安倍晋三: 2019年2月12日衆院予算委対岡田克也 安倍晋三の質問者の質問に答えずに、ヤジに長々と答弁した前代未聞の 世界に例を見ない滑稽な醜態 先進国最悪の借金捻出の主役が自民党政権であることの 図星を衝かれて、表面冷静、内心慌てたか |
先ず最初に断っておく。ごく当たり前のことだが、オリンピックにしろ、パラリンピックにしろ、盛り上がるか盛り上がらないかは金メダルを多く獲得できるか、少ししか獲得できないかによって決まってくる。金メダル獲得こそが、それぞれの国の国民を第一番に興奮に誘う最善・最短の方法である。自国選手が金メダルを獲得できずに銀メダルで終わったときの悔しさは本人はもとより、ファンからしても、計り知れないものがあるだろう。特に金メダル候補に上がっていながら、銀メダルで終わったときはなおさらとなる。
競泳の池江璃花子選手が白血病と診断されたことを2月12日に自身のTwitterで公表し、選手活動を中断、治療に専念することになった。地元日本で行われる東京オリンピック金メダル大量獲得の期待の星であったから、衝撃が走った。その日の夜の21時16分発信で「NHK NEWS WEB」記事が関係者の心配する声や励ましの声を伝えているが、記事の最後に、〈桜田五輪相「また元気な姿を見たい」〉の小見出しで、桜田義孝の同じ2月12日の受け止めの発言を伝えている。
「金メダル候補で、日本が本当に期待している選手なので、がっかりしている。早く治療に専念して頑張ってもらいたい。また、元気な姿を見たい。1人リードする選手がいると、みんなつられて全体が盛り上がるので、その盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」
この記事をキッカケにしてネット上では「一番言ってはいけない言葉」、「選手はメダルを取るための駒ではない」等々の批判の声が上がったが、発言の全文を伝えるマスコミが現れると、全文を伝える前の一部分を伝えたマスコミに対して切り取った発言の報道だと批判が起きたという。
私自身、全文を知る前にTwitterに、〈重要な金メダル獲得要員の視点のみで池江選手を見ている。病気を心配するよりも、五輪相として日本の金メダル獲得数を自分の手柄としたい虚栄心がありあり。2020年まで、自身の地位を持たせることができるかどうかも分からないと言うのに。そっちの方を心配しろ!!!!〉と投稿した。
桜田義孝の「早く治療に専念して頑張ってもらいたい。また、元気な姿を見たい」が心の底から切に願う言葉だと誰かが評価したとしても、「がっかりしている」、「盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」は明らかに金メダル獲得の機会が減ることへの予想がそのままオリンピック自体への盛り上がりに影響することへの心配であり、病気を心配し、完治を願う言葉と並べて、同じ文脈として扱っていい言葉ではない。このことは次のように考えると、ごく簡単に分かる。
桜田義孝の「早く治療に専念して頑張ってもらいたい。また、元気な姿を見たい」が心の底からのホンネであるなら、「がっかりしている」、「盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」といった言葉は口が裂けても出てこない。つまり、後者をホンネとした桜田義孝の一連の発言と見なければならない。
池江璃花子選手は、ネットで調べてみると、第18回ジャカルタ・アジア競技大会(2018年8月18日~2018年9月2日)競泳女子の50メートル自由形で6冠を達成の上に出場した個人4種目全てと女子400メートルリレー、400メートルメドレーで金メダルの計6個。女子200mリレーと100m混合メドレーで銀メダル2個を獲得、日本選手の1大会最多記録を更新、アジア大会最優秀選手に選ばれている。
この華々しい活躍がその笑顔と共に東京オリンピックで見ることができなくなったなら、残念な思いだけを募らせて、盛り上げを欠く要因となる可能性は否定できないが、だからと言って、病気を心配し、直して立ち直ることを願うことと盛り上げを欠くこととは別問題であって、切り離して扱わなければならない。桜田義孝は大の大人である上に一内閣の閣僚を務めている立場上の常識も弁えずに切り離して扱うことができなかった。
この一事を以ってしても五輪相として務める資格を失う。野党が辞任要求したのはごく自然の流れである。対して安倍晋三は国会で「しっかりと職務を果たしてもらいたい」と続投を許し、野党の更迭要求を拒否した。
要するに安倍晋三は桜田義孝の大人の人間としての常識欠如、あるいは五輪相としての常識の欠如よりも内閣の安泰を優先させた。この優先は首相の立場からの自己都合の優先に他ならないだけではなく、偉い人たちの常識の欠如にアレルギーを持つ社会的一般性よりも、常識を欠如させた桜田義孝の擁護を優先させたことになる。そしてこの優先は社会的一般性に反して内閣の中に常識を欠如させた閣僚を温存することを意味する。
いわば安倍晋三自体が内閣人事に関して社会的一般性に反した常識の欠如を抱え、発揮していることになる。
では、桜田義孝の発言全文から、その是非を見てみる。《「がっかり」だけではなかった 桜田五輪相発言全文》(産経ニュース/019.2.14 15:22)
記事は冒頭に、〈競泳の池江璃花子選手の白血病公表について、桜田義孝五輪相が「本当にがっかりしている」などと語ったことが問題になっているが、桜田氏の発言には「治療に専念して、元気な姿を見せてほしい」と気遣う言葉もあった。〉との文言を添えて、あとは記者との遣り取りのみを取り上げている。要するに記事は池江選手を気遣う言葉があったことを理由に「本当にがっかりしております」なる発言の不適切性を免除している。この免除の妥当性を判断することにもなる。
記者「きょう、競泳の池江選手が自らが白血病であることと、しばらく休養することを発表しました。大臣として、これについての受け止めをお願いします」
桜田義孝「正直なところ、びっくりしましたね。聞いて。本当に。病気のことなので、早く治療に専念していただいて、一日も早く元気な姿に戻ってもらいたいというのが、私の率直な気持ちですね」
記者「競泳の中ではですね…」
桜田義孝「本当に、そう、金メダル候補ですからねえ。日本が本当に期待している選手ですからねえ。本当にがっかりしております。やはり、早く治療に専念していただいて、頑張っていただきたい。また元気な姿を見たいですよ。そうですね」
記者「大臣はこれまで、池江選手の活躍をどのようにご覧になられてましたか」
桜田義孝「いやあ、日本が誇るべきスポーツの選手だと思いますよね。我々がほんとに誇りとするものなので。最近水泳が非常に盛り上がっているときでもありますし、オリンピック担当大臣としては、オリンピックで水泳の部分をね、非常に期待している部分があるんですよね。一人リードする選手がいると、みんなその人につられてね、全体が盛り上がりますからね。そういった盛り上がりがね、若干下火にならないかなと思って、ちょっと心配していますよね。ですから、われわれも一生懸命頑張って、いろんな環境整備をやりますけど。とにかく治療に専念して、元気な姿を見せていただいて、また、スポーツ界の花形として、頑張っていただきたいというのが私の考えですね」
記者「最後に一言だけ。池江選手にエールを送るとしたらどんな言葉を」
桜田義孝「とにかく治療を最優先にして、元気な姿を見たい。また、頑張っている姿を我々は期待してます、ということです」(以上)
確かに最初に治療の専念への要請と回復への期待の言葉を述べている。そして続けての発言、「金メダル候補ですからねえ。日本が本当に期待している選手ですからねえ」は金メダル獲得への大いなる期待があったことを示している。このことはあとの「オリンピックで水泳の部分をね、非常に期待している部分があるんですよね」の言葉にも現われている。但しその期待が怪しくなったと桜田義孝自身が見ているからこそ、次の「本当にがっかりしております」の発言となって現れた。でなければ、文意が繋がらない。
要するに桜田義孝は病気そのものへの関心を示しつつ、それと並べて、期待が怪しくなったという文脈で金メダルへの関心を示した。当然、発言の構成上、病気そのものへの関心よりも金メダルへの関心を優先させた発言となる。この優先はホンネがどちらの言葉にあるのかを示すことになる。「本当にがっかりしております」の方にこそ、桜田義孝のホンネがあると見なければならない。
池江璃花子選手が自身のツイッターで白血病について投稿したのは2月12日。桜田義孝は時間にズレはあるものの、同じ日の2月12日のうちに「本当にがっかりしております」と金メダル獲得への期待が怪しくなった気持を吐露する経緯を取った。池江選手の存在と現在置かれている、治療に関わる困難な状況をさほど意に介していない感覚の介在なくして、このような経緯は取らない。病気を心配する言葉がホンネなら、「本当にがっかりしております」などといった言葉は口を突いて出てくることはない。
となると、そのあとの言葉、「早く治療に専念していただいて、頑張っていただきたい。また元気な姿を見たいですよ。そうですね」は社会通念上口にした、心そこにあらずの言葉となる。
「一人リードする選手がいると、みんなその人につられてね、全体が盛り上がりますからね」は、池江選手が金メダル獲得のリードオフマン(=その分野で、先頭に立って全体を引っ張っていく人)の役目を果たしてくれて、金メダルラッシュとなることへの期待を示した発言ではあるが、その状況が許されなくなったと見ているからこその次の発言、「そういった盛り上がりがね、若干下火にならないかなと思って、ちょっと心配していますよね」であり、自分の「心配」をより優先させた意味合いを取る。
このような優先は「本当にがっかりしております」の発言と同様、待ち構えている治療との闘いを前にして心配や不安や希望や自身への励まし等々、様々に錯綜しているであろう池江選手の気持そのものを真に意に介していたなら、採用するはずもない優先であろう。
当然、続いての発言、「とにかく治療に専念して、元気な姿を見せていただいて、また、スポーツ界の花形として、頑張っていただきたいというのが私の考えですね」にしても、社会通念上、形式的に口にした発言に過ぎないことになる。
一片の社会常識も、閣僚としての常識も桜田義孝の発言からは窺うことはできない。産経ニュース記事の桜田義孝の発言に対する不適切性の免除にしても、如何なる妥当性をも与えることはできない。閣僚としての資格を失っていることは明らかだが、このような常識の無さ・資格の無さよりも内閣の安泰を優先させた安倍晋三自身の常識をも問わなければならない。