《裏金:旧輸銀、9年間で8000万円 出張旅費を不正返金》(毎日jp/2009年12月26日)
政府系金融機関である日本政策金融公庫の一部門、国際協力銀行前身の日本輸出入銀行(輸銀)という大層・立派な公共組織に関する話。
その職員の出張航空運賃のうち3~6%分を旅行代理店から職員の互助組織である共済会に「返金」させ、職員家族の介護費用の補助などに充てていたことが今年5月に匿名の情報が寄せられ、内部調査で発覚したと発表した。
共済会が旅行代理店に出張情報を提供するなどの名目で代理店から「手数料」を納めさせることが慣例化していて、その総額が9年間で8000万円というから、1年間に888万円キックバックさせていたことになる。
一口に888万円というとたいしたカネではないように見えるが、1千万円近い額である。そのカネを職員家族の介護費用の補助などに充てていた。
金融公庫の発表――本来は出張旅費の削減を通じて、公庫に投入される税金を軽減すべきだったため、「不適切」と判断、共済会に全額を返納させる。但し、「調査の結果、職員の私的流用はなかった」(広報部)として、関係職員らの処分は行わない。
「返金」の形になる前の90年以前は旅行代理店が大口顧客の出張者に対する自宅送迎などのサービスを行っていたが、サービス相当分を共済会に返金させ、職員全員が恩恵を受ける形に切り替えた模様だと記事は解説しているが、出張費用はすべて金融公庫投入の税金から出ていて、職員個人のカネ、自分の懐から出したカネではない上に実質的経費(送迎等のサービス)ではなくなったカネを、「職員全員が恩恵を受ける形に切り替えた」「返金」とすること自体がおかしいということにならないだろうか。
言ってみれば、税金を旅行会社を経由させて職員個人が受け取ったことになる。このような経緯を経た時点で既に「私的流用」に当たるはずだが、どう検証したのか、あるいはどう解釈したのか、「調査の結果、職員の私的流用はなかった」としている。
税金から出た出張旅行費を職員家族の介護費用の補助などへ用途を変えたこと自体が既に「私的流用」以外の何ものでもあるまい。
記事は、〈共済会の業務は職員の慶弔見舞金などの管理で、職員の出張との関連は薄い。〉と疑問を呈しているが、「3~6%分」の返金とは旅行会社が「3~6%」余分に出張旅行費用を受け取っていたことを意味する。余分に受け取って、その余分分を「返金」する。いわばその余分分は一時的に預けさせた「預け」に相当する。記事題名が「裏金」とする所以であろう。
一般的な「預け」は品物のみならず、パーティを行った、ホテルに宿泊した、タクシーを利用した等々見せかけたカラ発注を行ってその費用を相手方に一時的に預けて裏金とし、現金、あるいは商品券、ビール券等の形で返却させる形式を取る。その際相手方にそれ相応に手間をかけさせる“経費”とそこに口止め料も加えた少なくない金額分を差引きさせて相手方の利益として供与する。
いわば税金を自分たちに還流するだけではなく、取引業者にも還流する。兎に角税金還流の必要不可欠な協力者なのだから、それ相応に旨味をお裾分けしなければならない。
相手方にとっては商品・サービスに手をつけないままに他人のカネのみを動かして手に入れることができる利益だから、丸儲けとなる。「預け」を行う側も自分のカネではない予算等の税金を私的用途に変えて自分のカネとするのだから、丸儲けとなる。双方にとって万々歳、メデタシ、メデタシのこれ以上ないうまい話となる。勿論、悪いことをしているという意識はない。良心を麻痺させているからこそできる公金の誤魔化しであろう。
但しいくら良心を麻痺させていたとしても、誤魔化したカネを職員家族の介護費用の補助などに充てていたとする発表どおりには俄かに信じ難い。介護は全職員が抱えている職員全体の問題ではなく、一部の職員の問題であろうから、「返金」が全職員に平等に行き渡るのではなく、一部の職員のみに偏った利益として還元される矛盾が生じるからだが、このことだけではなく、不正に得たカネの性質に反する用途となっているからだ。
いずれにしても自分のカネと厳格に区別しなければならない税金を区別せずに個人のカネとする。何とも卑しいコジキ行為ではないだろうか。
参考引用――
《裏金:旧輸銀、9年間で8000万円 出張旅費を不正返金》(毎日jp/2009年12月26日)
政府系金融機関の日本政策金融公庫は25日、公庫の一部門である国際協力銀行の前身の日本輸出入銀行(輸銀)で、90~98年に出張旅費に絡む不正行為があったと発表した。旧輸銀職員が出張する際、旅行代理店から航空運賃の3~6%分を、職員の互助組織である共済会に「返金」させ、職員家族の介護費用の補助などに充てていたという。
公庫によると、返金額は9年間で合計約8000万円。共済会が旅行代理店に出張情報を提供するなどの名目で、代理店から「手数料」を納めさせることが慣例化していた。しかし、共済会の業務は職員の慶弔見舞金などの管理で、職員の出張との関連は薄い。
本来は出張旅費の削減を通じて、公庫に投入される税金を軽減すべきだったため、政策公庫は「不適切」と判断、共済会に全額を返納させる。ただ、「調査の結果、職員の私的流用はなかった」(広報部)として、関係職員らの処分は行わないという。
公庫によると、今年5月に匿名の情報が寄せられ、内部調査で発覚した。90年以前は、旅行代理店が大口顧客の出張者に対する自宅送迎などのサービスを行っていたが、サービス相当分を共済会に返金させ、職員全員が恩恵を受ける形に切り替えた模様だ。【清水憲司】
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