退陣時期を決めないことには物事が前に進まないからと岡田幹事長らが菅首相のクビに退陣時期を決めさせる鈴をつけようと悪戦苦闘している。
何しろ21世紀臨調から、機能しない政治、動かない政治となっていて、「機能する政権」とするためには「新たな代表の選出を通して党の求心力と政策の軸の回復を地道にはかる以外に道はない」と首相の交代を強い調子で求められながら、あるいは米倉弘昌経団連会長から、「自分の言ったことは必ず実行すると若い人に示さないと、教育上も具合が悪い」(YOMIURI ONLINE)と辞めると自分で言ったことを実行するよう、有言実行を求められながら、「なりゆきを決然と居座る」の座右の銘を頑として守るつもりでいるのか、「職に恋々」としがみつこうとしている敵のクビに鈴をつけるのはなかなか至難の業、悪戦苦闘する結果となっているようだ。
《菅首相居座りは「教育上も具合悪い」経団連会長》(YOMIURI ONLINE2011年6月21日08時33分)
米倉経団連会長「被災地の人たちの生活を考えると一刻の猶予もないのに、政治の実行力や判断力などすべてに物足りない」
震災の復旧・復興に、あるいは原発事故対応に「政治の実行力や判断力などが」的確に反映されていないと警告している。勿論反映されない状況は菅仮免の「政治の実行力や判断力」に不足があるからなおは断るまでもない。
問題はこの意見が米倉会長一人のものではなく、大方に共通している意見だということである。多くの政治家、識者が同じ見方をしているだけではなく、6月11日付「asahi.com」が被災42市町村長アンケートでは、「菅政権の震災対応に対する評価」に対する回答は、「評価する」はゼロに対して「評価しない」と「あまり評価しない」を合わせて8割近くにものぼる33市町村長にまで達している事実は被災当事者が言っていることで、これ程確かなことはない菅仮免の「政治の実行力や判断力」不足ということであろう。
ところが菅仮免本人は決然たる思いで自分に不足があるとはサラサラ思っていない。
6月19日日曜日放送のフジテレビ「新報道2001」で流していた。
6月14日参院復興特別委員会
菅仮免「私は、やらなければいけない、優先度の高いものから、取り組んできたと。精一杯やってきた中で、私は進んでいると思っている」
被災当事者である被災地域の市町村長の約8割が菅政権の震災対応を評価していないにも関わらず、本人は復旧・復興に何ら遅れはない、進んでいると太鼓判を押している。
尤もこれまでも、「政府を挙げてやるべきことはしっかりやってきている」と言って、何ら遅れはない、不足もない、いわば内閣としての、あるいは政府としての体裁を為しているという態度を取ってきたのだから、その点では一切のブレはなく、終始一貫しているし、なかなか見上げた図々しさだと言える。
岡田幹事長などが鈴をつけようとしたのに対して菅仮免は3つの条件をつけたという。2次補正と赤字国債発行可能化の特例公債法と再生エネルギー法の3法案の成立をつけるまでだと。
だが、不信任案可決回避と退陣を交換条件に鳩山前と取り交わした確認書の退陣時期は、「復興基本法案の成立」と「第2次補正予算の早期編成のめどをつける」ところまでである。確認書を取り交わした後開催された代議士会で鳩山前は念を押す形で、「第2次補正予算の早期編成のめどをつける所までで、成立までではない」と発言している。
復興基本法案は6月20日に既に可決、成立している。あとは第2次補正予算編成の目途がつくまでだから、残すところ僅かな就任期間となるはずだが、確認書に契約違反までして特例公債法と再生エネルギー法の成立までだと居座りを決めた。
居座るエネルギーにかける「実行力や判断力」に関しては優れたものがあるようだ。
自身の政治能力・指導力に欠点はない、実行能力・判断能力共に十分に発揮していると自己評価し、自己評価どおりの能力が震災対応にも原発事故対応にも反映されていると信じているのだから、誰がどう否定する言葉をかけても馬の耳に念仏かもしれないが、自身の存在が政治を停滞させ、政治空白をつくり出していることは事実として認めないわけにはいくまい。
このことはいくら自分は有能だと確信していたとしても、野党は菅仮免ではダメだとノーを突きつけ、そのことによって生じている衝突・軋轢を簡単には乗り超えることができていないことが証明している。
一国のリーダーの存在自体が政治空白・政治停滞を招いている以上、菅仮免はあの法案も通したい、この法案を成立させたいを自らの責任とするよりも、すべての障害の元凶となっている目先の政治空白・政治停滞の解消を何よりも先決の責任としなければならないはずだ。
いや、もっと早くに解消すべきだった。そしたなら、被災市町村長や被災者自体の日本の政治に向ける目、評価は現在とは違っていたに違いない。当然、復旧・復興も現在よりも進んでいたはずだ。
大体が参院選で数の力を失ったことが菅仮免自身の能力の結果を示すすべての責任の発端であり、今日の政治混乱・政治空白を生み出す責任の発端となっている。
民主党参院選敗北が自身の政治能力にある以上、その責任は測り知れないが、このことにどのような責任も取っていない。
今年4月の統一地方選敗北でも何ら責任を取っていない。
選挙の敗北が自身の政治能力の結果だという認識、政治能力が招いた当然の結果だという認識がないから、「政治は結果責任」に目を向けることもできずに責任を取ろうという意識も働かない。
喫緊の課題として必要とされている政治空白・政治混乱の解消に向けて動く姿勢を見せずにあれをやりたい、これをやりたいと一日伸ばしの政権への執着を見ると、このことが麻痺させている責任意識なのかもしれない。
だとしても、一日も早い政治空白・政治混乱の解消を先決の責任しないと、被災地の被災者だけではなく、国民自体の政治不信を益々拡大させることになる。
今朝のNHKニュースが国会の会期を8月31日まで70日間の延長として公債特例法案を成立、第3次補正予算案は新しい体制で議論する方針を確認したことと、この方針を受けて民主党内では公債特例法案などが成立すれば菅総理大臣は8月中には退陣するのではないかという見方が大勢となっていると伝えていたが、菅本人が8月中の退陣を明言したわけではない。
いつまで経っても退陣時期を明言しないのは何をどうはき違えているのか、政治空白・政治混乱の解消を先決の責任としていないことの証明にしかならない。
菅仮免が自ら退陣時期を明言しない場合は、鳩山前との確認書取り交わしで鳩山前が署名を求めながら断られて契約違反を招き、なおのこと政治空白・政治混乱を長引かせることとなった失敗例を反面教師として、時期を記した書面を作成、署名させることぐらいしないと、巧妙な政治術でなおのこと居座りの手を打ってこないとも限らない。
そうなった場合、政治空白・政治混乱はより始末の悪い状態となっているに違いない。このことはどうしても避けるべきだろう。
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