真冬に来ているものだから寒くてたまらん。それを何故今頃と思われる読者諸氏もおられようが気にしないように。
古墳にはシーズンオン・オフがあるからな。
えっ、手品師はもう用意をして待っている。ジーパンのどこかに仕込んでいたのであろう。何度も何度も繰り返し使われたのであろう汚い紙を右手につまんで目の前でブラブラさせている。
「えっ もう始まってるんか」
「ここに何も書かれていない白い紙があります」確かに何も書かれていないが白くはない。散々折り畳みこまれたからだがくっきりと痕が残っている。しかもそれを繰り返すものだから折り目のところから紙の繊維が何本も何本も飛び出している。
「おいおい 汚れているぜ」
「いやー 気にしないでください」
「はあ」マイペースだな。
そして唐突にポケットから八分の一に折り畳まれた千円札を取り出し、それを拡げてベッドの上に置いたのである。
それを見ようとして手を出すと盗られるとでも思ったか
「なにしてるんですか 駄目ですよ お見舞いそこに置いてるじゃないですか」
「えっ お見舞い」見舞いの品があることを今知った。
「ほらそれですよ」と机の上に置かれたスーパーの袋を指差している。中には巨峰、ハウスみかん、果物ナイフがなければ食えないリンゴが入っていた。