安倍加計疑惑:2015年6月5日「国家戦略特区WGヒアリング(議事録)」に見る数々の情報捏造と隠し事

2017-11-17 13:36:29 | 政治
 
 今治市は2015年6月4日に国家戦略特区での獣医学部新設を提案し、2015年12月15日の「第18回国家戦略特別区域諮問会議」で国家戦略特区指定を受け、翌年の2016年1月29日に正式に特区指定されている。

 今治市が国家戦略特区での獣医学部新設を提案した2015年6月4日の翌日の2015年6月5日、内閣府は提案に対する「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング」を行っている。提案したすぐの翌日に内閣府がヒアリングを行う。役所という組織を頭に置いた場合、バカに手回しのよい対応に見える。

 一般的な遣り方を見ると、前以って根回ししていた可能性が浮かぶ。

 2015年6月5日のヒアリング約2カ月前の2015年4月2日に今治市の企画課長と課長補佐が首相官邸を訪れている。この訪問は今治市が情報公開請求で一部黒塗りで開示した文書に記録されていると言う。

 今治市の面会に対して首相官邸で対応したのは経済産業省出身で当時首相秘書官だった柳瀬唯夫なる人物と目されているが、国会で野党の追及を「記憶にない」の一点張りでかわしている。首相官邸としては今治市の記録にある以上、面会はなかったとすることはできない。「記憶にない」で逃げるしかないのだろうが、首相官邸に対する面会者が存在するのに対応者が不明という奇妙な矛盾を生み出している。

 獣医学部新設を提案したすぐの翌日のヒアリングという手回しの良さはこの面会のときに根回しが行われた可能性が浮上する。そして政府はヒアリングの25日後の2015年6月30日に獣医学部新設に関わる4条件を閣議決定。

 改めて時系列で示してみる。  

 ①2015年4月2日   今治市職員が首相官邸を訪れて、国家戦略特区指定の願い出と指定された場合の特区での獣医学部新設計画の提示を行って、一定
             の保証を受ける根回しを行った。
 ②2015年6月4日   今治市は国家戦略特区での獣医学部新設を提案。
 ③2015年6月5日   内閣府は今治市に対して「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング」開催。
 ④2015年6月30日   獣医学部新設に関わる4条件を閣議決定。
 ⑤2015年12月15日  今治市国家戦略特区指定を受ける。

 閣議決定が後回しになったのは、加計学園の獣医学部新設を認可するためには文科省や日本獣医師会が獣医大学新設に反対していることに対する反対をクリアする正式な手続きとする必要からだろう。「既存の獣医師養成でない構想」という条件を第1番に掲げて“革新性”をウリにすることで反対の主張を封じ込めることができると考えたに違いない。

 この今治市の獣医学部新設の提案に対する内閣府の2015年6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング」に3名の加計学園関係者が出席していたにも関わらず、議事要旨に記載はない、政府のWGの議事内容を「すべて公開し、透明性が高い」との説明に反するとのスッパ抜き記事を2017年8月6日付「朝日デジタル」が載せた。   

 このスッパ抜き記事に対する政府側の対応は早かった。WGの座長でアジア成長研究所所長の八田達夫名で8月6日同日付で「事実関係」なるPDF記事を公表した。文飾は当方。

 「国家戦略特区WG(平成27年6月5日)の議事要旨について」(2017年8月6日)   

国家戦略特区WG座長 八田達夫

8月6日付朝日新聞で、「特区会議に加計幹部 議事要旨に出席・発言の記載なし」との記事が掲載されていますが、事実関係は以下のとおりです。

1、国家戦略特区WGで自治体等から提案を受けるヒアリングを行う際、提案者の要望により「非公開」と扱うことは、通常の取り扱いとして行っています。

すべて公開を前提とすれば、提案者が十分に情報を示せなくなり、国家戦略特区における提案制度の趣旨にかなわなくなることがあるためです。

平成27年6月5日の特区WGは、提案主体の愛媛県・今治市から、「議会対策、反対派・競合相手との関係上、非公開の希望」があり、非公開の前提で議事進行しました。

しかし、その後、今治市が国家戦略特区に指定され、提案が実現したことから、議論経過をできる限りオープンにすべきと私が考え、提案主体とも再度協議し、本年3月6日に議事要旨を公開しました。その際、当初は非公開を前提としていた経緯も踏まえ、公開する内容を調整しました。

2、6月5日のヒアリングでは、今治市が、独自の判断で、説明補助のために加計学園関係者(3名)を同席させていました。特区WGの提案ヒアリングでは、通常、こうした説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはありません。

6月5日のヒアリングでは、非公開との前提で、提案者以外の者(加計学園関係者)の非公式な補足発言も認めていましたが、議事要旨の公開に際しては、通常どおり、提案者以外の発言は掲載しませんでした。

なお、提案者から、説明補助者の参加・発言について議事要旨に記載してほしい等の特段の要望があった場合は、議事要旨に記載している場合がありますが、今回はこうしたケースにあたりません。

3、以上のとおり、特区WGの議事要旨の公開については、国家戦略特区の制度趣旨にかなうよう運営しているところであり、今回のケースは通常の取扱いどおり行ったものです。

問合せ先 内閣府地方創生推進事務局 TEL 03-5510-2151

 加計学園関係者は「説明補助者」の資格での出席だから、名前も発言も議事要旨に載せなかった。

 もっともらしい「事実関係」だが、このワーキンググループには今治市が2015年6月4日に内閣府に示した、国家戦略特区でどういった獣医学部を計画しているのかの構想を書き記した「2015年6月4日今治市国家戦略特別区域提案書」と理解を得るために色文字や色枠を使って要所を強調したプレゼンテーション用の「添付資料」を提出している。   

 上記「WGヒアリング」には愛媛県企画振興部地域振興局長である山下一行が提案者として出席していて、委員から獣医学部の経営形態を問われると、「現状では、民設民営で考えております」と発言していることからも、加計学園関係者が単なる「説明補助者」として出席していたとしても、「提案書」と「添付資料」の作成は加計学園の手を借りてのことであり、また加計学園関係者がどのような資格で出席していようと、紹介があり、名刺交換もしただろうから、当然、内閣府側にしても、加計学園が事業主体だと理解していたはずだ。

 だが、加計学園が今治市が国家戦略特区として計画した獣医学部の事業主体として名乗り出たのは2017年1月4日の内閣府による「広島県・今治市 国家戦略特別区域会議の構成員(特定事業を実施すると見込まれる者)の公募」、いわゆる事業主体公募に対して6日後の2017年1月10日に応募したときが初めてで、それ以前の国家戦略特区諮問会議にも国家戦略特区ワーキンググループヒヤリングにも加計学園の名前は現れることはなかっし、2015年6月30日の獣医学部新設に関わる4条件閣議決定以降の両会議で加計学園を事業主体と目して計画している獣医学部の「構想」が4条件を満たしているか、あるいは満たすことができるのかどうかの議論を行った形跡は議事録のどこにも見当たらない。

 なぜ加計学園は事業主体として早い時期に正々堂々と名乗り出なかったのだろうか。表に出すことができない理由として考えられることは安倍晋三が政治関与で動かしている獣医学部新設という事実以外にあるだろうか。

 8月6日付で八田達夫名で公表した「事実関係」の正当性を見てみる。

 八田達夫は「事実関係」公表の文書で2015年6月5日の「特区WGヒアリング」での議事要旨を本年3月6日に「当初は非公開を前提としていた経緯も踏まえ、公開する内容を調整」して公開したと言っている。

 2017年3月6日の公開らしいPDF記事の最初の部分をここに取り上げてみる。会議の進行係は内閣府地方創生推進室次長の藤原豊。 安倍晋三の腰巾着萩生田光一や地方担当相の山本幸三と共にその下で疑惑隠蔽を支えた有名人の一人である。

 リンクアドレスをクリックすると、現在もネット上に存在する。

 「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)」(平成27年6月5日(金)11:26~11:45)  

○藤原次長 済みません。お待たせをいたしました。

 それでは、国家戦略特区のヒアリングを再開させていただきます。

 提案を既に頂戴しておりますが、愛媛県今治市から国際水準の獣医学教育特区ということで、以前から構造改革特区には何度も御提案いただきましたが、今回は抜本的にコンセプトをかなり固めていただいて御提案を頂戴している形になっております。
 
 これは30分の時間でございますけれども、10分程度で御説明いただきまして御議論をいただくということでございますが、資料その他、議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか。

○山下地域振興局長 はい。

○藤原次長「それでは、八田座長、よろしくお願いいたします」

○八田達夫 お忙しいところをお越しくださいまして、ありがとうございました。

 早速、御説明をお願いいたします。

○山下地域振興局長 私は愛媛県の地域振興局長の山下といいます。よろしくお願いいたします。

 愛媛県地域振興局長の山下一行が自己紹介の後、「説明はこの1枚で集約したつもりなので、この紙を中心にお願いいたします」と言っているのは理解を得るために色文字や色枠を使って要所を強調したプレゼンテーション用の「添付資料」のことなのだろう。

 「国際水準の獣医学教育特区」だとか、「獣医学教育空白地域である『四国』に国際水準の大学獣医学部を新設」だとか、以後新設計画の獣医学部の「構想」を以後説明している。

 ではもう一つ、「朝日デジタル」が加計学園関係者が出席していながら、「議事要旨」に出席者名も発言も記載がないとスッパ抜いた後に冒頭部分を書き換えて載せたのだろう。両方共ヒアリングが行われた「平成27年6月5日」の日付となっているのみで、新たに載せた日付は記載がないから不明だが、アドレスの最後の方が前者は「gijiyoushi」(議事要旨)となっていて、後者は「gijiroku」(議事録)となっている違いしか分からない。

 正確な情報伝達という点で言うと、会議の開催日とは別に公表日まで入れるべきだろう。斜体文字と下線文字は当方が行った文飾ではなく、記事のままである。蛍光ペンのみ、当方が文飾。

 「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事録)」(平成27年6月5日)  

 (注)下線部分では、ヒアリングの当時、議事を非公開扱いと整理しているが、平成29年3月6日に公開した議事要旨の作成に際して提案者と再度協議した結果、現在は、公開扱いで差し支えないとされている。

○藤原次長 済みません。お待たせをいたしました。

 それでは、国家戦略特区のヒアリングを再開させていただきます。

 提案を既に頂戴しておりますが、愛媛県今治市から国際水準の獣医学教育特区ということで、以前から構造改革特区には何度も御提案いただきましたが、今回は抜本的にコンセプトをかなり固めていただいて御提案を頂戴している形になっております。

 これは30分の時間でございますけれども、10分程度で御説明いただきまして御議論をいただくということでございますが、資料その他、議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか。

山下地域振興局長 済みません。諸般の事情によりまして、非公開でお願いできたらと思っておるのです。

 理由は、対抗するというか、いろいろな意見を持った勢力もかなりあることと、行政の支援で、議会筋のようなところにまだ説明が至っていないので、その辺はちょっと非公開でお願いできたらという理由でございます。

八田座長 わかりました。

 ただし、提案なさっていること自体は議会の方も御存じですね。

山下地域振興局長 はい。

藤原次長 提案をしていただくこと自体は公開させていただきますけれども、提案内容、議事録は非公開という位置づけにさせていただきます。

 それでは、八田座長、よろしくお願いいたします。

○八田座長 お忙しいところをお越しくださいまして、ありがとうございました。

 早速、御説明をお願いいたします。

○山下地域振興局長 私は愛媛県の地域振興局長の山下といいます。よろしくお願いいたします。

 前者の文書では進行係の藤原豊が「資料その他、議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか」と尋ねたのに対して愛媛県地域振興局長の山下一行が「はい」と答えているだけだが、後者文書では下線付きで「済みません。諸般の事情によりまして、非公開でお願いできたらと思っておるのです。」云々と答えている。

 常識的に考えた場合、もし愛媛県側がこのような事情で非公開を望んでいたなら、2015年6月5日の「WGヒアリング」の開催に先立って主催者側に伝えて了承を得ているはずである。

 もし得ていなければ、内閣府の藤原豊に「資料その他、議事内容は公開の扱いでよろしゅうございますでしょうか」と聞かれた後に下線付き発言を行っても、何ら差し支えないばかりか、却って正々堂々としていることになって隠し事の必要性は何もない。

 ところが前者の「議事要旨」に後者の「議事録」の下線付きに当たる発言が記載されていないということは、前以って非公開を要望して了承を得たからであろう。

 当然、「議事録」であろうと「議事要旨」であろうと、加計学園関係者の名前も発言も載せないことになるし、載らないことになる。

 つまり何らかの隠し事があって、載せなかったわけではない。載せなかったことが後日露見して問題にされたとしても隠し事がないはずだから、8月6日日付八田達夫名の「事実関係」なる説明で十分である。

 また、前以って非公開を伝えておいて了承を得るのが常識であることと隠し事がなければ、山下一行の下線で記した「済みません。諸般の事情によりまして」云々とそれ以下の発言はなかったことになって、捏造(情報の捏造に当たる)したことになる。

 と言うことは、八田達夫名の「事実関係」にしても捏造したことになって、非公開が実際は隠し事が目的の口実である疑いが出てくる。朝日新聞にスッパ抜かれた手前、辻褄合わせのために非公開という「事実関係」を作り上げて、さらに辻褄を合わせるために八田達夫名の「事実関係」とほぼ同じ内容の下線付きの発言を加えた新しい「議事録」を公表することにした。

 何も隠し事がなければ載せなくてもいい発言をわざわざ捏造してまで載せたことは、逆に隠し事が必要だったからであろう。

 この隠し事が2015年6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング」に加計学園関係者が出席していながら、獣医学部事業主体としての加計学園の名前が2017年1月4日の内閣府の公募に対する2017年1月10日の応募までどの「議事録」、どの「議事要旨」にも出ることがなかった不自然さを継続させることになったはずだ。

 朝日新聞のスッパ抜き記事に対する八田達夫名の8月6日「国家戦略特区WG(平成27年6月5日)の議事要旨について」に書いてある「事実関係」とそれに合わせた「議事録」の改めての公表が却って譲歩の捏造や様々な隠し事を露見させることになったはずだ。

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