群れて咲いていて可愛いと思ったけれど、やっぱり本当は「わたし」と言う一輪を見てと、花だって思っているかもしれないね。
季節はどんどん変わっていくじゃない。昨日の青空を見た?
なんか暑くて汗ばんでしまったけれど、もう秋だって言う感じがしたよね。
でも花々は、夏の残り香をまだ放っている。
そして一輪。
あらっ、花びらの一枚は何処にやってしまった?
『 風にやった。次の季節のチケットに。』
『私も見て。』と生垣のはずれの一輪が言った。
一緒に咲き誇っていた仲間の花たちは既に元気がない。まばらになった花の群れは美しさには欠け、人の目を引きとめる力を失ってしまったかも知れない。
『でも、私は咲いているんです。』
『風よ、私の花びらの一輪を、次の季節のチケットととして持っていってくれないの?』
風は答える。
『私には、あなたの調和と完璧を奪う事など出来ない。』
花は頷いて、青空の下に顔を向ける。
明日から、ちょっと青空はお休みみたいですね。