野田首相の緊急性は必要なしとした田中防衛局長不適切発言の沖縄に対する自身の謝罪と説明

2011-12-01 09:36:00 | Weblog

 昨日2011年11月30日午後3時から野田首相の自民総裁、公明代表との党首討論が行われた。「党首討論詳報」を伝えている「MSN産経」を参考にする。

 トップバッターの谷垣総裁は政府の沖縄県に対する米軍普天間飛行場代替施設建設の環境影響評価書年内提出時期に関して田中防衛省沖縄防衛局長が一昨日の11月28日に行った不適切発言は政権の沖縄問題に対処する姿勢の欠陥・緩みに原因があるのではないかと追及した。

 そして所管大臣の一川防衛相が役目に自分は素人であるということから仕事をスタートさせたこと、国賓であるブータン国王夫妻歓迎宮中晩餐会を欠席して代わりに出席した政治資金パーティで、こちらの方が重要であると挨拶したことを挙げ、「公務、国務に対する責任感、忠誠心の欠如がここに表現されている」と沖縄問題に対処する姿勢の欠陥・緩みの象徴的一例とし、日本の防衛の最高責任者としてこの問題を如何に乗り越えようとしているのか問い質した。

 対して野田首相は田中局長の発言は極めて不適切な発言だったと認め、田中局長の更迭は当然の措置だとする一方、普天間移設問題では例の如くに日米合意に基づいた対応とその代償としての沖縄の危険性除去と基地負担軽減の方針であることの常套句を唱え、「沖縄の皆様に誠心誠意、丁寧な説明をしてきたつもりで」あった、「先般は軍属の裁判権の問題について、日米の地位協定の、運用改善という形で一定の評価をいただいた」、そういった折に「こういう発言が出たことは本当に誠に遺憾であり、私も心から、沖縄のみなさまにお詫びを申し上げたいと思っております」と自らの謝罪の必要性を表明した。

 そしてさらに付け加えて、一川防衛相の宮中晩餐会の欠席理由を、公務があったから、欠席通知を出したが、その公務が中止となったので、同僚議員の政治資金パーティに出席して、あのような発言をした。「宮中晩餐会を軽視しているかのように受け止められる発言」だったので、「厳しく官房長官から注意をし、大臣も反省をしている」と谷垣総裁の一川防衛相に関する追及の答とした。

 一川防衛相が役目に自分は素人であるということから仕事をスタートさせたことに関しては何ら答えていない。

 尤も宮中晩餐会欠席の釈明も、就任直後の記者会見で、「安全保障に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロールだ」と発言して、安全保障も自衛隊統括も素人が行うのが本当の遣り方であると奇妙奇天烈な危なっかしい姿勢を示したことの釈明も必要ではなかった。

 谷垣総裁はいわば、「上の為すところ、下これに倣う」という点を追及したのである。防衛省の統括者である一川防衛相の弛緩した姿勢に対応した部下である田中局長の沖縄に対するふざけた発言ではなかったのか、このような状況のもと、野田首相は日本の防衛の最高責任者としてこの問題を如何に乗り越えようとしているのか問い質したのである。

 だが、野田首相は谷垣総裁が「上の為すところ、下これに倣う」と把えた疑問に何ら答えなかった。党首討論であるのに、的外れにも国会でも答弁している宮中晩餐会欠席の釈明を繰返したに過ぎなかった。

 谷垣総裁も自分の質問に野田首相が的確に答えていないことに気づかなかった。野田首相が口にした「正心誠意」という言葉を把えて、その言葉を言うだけでは通用しない、田中局長の発言は環境アセスメント提出を巡っての発言で、沖縄の気持を踏みにじって信頼関係を失った今、提出できるのか、正心誠意と言うなら、首相になってから一度も沖縄に行っていないのだから、首相自ら沖縄に行って、正心誠意謝罪するところから再出発すべきではないか、沖縄の理解を得てから、アセスを提出すべきではないかと忠告紛いなことを言う。

 この追及に関して野田首相は、再度田中局長の発言は遺憾で、沖縄のみなさまにお詫びしなければならないと、謝罪の必要性を再度示し、環境影響評価書は年内提出の準備をしている、田中局長の発言に関わる説明と謝罪は、今日防衛事務次官が沖縄に飛んでしているところで、「私自身の対応については適切な時期を選んで対応させていただきたい」と答えるにとどめている。

 対して谷垣総裁は、この問題ばかり議論している訳にはいかないと前置きしながら、正心誠意を言うなら、一刻も早く沖縄に行って、誠心誠意の行動をして貰いたいとまたまた忠告した上で普天間の移設問題は民主党政権では解決がいよいよ不可能になったなという思いを深くしたと言って、次の質問に移る。

 谷垣総裁は大して問題にしなかったために次の質問にあっさりと移ることができたのだろうから構わないが、野田首相は田中局長の発言を「極めて不適切な発言だった」と認め、防衛省の事務方のトップである防衛事務次官を説明と謝罪のために沖縄に飛ばせる緊急措置を取った。

 だが、野田首相自身に関しては「沖縄のみなさまにはおわびしなければなりません。だからこそ、なおさら襟を正してこれまで以上に、誠心誠意、沖縄の皆様にご説明をしなければいけないというふうに思っています」等、首相自らの謝罪の必要性と正心誠意な説明の必要性を幾度か言いながら、その必要性を満たす日時に関しては、「私自身の対応については適切な時期を選んで対応させていただきたい」と後のことだとした。

 いわば沖縄に対する野田首相自身の謝罪と説明はその必要性を認めながらも、緊急性に関しては必要なしとした。だからこそ、防衛事務次官を首相の代理としたのだろう。緊急性は防衛事務次官どまりで、一川防衛相も野田首相も緊急性から除外していた。

 沖縄に対する謝罪と説明に関して野田首相が言う「正心誠意」とはその程度だということなのだろう。

 谷垣総裁がこの点を突いたなら、野田首相をもっと追い込むことができたかもしれない。

 尤も沖縄は野田首相が謝罪と説明に緊急に訪れたとしてもそれを以て正心誠意の行動だとは取るまい。県外移設を実現させて初めて正心誠意の行動となる。

 母親の住まいか勤め先に学校から電話がかかってくる。

 学校「お宅の子どもがクラスの子どもと喧嘩してケガをさせた。病院に連れて行って治療して貰い、保護者も病院に呼んで、今日は学校は早退ということで家に帰って貰いましたが、何々さんのお宅に謝りに言ってもらいませんでしょうか」

 母親「分かりました。適切な時期にお伺いして、謝罪したいと思います」

 実際は「適切な時期」といった言葉は使わず、「後ほど」といった言葉を使うだろうが、いずれの言葉を使おうと、緊急性を認めなかったことに変わりはない。

 この場合の母親が野田首相に当てはまる。としたら、母親も正心誠意を示していたことになる。

 以上参考にした記事の党首討論に於ける遣り取りの関係箇所を参考引用――

 《【党首討論詳報】(1)首相「アセスは年内提出を準備」》MSN産経/2011.11.30 17:53)
   
 谷垣氏「野田総理、沖縄防衛局長の極めて遺憾な発言が飛び出しました。総理との最初の党首討論を、この問題から始めなければならないのは、やりきれない思いでござますが、看過するわけにはいきません。なぜ取り上げるかと申しますと、この問題が、この発言が、沖縄県民の心を傷つけた、大きく傷つけたものであることは言うまでもありません。しかし、単にそれにとどまらずですね、政権の沖縄問題に対処する姿勢、そこに大きな欠陥があるんじゃないか、ゆるみがあるんじゃないか、こう思うから、この問題をお聞きするわけであります」

 「防衛局長の上司にあたられる一川防衛大臣、当初、自分は素人であるということから仕事をスタートされたわけですが、この間、ブータン国王がお見えになったときは、晩餐(ばんさん)会を欠席されて、政治資金パーティーの方が重要である、と。こういうふうにおっしゃった。これは公務、国務に対する責任感、忠誠心の欠如がここに表現されているんじゃないかと思うんです。ですから、その下で、防衛局長のこういう発言が飛び出した。総理は、この防衛の日本の最高責任者であります。この問題をいかに乗り越えようとされているのか、お答えください」

 首相「はじめての党首討論とさせていただきます。あの、本当にいい議論をさせていただきたと思います」

 「まずは、ただいまおたずねの、沖縄防衛局長の発言でございます。昨日、防衛大臣が、事情を説明をさせて、聞いたうえで、報道されるような発言があったと、イコールではありませんけれども、そういうことをご本人が認めました。ということは、極めて不適切な発言だったと思います。従って、更迭をするということは、当然の措置でございました」

 「普天間の問題については、一刻も早くその危険性を除去する、そして日米合意に基づいて対応していく、沖縄の負担を軽減していく、という方針で、沖縄の皆様に誠心誠意、丁寧な説明をしてきたつもりでございました。加えて、先般は軍属の裁判権の問題について、日米の地位協定の、運用改善という形で一定の評価をいただいたあとにこういう発言が出たことは、本当に誠に遺憾であり、私も心から、沖縄のみなさまにおわびを申し上げたいと思っております」

 「防衛大臣の宮中晩餐会等のおたずねがございました。これについても、大臣から説明を、官房長官が聞きました。もともと公務なので欠席通知だったが、その公務がなくなって同僚公務が入る予定だったので欠席をする通知をしておりましたけども、途中でその公務がなくなったときに、いわゆる同僚議員のパーティーに出て、ご指摘のような発言をしました。これは、宮中晩餐会を軽視しているかのように受け止められる発言でございますので、それは厳しく官房長官から注意をし、大臣も反省をしているところでございます」

 谷垣氏「誠心誠意というのは、総理が大事にされている言葉だということは、私もよく承知をしております。しかし、意を誠にし、心を正す、言葉だけでは、これは通用するものではありません。この防衛局長の発言は、今年年末に普天間移設問題に関して環境アセスメントを出す。それがどなるかということをめぐって出た発言だと承知しています。この環境アセスメント、年内このままお出しになるんですか? ということは、これだけ沖縄の方々の気持ちを踏みにじって、信頼関係を失ったときに、できるんですか、ということを私は問いたいんです」

 「総理、まだ、総理になられてからですね、一度も沖縄に行っておられない。誠心誠意とおっしゃるならば、総理自ら沖縄に飛ばれて、そして、沖縄の方々に誠心誠意謝罪されるところから、再出発されなければ仕方がないんじゃないですか。そして、沖縄の方々の理解が得られたら、そのときにアセスを出す。こういうことじゃないですか。どういう行動をお取りになるのかうかがいたい」

 首相「今回の発言、大変、先ほど申し上げた通り、遺憾でありますし、沖縄のみなさまにはおわびしなければなりません。だからこそ、なおさら襟を正してこれまで以上に、誠心誠意、沖縄の皆様にご説明をしなければいけないというふうに思っています。環境影響評価書については、年内に提出をする準備をしている、という状況でございます。今回の防衛局長の発言については、説明と謝罪については、今日防衛事務次官が沖縄に飛びまして、説明と謝罪をしているところでございますが、私自身の対応については適切な時期を選んで対応させていただきたい」

 谷垣氏「この問題ばかり議論しているわけにはいきませんが、やはり、日本の外交の要である、日米の安全保障条約、体制にかかわる問題であります。誠心誠意とおっしゃるのなら、一刻も早く、沖縄に飛ばれてそして誠心誠意の行動をしていただかなければならないと思います。私は、この事件をみまして、民主党政権が発足以来、沖縄の人たちを踏みにじる発言がずいぶん出ました。今度のこの発言をみまして、普天間の移設問題はこれは、民主党政権では解決がいよいよ不可能になったなという思いを深くしました。そのことを申し上げて次の問題に移りたいと思います」


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