慰安婦少女像展示中止:表現の自由とは国民それぞれの判断に任せる自由を言う 戦前は国家が判断し、国民はそれに従ってきた

2019-08-12 10:34:33 | 教育
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 日本の首相安倍晋三センセイが加計学園獣医学部認可に首相としての権限を私的に行使し、私的に行政上の便宜を図る形で政治的に関与し、私的便宜を与えたとされている疑惑を国会答弁や記者会見から政治関与クロと見る理由を挙げていく。自信を持って一読をお勧め致します。読めば直ちに政治関与クロだなと納得できます。よろしくお願いします。

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 公共機関が自らの施設で展示や展覧、講演等の文化行事を公募によって、もしくは申込みを受付けて行う場合、応募者の政治的・思想的立場の右と左を問わずに許可を出すべきであろう。例えそのような文化行事が国や地方公共団体の補助金を受けて行われる種類のものであってもである。

 許可を出す公共機関側にしても、許可を受けて文化行事を直接的に実施する参加者側にしても政治的、あるいは思想的に厳正中立ということは先ずあり得ないし、参加者側が自らの政治的・思想的立場に則って参加することを前提としなければならないが、公共機関側が厳正中立を侵して政治的・思想的にどちらかに偏った許可を出すことになった場合、出し物についての評価を公共機関側の政治的・思想的立場からの判断に任せることになり、参加者側の政治的・思想的立場を制限することになるだけではなく、結果的に日本国憲法の第21条で基本的人権の一つとして保障することによって国民に等しく与えられている「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」の機会を毀損することになるからである。

 さらに戦前の例に学ぶなら、表現の自由とは国民それぞれの判断に任せる自由を言うはずだから、公共機関側の判断に任せた政治的・思想的に偏った文化行事となった場合、国民それぞれの判断に任せる自由を制限、もしくは奪うことになる。

 このような考えに基づいて国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が開催から中止に至った経緯を見てみる。

 「あいちトリエンナーレ」とは2010年から3年ごとに開催されている国内最大規模の国際芸術祭で、4回目となる2019年は国内外から90組以上のアーティストを迎えて、国際現代美術展のほか、映像プログラム、パフォーミングアーツ、音楽プログラムなど、様々な表現を横断する最先端の芸術作品を紹介しているとサイトに謳っている。そのような出し物の一つが企画展「表現の不自由展・その後」だそうだ。

 そして開催年ごとに愛知県知事が「あいちトリエンナーレ実行委員会」会長を務め、実行委員会が開催年ごとに芸術監督を決めて、県知事が委嘱状を交付する段取りとなっているそうだ。2019年の芸術監督はジャーナリストで、メディア・アクティビスト(「市民運動の活動内容などをビデオテープに記録し、不特定多数の人が見られるように作品を提供する人」だと「情報・知識&オピニオン imidas - イミダス」に紹介されている。)である津田大介氏に委嘱された。

 当然、出展作品は津田大介氏の政治的・思想的立場の影響を受けることになる。あくまでも想像だが、「あいちトリエンナーレ実行委員会」は3年毎に委嘱を変える芸術監督によって政治的・思想的なバランスを取っているのだろう。公共機関が極端にバランスを欠いている人物以外に政治的・思想的にバランスを取るにはそういった方法以外に難しい。

 津田大介氏に関しては名前を聞いたことがある程度で、その政治的思想に触れる機会はなく、無頓着であったが、企画展「表現の不自由展・その後」の出品作品と作品に関する騒動のマスコミ報道を受けて、その政治的・思想的立場のいくばくかを知ることになった。

 「あいちトリエンナーレ2019」は8月1日から10月4日までの開催。各方面から批判を受けた『表現の不自由展・その後』は公立美術館などで撤去された作品を、その経緯とともに展示していて、そのうちの韓国の彫刻作家が制作した「平和の少女像」、いわば慰安婦少女像と昭和天皇をモチーフにした作品が特に集中的は批判を受けたようだ。

 2019年8月10日付「産経ニュース」が「表現の不自由展・その後」の中止をめぐる経過と、そのコーナーへの出品に至った経緯を作家名と作品名と共に画像にして載せていたから、文字に起こしてみた。

 「表現の不自由展・その後」 中止をめぐる経過

 2019年8月1日 あいちトリエンナーレ2019が開幕「不自由展」に対する抗議や脅迫相次ぐ

 2019年8月2日 名古屋市の河村たかし市長が「公的資金を使った場で展示すべきではない」と述べ、慰安婦像の展示中止を求める考えを示す

 2019年8月3日 菅義偉官房長官が、文化庁の補助金交付について「事実関係を精査した上で適切に対応したい」と発言

          愛知県の大村秀章知事が、「安心安全の確保が難しい」として、「不自由展」を4日から中止と発表

          日本ペンクラブが、河村市長らの発言を「検閲」にもつながる」と批判声明

 2019年8月4日 「不自由展」の会場で中止案内、展示スペースを仕切りで閉ざす

 2019年8月5日 大村知事が、河村市長の2日の発言を「表現の自由を保障した憲法21条に違反する疑いが極めて濃厚ではないか」と批判

 2019年8月6日 芸術祭の参加アーティスト約70人が抗議声明

 2019年8月7日 「不自由展」に対する危害を予告するファクスを送ったとして、愛知県警が59歳のトラック運転手の男を逮捕

 2019年8月8日 柴山昌彦文部科学相が補助を交付について「経過や展開を含め.事業目的などを再チェックしたい」と発言

 「表現の不自由展・その後」の主な出品作とこれまでの経緯

大浦信行     作品名「遠近を抱えて」(4点組)

昭和天空の肖像を使った作品。昭和61年に富山県立近代美術館(当時)で展示後、県議会や地元紙から「天皇をちゃかし、不快」などと批判され非公開に。その後、同館は作品を売却し図録も償却した。今回、作品の焼却シーンを挿入した映像「遠近を抱えてPartⅡ」も出品

小泰明朗     作品名「空気#1」

天皇制を扱った連作のーつ。平成28年に東京都現代美術館の企画展に出品予定だったが、「多くの人か持つ宗教的な畏敬の念を侮辱する可能性」に同館が懸念を示し出品を断念

キム・ソギョン、キム・ウンソン  作品名「平和の少女像@」

韓国の彫刻家夫妻が制作。元慰安婦を象徴する像として、市民団体などが在韓日本大使館前に設置、日本政府は撤去を求めている。24年に東京都美術館でミニチュア像が出品され、「政冶活動をするためのもの」は施設便用を認めないとする同館の運営要項に従い撤去された

白川昌生     作品名「群馬県朝鮮人強制連行追悼碑」

県立公園「群馬の森」に設置され、県が立ち退きを求め係争中の追悼碑をモチーフにした作品。29年、係争中の事案に関わるとして群馬県立近代美術館か企画展での展示を取りやめた    

中垣克久     作品名「時代の肖像一絶滅危惧種idiot JAPONICA円墳一」

国旗をあしらい政権の右傾化を批判したドーム形の作品。26年、東京都美術館で開かれた彫列家の団体展に出品。同館が運営要項に従い、一部表現の削除を求めた

岡本光博     作品名「落米のおそれあり」      

交通標識をもじり、米軍機墜落事故を題材にシヤッターに描いた作品。29年に沖縄県うるま市の美術館で公開されたが、地元自治会が「ふさわしくない」と反発、市の判断で一時非公開に

 8月1日に開催、翌日に名古屋市長の河村たかしが「公的資金を使った場で展示すべきではない」と批判し、慰安婦像の展示中止を求める考えを示した。このことがネット上の賛否の論争を誘発した部分もあるかもしれない。

 河村たかしの批判は特に「平和の少女像@」と名付けられた「慰安婦少女像」に向けられているようで、上記「産経ニュース」が伝えている「公的資金を使った場で展示すべきではない」の批判は具体的には「どう考えても日本国民の心を踏みにじるものだ。税金を使ってやるべきものではない」と批判して、実行委員会会長である愛知県知事の大村に対して「平和の少女像」の展示を即刻中止するよう申し出ると述べたと言う。

 さらに慰安婦少女像は「政治的主張を伴い、多くの日本国民の感情を害する恐れが強くある」と批判している。

 河村たかしが考える「日本国民」とは慰安婦の強制連行を否定する歴史認識を抱えた日本人に限ることになる。肯定する歴史認識の日本人は「日本国民」であることから排除していることになる。

 このことは否定歴史認識の「日本国民」のみに「表現の自由」を認めて、肯定歴史認識の「日本国民」は「表現の自由」の選別を受けて、制限されている、あるいは否定されていることになる。

 河村たかしは東京都特別区部の約4分の一の人口を占める、順位4位の230万都市の市長であり、その発言力はそれなりの影響力を持ち、影響力に応じた政治的・思想的な強制力――いわば一種の権力を否応もなしに備えることになる。その強制力・権力を以ってして個人的な政治的・思想的な立場から異なる政治的・思想的な立場の、「日本国民」の中には入れていない日本人の「表現の自由」を選別したり、制限したり、あるいは否定する態度を取る。

 このことは憲法第21条の「表現の自由」に対する恣意的な取り扱いというだけではなく、第99条の「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」に明らかに違反することになる。

 愛知県知事大村秀章が河村たかしの抗議に対して「表現の自由を保障した憲法21条に違反する疑いが極めて濃厚ではないか」と批判すると、河村は「表現の自由の規制が目的ではなく、公共施設の管理、利用方法が不適切と指摘した」と反論しているが、例え「公共施設の管理、利用方法」の適・不適切の問題であったとしても、あくまでも河村自身の個人的な政治的・思想的な立場から端を発した適・不適切であって、「表現の自由」を除外して考えることはできない。要するに問題のすり替えによる自己正当化に過ぎない。

 自身が持つ公権力を公権力として揮うなら、何も問題はないが、名古屋市長としての影響力をバックに自らの政治的・思想的な関心を強制して、異なる政治的・思想的な関心を排除、結果的に国民それぞれの判断に任せる自由を奪い取る、ある種の権力行為を「表現の自由」に対して行っているという点に変わりはない。

 自民党の保守系若手議員のグループ「日本の尊厳と国益を護る会」(護る会、代表幹事・青山繁晴参院議員)が8月2日、「表現の不自由展・その後」の展示作品について「『芸術』や『表現の自由』を掲げた事実上の政治プロパガンダであり、公金を投じて行われるべきではない。国や関係自治体に速やかに適切な対応を求める」と意見表明したと「産経ニュース」(2019.8.2 18:14)が伝えている。
  
 要するに自分たちの政治的・思想的な立場上許容外の表現は全て政治プロパガンダであり、許容内の表現にのみ政治プロパガンダに当たらないとする正当性を与えている点、「護る会」も河村たかし同様に「表現の自由」を国民それぞれの判断に任せる自由と解釈できずに自分たちの判断を押し付けようとする「表現の自由」の侵害に足を踏み込んでいる。

 当然、日本国憲法の第99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」の規定に明らかに抵触していることになる。

 「表現の不自由展・その後」は事務局にテロ予告や脅迫ともとれる抗議電話が殺到、放火を匂わすファクスもあり、中止するに至った。ファクスは日付が8月2日、手書きで「少女像を大至急撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」という内容だったと2019年8月8日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 記事によると、59歳、トラック運転手の男は8月7日夜、威力業務妨害の疑いで逮捕された。この男も日本国憲法が保障している「表現の自由」が意味していることを汲み取って、それぞれの歴史認識をそれぞれの判断に任せるということができずに、自身の政治的・思想的な立場に則った歴史認識の強制を図った。

 男は「実際にガソリンを持って行ったりまいたりするつもりはなかった」と供述しているそうだが、一方の政治的・思想的な立場のみしか認めない傾向や風潮が世の中の大勢を占め、それが正義と解釈されるようになると、少数派の正義を悪と断じて、自らの正義を身を以って実現すべく、往々にして実力行使に出ない保証は限りなく小さくなる。

 一方の政治的・思想的な立場のみを認める傾向や風潮が国中に蔓延するようになると、国家が判断し、国民がそれに従う、あるいは国民にそれを従わせる戦前と同様の世の中を迎えることになるだろう。そうしたい国家主義者が安倍晋三を筆頭に国会議員の中にもゴマンと存在する。そういった世の中にしないためにも、芽のうちから摘み取る強い意識のもと、警備を警察に依頼して、中止という選択肢は排除すべきだったはずだ。

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