イギリスのビールはラガーではなくエールです。黒い感じのビールなんですが、私はどちらにしてもお酒には弱いので、そんなには飲めません。
でも、イギリスにはお酒の弱い私でも楽しめるシャンディと言うものがあるのです。それは、ビールとジンジャーエール(またはそんな感じの炭酸ジュース)を半々ぐらいで割るのです。割合はお好みなんですが、私はやっぱりハーフぐらいのお子様ティストで充分でしたね。
そんなものが、気に入った私は、毎晩寝る前に飲んでいました。毎晩飲むなんていうと、なかなかの飲んべぃみたいですが、でも、ビール味のジュースみたいなものですよ。
シャンディはホテルのバーで買うことが出来ます。もちろんそこで作ってくれるのです。その場所で飲んでもいいし、お部屋に持って帰ってもいいんです。
ある日のホテルで。
いつものようにシャンディを買おうといましたら、年若いバーテンが私に言いました。
「シャンディ ? シャンディ ? シャンディー 」
もう、何でお前がシャンディなんか飲むんだよと言う感じです。
私は訳がわからなくて、ポケッとしてしまいました。友人がエールじゃなくてラガーにしてくれと言ってと言いましたが、私は口も利きたくなくなってしまいました。なぜなら、明らかにその青年の目には批判めいた敵意みたいな感情が見えていたのです。
取りあえず欲しいものを手に入れてバーの片隅で、何で彼はあんな態度なのと言うことをサカナにして二人で飲んでいました。
「もしかして、私が子供に見えたのかしら?」なんて私が言うと、
「な、わけないじゃない。いくらなんでもずうずうしい。」
「なによ ~。分からないじゃない、フン」と険悪になりかけた頃、
バーを見渡してあることに気がつきました。バーは男の人たちで溢れかえっていました。テレビにはサッカーの試合がかかっていて、バーテンの青年はお客以上に熱心に見入っていました。男の人たちで座っている人はいなく、みんな二人ずつ向き合って、信じられないくらい語り合っているのです。
女性は私たちだけです。不自然な光景です。
翌日、たぶんツアーメンバーで一番飲みそうな年配の女性が、昼食の時に、怒りをぶちまけていました。それは違う私のテーブルまで聞こえてきて、内容は私がバーで感じた不愉快な出来事と同じなような気がしたので、その後お話を聞いてみました。
夜ウィスキーを買いに行った所、やっぱり
「ウィスキー!?」と、同じくお前が飲むのかよと言う態度をとったというのです。もう、バーで買うのはイヤだから、昼間のうちにショップで買ってしまうことにしたというお話でした。
私が旅行中に出会ったイギリスの人たちは、ほとんどが親切でした。でも、ここは違いました。
なぜなのかは分かりません。推理するばかりで、以下は私の推理です。
私は日本でも関東平野の、大都会ではないけれど、そこそこの都市近郊に住んでいます。日本でも田舎や地方にあるかもしれない、保守的な思考には鈍感です。
イギリスだって広いのです。きっと、ロンドンやその近郊ではありえない思考が、その町を占拠しているのかもしれません。
そのバーには本当に不自然なくらい男性ばかり。
この場所は、「女性とは~。」とか「女性のくせに」とか言う言葉が居座っていた20年前を彷徨っているのかも知れません。
閉鎖された田舎なんだ、と思いました。
だけど、都会では生き残れないホテルですよ。彼一人のせいでポシャリますよ。そう言えば、一人ではなかったのですよ。このホテルはまだありました。その話も忘れたくないので、まだ続きます。