この姿が原型ではないことを知って頂きたい
さて、彼の視線が鏡に反射して私の胸を射抜いているのである。
「えっ、こいつは」鏡の中を確認した。
リハビリの大部屋の中で一人だけここの雰囲気に溶け込まずにじっと鏡の中の私を見つめていたのである。
どのくらいの時間かは判らぬが彼は周囲の目を気にすることもせずただニヤニヤしてじっと立っていたのである。私は我に返って振り向いた「おー来たんか」と何十年も顔を合わすことがなかったように、偶然ここで会ったかのような上ずった声になってしまった。十日くらい前に彼には会っているのだが、周囲の者が我々を見ると劇的なシーンを見ているかのようだったかもしれん。