城崎には学生時代自転車で小倉から福井県を目指して走っていた道中に立ち寄ったことがある。その時分は志賀直哉の気分に浸りながら街を散策したが、まさか背中の損傷だけ同じ経験をするとは思ってもみなかったことである。
25日の朝、ストレッチャーに乗せられ注射を2度打たれた。天井ばかりがぐるぐると回っているようだった。手術室に入ったとたんあれよあれよという間に眠ってしまったのである。
いや、眠ったのではなく意識を失ったと言ったほうが正解だろう。どの位時間が経ったかは判らぬが目が醒めたときは既に別の部屋に居た。看護士が私に気が付いたのだろう「あっ気が付きましたか 大丈夫ですか」私の頭は朦朧としている「おっ 終わったのか」暗い天井をじっと見つめている。視野が狭くて暗いのか、それも判らないし焦点までもがはっきりしない。
「大丈夫ですか」更に声を掛けてくる。私ははっきりとした口調では言えないまでもこう言った「この姿でどうして大丈夫だと言えるか」