さきほどの水で満たしたペットボトルを左手に持ったかと思うと、横倒しにして両の手でペットボトルをクルクルと回転させ始めたのである。そうしておいてペットボトルの真ん中を左手で握ったまま右手で百円効果を顔の横に翳したのである。それを左手に持ったペットボトルの下に滑らせるように見せたのである。その状態で担当に覗かせている。そのまま左手を微妙に揺らし始めたのである。すると、なんと水で満たされたペットボトルの中で百円硬貨がゆらゆらと動き出したではないか。
手品師と化した彼は得意げである。
担当の顔をここで初めてちらりと見た。担当は声も上げず一体何が起こったのだろうという顔だ。既にペットボトルを覗かされた時から頭の中が真っ白だったに違いない。
あまりにも反応がないところなものだから手品師が言った「これが一番うけるんやけど」そして私に聞く「どうでしたか」
「俺はこのネタの中身は知っとるぞ」「それに始める前からネタが見えとうわい」
「えっ、見えてたんですか」
「それに持ってた百円は綺麗やったが、中には真っ黒に錆びたのが入っとうやないか」
その言葉でめげるかなと思った。