10月5日(2011年)、羽毛田宮内庁長官が首相官邸で野田首相と会談。この会談内容について藤村官房長官が11月25日の記者会見で公表。《女性宮家構想が浮上 官房長官「検討課題」》(asahi.com/2011年11月25日11時30分)
藤村官房長官「女性皇族が結婚年齢に近い年齢になっているという話があった。皇室の活動という意味において、緊急性の高い課題があるとの認識が示された」
その上で記事は官房長官が、〈女性皇族が結婚しても皇族の身分にとどまれるようにする「女性宮家」の創設を今後の検討課題とする考えを明らかにした。〉と書いているが、緊急性の高い課題として「女性宮家」創設の検討要請がその時点で既になされていたはずである。
まさか、「緊急性の高い課題がある」という認識を示しただけで羽毛田長官が席を立ったわけではあるまい。
10月5日の会談から50日経過している。この間、なぜ公表されなかったのだろうか。逆説的に言うと、なぜ公表を抑えていたのだろうか。このことに対する説明責任を野田首相は負っているはずである。
皇室に於ける「緊急性の高い課題」を藤村長官は次のように発言している。
藤村官房長官「安定的な皇位継承を確保する意味で、将来の不安が解消されているわけではない。
(女性宮家創設に関して)国民各層の議論を十分に踏まえながら、今後検討していく必要がある」
この発言の前半箇所は、天皇の孫世代で皇位継承資格者が秋篠宮夫妻の長男、悠仁(ひさひと)(5)一人であることを踏まえたもだとしている。
と言うことは、女性皇族が皇族以外の男子と結婚した場合皇族の身分を離れるとする皇室典範現規定の規制緩和を以って「女性宮家」を創設、万が一悠仁が皇位継承が不可能となった場合、あるいは悠仁が皇位継承しても、結婚して女子しか恵まれなかった場合、「女性宮家」の誰かが設けた男子を悠仁の皇位継承者に当てようという深慮遠謀の結実が「女性宮家」創設の構想ということになる。
この「女性宮家」創設の背景にある本質的な思想は“男系優先”の思想であろう。女系・女子であっても構わなければ、未婚の女性皇族は現在8人(内6人成人)いるということだから、男系に拘らなければ、皇位継承に困ることはないはずである。
この“男系優先”は11月8日(2011年)記載の当ブログ記事――《評論家シーラカンス三宅久之の2006年発言女性天皇反対論の正当性 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》にも書いたが、小泉元首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が2005年11月24日、女性天皇・女系天皇の容認、長子優先を柱とした皇室典範改正の報告書の提出を受けながら、秋篠宮夫妻の間に男子悠仁が出産すると、女性天皇・女系天皇の容認、長子優先の報告をたちまち立ち消えさせてしまったことにも現れている。
要するに「皇室典範に関する有識者会議」の女性天皇・女系天皇の容認、長子優先は男子が出現しない場合に備えた止むを得ない選択に過ぎなかった。
このことは 2005年11月24日公表の『皇室典範に関する有識者会議(第17回)議事要旨』の中の一文が証明している。
〈女性、女系容認という表現が使われることがあるが、容認ではなく、継承資格の拡大であって、重要な役割を担っていただく皇室の新しい未来が更に開けていくということだと考える。〉・・・・
「容認ではなく、継承資格の拡大」だと言うことは、女性天皇・女系天皇、長子優先の決定はあくまでも便宜的な措置であって、必要に応じて、「継承資格」の縮小の可能性もありうるということであり、やはり“男系優先”の思想を背景とした便宜的措置だと理解できる。
当然、「女性宮家」の創設も天皇家の血を絶やさないための止むを得ない便宜的措置ということになる。直系が男子を設けるに越したことはないからなのは断るまでもない。
この“男系優先”は日本人の行動様式・思考様式となっている権威主義の一つの現われである男尊女卑の反映と見るべきであろう。一般社会に於ける男尊女卑の最大形を天皇家に置いているということなのだろう。
「女性宮家」の創設によって皇位継承の直接的な男子が存在しなくなった場合、女性宮家のいずれかが設けた継承順位の高い男子を皇位継承者と予定する。
だとしたら、女性皇族が外国に留学して青い目の男性と恋愛に落ち、宮内庁の頭の硬い男尊女卑の連中に引き裂かれるのを前以て防御する危機管理から早々に肉体的にも愛を確かめ合い、その結晶を医学的にどのような処置も不可能な状態にまで育んでから、天皇・皇后に報告、それが宮内庁全体の知ることとなり、もはや手遅れ、その場になって皇位継承権を他に移した場合、日本国民が批判しなかったとしても国際社会が黙っているわけはなく、人権後進国、人種差別、歪んだ日本民族優越主義と糾弾されるのを回避するために結婚を認めざるを得なくなるだろう。
青い目の男性との間に青い目を引き継いだ男子が生まれた場合、次の皇位継承権を受け継ぐことになる。
かくして2006年にたちあがれ日本代表の平沼赳夫が「愛子さまが天皇になることになって、海外留学して青い目の外人ボーイフレンドと結婚すれば、その子供が将来の天皇になる。そんなことは断じて許されない」と忌避したことが回りまわって皮肉な満願成就を迎えることになる。
日本人の今以て引きずっている男尊女卑の権威主義や密かに抱えている日本民族優越意識(外国人を入れまいとする態度に最も現れている。)を打ち破るためにも、また天皇家の国際化を果たすためにも、青い目の天皇を生きている間に見てみたいと思うが、最後の点はその可能性ゼロと言わざるをえない。
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