日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

読書は違う視点を与えてくれる、ツールである

2016-01-08 15:24:30 | アラカルト

このお正月休みに、フランスの人口学者であり家族人類学者であるエマニュエル・トッドの「ドイツ帝国」が世界を破滅させる、という本を読んだ。
その前に読んだ、コトラーの「資本主義に希望はある」と、読み比べてみるといくつかの共通点があり、また欧州の中からの視点と米国からの視点の違いに、「なるほど」と考えるコトがいくつもあった。

共通している点というのは、「金融が国(=政府)を動かしている」という点だ。
「金融」というと、銀行や証券会社を真っ先に思い浮かべると思うのだが、エマニュエル・トッドもコトラーも銀行や証券会社のことだけを指しているのではない。
大企業などが「ロビー活動」という名で、政治家を動かし、政治家がこのような企業の意向を優先するコトを指している。
「政治がお金に膝まづく」というと、言葉が悪いと思うのだが、そのようなことを二人がEUと米国という内側から観て、指摘をしている。
おそらく、日本でも同じようなコトが、起きているのではないだろうか?
少なくとも、「アベノミクス」で潤ったのは、大企業と一部投資家、そして代々膨大な資産(主に株や土地)を受け継いできた人たちであった、ということを考えると、決してEUや米国だけのことではないような気がする。
何より、大企業の法人税の軽減や富裕層の所得に対する税負担と、中産階級以下の所得に対する税負担という視点では、まさに今の日本の生活者が生活実感として感じているコトに近いのでは?という、気がした。

そして、コトラーが指摘した「サブプライムローン」の問題は、国という単位で考えると「ギリシャの経済破綻」と、根っことなるのは同じことなのでは?という気がした。
「サブプライムローン」などでは、「借り手が、返済できないほどのお金を借りた」コトが問題である、と指摘されてきた。
コトラーは「(借り手が)返済できないほどのお金を借りた」のではなく「返済できないほど、貸した」コトのほうが、問題である、と指摘をしている。
昨年ギリシャで起きた経済破綻は、EU内で「返済できないほど、貸した」コトが問題である、という指摘をしているのが、エマニュエル・トッドであった。
そして貸し手の理由についても、共通した認識を持っている、という点に驚かされた。

その一方で、ドイツと日本の共通点があることを知った。
それが「少子高齢化社会である」という点だ。
「少子化」の問題になると、真っ先に取り上げられるのは「出生率」。
日本の場合1.3人程度。ドイツもまた同じくらいの出生率なのだ。
欧州の出生率というと、フランスなど回復傾向にある国の報道はされるのに、ドイツのような日本と似た状況の国の報道が少ないのは、なぜだろうか?
それ以外にも家族形態が「家父長制」である、という点もドイツと日本の共通点であるコトを、初めて知った。

ただ日本の場合、これまで好調であった産業が頭打ちになってきているのに対し、ドイツが好調なのは東欧からの安い労働力を背景としている点を挙げている。
だからと言って、日本も同様に東アジアの国々に生産拠点を移していくコトが、日本経済を良くしていくコトにはならないはずだ。
むしろ、今の日本に必要なことは「国内の生産力を高める」という点にある。
それは、日本だけではなく米国もフランスも、同じ問題を抱えているように感じた。

様々な視点を与えてくれた、お正月の読書だった。