京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 熊野古道は「ふるみち・触る道」

2010年11月07日 | 熊野古道(紀伊路・中辺路)を歩く
「今回のコースを歩いた人は、もう14回(全コース)歩いたも同然です」とは、添乗員さんの言葉だった。

海南市の藤白神社から有田市の紀伊宮原駅までの12.3kmを4時間10分で歩く第2回目は、
藤白坂・拝ノ峠と二つの峠を越える険しい道が続き最も難関な行程となるようだった。
歴代上皇・法皇の熊野御幸は延べ100回に及び、必ず藤白王子に宿泊され特別な催事が行われたという。

  クスノキの巨木 

その熊野九十九王子中、最も格式の高い五躰王子の一つ、熊野聖域の入り口であった藤白神社で、宮司による安全祈願ののち出立のお守りをいただいた。この者たちに楽しい旅を授けたまへ~ …と。
熊野本宮大社の阿弥陀如来、その右に熊野神宮の薬師如来、左には熊野那智山の千手観音、三体の本地仏を祀り、神仏混合だ。

熊野「古道」は、熊野「ふるみち」・「触る道」であった。
神に・行き交う人に・気に、霊気に触れながら歩く道なのだ。神々が宿っているのだという意識、敬虔な気持ちを抱いて歩いて欲しい。
なるほど!! 神主さんのこの言葉に目の覚める思いがした。熊野を歩くことのすべてが語られ、心には大きな思いを託された気がした。

古来、行き倒れにもなりかねないほどの困難を極めた信仰の道。万が一のときに備え、人は襟元に一文銭を縫いこんだという。菩提を弔ってもらえるように…。
神仏のご加護を得ようと祈りつつ歩いた道であったのだろう。

  

山の上まで広がるみかん畑。石が転がり丸太で階段が組まれた落ち葉積もる野道、時に鬱蒼とした竹藪を抜け、長い長い上り坂が続く藤白坂。
一丁・109mごとに祀られている丁石地蔵の可愛さに癒され、眼下の深い緑に心を洗い、海を遠望しては深呼吸。

  

  

休憩を挟み40分も登って塔下(とうげ:まだ峠という和製の漢字がなかったために塔下を用いている)王子に着。標高250mに達していないだろうか。なんとも楽しい胸突き八丁、だったかも知れない。
     

裏手に上り御所の芝から眺めた万葉集にも歌われた景勝地、和歌の浦。景観は「国民共通の財産」と位置づけられた地だ。
  和歌の浦に潮みちくれば潟をなみ 葦辺をさして鶴(たづ)鳴き渡る  山辺赤人

ようやく登りつめながら下り、王子跡をいくつも過ぎてもう一つの難所、拝ノ峠にある蕪坂塔下王子を目指す。
今度は風車の見える♪あの山越えて~。舗装された超!急坂、足首は45度になっているのではないか?

  

黙々と一歩!また一歩!と足を踏み出して上る。さすがに汗をかいた。
77歳の語り部さんを前にして「えらい~」とは言い難い。

  

標高は320mぐらいだろうか、いつの間にかに登りつめた。上れば下りる。風車を背にして膝に痛みを感じながら急坂を下る。なぜか足並み揃った今日の仲間、笑い声が上がる気持ちよささえ伴う。再会を約して…。

現地でバスを降り、再び乗り込むまでの一日、万歩計は20539歩を示していた。
コメント (10)
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