中国の胡錦涛国家主席が中国南部の海南島でオーストラリアのラッド首相と会談して、「われわれとダライ・ラマのグループとの争いは、民族や宗教、人権の問題ではない。国の統一を維持するか、それとも分裂するかの問題だ。チベットの問題は完全に内政問題だ」と述べたと昨12日夕方、NHKテレビがニュースで伝えていた。
「民族や宗教、人権の問題」ではなく、「国の統一を維持するか、それとも分裂するかの問題だ」――。
胡錦涛は邪なまでに飛んでもない心得違いをしている。
基本的人権を保障せずに直接的な武力や軍隊・警察を誰の目にも見える形で存在させたり、監視、密告制度等の情報操作を装置として恐怖感情を喚起させ国民の自由な活動を抑圧する種類の「国の統一」は国家権力と国民が相互性を備えた「統一」とは既に言えない状態にある。国家権力による国民に向けた一方通行の支配でしかなく、国民は国家権力に従属する存在としての価値しか持たないことになる。
そのような支配と被支配の関係は支配地域を領土としてはいても、国家権力と、支配地域に住み生活する国民の間にはそれぞれの存在性に乖離を内在させていて「統一」とは正反対の「分裂」状態にあると言える。
「国の統一」とは国民あっての国土・国家なのだから、国民の存在性を第一義的問題としなければならない。
いわば国民の間に「民族や宗教、人権の問題」を限りなく抱えない状況が保障されて、初めて国家は統一性を担保し得る。国民の存在性を無視した国家は権力のための権力へと自己目的化した国家であって、形の上の「統一」はあっても、国民を疎外した「統一」という倒錯を抱え込んだ一体性しか保持できない。
もし胡錦涛がチベット問題を「国の統一を維持するか、それとも分裂するかの問題だ」とするなら、「民族や宗教、人権の問題」の解消を前提として、初めて正当性を得る。決して相手の望まない様々な手段を講じた対チベット中国化を以って、「国の統一」とするのは当たらない。
対チベット中国化は緩やかな「民族浄化」とも言える。
胡錦涛は自らの心得違いに気づかないようだから、聖火リレーの妨害、開会式のボイコット、あるいはオリンピック出場選手による開会式や表彰台での何らかの人権アピールを通じて抗議の姿勢を示し、そのたびに胡錦涛に外国首脳や外国メディアを通して世界に向けて百万遍も「チベットの問題は完全に内政問題だ」と言わさせよう。夜の眠りに就いているときも、夢の中でも「チベットの問題は完全に内政問題だ」と言わさしめ、寝言でも言う程になるまで様々な抗議方法でチベット問題を訴える。
もし「チベットの問題は完全に内政問題だ」が実態どおりの事実で、それが世界標準として通用する状態なら、わざわざ「チベットの問題は完全に内政問題だ」と言う必要もないわけで、言わざるを得ないところに実態とは違うことの暴露を自ら演じることになる。世界標準とは懸け離れているゆえのそれを誤魔化し正当化するための強弁に過ぎないことを炙り出すこととなる。
何度も何度も言わせることで、「狼と少年」の「狼が来た」と同様の言葉で証明しているに過ぎない「内政問題」とする。
胡錦涛が言い疲れたところで言ってやる。「世界が認めることなら、何度か言えば済むのだが、何度も言い続けなければならないのは世界が認めるわけにはいかないからでしょう。チベット自身も認めていない」
* * * * * * * * * * * * * * * *
中国主席 チベットは内政問題(NHK/08.4.12)
中国の胡錦涛国家主席は12日、チベット自治区で発生した大規模な暴動について「チベットの問題は完全に内政問題だ」と述べ、国際社会が干渉すべきではないという立場を強調しました。これは、胡錦涛国家主席が、中国南部の海南島でオーストラリアのラッド首相と会談した際に述べたものです。
中国国営の新華社通信によりますと、会談で胡主席は、チベット自治区で発生した大規模な暴動について、「われわれとダライ・ラマのグループとの争いは、民族や宗教、人権の問題ではない。国の統一を維持するか、それとも分裂するかの問題だ」と述べました。そのうえで「チベットの問題は完全に内政問題だ」と述べ、国際社会が干渉すべきではないと強調しました。
これに対して、オーストラリアのラッド首相は、チベットには重大な人権の問題があると指摘したうえで、ダライ・ラマ14世との対話の再開を促したとみられます。しかし、胡主席は、ダライ・ラマ14世のグループがチベットの分離独立を求める運動をあおったり、北京オリンピックを妨害したりしているとして、こうした行為をやめなければ対話に応じることはできないという中国政府の立場を伝えました。
最新の画像[もっと見る]
- 安倍晋三のケチ臭い度量から発した放送法「政治的に公平」の「補充的説明」を騙った報道自主規制の罠 2年前
- 野党の学習不足が招いた安倍晋三と旧統一教会との関係調査・検証要請への岸田文雄の「本人死亡、十分な把握限界」等の罷り通り 2年前
- イジメ未然防止目的のロールプレイ――厭なことは「やめて欲しい」で始まるイジメ態様に応じた参考例をいくつか創作してみた 2年前
- イジメ過去最多歯止めは厭なことは「やめて欲しい」で始まり、この要請に順応できる人間としての成長を求めるロールプレイで(1) 2年前
- イジメ過去最多歯止めは厭なことは「やめて欲しい」で始まり、この要請に順応できる人間としての成長を求めるロールプレイで(1) 2年前
- 立憲長妻昭と小西洋之の対旧統一教会宗教法人法第81条解散命令要件に関わる時間のムダ、カエルの面に小便程度の国会追及 2年前
- 2022年8月NHK総合戦争検証番組は日本軍上層部の無責任な戦争計画・無責任な戦略を摘出し、兵士生命軽視の実態を描出 靖国参拝はこの実態隠蔽の仕掛け(1) 2年前
- 2022年8月NHK総合戦争検証番組は日本軍上層部の無責任な戦争計画・無責任な戦略を摘出し、兵士生命軽視の実態を描出 靖国参拝はこの実態隠蔽の仕掛け(2) 2年前
- 立憲民主党代表泉健太の2022年9月8日衆議院議院運営委員会安倍晋三国葬関連質疑を採点すると30点 2年前
- 文科省の旧統一教会実体不問の名称変更認証と前川喜平氏の下村博文認証関与説、橋下徹の名称変更門前払い対応の前川喜平氏批判のそれぞれの正当性 2年前
「Weblog」カテゴリの最新記事
- 尾木直樹こども基本法講演:"個人としての尊重"なしに「子どものことは子どもに聴...
- 尾木直樹こども基本法講演:「子どもと大人の新しい関係性の第一歩、スタートに立...
- 《八方美人尾木ママの"イジメ論"を斬るブログby手代木恕之》を始めました。
- 日本人の行動様式権威主義の上が下に強いていて、下が上に当然の使用とする丁寧語...
- 財務省2018年6月4日『森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書』...
- 名古屋入管ウィシュマ・サンダマリさん死亡はおとなしくさせるために薬の過剰投与...
- 民間企業と官僚の意見交換に酒食が伴い、その支払いを企業が負う官僚のたかりは人...
- 2021年2月25日山田真貴子参考人招致衆議院予算委員会の黒岩宇洋と後藤祐一の追及を...
- 東京大空襲訴訟高裁判決「旧軍人・軍属への補償は戦闘行為などの職務を命じた国が...
- 安倍晋三の検察庁法改正案に賛成しよう! 但し不正疑惑渦中閣僚一人で検察人事関...
私は現代中国はこのままだと、今後早ければ10年以内、遅ければ20年後には分裂すると思っています。私のブログでは、中国分裂の筋書を何回かにわったって掲載しています。今回は、中国分裂への日本の対応策など掲載しました。是非ご覧になってください。