■憲法9条と防衛の問題
ゴールデンウィークという連休の号砲となります本日五月三日は憲法記念日だ。

本日は憲法記念日です。憲法問題、最大の関心事は防衛でしょう。環境権の問題や世界で唯一憲法に男女同権を明記している日本国憲法という先進性はあげられるのですが、一方で世界で唯一国家に陸海空軍の保持を禁止しているという点で特色があり、また憲法改正手続きがきわめて厳しく制限され容易に改正できない点も特記すべきでしょう。

9条。九条と書きますと京都駅の南のような印象を受けますので9条と記しますが、憲法論の主軸はこの9条において陸海空軍の保持を否定しているところでしょう。すると自衛隊はこれに当たらないのか、自衛隊は軍隊ではないので保持しても憲法上問題はない、という意見は一部野党をふくめ存在するところではありますが、定義が不明確です。

憲法を考える場合、日本は"手段として平和を用いる"ために陸海空軍を否定しているとしますが、"結果としての平和を担保する"ことが国民の幸福追求権や財産権と基本的人権に直結するものであり、憲法上ほかの条文をみた場合には、手段として平和を用いたことでの戦災など非平和的結果を公共の福祉として国民に強要する条文はありません。

2003年、興味深いのは9条の問題について、憲法前文の精神を持ち出し、"結果としての平和"のほうが"手段としての平和よりも重要だ"といまから20年前に当時の小泉首相が提唱し、橋本内閣時代の日米新ガイドライン以降整備が進められていた、それまでの空隙にあたっていた有事法制整備へと大きく進んだ、20年後が2023年ということです。

平和に関する視点は、特に2022年のロシア軍ウクライナ侵攻によるロシアウクライナ戦争勃発により浮き彫りとなりました。驚いたのは、いや驚くには値しないことが現行憲法から垣間見えるところなのですが、日本国内には"ウクライナがロシアに降伏することで平和が訪れる"という視点が、知識人含めすくなからず散見されたことでした。

防衛と憲法の問題は、ウクライナが遠い東欧の国家ということと多少は関係しているのかもしれませんが、これは日本が"そのとき"を迎えてしまった将来においても、同様の論理がある程度の支持を集めるのではないでしょうか。この視座についての国内の合意形成が、政治議論を避ける風潮があるとはいえ、憲法の問題に深く根ざしている。

降伏すれば平和論、しかし視点を変えてみると不自然さが際だちます。韓国は日本に併合されたことで文化的にも幸せになりました、こう仮にソウルやプサンの街角で主張してみるならば、激しい反発を招くでしょう。同じく、中国は日本軍に抵抗したために大変な被害がでたので反省すべきだ、こういう論理を示せば、論理破綻が明白でしょう。

しかし、日本では"降伏すれば被害はない"という視点は、ある程度の支持を集め、もっとも自衛隊の防衛力整備を継続的に進めてきた政権が選挙において民意を集めているために、全体としては"降伏すれば平和になるわけではない"という実情を認識しているのでしょうが、しかし、防衛政策や外交政策まで踏み込んだ国内議論は乏しいのです。

憲法は国の方向性を示すものであるから、現状で違憲状態はない、こう主張することもできるでしょう。憲法の番人である最高裁判所が統治行為論として政治問題なので行政府の領域であり司法の領域ではない、という判決を持って現状を問題ではないと理解することもできるでしょう。しかし、それは憲法の単なる形骸化でないのか、とも。

自衛隊は合憲、という主張は、しかし同時に自衛隊の活動領域が周辺情勢の緊迫化と、邦人経済活動のグローバル化に併せて世界規模に広がり、また日本の軍事力は第二次大戦中における世界での地位と比較すればどうしても非常に小さいものとなっているために防衛協力を進める必要があります。なにしろ核兵器さえもっていない国なのだから。

集団的自衛権公使や予防外交の実施、もう一つの課題は自衛隊が合憲だとして、では自衛隊を含めた防衛政策もすべて合憲と言い切ることが可能なのか、という問題です。これも統治行為論で説明することはできるのですが。繰り返すとおり、手段としての平和の視座から予防外交を怠れば、結果的に回避努力を制限し戦争を迎えることともなります。

改憲、しかしこれには大変な労力が必要となります。他方で選挙投票率を見れば反映されているように、国民は政治関心か若しくは政治参加のための時間が足りません。憲法を根本から替えることまでを一つの政権に付託できるのか、という問題も生じるのですが、新憲法をどのように制定権力を醸成するかさえ、難しい。ただ、問題認識を共有するところから初めてはどうかとも思うのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ゴールデンウィークという連休の号砲となります本日五月三日は憲法記念日だ。

本日は憲法記念日です。憲法問題、最大の関心事は防衛でしょう。環境権の問題や世界で唯一憲法に男女同権を明記している日本国憲法という先進性はあげられるのですが、一方で世界で唯一国家に陸海空軍の保持を禁止しているという点で特色があり、また憲法改正手続きがきわめて厳しく制限され容易に改正できない点も特記すべきでしょう。

9条。九条と書きますと京都駅の南のような印象を受けますので9条と記しますが、憲法論の主軸はこの9条において陸海空軍の保持を否定しているところでしょう。すると自衛隊はこれに当たらないのか、自衛隊は軍隊ではないので保持しても憲法上問題はない、という意見は一部野党をふくめ存在するところではありますが、定義が不明確です。

憲法を考える場合、日本は"手段として平和を用いる"ために陸海空軍を否定しているとしますが、"結果としての平和を担保する"ことが国民の幸福追求権や財産権と基本的人権に直結するものであり、憲法上ほかの条文をみた場合には、手段として平和を用いたことでの戦災など非平和的結果を公共の福祉として国民に強要する条文はありません。

2003年、興味深いのは9条の問題について、憲法前文の精神を持ち出し、"結果としての平和"のほうが"手段としての平和よりも重要だ"といまから20年前に当時の小泉首相が提唱し、橋本内閣時代の日米新ガイドライン以降整備が進められていた、それまでの空隙にあたっていた有事法制整備へと大きく進んだ、20年後が2023年ということです。

平和に関する視点は、特に2022年のロシア軍ウクライナ侵攻によるロシアウクライナ戦争勃発により浮き彫りとなりました。驚いたのは、いや驚くには値しないことが現行憲法から垣間見えるところなのですが、日本国内には"ウクライナがロシアに降伏することで平和が訪れる"という視点が、知識人含めすくなからず散見されたことでした。

防衛と憲法の問題は、ウクライナが遠い東欧の国家ということと多少は関係しているのかもしれませんが、これは日本が"そのとき"を迎えてしまった将来においても、同様の論理がある程度の支持を集めるのではないでしょうか。この視座についての国内の合意形成が、政治議論を避ける風潮があるとはいえ、憲法の問題に深く根ざしている。

降伏すれば平和論、しかし視点を変えてみると不自然さが際だちます。韓国は日本に併合されたことで文化的にも幸せになりました、こう仮にソウルやプサンの街角で主張してみるならば、激しい反発を招くでしょう。同じく、中国は日本軍に抵抗したために大変な被害がでたので反省すべきだ、こういう論理を示せば、論理破綻が明白でしょう。

しかし、日本では"降伏すれば被害はない"という視点は、ある程度の支持を集め、もっとも自衛隊の防衛力整備を継続的に進めてきた政権が選挙において民意を集めているために、全体としては"降伏すれば平和になるわけではない"という実情を認識しているのでしょうが、しかし、防衛政策や外交政策まで踏み込んだ国内議論は乏しいのです。

憲法は国の方向性を示すものであるから、現状で違憲状態はない、こう主張することもできるでしょう。憲法の番人である最高裁判所が統治行為論として政治問題なので行政府の領域であり司法の領域ではない、という判決を持って現状を問題ではないと理解することもできるでしょう。しかし、それは憲法の単なる形骸化でないのか、とも。

自衛隊は合憲、という主張は、しかし同時に自衛隊の活動領域が周辺情勢の緊迫化と、邦人経済活動のグローバル化に併せて世界規模に広がり、また日本の軍事力は第二次大戦中における世界での地位と比較すればどうしても非常に小さいものとなっているために防衛協力を進める必要があります。なにしろ核兵器さえもっていない国なのだから。

集団的自衛権公使や予防外交の実施、もう一つの課題は自衛隊が合憲だとして、では自衛隊を含めた防衛政策もすべて合憲と言い切ることが可能なのか、という問題です。これも統治行為論で説明することはできるのですが。繰り返すとおり、手段としての平和の視座から予防外交を怠れば、結果的に回避努力を制限し戦争を迎えることともなります。

改憲、しかしこれには大変な労力が必要となります。他方で選挙投票率を見れば反映されているように、国民は政治関心か若しくは政治参加のための時間が足りません。憲法を根本から替えることまでを一つの政権に付託できるのか、という問題も生じるのですが、新憲法をどのように制定権力を醸成するかさえ、難しい。ただ、問題認識を共有するところから初めてはどうかとも思うのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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日本国憲法の公布の直後から日本の再軍備が始まっていたとしても
憲法学者や平和団体は自衛隊(国防軍?)違憲論を主張しそうです