このような古墳もある
ようやく準備が整ったらしい。気を取り直したのか、はたまたネタの仕込みが上手くいったのか、私には良く判らぬがあの例の満面の笑みを取り戻している。
と、それは突然に始まるのである。前触れもなく1ドル、2ドル、5ドル、10ドルを担当の目の前にちらつかせ始めたのである。
どうも担当の頭の中は真っ白なキャンパスがあるだけで他になにもないようだ。手品師がそのキャンパスに少しの絵でも描いてやればまだましな反応があるはずだろうに彼はそれに気づいていないのである。それに付け加えて悪いことに担当が今から何が始まるのか聞くこともしないものだから、いや、実際何を聞いていいか判らないだろうが。手品師は担当の顔の前で1ドル札を折り畳み始めた。担当は呆然としている。
1ドル札が二分の一に折り畳まれた時のことである。それが5ドルか10ドルに変化したらしい。手品師はニコニコしている。次にそれを四分の一に折り畳んだ時は10ドルか5ドルかに変わったらしい。ニコニコがより増幅してきた。そして最後八分の一に畳んだ時、2ドルになった。「2」という数字だけしか見えなかったのだが、それはそうなったのだろう。
ドル紙幣なんて我々二人にはどれがどう違うのなんて判るわけもないので、あっけにとられていたのである。しかも説明もなく自分勝手にやっているものだから見ているほうはさっぱり判らないのである。