北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

太平洋側からの経空脅威に如何に備えるか

2007-01-02 15:01:27 | 防衛・安全保障

■経空脅威の西方シフト

 昨年に台湾の軍事専門誌“全球防衛”において中国海軍が旧ソ連製廃棄空母の再生を進めており、ジェーンや日本の海事専門誌“世界の艦船”ではロシア関係者筋の情報として信憑性の高さが挙げられ冷戦時代には全く考えられなかった方向よりの経空脅威を想定しなくてはならないようになっている。

Img_1167  冷戦期においては、ウラジボストークを拠点とするソ連太平洋艦隊が最大の脅威であり、ソ連側が不凍港と通年航行が可能な海峡を確保する目的での津軽地区限定占領、若しくは宗谷海峡の確保を目的とした北海道北部への限定侵攻が脅威とされ、北部方面隊に4個師団を配置、更に航空機用掩体を有する千歳基地を配置し、予備航空基地として東北の松島基地、そして三沢基地による重層的防空体制を構築することでこれに対応していた。

Img_1159  ソ連太平洋艦隊の急激な勢力縮小により航空自衛隊の防空体制は過剰と称されることが多くなったが、冷戦終結後、特に1992年ごろから急速に海軍力の強化を始めた中国海軍は、2000年代初頭までにミサイル駆逐艦の整備を充実させ、更にMiG19などの派生型より編成された旧式化著しい空軍は新型のSu-27などが急激にその数を増し、1992年の導入開始から2005年までに300以上の機体が配備されているという。

Img_8208_1  中国海軍の急速な勢力増長は現段階では意図が掴み難く、インド洋の制海権確保や台湾攻略などの諸説があるものの、可能性の一つとして前近代的な砲艦外交を展開する点も考慮する必要があろう。他方で、航空自衛隊の防空体制は前述の通り北方からの経空脅威に主眼を置いたものであり、特に太平洋方面からの脅威に対してはその準備は未整備であるといわざるを得ず、この点は考慮すべき点があるといえる。

Img_8055  写真は鯱のマークが眩しい第三航空団所属のF-86D保存機である。例えば、かつて第三航空団司令部がおかれ、要撃任務にあたっていた航空自衛隊小牧基地への戦闘機再配置などは検討されてしかるべき命題である。また、可能であれば小笠原方面の防空を考え硫黄島の基地機能強化、南西諸島への那覇基地に加え新航空基地の建設などが将来的には必要になるように思う。一方で、防衛大綱に基づく戦闘機上限は厳しく制限されており、現行航空部隊規模を維持しつつ基地機能の充実を両立する必要がある。

Img_7395_1  一つの解決策は、航空団編成から複数の航空隊編成に移行することで、航空団隷下に二個の航空隊を配置し、一航空部隊一基地という現行体制を一部において見直すという施策である。例えば第七航空団を航空団司令部を百里に置きつつ一個飛行隊を基幹とする航空隊を硫黄島へ前進配置、また定数に余裕のある那覇の第83航空隊を全国の各飛行隊より抽出した機体と併せ二個航空隊に再編し、分散配置を図るという思案である。

Img_8595  もう一つの試案は、現在回転翼機を含めた防衛大綱の輸送機上限数を解釈を変え固定翼機とし、大綱水準を維持しつつ輸送機の数量を充実させることである。これにより16機程度の数量上の余剰が生まれる。この輸送能力の充実は一見、要撃戦闘能力の充実とは無関係に思えるが、航空自衛隊の航空団は必要に応じて航空機のみならず整備機能を含めた航空団そのものの展開能力を有しており、有事の際には航空団の飛行隊を分散させる能力を付与することで対処するという論理である。

Img_8600  特に、小牧基地や硫黄島への戦闘機配備は既存基地である為、その障壁はやや低いものの、新規航空基地は、例えば米軍再編に際しての普天間代替基地問題のような命題を内包する。この点、旅客機の発着訓練場を有する下地島など、島嶼部地域は基地こそ限定されるものの、飛行場の数は多く、輸送機による航空作戦能力の展開能力を付与させることでの抑止力の向上という観点からは、固定翼輸送機勢力の強化は当然選択肢に含まれよう。

Img_8406  他方、戦闘機部隊の配置如何に関わらず、平時にあっても極力、災害派遣や急患輸送にも大きな威力を発揮する救難航空隊の配置などを行い、特に自治体との連携を強めておく必要はあろう、フォークランド紛争や朝鮮戦争において致命的敗北に至らなかったのは国民の意思が支えたということを忘れてはなるまい。

HARUNA

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