広告代理店の博報堂が、興味深い調査レポートを公開している。
それは、平成という30年にどのような社会変化が起きたのか?という調査から未来を予測する、というレポートだ。
レポートの一つに「家族のユニット化」が進んだ時代が、平成という時代でもあった、という興味深いレポートがある。
博報堂生活総合研究所:家族30年変化 家族は今プロジェクトへ 潮流1「家族のユニット化」
このレポートを読む前に、既婚男性にお伺いしたい。
「あなたは、奥様のことを何と呼んでいますか?」と。
おそらく昭和という時代に結婚をされた方の多くは、「ママ」あるいは「おかあさん」と呼ばれているのではないだろうか?
お子さんに恵まれなかった方は、奥様の名前で呼ばれている方もいらっしゃるとは思うのだが、お子さんがいらっしゃる既婚男性の多くは「ママあるいはおかあさん」と呼んでいらっしゃるのでは?
この傾向は、2000年に入ると大きな変化を見せる。
「ママあるいはお母さん」ではなく、奥様の名前を呼ぶ既婚男性が増えてくるのだ。
この調査が行われた2018年になると、「ママあるいはおかあさん」という呼び方から、名前を呼ぶ既婚男性の方が多くなる。
今の20代、30代の既婚男性は、子供の有無とは関係なく「名前+さん(あるいは、ちゃん)」で呼ぶ人のほうが多くなっているのだ。
このような調査レポートを見て、ある一定年齢の男性からは「家族の絆はどうなっているんだ!」という声が、出てきそうな気がする。
「パパ・ママ」という呼び方は、子供が生まれたことによって「〇〇さん(あるいは〇〇ちゃん)」から「パパ・ママ」へと変わり、それが一つの「家族」というイメージを持たせることになっている、と思い込んでいるのでは?と、感じることがあるからだ。
しかし、夫婦であっても名前で呼び合うことと「家族である」という意識とは全く別である、という考えのほうが今は主流になりつつあるのではないだろうか?
例えば、徳仁天皇陛下は記者会見などの公的な会見の時でも、皇后陛下のことを「雅子」と呼んでいらっしゃる。
最新の著書「水運史から世界の水へ」の中でも、「妻の雅子にも感謝の気持ちを伝えたい」と、謝辞の言葉を書いていらっしゃる。
ご家庭内では「パパ・ママ」なのかもしれないが、公的な会見や著書の中で個人としての名前を書かれている、というのは天皇家という一般的家庭とは違う環境であっても、社会的意識変化のあらわれと、とらえる必要があるのでは?と、思うのだ。
だが、今だに「結婚をしたら、子供ができて一人前」とか「女は出産して、初めて婚家から嫁として認められる」的な、古い意識の方も現役として活躍をされている。
実際、自民党のある議員さんは、女性候補者の応援演説で「一番大きな功績は、子どもを作ったこと」と発言をして、ニュースなどに取り上げられている。
Huffpost:自民党の三ツ矢憲生議員、現職の女性候補者に向かって「6年間の一番の功績は、子どもをつくったこと」
この種の発言を繰りかえす男性をみると、「時代感や社会的変化が分からない人」という印象を持たれるだけだと思うのだが、呼び名一つにも変化が起きている、という事実から「今社会がどのように変化し、生活者の意識を変えているのか?」という、感覚と思考を持たなくては、未来を語ることはできないのでは?
その意味でも、既婚者のパートナーの呼び名の変化は些細なことかもしれないが、生活者の意識変化としてはとても大きな意味を持っていると思うのだ。