彼の出で立ちはこうだ。黒色のジーパンだが、その色が褪せてしまっている。しかもそのジーパンには身体に合わせる余裕がなくパンパンである。上着はモスグリーンの、しかもそれも褪色していてところどころ白みがかっている。漂白剤の使い方を失敗したかのようらしく変な模様になってしまっている。右肩から左の腰にかけた革紐で、これもモスグリーンなのだが、それが襷がけに掛けられている。しかもこの革紐は使い込まれたのだろうあちこち毛羽立っているのである。更には紐表面のあちこちが剥げ落ちてもいる。
その紐の先にはやはり同色のポーチがぶらさがっている。しかもなぜかパンパンに膨れ上がっている。
彼が移動するときは常時この様な出で立ちなのだろうか。どうでもいいことだがちょっと心配している自分がいるのである。若くはない。しかもお洒落ではない。周囲のまなざしは気にも留めないのだろう。
実際病院へ見舞いに行くだけなのだから姿形は二の次、三の次でよい。要は気持ちの問題である。こうして態々足を運んでくれたのはその気持ちの現れである。