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「引き際」-知的体力基礎講座2-

2005-01-28 21:50:53 | マーケティング
「知的体力基礎講座2」です。

今日の朝刊に、ソニーの10月~12月期決算が、発表されています。
売上前年比7.5%減、純利益55.3%増という、減収増益と言う内容になっています。
売上が伸びた理由はDVDソフトや生命保険などの事業が好調と言うことなのですが、ソニーとしての基幹部門は、苦戦しています。
昨年暮に、鳴り物入りで市場投下した「PSP」は、発売直後に不具合が発生しています。

この内容を見ると、「いつからソニーは、映画ソフトや保険を売る会社になったのだろう?」という、疑問が出てきます。
ソニーが、「スパイダーマ2」等の映画ソフトに力を入れているのには、理由があります。
DVD市場における、リーディング・カンパニーになりたい!という事なのです。
20年位前にあった、「β対VHS」というVTR市場で、ソニーは完敗した経験があります。
完敗した理由は、再生できる映画などのソフトの数の差でした。
多くのハリウッド映画が、VHS方式を選んでしまったためにβ方式の性能がいくら良くても、市場から撤退せざる得なかったのです。
それも、ソニーは「βマックスは、なくなってしまうの?」という、大々的な連続新聞広告まで打って、歯止めを掛けようとしましたが、数年後VHS方式の製造と、β中止をせざる得ませんでした。

それまでのソニーは、市場に出す商品の殆どがヒットするほどの技術を持っていました。
もちろん今でも持っているはずなのですが、過去の栄光に甘んじた結果、新規事業については過信してきたようです。
「過去の栄光」というのは、「トリニトロン」です。
ある一定年齢の方は、覚えていると思いますがその技術の高さだけではなく、テレビCMでも話題になりました。
「ボク、タコの赤ちゃん!ヨイッショ・・・ヨイッショ」というナレーションのCMです。
その海中の美しくのどかな光景とあいまって、CMとしても高い評価を受けました。
それ以降も、携帯カセットテープ(録)再生機=ウォークマン、CDウォークマンなど「携帯音楽分野」でも、他のメーカーの追従を許さないほどの確固たる地位を築いて来ました。
しかし・・・そこから「ソニーらしさ」というモノを見失ってしまったようなのです。

「ソニーらしさ」というのは、「ワクワク・ドキドキを生活に提案する、生活エンターティメント企業」というポジションだったのではないでしょうか?
それが「らしさ」ということだけに執着し、「らしさ」の創造性を怠ってしまったように思えるのです。

現在、ソニーはテレビ画面事業からほぼ撤退している状況です。
一旦、かつての得意分野から撤退をして、新たな「らしさ」の創造に苦しんでいる。

「事業撤退」というモノは、時には必要なことです。
しかし、市場と自分達の関係を見失っては、企業体力の底がつく頃になって気がつくことになってしまうのです。
今回、記者会見をした井原勝美副社長は、そのことをリアルに受けとめているように感じました。
果たして、ソニーの得意分野での復活はあるのでしょうか?
そして、膨大な資本投下をしたDVDレコーダー市場を勝ち取ることが、できるのでしょうか?