる。

 例え「対話の努力は時間稼ぎに利用された」としても、国民の生命・財産の保全に責任を持つ以上、対話解決の外交努力も対北朝鮮政策の選択肢の一つとして加えておくのが一国の首相としての務めだと思うが、どうも安倍晋三の対北朝鮮圧力一辺倒の政策は想定し得る突発的な危険な事態に対する国民への説明を全く欠いた無責任な危機管理で成り立たせているようだ。

 説明を欠いているということは国民から見た場合、暴発も偶発的な軍事衝突も、突発的な危険な事態を全く想定していないことを意味することになる。
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