日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

失ったものの大きさ-ブランド力-

2005-01-19 11:59:34 | マーケティング
今日の日経新聞インターネット版に、「三菱自動車の支援」という記事が出ています。
一昨年あたりから噴出した、欠陥車問題で「三菱自動車」という名前は大きく傷ついてしまいました。

昨年秋から自動車メーカーは、新車ラッシュです。
特にワンボックスタイプのものからセダンやスポーツタイプへと、シフトしているかのようなCMの嵐。
もちろん、これまで人気だったワンボックスタイプもリニューアルしてきています。
しかし、そこには「三菱自動車」の名前はありません。
確かに、「三菱自動車といえばパジェロ」と言われるくらいRV車というカテゴリーで、自動車の市場を引っ張ってきたいたので、他のタイプでは難しいという要素はあったのかも知れませんが。
それを割り引いても、今の日本における自動車市場での地位は、見るも無残な状態ではないでしょうか?

RV車が人気を博していた時、トヨタや日産もRV車を積極的に展開していました。
でも、生活者は「RV車を購入するなら、パジェロ」という気持ちがあったと思います。
「パリ・ダカールラリー」のような過酷なレースに参戦することで、パジェロという車の素晴らしさを、伝える努力を10年以上してきたということで得た「市場からの信頼」によるものが大きかったと思います。
それが、「リコール隠し」という会社の社会に対する倫理観の欠如によって、一瞬のうちに失われてしまったのです。

それ以前にも、雪印乳業及び関連会社による食中毒や偽造表示などの一連の事件によって、企業そのものが社会から姿を消してしまいました(現在でも雪印乳業はありますが、牛乳製品及び飲料製品などにおいては「メグミルク」というブランド名を主に使用)。

私たちがモノを買うとき、イロイロな検討をしています。
価格や商品そのものの品質、手に取ったとき感覚や「口コミ情報」などなど。
その中でも、企業に対する「親しみ」や「有名である」といったことも、その判断材料のひとつです。
例えば、「新潟県魚沼産コシヒカリ」という表示を見たとき、「とても美味しいお米に違いない」と思い、「やや高くても欲しい。」という気持ちになって購入するということは、ありませんか?
それが「ブランド力」なのです。
「ブランド」は、「社会との信頼という約束」を現しているかもしれません。

今回の三菱グループによる、三菱自動車支援策というのは「失ってしまったブランド力」の大きさを改めて示すモノです。
昨今、企業の多くは「ブランド構築」に躍起になっています。
「キャッシュフロー」としては現れない、「無形の資産」であり「顧客との大切な接点」となるモノ。
それが「ブランド」だからです。