安倍晋三の対枝野幸男党首討論:不都合を隠すウソ八百 自民党は民主党政権提案の最低賃金1000円に長いこと反対していた

2019-06-24 12:26:07 | 政治

 西暦2019年6月19日の党首討論で立憲民主党の枝野幸男は財務大臣麻生太郎諮問の金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」が、〈高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている。この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとな〉り、〈収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要になる。〉云々を一つの結論としている指摘をマスコミと同様に年金や老後に対する不安を与えるもの、年金への信頼を揺るがせる問題点として捉えて、安倍晋三を追及、対して安倍晋三は誤解を与えたが、年金の持続可能性はマクロ経済スライドを含めて様々に手を打っていて、安心・安全でることと齟齬はないといった文脈で反論している。(文飾は当方)

 遣り取りの全文は昨日西暦2019年6月22日の当「ブログ」を参考にされたい。

 安倍政権の様々な手のうちの最重要な柱として、勿論、アベノミクス経済政策の成果を高々と掲げている。いわば景気がよくなってこその社会保障制度の持続可能性であり、年金の安定的給付の基盤であり、給付と負担のバランスの保証であり、全てはアベノミクス景気の賜物だというわけである。

 だが、公的年金に対する不安は小さくない。「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」 (内閣府大臣官房政府広報室/2019年1月30日)から見てみる。

「少子化、高齢化が進んでいく中で、将来の公的年金制度全体の姿はどのようなものになるのか」47.1%
「自分は年金をいつから受け取れるのか」39.2%
「自分の保険料負担はどうなっていくのか」26.2%
「年金制度全体の給付と負担の関係はどのようになっているのか」24.4% (回答2531人に於ける複数回答)

 公的年金への不安から、カネが貯蓄に回ることになって、個人消費の低迷を招いていると言われている。安倍晋三の安心・安全説にも関わらないこの不安について何も語らない。枝野幸男も党首討論で、「今回の報告書(金融庁報告書)が出た後も、安心ばかりは強調されて、その多くの有権者の皆さんが抱えている不安に向き合っていないということに対して多くの皆さんが怒っておられるのじゃないかと思います」と言っている。

 安倍晋三の"公的年金安心・安全"説に関わる発言をピックアップしてみる。

 安倍晋三「これも委員のご承知の通り、まさに給付と負担のバランスでありますが、給付をするためには負担をして頂かなければならない。と同時に年金というのは、これは年金の保険料とそして同時に税金を投入する。さらには年金の積立金とそしてその運用益でございます。そこで今委員が仰ったように若い人たちの給料が増えることというのは支え手のみなさんの保険料も増えていきますから、年金財政にはプラスになっていくことは当然のことであろうと思います。

 そういった意味に於きましてはこの6年間で380万人の方々がさらに働き始めた。正社員に於いてもこの6年間で150万人増えました。我々が政権交代前は50万人正社員が減っていたんですが、150万人増えたことによってですね、例えばマクロ経済スライドの数字はですね、0.9から0.2に大きく、これはある意味ではこれを改善と捉えているわけでありますが、数値としては改善した。これ平均寿命が延びているにも関わらず、これは働いている方々の保険料が増えたことによって回転をしているということでありますから、まさに委員がおっしゃったように経済が成長していくことによってですね、新たな働き手が増えていく。まさにが働きたい人が仕事ができるという環境を作ることが極めて重要であります。

 こうして経済が成長していくことによってですね、先程申し上げましたように(第2次安倍政権の6年間で)44兆円のですね、44兆円、運用益が出ているわけでありまして、民主党政権時代の約10倍、運用益が出ている。つまりしっかりと経済を成長させ、働き手を増やし、雇用を増やし、そのことによってですね、当然保険料収入も増えていく。マクロ経済スライドのマイナス分も減っていくわけでございますが、これからもしっかりと増やしていきたい。

 そして最低賃金につきましても、我々政権を奪還してから、この6年間で125円増えています。民主党政権時代の皆さんも頑張ったと思いますよ。みんなさんのときには36円増えている。みなさん3年間で、我々6年間で。しかし私たちは倍なんですが、3.5倍、最低賃金は増えているということであります。

 経済を成長させ、収入を増やし、そして当然、税収も、今、税収も活用して、社会保障の基盤を安定していく。成長と分配の好循環をしっかりと作っていくということであります。そして最初に申し上げましたように皆さんの収入が増えていくということについては、これは社会保障の基盤を大切にしていくことに於いて大変大切であり、しっかり私たちはそのことを行っていくことを申し上げておきたいと思います」

 この安倍晋三の答弁の前に枝野幸男は現在の社会保障制度から、医療、介護、保育、障害などの社会保障サービスを受ける際に利用者が負担する自己負担を世帯で合算し、その合計額が一定額を超える場合に超過分を国が負担する「総合合算制度」に転換すべきであること、抜本的な所得底上げ等を提案しているが、安倍晋三は聞き耳を持たず、我が道をいく姿勢を貫いた。

 安倍晋三は「(年金積立金に関して第2次安倍政権の6年間で)44兆円のですね、44兆円、運用益が出ている」と言っている。年金の運用は国内外の債券や株式投資によって行われる。運用利益を最大化方向に持っていくためには好景気による株式の活況が最大の味方となる。当然、第2次安倍政権の6年間で44兆円の年金運用益はアベノミクスの成果そのものを示していることになる。

 「この6年間で380万人の方々がさらに働き始めた。正社員がこの6年間で150万人増えた。我々が政権交代前は50万人正社員が減っていたが、150万人増えた」ことも、アベノミクスの成果の背景の一つと言うことになる。

 「成長と分配の好循環をしっかりと作っていく」と言っていることの「成長と分配の好循環」とはアベノミクス経済の個々の成果を受けて回転することになった経済全体の優れた自発的発展性を譬えていることは断るまでもない。いわば「成長と分配」が順調にスタートしている。そして「成長と分配」の顕著な成果は先ず賃金に現れなければならない。そして事実現れている。現れていなければ、「成長と分配の好循環」などと口が裂けて言えない。

 安倍晋三は「5年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われました」と誇り、「企業の皆さんの賃上げ率は20年間で最高となりました」と誇り、主たる指標となる賃金アップをモノサシに「成長と分配」の好調さを証明している。

 2018年7月20日の記者会見では、「経団連の幹部企業への調査では、4分の3以上の企業で年収ベースで3%以上の賃上げが実現しました」と「成長と分配」の順調に機能していることを誇らかに謳い上げている。だが、経団連は日本の大手企業を中心に構成されている団体である。2018年年11月30日中小企業庁発表の(2016年6月時点) によると、中小企業・小規模事業者数は357.8万者(99.7%)であり、うち小規模事業者が304.8万者(84.9%)を占めていて、大企業は1万1157者(0.3%)のみである。

 そして従業員数は中小企業は大企業の約2倍以上占めている。

 「2019年4月の昇給率はどうなる?中小企業の平均、大企業の平均は?」(転職活動の歩きかた)から、大企業と中小企業の賃金格差を見てみる。

 2018年の大企業の平均昇給額  2.54%
 2018年の中小企業の平均昇給額 1.99%。

 そして2019年のそれぞれの賃上げ率を予想している。

 大企業の賃上げは2.2%前後
 中小企業は1.9%前後

 対して2019年大企業春闘平均妥結額2.46%、中小企業は連合発表の第1回集計結果は前年同期と変わらない2.16%の賃上げ率となっている。たいして差はないように見えるが、「企業規模間の賃金格差、古くて新しい課題」(リクルートワークス研究所/2018年01月19日)には大企業と中小企業の賃金格差を次のように記述している。
 
〈日本における企業規模による賃金格差は、従業員数1000人以上の企業(以下、「大企業」と呼称)を100とした場合、100~999人の企業(以下、「中企業」と呼称)では81.5、99人以下の企業(以下、「小企業」と呼称)で72.6となっている(厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」)。相当程度の賃金格差が存在することがわかる。〉

 しかも一世帯辺りの平均所得が1989年(平成元年)566.7万円だったのに対して2016年(平成28年)は560.2万円と6万5千円も減少している中での僅かな賃上げであり、賃上げ格差である。大多数を占める中小企業社員がただでさえ確固としたルールが確定していない公的年金に不安を抱くのは無理もない。

 要するに安倍晋三が誇っている賃上げは大企業に偏った「成長と分配の好循環」アベノミクス成果であって、賃金格差という不都合や一世帯辺りの平均所得が減少していると言った不都合を隠すウソ八百に過ぎない。ウソは一つや二つではないから、ウソ八百ということになる。

 大体が賃上げ自体が安倍晋三が経団連の尻を叩いて成就させた官製相場であることは周知の事実となっている。いわばアベノミクスの経済政策を実行していく過程で企業側に自律的に賃上げを促し、「成長と分配の好循環」に火をつけることになった成果ではない。

 要するに「5年連続で今世紀最高水準の賃上げ」にしても、「賃上げ率は20年間で最高」にしても、そこに賃金格差や平均所得の減少という不都合を隠していて、隠していることに気づいているからこその最低賃金のなお一層の底上げを自らの政策にしたはずだ。

 改めて枝野幸男に対する党首討論での安倍晋三の最低賃金についての発言を取り上げてみる。

 「最低賃金につきましても、我々政権を奪還してから、この6年間で125円増えています。民主党政権時代の皆さんも頑張ったと思いますよ。みんなさんのときには36円増えている。みなさん3年間で、我々6年間で。しかし私たちは倍なんですが、3.5倍、最低賃金は増えているということであります」

 「3.5倍、最低賃金」が増えても、格差解消とまでとてもとてもいっていない。だから、「2019参院選自民党政策バンク」に次のように盛り込むことになった。

 〈特に、最低賃金については、地域経済や中小企業・小規模事業者の実情、地域間格差に配慮しつつ、引き続き年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げることで、全国加重平均が1,000円になることを目指します。〉

 賃上げを経済界にお願いする他律性頼りではなく、最低賃金の引き上げこそ、「成長と分配の好循環」を自ら動かすアベノミクスに於ける自律的発動の一つとなるはずである。

 だが、自民党は民主党政権の間、最低賃金の引き上げに反対してきた。2010年10月13日衆議院予算委員会。首相は民主党菅直人。質問者は自民党西村康稔(やすとし)

 「パネルにありますけれども、資料にもお配りしていますが、企業が雇用拡大をするためにいろいろやろうとする中で、五重苦、まさに雇用空洞化政策を打たれている。その一つが先ほど来議論している円高、デフレであり、二つ目がCO2の25%削減。三つ目が高水準の法人税率、これもこれから議論します。それから、労働者派遣の禁止、最低賃金の値上げ。

 こうした中で、どうやって企業が日本に立地をして、雇用をふやすことができるのか。ぜひ総理には、供給サイドは応援しない、こういうメッセージを常に出されていますけれども、供給サイドにぜひ目を向けていただきたいと思います」

 2010年11月8日衆議院予算委員会。首相は同じく菅直人。質問者は自民党石破茂。

 「失業を増大させる、経済の足を引っ張る、そのような政策はすぐにやめるべきだと私たちは思っています。例えば製造業への派遣の禁止、これでどれだけ現場の製造業が悩んでいるか、苦しんでいるか。そういうことであれば、そういう人たちはもう採用できませんよ。正規の雇用なんていったらば、それはそんな賃金は払えません。外国に出るしかない。

 これが企業の足を引っ張ると言わないでどうする。最低賃金千円が払えるような会社がどこにありますか。CO2二五%削減、これが企業にどんな負担になっているか。そして高い法人税。それは、入りと出を同一にするんだ、租特を外すとか、ほかの税制を引き上げるとか、すそ野を広げるとか、こんなことをやっていて、何で法人の負担が減りますか。このようなことはおかしい。そして円高が続いている。このようなことは続けるべきではない、私はこのように考えております」
 
  2010年11月9日衆議院予算委員会。首相は同じく菅直人。質問者は自民党斎藤健。
 
 「今回の空洞化の危機は、前回2回の比ではありません。本当に素材産業までがこの国内から海外へ出ようとしているんです。そしてそれを後押しするような、ここに書いてありますような、製造業への派遣禁止、最低賃金千円、CO2は15年で30%削減をしろ、法人税は40%で、5%下げるけれども、そんなものは財源を出せ、そして一ドル80円の円高、これで国内で事業をする企業があるのかということを私は申し上げているんです。

 本当に厳しい危機です。例えば、日産のマーチは今度タイで生産をして、国内向けは全部タイから日本に輸出をするという決断をいたしました。タイは八年間法人税がただであります。そして、日本から輸入する部品も関税はただであります。今や世界は、優秀企業、優良企業を獲得する厳しい競争の時代に入っているんです。そういう認識が今の政府にあるのか。あったらなぜ、製造業への派遣とか最低賃金1000円とか、これだけの政策を並べちゃうんですかということを言っているんです。

 一つ一つはそれなりの理由があったとしても、これだけ重なったら、企業は全部外へ出ていってしまいますよ。直ちにこれらの施策、特に最初の三つを停止すべきだと私は思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います」

 かくまでも民主党政権の最低賃金の1000円への引き上げに反対していた。

 安倍晋三は民主党時代の景気悪化期には最低賃金の引きげは無理であり、景気が回復してこその安倍政権下の最低賃金引き上げだと言うだろうし、2016年6月2日閣議決定の「一億総活躍プラン」で、〈最低賃金については、年率3%程度を目途として、名目GDP 成長率にも配慮しつつ引き上げていく。〉。そして〈全国加重平均が1000円となることを目指す。このような最低賃金の引上げに向けて、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図る。〉としたのだろうが、製造業への派遣対象業務拡大等が企業の人件費抑制策に利用されて、賃金格差を生み、企業のみが一人勝ちする利益拡大の元凶となったことは隠している。

 そして安倍政権下の法人税減税が企業の利益拡大に拍車をかけて、財務省2018年9月3日発表の2017年度の大企業の内部留保は2016年度+22.4兆円、第2次安倍晋三政権発足時の2012年度から1.28倍増の425.8兆円にまで膨れ上がった。

 現在に至るまで格差拡大が続いている不都合な事実は隠し、中低所得層を置いてきぼりにしてきた。

 小泉政権が製造業への派遣対象業務拡大を打ち出し、企業が派遣人材を人件費抑制の道具とする前にせめて最低賃金を1000円に上げていたなら、現在の賃金格差を少しは緩和できていた可能性は否定できない。民主党政権時代の最低賃金1000円が安倍政権下でさらに引き上げられていったなら、企業の内部留保も少しは制御できていたかもしれない。要するに安倍政権下での格差拡大に歯止めがある程度はかかっていたかもしれない。

 だが、自民党は最低賃金1000円への引き上げに強硬に反対した。安倍晋三は民主党政権下の景気悪化時代を指して、「民主党政権は悪夢だった」と非難しているが、2009年9月にスタートして、2012年12月26日まで続いた民主党政権下での大企業の内部留保額から、その利益拡大を見てみる。

 2010年 266兆円
 2011年 268兆円
 2012年 272兆円

 円高で企業経営を圧迫していると言われても、内部留保を着実に増やしていた。対して2012年の最低賃金最高額の東京は850円、最低が沖縄や長崎、鳥取、佐賀などの653円で、1000円に遥かに到達していなかった。

 2007年9月26日から2008年9月24日まで首相を在任した福田康夫は2007年12月に「改正最低賃金法」を成立させ、2008年7月1日に施行させ、2008年3月の春闘時に自身も大企業側に賃上げを要請している。2008年当事の最低賃金は最高が東京都と神奈川の766円、最低が沖縄や宮崎の627円となっている。

 福田康夫が経済界に賃上げを要請したときに、当ブログ《方向オンチな福田首相の賃上げ要請 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》(2008.3.9)に最低賃金を1000円に上げるには大企業の下請け単価を引き上げなければ、中小企業の経営を圧迫することになって、中小企業自体が最低賃金の1000円化に反対すると書いた。

 〈最低賃金一律千円によって経済波及効果が生じるまでの中小企業の経営悪化問題は、これまで石油ショックやバブル崩壊、その他の要因で景気が減速したとき、大企業は下請け叩きで急場を凌いできたのである。大企業の利益を社員の賃上げに回すのではなく、下請け中小企業の下請け単価上げに回して、側面から最低賃金上げによる中小企業の負担を軽減し、その経済効果が下請けではない中小企業に波及するのを待つことで解決するのではないか。

 この方法だと大企業と中小企業との賃金格差の縮小、また都市と地方関係なく一律最低賃金千円によって、都市と地方の経済格差の縮小に貢献しないだろうか。


 民主党の主張どおりに最低賃金を一律千円に上げていたなら、身分不安定な非正規社員に先ず恩恵が及び、現在の物価高騰にもそれ相応に耐え得る元気を与えて、彼らの悲惨な生活を少なからず救ったのではないだろうか。当然福田内閣の支持率にも影響していく。

 格差社会だとかしましく言われている。福田首相の正規社員により確かな恩恵をもたらす賃上げ要請は例え下層の非正規社員に僅かながらでもおこぼれが行き渡るとしても、賃金格差・生活格差を逆に大きくする恐れのある方向オンチな政策に思えて仕方がない。〉 

 既に触れているが、安倍晋三は2016年6月2日の閣議決定の「一億総活躍プラン」で、最低賃金の年率3%程度を目途とした全国加重平均1000円の目標を掲げ、2019年参院選マニフェストで最低賃金の全国加重平均1000円を掲げたものの、日本商工会議所など中小企業3団体は2019年5月28日に3%を上回る目標の新たな設定と全国一律の目標に反対する緊急提言を発表している。要するに最低賃金の引き上げは中小企業の経営を圧迫すると依然として見ているからだろう。

 安倍晋三は2016年1月22日の施政方針演説で、「原材料コストの価格への転嫁など、下請企業の取引条件の改善に官民で取り組みながら、最低賃金についても、千円を目指し、年率三%を目途に引き上げます」と公約した。

 要するに原材料コストが上がった場合、大企業はそのコスト上昇分を大企業向け単価に上乗せすることを許さず、中小企業に負担させていた。安倍晋三はこの負担解消を官民で取り組むと宣言した。だが、日本商工会議所など中小企業3団体が安倍政権の最低賃金政策に反対したのは中小企業が大企業に対しての価格転嫁が困難か、不可能な状況に立たされていることに変わりはないことを示している。

 逆であるなら、下手な最低賃金上げが中小企業の経営を圧迫すると見ることはなく、逆に中小企業従業員の賃金が上がると喜ぶはずである。要するに安倍晋三は中小企業から大企業に向けた原材料コストの価格への転嫁がスムーズに行うことができる大企業と中小企業間の意思疎通を確約していながら、機能させずにいた。このことは大企業の側に立っていたことを意味する。

 大企業の側とは中低所得層の側ではなく、高所得層の側に立っていることを示す。それゆえの上の賃金に比較して下の賃金の伸びが抑えられている収入の格差拡大であり、その格差拡大が招いている公的年金に対する中低所得層の不安ということでなければならない。

 安倍晋三は賃金格差の拡大や一世帯辺りの平均所得が減少していると言った不都合だけではなく、最低賃金を1000円にまで上げることが中小企業の経営圧迫に繋がらないように原材料コストの価格への転嫁がスムーズに行うことができるシステムを構築する約束をしながら、それができていない不都合を隠したまま最低賃金上げを言い、上に偏っている不都合を隠して「成長と分配の好循環」を言い立てたり、公的年金の安全・安心を公言、アベノミクスの成果として、「5年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われました」などとウソ八百を平然と突いている。

 安倍晋三が大企業や高額所得層の側に立つ国家主義者である以上、下の側のことを真剣に考えているようにはどこから見ても見えないことで、最低賃金上げは選挙のためにアピールしなければならない付け焼き刃なのだろう。

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