森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

ポートランドの壷<知る力>

2008-01-22 08:14:16 | イギリス旅行記

 上の画像は、<見せる力、伝える力>の大英博物館の所でも載せたもので、「ポートランドの壷」 です。

Wikpedia「ポートランドの壷」のところで、もっとはっきりした写真を見ることが出来ると思います。その壷は古代ローマで作られたガラス製の壷です。ガラスの壷にカメオの柄が貼り付けてあるのですね。素晴らしい技術と美しさです。

 

 大英博物館の記事の中で、私はそこに付いた日本人ガイドの方をかなり褒めていたと思うのですが、その方がやはりこの壷のことをガイドしてくれました。

古代ローマの技術力の事はもちろんですが、この壷はもっとドラマチックな運命を持っています。1845年、大英博物館展示中、狂人のためにこの壷は破壊されてしまったのです。説には、この壷の美しさに嫉妬した美大生、または酔っ払いなどと言われているそうですが、真実はどうだったのでしょう。いずれにしてもまともでない人だったのは確かなことです。

 

ガイドは言いました。

 

「そして、この壷の修復に多大なる貢献をしたのが、
ジョサイア・ウェッジウッドでした。彼は完璧なまでの複製を作り、この壷の修復にはその彼の複製が大いなる力を発揮したからです。」

 

オオ~と私は思いました。

 

 実は上のセリフは人の言葉ですからそんなには正確ではなく、後から説明しようと思うことが分かりやすくなるように、私が少し脚色しました。でも、言った内容はたぶん同じなのですが、もっとドラマチックに聞こえた彼女の説明は、上のセリフよりさらに不親切でした。

なので彼女の説明を聞いた私は、修復自体に力を貸したのがウェッジウッドだと思いました。

 

そして感動しました。ガイドは続けます。

 

「ウェッジウッドに行ったならば、その前に立っているジョサイアの銅像がこの壷を持っているので見てください。」

 

 私は楽しみにしていました。
そして六日目、湖水地方を後にしてそこから122kmのストーク・オン・トレントにある「ウェッジウッド・ビジターセンター」に行きました。

 

 

 そして、その前に建っていた銅像の持っていた壷です。 

 

     

 

       

 

 

だけど、私は頭の中が「壷・壷」と思っていたらしく、帰ってきて写真を見たら、銅像は最初から下の写真のように写っていて吃驚しました。普通、頭を切るか~と思いますよね。なんとなく私らしい・・・アァ

 

     

 

    

      

 

 ところで大英博物館にはこんな日本語の解説の本が売っています。

      

 

          

 

 家に戻りまして、ある日ゆっくり読んでいましたら、何処にもあのガイドが言った事が書いていません。修復の様子の写真などは載っていましたが、中心人物は違います。どういうことかしらと思ったら、気になってしまうタイプなので、即、調べて見ました。

 

 そして、私はとんでもない勘違いをしていたことを知ったのです。

 

1774年にジャスパーウェアを完成させたジョサイアは、
1786年にポートランドの壷の複製に取り組みます。なぜそのような話が持ち上がり、彼が名乗りを上げたのかはよくは分かりませんが、ジャスパーのデザインなどは、ギリシャ神話などをモチーフにしているものが多いので 、それはある意味、彼の使命だったのかもしれません。

 

 私はその複製も、彼がチャッチャと作ったのかと思いました。が、彼はその複製の制作に試行錯誤を繰り返し、4年の歳月を費やしました。

 

そして、1790年ようやく、ジャスパーウェアで、ポートランドの壷を再現させることに成功しました。その見事な再現は、高く評価されました。この壷はウェッジウッド美術館に展示してあります。

 

  

 

         英国アンティーク陶磁器

 

 

 ジョサイア・ウェッジウッドは1795年に64歳で亡くなりました。その没後、オリジナルのポートランドの壷に最初に述べた悲劇が起きたのです。 1845年の事でした。

 

 

 ただ、オリジナルに起きた悲劇はウェッジウッドにとっては幸いでした。
なぜなら、見事なまでに再現されていた「ジョサイアのポートランドの壷」を元に、それは修復され、一躍世界中の目がウェッジウッドの「ポートランドの壷」に向けられたのでした。

 

 そしてウェッジウッドは、そのシェアを世界に広げ
1878年、その幸いのシンボル「ポートランドの壷」を、ウェッジウッド社の商標に取り入れたのでした。

 

        

 

          

 

 

 

  この話はウェッジウッド社のファンの方や美術史に造詣が深い方にとっては、よく知られていることなのかもしれません。

 ガイドの伝え方がどんなだったかは、ここでは言いませんが、彼女も自分はよく分かって言ったのだと思います。

だけれど、何も下地がなくて何も知らない人に、何かを正しく伝える事は難しいことなんですよね。

 

 

 自分の書いたものに解説をつけるのもどうかと思いますが、私は<見せる力・伝える力>では、それを指し示すコンパスとしての<見せる力>として、優秀なガイドのことを伝えました。
そして、それらのものを見ていると自然に伝わってくる、つまり<伝える力>は、それ自体が持っているというようなことを書きました。

 

 

 ですが、それらのもの達、つまり発信機であるそれらが、どんなに素晴らしい電波を出していても、それを受け取る受信機である私たちの感性や、好奇心が閉じていては受け取ることは出来ないのです。
<知る力>と言うのは重要なポイントです。

 

 

 「ウェッジウッド・ビジターセンター」にはプライスダウンコーナーもありました。でも、今回は買いたい物が見つからず、いくつかの紅茶とメモ帳と、こんなカードなんかを買いました。

 

       

 

 

         

 

 

 私はやはりジャスパーウェアが好きなんですね。いつかそんな食器が似合うリビングのある家に住んでみたいものです。

 

 今回は素敵な食器を持って帰ることは出来ませんでしたが、私がここで得たものは、かなり大きなものだった、そんな気がしませんか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする