日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

本質を知るコト

2012-06-09 20:00:16 | アラカルト
乳がんという病気を得てから、「がん」という病気に対してとても興味が湧き、様々な勉強の場へ出かける様になった。
その中で驚かされるのは、「抗がん剤」をはじめとする治療薬の進歩だ。

最近注目された抗がん剤の一つが、日本のエーザイが研究・開発をした「ハレヴェン」だろう。
この乳がんの抗がん剤は、「クロイソカイメン」という日本で生息している海綿の成分から作られ、既に今まで使われていた抗がん剤で治療効果が期待できない患者さんへ投与されている。

それとは別に、当初ある特定のがんに対して認められていた薬が、短期間に複数のがん治療薬として認められるコトもある。
その一つが、「アバスチン」という分子標的薬だ。
この「アバスチン」の特徴は、がんという病気の成り立ちに注目した、と言う点に有る。
がんが増殖していく過程で、多くの栄養を他の細胞から奪い取るために、がんそのものが独自に血管を増やしていく、と言う特徴がありその特徴に着目したのが、この「アバスチン」という分子標的薬なのだ。
当初は、大腸がんの分子標的薬として承認され、その後非小細胞肺がんや乳がんなどにも適用される様になってきている。
おそらく今後も、適用されるがんの種類は増えていくのでは?と考えられている様だ。

その「アバスチン」を日本で販売しているのが、世界的新薬企業・ロシェ社のグループ企業となっている中外製薬。
その中外製薬が、薬価を欧米よりも低く日本で提供する、と発表した為に一時期中外製薬の株価が下がった、と言うコトがあった。
確かに、日本国内での販売薬価が欧米に比べ安く設定された、と言うコトで投資家たちは、失望感があったのだと思う。
でも、この薬の特徴と日本での健康保険制度を考えれば、何も薬価が低く設定された程度で、株価が下がる様な要素は全く無いと思うのだ。
むしろ、この「アバスチン」という薬の特徴と将来性を考えれば、投資家は積極的に動いても良かったのでは?と思うのだ。
違う見方をすれば投資家たちは、この「アバスチン」と言う抗がん剤の重要性と将来性では無く、目先の低く設定された薬価という点だけど見て、判断をしたのでは?と、想像している。

しかし、この様なコトは何も株を扱う人たちだけのコトでは無い様な気がする。
その事業の本質や重要性、将来性というものを十分理解し、実際の事業へ活かしているのか?と言うと、決してそうではないような気がする。
この様な書き方をすると、「上から目線」と言われるかもしれないが、企業が行う「リストラ」などは、その最たるモノでは無いだろうか?
自分たちの本来行うべき事業の本質・企業理念・社会との関わり、その様なコトを総合的に見た「事業の再編」は必要だと思う。
だが「事業の再編」と「安易な人員整理」とは、本質が違うと思うのだ。
企業が利益を確保する為に人員整理をすると言うのは、安易な利益確保の手段でしか無い、と言うコトは再三言われてきたと思うのだが、その傾向は一向に収まらないのは、企業が大きくなった為に「事業の本質」が見えにくくなっているからかも知れない。
だからこそ、見えにくくなってしまった「本質」を、「リストラ」をする前に考える必要が有ると思う。

最近の家電メーカーのリストラ策のニュースや今月多くの企業が予定している株主総会などのコトを思いながら、そんなコトを考えたのだった。