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あぶない丘の家 (小学館文庫) 萩尾 望都 小学館 このアイテムの詳細を見る |
「泣けと言われたら泣けるのか」から読んでくださると嬉しいです。
萩尾望都は本当に好きな作家です。
そして、この「あぶない丘の家」は隠れた名作だと思います。
◇ あぶないアズ兄ちゃん
◇ あぶないシンデレラ
◇ あぶない壇ノ浦
◇ あぶない未来少年
「一家にひとり、アズ兄ちゃん。」と思わず言いたくなってしまうのですが、それは読んでくだされば分かりますが、彼はかっこいい「どらえもん」のような人なのです。
本当は怖い謎の人、天使か悪魔かまたは謎の宇宙人か、まあそんな所。でもなんでもありの頼もしい人なんですね。だからと言って出しゃばらず、主役の真比古をサポートして、凄く魅力的なキャラなんです。
「あぶないアズ兄ちゃん」はSF&オカルト
「あぶないシンデレラ」はミステリー
「あぶない未来少年」は壮大なSFで涙なくしては読めません。
もっと続いて欲しいシリーズでしたが、「あぶない未来少年」のラストを読むと、そのシーンが最後でいいのだなとなんとなく終了感がするのですね。
そして、一つ抜いた「あぶない壇ノ浦」ですが、これは真比古を狂言回しにして進んで行く、完全な歴史物語といっていいのではないかと思います。
安徳天皇入水シーンには秒の単位ですぐに泣けても、あまり頼朝や義経には興味はありませんでした。まあどちらかと言うと鎌倉幕府を開いた源氏の御曹司頼朝には多少はあったかもです。
頼朝=石坂浩二。大河ドラマの影響は大きいのですね。
この頃はまだ、義経=タッキーではなかったのでした。
前にも書いたことがあるのですが、
「今日は、大河で『本能寺』だわ。」と言ったら、大概の人は「NHKの大河ドラマで本能寺の変のシーンをやるのだわ。」と言ったのだと分かると思うのです。だけど「本能寺」と言われても、何のことか分からない歴史オンチな人がいて、驚いた事があったのです。たぶんこの人に「『壇ノ浦』は泣けるよね。」と言ったら、意味が通じないかも知れないと思ってしまうのです。もちろんそれは、「壇ノ浦の合戦でのエピソードは泣ける話がたくさんあるよね」と言う意味ですよ。
正月の初詣に、鎌倉八幡宮に出かけた真比古と幼馴染の不動律子たちでしたが、大銀杏を見たり江ノ電に乗って腰越を越えるときに、なにげに義経・頼朝の話で盛り上がります。
でもそこで言った、真比古の信じられない一言。
「えーっ、頼朝と義経って兄弟だったの~!?」
「ぎょ!」←なにげに古い言い回し・・・。
そんな歴史オンチの真比古でしたが、そこから頼朝・義経の物語が始まるのです。
アズ兄ちゃんとのある事件から、不思議体質になってしまった真比古は彼らの事を深く思いすぎて、俄タイムタラベラーになってしまいますが、迷子になってしまって危ないからと、アズ兄ちゃんが彼らの元に自由にいけるドコデモドアを付けてくれます。
光る風のように人生を生きた義経、冷たい雪を一歩一歩踏みしめるように生きた頼朝。
義経の最後に泣きじゃくる真比古に、アズ兄ちゃんは江ノ島の遠い灯りを見ながら、
「八百年も昔のことなんだよ。」と慰めます。
すでに真比古と同様に、涙に溺れていた私にも、その彼の慰めの言葉が深く伝わってくるのでした。
遠い昔に過ぎた物語。想いを飛ばしても、それは一方通行の恋のように、ただ想うばかり・・・
彼らにあまり興味のなかった私でしたが、のめり込んでしまいました。二人のファンの方はもちろん、歴史好きな方に、是非読んでもらいたい作品です。