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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

問われる後継機 E-2C早期警戒機運用開始から20年

2007-01-03 16:09:24 | 防衛・安全保障

■20年を迎えた空中早期警戒機運用

 1987年1月より、三沢基地において警戒航空隊のE-2C早期警戒機による空中早期警戒任務が開始され、今年は20年という区切りの年となる。

Img_0026  1976年9月6日、ソ連防空軍の最新鋭迎撃機MiG-25が函館空港に強行着陸し、操縦士であるベレンコ中尉がアメリカへの亡命を求めるという事件があり、この際に千歳基地より緊急発進したF-4EJ要撃機が空中でMiG-25を見失ったことが大きな問題とされた。領空侵犯という状況に際し、本来であれば千歳基地に強制着陸させるべきところを函館に下ろしてしまったという結果に、日本の防空体制そのものが従来の警戒管制網では限度があるとの結論が出された。

Img_8201  特に、低空からの侵入に対処するべく早期警戒機の導入という方向が国防会議で決定され、1978年8月にE-2C早期警戒機の導入という具体案が決定されるに至った。飛行開発実験団での試験運用を経て、1986年4月、東北は三沢基地において警戒航空隊が新編され、1987年1月より、アラート配置に就くこととなった。当初8機で編成されていた警戒航空隊は予備機を含め13機の陣容を誇り、アメリカ海軍に次ぐE-2Cの運用規模を有している。

Img_1718  E-2早期警戒機は、アメリカ海軍空母機動部隊の艦載機として開発され、1960年に初飛行、短距離離着陸能力が重視され、この規模の機体としては大型のアリソンT56(P-3CやC-130エンジンと同系列)を搭載している。1964年より配備が開始、電子機器を大幅に改良したE-2Cは1973年に配備が開始、現在、フランス、イスラエルの他アジアではシンガポール空軍が最初に運用を開始、その後日本、台湾が導入している。

Img_8283_1_1  全長17.56㍍、全幅24.56㍍の機体上面には円形で直径7.32㍍のレーダーが搭載され、内部には索敵レーダー、敵味方識別装置が搭載、半径480km以内の目標を捜索可能である。航続距離は2856kmで、基地から半径330~340km以内において四時間程度の警戒飛行が可能である。航空自衛隊は、本土上空三箇所程度において早期警戒を行う構想で整備を継続、結果13機を導入することとなった。

Img_2838  更なる任務遂行能力の向上に主眼を置き、1998年には新しく空中早期警戒管制機E-767の部隊運用が浜松基地において開始され、当初2機で運用が開始されたが、現在では4機がE-2Cと任務空域を分担し、警戒管制任務にあたっている。特に、E-2Cは本来が艦載機という特性から機内環境に限界があり、また器材等の更新など将来への発展性という観点から問題があったといわれている。結果、航空自衛隊は早期警戒機と早期警戒管制機を並行運用するという世界的に稀有な存在となった。

■E-2Cの老朽化

 1987年より部隊運用が開始されたE-2Cは、機体そのものが初号機は1982年より飛行しているものであり、老朽化が進んでいることも事実である。

Img_8290  航空自衛隊では、米海軍のホークアイ2000計画に基づく機体近代化改修を実施し、2005年より、近代化改修が終了した機体の部隊配置を開始しているが、一方で、米海軍では機体の近代化改修にも限界が来たとして新型のE-2Dへ2012年より代替を始めるとしている。D型は形式こそ回転式のものであるがレイセオン社製新型レーダーの採用により探知距離が戦闘機で650kmにまで延伸し、同時に2000の目標を処理できるとされている。

Img_9409  また、現在はエンジンのプロペラは4枚であるが、回転効率を向上させるべく8枚方式であるNP2000が導入される(米海軍では一部のC型に既に導入)。結果的に、C型の運用に見切りをつけ、D型は新造機となるため、航空自衛隊が運用するE-2Cはスペアパーツのストックなどを充実させ、米海軍が退役させた後もE-2Cを運用するという選択肢の後に、後継機問題が浮上するということはそろそろ考え始めねばなるまい。

Img_3092  特に大きな問題となるのが、機体は小型であるものの、現行のE-2Cと同系列のE-2Dを改めて新規導入するか、若しくは別の系列である早期警戒機を導入、又は早期警戒管制機への統合という選択肢である。E-2Dを同数の13機、輸入するという選択肢は最も現実的であるが、機体規模が余りにも違うという点が解決されれば、運用効率を向上させる観点から早期警戒管制機への統合という選択肢も検討されてしかるべきであろう。

Img_3234  E-767の場合、搭載するAPY-2レーダーは高度9000㍍に位置した場合、半径800kmの早期警戒が可能であり、滞空時間も10~12時間と大幅に向上している。更に機体に余裕があることから器材を更新する際にも大きな利点となる。また、現行の13機が担う任務(二箇所の同時警戒)を予備機を含めなければ5機、含めたとしても6機程度で代替が可能となろう。加えて既に配備された4機やこれより配備されるKC-767空中給油輸送機とあわせ、運用コストの低減も期待できる。

Img_1916  他方で、E-2Cのレードームを移植する米沿岸警備隊が運用するP-3哨戒機を母体としたP-3AEW&Cやロッキードマーティン社が提案するC-130J輸送機を母体としたC-130AEW&Cについては現実的に難しい、現在川崎重工において開発中のP-XやC-Xに代替する機体を母体としては運用コストが無駄に膨らむばかりである。仮にP-XにE-2Cのレードームを移植するならば現実性が生まれるが、それでは完全な新規開発となり、コスト的な無駄を招くこととなる。

Img_2075  かつて、中曽根防衛庁長官時代にC-1を母体とした早期警戒機計画があり現行のEC-1のようなイメージ図があるが、そういったリスクを冒すよりは、数機のE-767の増勢か十数機のE-2D導入という選択肢が現実的に残るように思う。前者は能力向上と運用の統合、後者は現行の整備施設の一部流用可能、更に調達コスト低減という利点がある。他方、オーストリアが現在運用しており、韓国空軍が先頃導入を決心したE-737AEW&Cという選択肢もある。Img_8885

 E-767AWACSよりも性能は落ちるもののE-737AEW&Cとなれば新規導入であり運用コストという問題点は否めないが、上昇限度はE-2Dよりも高く、結果、現行の13機よりもやや少数機にて代替することが可能となる。なんとなれ、この他、YS-11後継機問題やその先にはT-4といった機体の後継機も検討を始める必要が出てこよう。

HARUNA

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