ファッション専門誌・WWDJapanのWebサイトに、なぜ?と考える記事があった。
WWD Japan :エルメス財団の「スキル・アカデミー」が”木”をテーマに中高校生向けのワークショップの参加者を募集
まず興味を引くのが、このワークショップの主催者がエルメス財団である、という点だ。
名前の通り、あの高級ファッションブランド・エルメスが運営する財団だ。
次に思うことは「なぜ、中高校生を対象にワークショップを開催するのか?」という点だろう。
募集の記事を読む限り、エルメス財団側は、参加する中高校生を「将来の顧客」と、見込んでいるわけではなさそうだ。
もちろん、このワークショップをきっかけに「『エルメス』という企業に、興味を持ってもらいたい」という期待はあるとは思うのだが、それが第一の理由ではないのでは?という気がする。
その理由は、このワークショップの開催の趣旨が「自然素材にまつわるスキルの継承・普及」だからだ。
母国・フランスでは2014年からスタートし、過去のテーマも木や土、金属や布と幅が広い。
決して、ファッションに関連する素材とは限っていない。
とすると、中高校生という柔軟な感性を持つ世代が伝統的なモノ・コトに接することで、新しい発想や考えを持ってほしい、ということなのでは?という気がするのだ。
学校で学ぶ視点とは違う視点をもって、より幅広い活動や社会的イノベーションを期待しているのでは?ということなのかもしれない。
エルメスのこのような社会的活動は、随分前から行われている。
エルメスの中でも、人気が高いスカーフがそれだ。
スカーフのシリーズの中に、「アフリカの子供たちの絵」がある。
エルメスがアフリカの子供たちを対象に、絵画のワークショップを長い間継続的に行い、そのワークショップに参加した子供たちの絵画を、スカーフにプリントしているのだ。
上述した通り、エルメスのスカーフは人気のある商品で、エルメスの工房で働くテキスタイルデザイナーが起こしたデザインと肩を並べるように、アフリカの子供たちが描いた絵のスカーフが、エルメスショップで販売されている。
この活動は、企業の社会貢献とビジネスを成り立たせている、と注目され続けてきた。
その延長線上にこのワークショップがあるのか?というと、今現在の状況ではわからない。
ただこのようなワークショップを開催することで、エルメスという企業姿勢ということが直接的に伝わる。
それは最近何かと取り上げられることが多い、「SDGs」ということにもつながるだろう。
と同時に「エルメス」を購入しない人に対しても「エルメス」という企業に親しみを持ってもらう、という意味もあるかもしれない。
「いつかはエルメス!」という女性は多い。
単なる「憧れの高級ブランド」というだけではなく、「エルメスという企業に共感をしている」という人たちを増やす、ということだ。
そのような活動を通すことで、「エルメス」というブランド力そのものの価値が上がる、という視点があるということも忘れてはいけないことだと思う。