北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】東寺-観桜拝観,恵果和尚と空海-新しいものと古い基礎の価値観を考えさせられる寺院

2023-05-03 18:21:44 | 写真
■観桜と拝観と探訪
 昔のデジタル写真、デジカメで撮影している以上太古の昔ではないのだけれどもこの季節は未だ御室桜がみられたのだよなあ世の中かわるのだ、と思いつつ。

 講堂、その一段高い須弥壇の中央を見ますと大日如来を中心に如来像が五仏報じられています、これを五智如来といいますが、その須弥壇から東方をみますとそこには金剛波羅密多菩薩を中心に五大菩薩、須弥壇西方には不動明王を中心に明王像の五大明王が。

 如来さんというのは仏陀さんのことをしめしまして、講堂を拝観、さすがに撮影禁止なのですが、巡りますと菩薩さんは悟りのさなかであるゆえに起座の蓮の花は五分咲きの開花途上、しかし如来さんは悟りを経て満開の蓮の花の上に導いているという意匠です。

 金剛波羅密多菩薩と不動明王とともに須弥壇を守り奉じるようにその東西端に梵天と帝釈天像、そして須弥壇の四隅には四天王像が安置されています。立体曼荼羅という、いわば真言密教絵画の世界をそのまま立体化したという、当時としては画期的な試みでした。

 大日如来を中心としました配置は密教のものであり、東寺のご本尊である薬師如来さんとは当時の空海さんに下賜されたという歴史を反映しているものなのでしょうが、密教という、調べてみますと中国では定着することなく、インドでは失われた教義だという。

 密教は、唐の時代、インドから金剛智と善無畏と不空金剛という3名の僧侶が中国に伝えたとされる。この僧侶たちはサンスクリット語の大日経などを中国語に翻訳、このなかで最も若かった不空金剛はのちに玄宗皇帝、粛宗皇帝、大宗皇帝に仕える事となります。

 不空金剛は玄宗皇帝を仏弟子として迎えるとともに、その弟子が青龍寺の恵果和尚、空海に密教を伝えた僧侶です。密教が難しいとされたのはバラモン印度哲学とサンスクリット語を理解しなければ一種の哲学であるゆえに形式的な部分しか学べないとされている。

 空海は、虚空蔵求聞持法という、これは一つの様式を百万回集中して唱えるとほかの連関する記憶力が大きく高まるという修業を行っていたといい、ここで儒教と道教と仏教の深い理解とともに遣唐使船に乗っています、密教の知識はなくとも裾野知識が広かった。

 恵果和尚は、優れた仏教の弟子を数多く育てていますが、失礼な言い方ですが専門特化の方が多かったのでしょう、空海が恵果和尚と出会った際の弟子は千人を超えていたといいますが、両部灌頂、すべてを教え終えた灌頂を授けたのは空海ともう一人だけという。

 義円さんという、恵果和尚から両部灌頂を受けた高僧が居ましたが残念ながら若くして旅立っており、要するにインドから伝わった密教を正確に継承できたのは日本からの空海だけだった、恵果和尚は自分の命の先を悟り多くの経文や仏具を空海に委ねています。

 嵯峨天皇は、空海の唐からの帰国、実は20年の予定の留学を切り上げて帰国したために官僚的な摩擦が相当あったのですが、密教寺院を日本に、ということで空海へこの東寺を下賜しています。そして空海はこの東寺を、いまにも伝わる名称、教王護国寺としました。

 密教と日本、政教分離が制度上徹底している現代国家ではありますが、価値観や世界観については実のところ相当空海の影響は大きいようおもう。それには護国の名を奉じた通り、一種の哲学としての社会観を定着させ、また変な変容を避けたことが挙げられるのです。

 哲学や価値観、新しいものを取り入れることは重要ですが、価値基準をその都度変えていては一貫性がありません。空海さんの東寺は、そうした意味で実は日本の根の部分にある寺院なのだなあ、と遷りゆく季節とともに、改めて感慨深く見上げ帰路につきました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 五月三日は憲法記念日-二年目... | トップ |  【京都発幕間旅情】大垣城-... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

写真」カテゴリの最新記事