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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

政府の戦闘ヘリコプター廃止方針は現実逃避,ウクライナの戦場をしっかり分析せよ!増強すべきはAH-64E

2022-12-11 07:00:20 | 先端軍事テクノロジー
■戦車廃止論の財務省に続き
 ロシア軍の地対空ミサイルが枯渇しつつある今ウクライナへ戦闘ヘリコプターを供与できれば戦況を一転し得る、こう先日述べましたがなんと我が国では政府が戦闘ヘリコプター廃止を検討している。

 ウクライナの戦訓を元に戦闘ヘリコプターを廃止するというならば現実を見ていない証拠となります、ウクライナの戦訓を元に戦車廃止論を初夏あたりに報告書として発表した財務省と同じもので、ウクライナにおけるロシア軍攻撃ヘリコプター損耗の原因をしっかり分析していませんし、ウクライナ軍無人機戦果の詳細を分析していないこととなります。

 Ka-52攻撃ヘリコプターがスティンガーミサイルに撃墜される様子がウクライナ側により撮影され話題となりましたが、この点についてはロシア軍戦闘ヘリコプターは90m程度の高度を飛行していたものが撃墜された、とエアバスヘリコプターが戦況分析を行っています、本来戦闘ヘリコプターは匍匐飛行を行うものであり90mの飛行高度は高すぎるのだ。

 匍匐飛行というのは地形追随飛行を行い、樹木の高さが20mから一部25m程度の場合は高度30m程度、草原等を飛行する場合は更に低く接触すれすれの高度を飛行します、高度な訓練が必要となりますが故に撃墜されにくい、何故ならばこの高度では携帯地対空ミサイルは木々の枝に阻まれ飛翔できない、射手が肉眼で確認する前に頭上を飛び去る、直下の機関銃以外の脅威は及びません。

 多用途ヘリコプターに武装を施した武装ヘリコプターで代替できないのか、と思われるかもしれませんが戦闘ヘリコプターの胴体が細長いのは伊達や酔狂ではなく、細長くすることで命中しにくくする確率論と胴体を絞る事で防弾装甲を追加するという目的があります、いくら低空飛行しようとも多用途ヘリコプターでは機関銃に耐える装甲を施せません。

 匍匐飛行を行うにはもう一つ、多用途ヘリコプターは流線型であり空気抵抗が少ない為に難しくなります、何故ならば空気抵抗が無い事は燃費向上に繋がりますが、逆に急制動を掛ける際に流線型は空気抵抗が無い為に操縦が即座の機動に反映しません、突然の障害物に回避行動がとれない、これは即ち多用途ヘリコプターの匍匐飛行能力は低いということ。

 AH-64Eアパッティガーディアン、いや旧式のAH-1Wスーパーコブラであってもウクライナへ提供された場合、適切な運用が為されればという但し書きが付きますが戦況を一新し得る装備となります、そして戦闘ヘリコプターのウクライナ戦場での評価が低いのは、そもそも適切な運用をロシア軍は行えずウクライナは該当する航空機を保有していない為だ。

 地対空ミサイルに対して戦闘ヘリコプターは不利、というのは匍匐飛行の有無と説明しましたがもう一つ、戦術防空システムのような射程の長い装備の場合、AH-64D以降の戦闘ヘリコプターはレーダーシステムに逆探知機能を有している、この機能は実際、1991年の湾岸戦争でAH-64Aがイラク軍レーダー網を破壊した事を受け重視された性能なのですが。

 戦闘ヘリコプターの性能は年々向上しています、2021年からはTV誘導方式のスパイクNLOSミサイルのAH-64E適合化試験が進んでいて、この射程は32kmにも上るのです。これらの性能と運用特性を踏まえて、いや無人航空機で代替できるのだ、とするならば良いのですが自衛隊でこの種の無人機研究を実動試験した事はありません、現実を見るべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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