日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「Made in」から「Made by」へ

2012-08-01 10:50:16 | ビジネス
昨日の朝日新聞に企業広告として、早稲田大学ビジネススクール教授・遠藤功さんのインタビューが掲載されていた。
広告主は、日本特殊陶業。

このインタビュー広告のキーワードのひとつが「Made in JAPANからMade by JAPANへ」だった。
コレまで日本経済を支えてきたのは「モノづくり」だと、再三言われてきた。
この時の「モノづくり」とは、いわゆる製造業のコトを指しており、「モノづくり=工業製品」だった。

その日本の経済の屋台骨であった「製造業」が、とても厳しい状況に追い込まれている。
家電メーカーのほとんどは赤字決算となり、トヨタや日産も決して以前の様な元気の良さを感じるコトが無い。
何より、国内での生産から海外へ生産拠点を移し始めており、それが日本経済に良い影響を与えていないのでは?と言う指摘が再三されてきた。
国内における企業の設備投資が進まないどころか、生産拠点を海外に移すことで日本国内の設備投資はされず、当然のコトながら生産ラインなどで働く人たちの雇用も生まれない、と言う考えが、主流だった。
だから「日本のモノづくりが危ない」と、言われる様になったのだ。

この発想が、遠藤先生が言うトコロの「Made in JAPAN」というコトになる。
しかし「Made by JAPAN」となると、日本様々な企画やアイディア、技術を提供し、海外の生産拠点で生産をする、と言う発想になり、今の製造業の実態に近くなる。
この発想に一番近いのは、アップル社と言う気がする。
アップルのiPadなどは、アップル社が部品一つひとつを作っているわけはない。
どちらかと言えば「様々な技術の集積をアップル社が、プロデュースしている」と言う感じがしている。

大切なコトは、日本に有る中小企業の持っている「匠」の様な技術を産業界全体が維持しながら、海外に生産拠点を移す、と言うコトの様な気がするのだ。
と同時に、日本独特の発想で世界をリードしている産業もある。
例えば「繊維産業」などは、一般的に思われている様な「織物産業」では無い。
「カーボンナノファイバー」などは宇宙産業には欠かせない素材となっているし、コンクリートに埋め込むコトができる光ファイバーや、トウモロコシから生まれるプラスチックと同じような性質を持った高分子素材と言った、特徴的な素材を日本の大手繊維メーカーは作っている。
今や「繊維産業」は、「織物産業」ではなく「素材産業」なのだ。
その様な特徴的な素材を、匠の技術と組み合わせて、従来あるモノを新しく創る、それが新しい「Made in JAPAN」なのだと思うし、海外に生産拠点を移しても、創られるモノの「中心・頭脳・体幹」の様なトコロは、日本で創る・造ると言うコトが「Made byJAPAN」なのだと思うのだ。

一方、レノボやHPなどのパソコンメーカーは、一部の上級機種に限って日本で一貫生産をする動きが出ている。
ここのポイントは、「上級機種」という点だ。
繊細で緻密な工程が必要となり、当然それに似合うだけのデザイン性も要求される「上級機種」だからこそ、日本での生産が必要なのだ。
そんなトコロにも「新しい日本のモノづくり」の発想が、あるのではないだろか?

従来の「モノづくり」という枠を外すコトで、日本の新しいモノづくりのカタチが見えてくると思うし、それこそが「日本のモノづくり」なのでは?