参院野党が6月20日の参議院予算委員会理事懇談会で安倍晋三出席の集中審議を6月21日にも開催するよう要求したのに対して与党自民党が応じられないと主張、引き続き協議することになったという。
《参院予算委 集中審議巡り平行線》(NHK NEWS WEB/2013年6月20日 14時3分)
野党側の集中審議要求の目的は安倍政権が打ち出した経済の成長戦略等を国会で議論する必要があるというものだそうだ
至極尤もなことだが、与党自民党の拒否理由が至極尤もではない。
与党側「参議院の特別委員会で衆議院の小選挙区の区割りを見直す法案の審議を巡って与野党が対立しており、予算委員会で集中審議を行える状況にはない」
対して石井一参議院予算委員長(民主党)が与野党双方に対して来週24日に集中審議を行う方向で調整するよう求め、引き続き協議することになったという。
安倍晋三は6月9日のNHK「日曜討論」で衆参同日選挙を否定している。同日選挙を行えば、昨年暮れの総選挙で自民党単独で絶対安定多数(269議席)を超える294議席獲得、公明党の31議席を足して衆議院再可決可能の3分の2を超える325議席獲得が安倍晋三の歴史認識の危険性等の理由から、あるいは政権の横暴を許さないための防御策として有権者の間に議席の取り過ぎ、適正な議席に減らすべきだという認識が働いたとしたら、野党としても衆議院の自民党議席の取り過ぎを狙い打ちして有権者の投票行動を議席の適正化の方向に誘導しようとするだろうし、そのような動きは衆議院の投票ばかりか、参議院の投票行動にも影響を与えて、取れる議席を減らす可能性は決して否定できないのだから、安倍晋三は衆参同日選挙を仕掛ける程バカではないはずだ。
衆参同日選挙の目がなければ、次の衆院選は参院選後のいつの日かになるのだから、参議院選挙を1カ月後に控えた現在、緊急性という点で衆議院小選挙区の区割りを見直す法案の審議よりも安倍晋三が打ち出しているアベノミクスと銘打った成長戦略の効果と実効性を問う議論が優先されるべきだろう。
ましてや長期金利の上昇や株価の乱高下、大企業や富裕層に利し、小規模企業や中低所得層に生活上の打撃を与える不公平の矛盾やボロが出ているのである。ただ眺めて、放置していてもいい問題ではない。
だが、優先性があるとは思えない衆議院小選挙区の区割りを見直す法案の審議を優先させようとする至極尤もではない理由で審議に応じられないという態度を取っている。
このような態度も不公平の一つに入る。数の力で押し切ろうとする横暴の一つに入るかもしれない。
至極尤もではない理由がもう一つある。
アベノミクス自体に様々な矛盾やボロが出ているにも関わらず、安倍晋三自身、日本国内、国外関係なしにアベノミクスに自己評価で100点満点、あるいはそれ以上の得点を与えていることである。
「日本の雰囲気は、大胆な金融政策と、機動的な財政政策という、私の打った1本目、2本目の矢で、ガラッと大きく変わりました」
「日本は、再び世界の中心に躍り出ようとしている」
「私の経済政策について強い期待と高い評価を頂いたと思います」
「今こそ、日本が、世界経済復活のエンジンとなる時です」
「3年間で、民間投資70兆円を回復します」
「2020年に、インフラ輸出を、30兆円に拡大します」
「2020年に、外国企業の対日直接投資残高を、2倍の35兆円に拡大します」
「2020年に、農林水産物・食品の輸出額を1兆円にします」
「10年間で、世界大学ランキングトップ100に10校ランクインします」
「世界で勝って、家計が潤う」・・・・・
すべて安倍晋三が自らが打ち出したアベノミクスに対する自己採点である。100点満点を1点でも欠けているとする言葉は存在しない。逆に100点満点を超えた、一点の非の打ち所もない素晴らしい政策として描いている。
満点、あるいは満点以上の自己採点の妥当性について国会という公の場で他者の採点を許さないのは卑怯であるし、公平とは言えない。
自己採点のみを以って国民に対する説明責任とするのも極めて無責任な話である。
安倍晋三が満点、あるいは満点以上の自己採点をつけるなら、他者の採点を受けて立って、自己採点の妥当性を問うのが、国民に対する説明責任をも公平に果たすことができる正々堂々の遣り方と言うものだろう。
1月28日(2013年)に召集された今国会は6月26日で会期が終了する。石井参院予算委員長の調停によって6月24日に集中審議が実現したとしても、残りの日は2日間しかない。
集中審議そのものを拒否する、あるいは審議日数を少しでも減らすことが参議院選挙に備えてアベノミクスを矛盾やボロを出さずに瑕疵ない状態で投票日にまで持っていくための策謀だとしたら、野党の追及から逃げていることになる。
一見、この集中審議を行うか否かの与野党の議論に安倍晋三が関わっていないように見えるが、党総裁として、さらには内閣の長として、その意向は関わっているはずである。
いわば与党自民党の各野党に対する集中審議拒否、あるいは先延ばしは安倍晋三自らがアベノミクスにつけた100点満点、あるいは満点以上の自己採点に対する野党の国会追及からの卑怯な敵前逃亡以外の何ものでもない。
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