日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

出版社の広告が、無い

2016-01-04 05:50:43 | CMウォッチ

恒例となった?正月広告についてのエントリ。
全体の印象としては、低調というか面白味を感じさせる広告が、少なかったような気がしている。

その中で目立ったのは、オリンピックイヤーらしい「オリンピックサプライヤー企業」の広告だろう。
「パナソニック」などは、企業キャラクターのネイマールを起用した広告だった。
とはいえ、メッセージ性があったのか?というと「・・・」。
今年開催される「リオデジャネイロオリンピック」を意識している、というよりも「2020年東京オリンピック」開催に向けた広告だったような印象だった。
例年、美しいビジュアルとメッセージを発信している「資生堂」だが、通常の広告との差があまり感じられなかった。

広告全体を見ていて、何か物足りないな~と思って見直してみたら、出版社の広告がないことに気が付いた。
大体どの新聞でも、毎週日曜日には本の紹介記事が掲載されていると思うのだが、出版社の広告というのは新書籍の紹介広告が基本で、出版社の企業広告というのは正月広告くらいしかなかった。
その各出版社が、申し合わせたように1社も広告を掲載していなかったのだ。

例年だと「少年ジャンプ」を出版している、集英社などは「少年ジャンプ」の人気漫画の主人公たちが登場したり、小学館などが子供向けの「辞書」の広告を出したり、ムック本で話題を創った「宝島社」のように、ちょっと社会風刺をしているような広告を出しているのだが、そのような広告を目にするコトがなかった。

出版業界の不振を表しているのか?それとも新聞という媒体が古くなり、広告を出す意味を感じさせなくなったのか?
確かに、電子書籍などが普及しはじめ「本を読む」形態が、変わりつつある。
だからこそ、出版社として「どんな本や雑誌を出しているのか?」ということを、生活者に改めて伝える必要があったのでは?という気がしている。
なぜなら、「本や雑誌は知っているが、それらの本や雑誌を出している出版社は知らない」という、生活者は案外多い。実際私なども書店で本を探す時、タイトルは覚えていても出版社は覚えていない。
「出版社が広告を出す」というのは、その出版社のカラーというか思考とか方向性などを生活者に伝えるチャンスでもあると思うのだ。
そのようなチャンスを無くしてしまった、という出版業界に何が起きているのだろう?と、不安も感じている。

代わりに目を引いたのが、文春が「文春WOMEN」と銘打った女性を対象とした「週刊誌」を出したコトだ。
「女性週刊誌」ではなく、「女性が読む一般週刊誌」というスタンスだ。
内容が、どれほど通常の「文春」と違っているのか?と言われると、意識的に「女性向け」にするコト自体「文春の体質の古さ」を感じさせているように思うのだが、これも新しい動きなのかもしれない。
そして、「セブン・イレブンだけで元旦発売」という「週刊誌」もあった。
コンビニそのものは正月休みがあるわけではないので、何も「セブン・イレブン」に限定する必要はない、と思うのだが、「限定発売させるセブン・イレブン」の流通業界での力関係を感じさせるモノでもあった。

お正月広告というのは、どこか華やかで心ウキウキする要素があるものだが、そのような感じをあまり受けなかったことは、とても残念な気がする。
それだけではなく、日本の社会全体が決して心ウキウキできるような状況ではないのかもしれない・・・と、感じたのだった。