京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

シメゴロシノキ

2022年03月06日 | こんな本も読んでみた
見晴らしの効く広い道路の交差点の一角に、花を植える6人ほどが寄っていた。
車のフロントガラスには霰やみぞれのようなものが吹き付ける。ワクチン接種3回目を終えた帰り道、小さな虹が目に入った。

乙川優三郎(『あの夏が来て この春がゆく』)、小田雅久仁(『残月記』)に続いて、河崎秋子さんの『絞め殺しの樹』を読みだした。

『残月記』ではかなり気持ちをぐにゃぐにゃに、時に不快感を引きずり、引っ掻き回された。もうやめよう。でももったいないから最後まで読もうと葛藤しながら三作目の表題作「残月記」を読んでいった。
それがこの作品でもいつしか文体の力というか、語り口にしっかり引き込まれていた。
発症すると数年のうちに命を落とすという感染症にかかった男の一生を見事に描ききっていると心打たれ、そして読み終わってひどく疲れた。この気持ちを鎮めるのに時間をかけることになった。


「絡み付いてね。栄養を奪いながら、芯にある木を締め付けて締め付けて、元の木を殺してしまう。芯となる木がなくても蔓が自立するほど太くなっているから、芯が枯れて朽ち果てて。中心に空洞ができるの。それが菩提樹。別名シメゴロシノキ」と帯の折り返しにある。
書評だけを頼りに手にした初めての作家さん。今度はどうかな。
コメント (2)
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